著者
ルンカ グリシュダ シリアロンラット ボリパット カンワンポン ダオルン 増田 隆一
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.39-43, 1999-03

約30年前, タイ農業組合省林産公団は子ゾウ訓練学校(YETS)を創立した。創立目的は, 森林伐採に使用する若い使役ゾウの訓練と子ゾウを保育することであった。最近, この訓練学校は拡張され, 名前もタイ国立ゾウ保護センターと改称された。このセンターの名称と役割は, タイにおけるゾウの保全のために再度検討されたのである。現在のゾウ保護センターの活動は, 保全対策, ゾウ使いとゾウの訓練, 治療活動, およびツーリズムを管理していくことである。その他, 移動式のゾウ病院, 学校生徒の見学会, ゾウに関する展示館など市民に向けた活動も行っている。さらに, 繁殖計画および家畜ゾウの野生復帰計画も最近の研究目的となっている。センターの年間経費は1, 300万タイバーツであり, そのうち約700万タイバーツが林産公団から支給されている。残りの経費は, NGO, 寄付, またはツーリズムによる収入によって支えられている。
著者
シリアロンラット ボリパット アンカワニシュ タウィポケ カンワンポン ダオルン 増田 隆一
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.65-71, 1999-03

タイ北部のメーホンソン県ナムトクメースリン国立公園周辺に生息する野生ゾウについて, 予備的情報を収集した。この国立公園内および周辺における数多くの村落は, アジアゾウ(Elephas maximus)の生活に影響を及ぼしている可能性がある。そこで, 野生ゾウの痕跡に関する野外調査を行うと共に, カレン族の人々から聞き取り調査を行った。その結果, 2頭のメス成獣の足跡を認めた。前脚足跡は円周を測定した結果, これらの2頭のゾウの肩高さは各々2.9mおよび2.3mと推定された。ゾウの糞およびゾウによって木の幹につけられた泥が発見された。また, 体毛も採取されたが, これは将来の野生集団の遺伝分析のために用いることができるであろう。さらに, 少数民族の人々と自然との関係について紹介した。
著者
石田 肇 弦本 敏行 分部 哲秋 増田 隆一 米田 穣 太田 博樹 深瀬 均
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

オホーツク文化人集団は 55 歳以上で亡くなる個体がかなり多い。オホーツク文化集団は、船上の活動などが腰椎の関節症性変化発症に関与した。久米島近世集団は、男女とも腰椎の関節症の頻度が高い。四肢では、オホーツク文化人骨では肘関節、膝関節で高い傾向を示した。沖縄縄文時代人は、目と目の間が平たいという特徴がある。成人男性の平均身長が約 153cm と、南低北高の傾向がみえる。北東アジア人の大腿骨骨体上部の形状が扁平形状であることを示した。四肢骨 Fst は頭蓋や歯の値より 2-3 倍大きい。SNP の解析により、アイヌ人と琉球人は一つのクラスターをなし、アイヌ・琉球同系説を支持した。
著者
大泰司 紀之 増田 隆一 中郡 翔太郎 須藤 健二 太子 夕佳
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的である琉球列島ジュゴン復元対策として得た結論は;(1)沖縄島に常住する3~4頭について、詳しく調査を行ない、その保全対策を充実させる。(2)フィリピンルソン島北部の沿岸と島嶼についてフィリピンと共同調査・共同保全を行い、増加個体が八重山諸島に分散してくるのを待つ。しかしそれらによる個体群回復や分布復元の可能性は乏しいと言わざるをえない。(3)マレーシアなどのジュゴンが数百頭レベルで常住している地域において、捕獲個体による人工繁殖を行う。その成功を待って、西表島に佐渡のトキの場合のようにジュゴン保護センターを設置し、増やした個体を適地を選んで放す。
著者
増田 隆一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

北海道および環オホーツク海地域に分布するヒグマについてミトコンドリアDNA(mtDNA)の分子系統地理的解析を行った。その結果、北海道集団の三重構造(異なる3集団が道南、道央-道北、道東に分かれて分布)が他地域には見られない特異的な分布パターンであることが明らかとなった。さらに、極東の広い地域において道央-道北型のmtDNAが分布することが判明した。一方、ヒグマ考古標本の古代DNA分析法を開発し、オホーツク文化(紀元5〜12世紀)遺跡の北海道礼文島香深井A遺跡から発掘されたヒグマ頭骨の起源地を推定した。礼文島ヒグマ骨から解読された古代mtDNAは道央-道北型と道南型に分類された。さらに、道南型DNAをもつ礼文島ヒグマはすべて秋に死亡した1歳未満の幼獣であったのに対し、道央-道北型DNAをもつ古代ヒグマは春に死亡した成獣であった。道南型DNAをもつ幼獣はおそらく道南における続縄文または擦文文化人の春グマ猟で捕獲され半年余り飼育された後に礼文島にてクマ送り儀礼に用いられたと考えられる。また、道東サロマ湖周辺の遺跡出土のヒグマ骨からは、現生の道北-道央型DNA、および、このグループに含まれるが新しいDNAタイプも見出された。これらの古代道東ヒグマは、遺跡地点より北部の比較的近隣の地域で捕獲されたものであろうと推定された。また、現在見られないDNAタイプの発見は、当時のヒグマ集団がより豊富な遺伝的多様性を有していたことを示している。一方、道南の奥尻島遺跡から出土したヒグマ骨2例は現在の道南に分布する2つのDNAタイプと一致した。これは、奥尻島の遺跡から発掘された骨群が、少なくとも2個体のヒグマから成り、奥尻島の対岸地域(北海道本島)から持ち込まれたことを示唆している。