- 著者
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堀本 ゆかり
山田 洋一
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.2008, pp.G3P1576, 2009
【目的】学力向上は理学療法実践能力の獲得のために必要不可欠な要因である.先の報告で、学生の認知領域を修飾する要因は勤勉性であり,学習にあたっては抑うつが伴うが,効率を高めるためには活力が必要であることがわかった.今回は,Goldbergのチェックリストより勤勉性を観測変数として構造方程式モデリングを用い,関係の深い性格的特性の抽出を目的に分析したので報告する.<BR>【方法】対象は本校在学生290名で,平均年齢は20.69歳(±2.78)である.今回は特にI期生75名のデータを中心に解析した.<BR> 知識・技能面の指標は定期試験総合得点とし,情意領域の指標はGoldbergのチェックリストを使用し,共分散構造分析を実施した.情動の指標は気分プロフィール検査(POMS),抑うつに関する指標はSDSを使用した.<BR> 対象には、研究の主旨・方法について事前に説明し、同意を得た上で調査を開始し,統計処理に関しては個人情報の扱いに十分留意した.<BR> 統計処理は日本科学技術研修所製 JUSE-StatWorks/V4.0 SEM因果分析編を使用し解析した.<BR>【結果】まず、POMSデータより各学年の項目の分布と、4年生の定期試験成績が上位・中位・下位に分類し同様に分布を確認したところ,抑うつが高く,活力が低い傾向を示した.成績分類下位群は抑うつが高く,特に活力が低い傾向がみられた.<BR> 次にI期生のデータより観測変数である勤勉性に対するチェックリスト7項目(プラス方向の形容詞を採用)を指標として因子構造を分析した.カイ二乗検定での検定推定値は17.29,P値は0.24である.作成されたパス図の適合度判定ではAGFI0.88,CFI0.97,RMSEA0.06と比較的良好な適合度が得られた.直接効果を示すパラメータ推定値は勤勉0.84,計画性のある0.69,徹底的0.62,責任感のある0.61は比較的大きな値を示したため,最終学年への進級群と非進級群で同様にパス図を作成した.結果,勤勉は両群とも最も高い関係性を示した.進級群に対して非進級群は責任感のあるでは高く計画性のあるでは低いパラメータ推定値を示した.特に徹底的では進級群0.68に対して非進級群0.09と低い値を示した.非進級群のSDSデータでは抑うつ状態は低い傾向であった.<BR>【考察】臨床能力向上にあたっては,問題解決能力は不可欠である.臨床実習を実りのあるものにするために学内で基礎学力を向上しておくことは大きな課題である.非進級群の勤勉性に関する性格的因子では,課題を遂行しなければならないという責任感はむしろ進級群より大きかったが,計画性や徹底性の因子では勤勉性に対する関係性が弱くなっている事がわかった.この項目が低い値の学生に関しては,細かな目標設定と都度進捗状況の管理が必要であると考える.正規のカリキュラムとは別に個別指導の重要性が示唆された.