- 著者
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増田 孝一郎
- 出版者
- 日本古生物学会
- 雑誌
- 日本古生物学會報告・紀事 新編
- 巻号頁・発行日
- vol.1971, no.84, pp.205-224_1, 1971
AmussiopectenはSACCO(1897)によって提唱されて以来, 世界各地の第三系から多くの種が報告された。しかし, 北米および南米からはその存在が既に予想されていたのにも拘らず(Cox, 1942), 従来Amussiopectenの報告は全くなかった。今回筆者は, COXの予想に基き, 北米・中米・南米のPectinidaeについて詳しく検討した結果, AmussiopectenがLate OligoceneからMiddle Mioceneにかけて, 南北アメリカ大陸に広く分布していたことを確認することができた。すなわち, 既知種ではカリフォルニアのPecten vanvlecki ARNOLD (1907), 西インド諸島のPecten antiguensis BROWN(1913), コスタ・リカのPecten preglyptus OLSSON(1922), ベネズエラのPecten churuguarensis F. and H. HODSON(1927)などが, 明らかにAmussiopectenに属するものであることが判った。さらに, Amussiopectenの新種をプエルト・リコ, トリニダッドおよびメキシコから3種発見した。この中, メキシコからの1種は個体数が少なく, 保存も余り良好でないので新種の記載は差控えた。AmussiopectenはFlabellipectenに属するものであると考えている学者がヨーロッパには少なくないので, その分類の混乱は甚しい。しかし, 両者は画然と区別されるべきものであると筆者は考えている。本論文ではAmussiopectenの特徴を詳しく論じたほか, 類似属との関連, 既知種および新種の記載と相互の関連, およびAmussiopectenの古生物学的意義を論じた。