著者
山田 明義 増野 和彦 福田 正樹
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本きのこ学会誌 (ISSN:13487388)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.9-15, 2012

通称「シメジ類」には,少なくともホンシメジ(Lyophyllum shimeji),シャカシメジ(L. fumosum),そしてハタケシメジ(L. decastes)の3種が含まれる.ホンシメジはこれらシメジ類の中でも特に重宝される.日本国内おけるこれら3種シメジ類の学名が定着したのは,1970年代中盤以降である.近年,ホンシメジについて,交配実験をもとにした生物学的種の検討や,分子系統学的解析をもとにした国内産と海外産の標本の比較がなされるようになってきた.本論では,日本産ホンシメジに関するこれまでの分類学的経緯および今後の分類研究の展開について論じるものである.
著者
上田 恵子 辻森 めぐみ 小谷 真也 千葉 亜希子 増野 和彦 久保 昌一 長井 薫 関谷 敦 河岸 洋和
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.50, pp.309-314, 2008

The importance of the endoplasmic reticulum (ER) in triggering a specific program of cell death has been recently reported. By triggering apoptosis on neural cells, ER-stress is a major cause of neurodegenerating disease such as Alzheimer disease. The demand for new protective substances to the ER-stress-dependent cell death prompted us to screen the protective activity of mushrooms. On the course of the screening, we isolated new hericenones, 3-hydroxy-hericenone F as a protective agent, along with related compounds, hericenone I and J. The structures of hericenones were determined by NMR and MS spectra. The structure of 3-hydroxy hericenone was elucidated as (8-formyl-3-hydroxy-5-methoxy-2-methyl-2-(4'-methyl-2'-oxopent-3'-enyl) chroman-7-yl) methyl palmitate, which had one additional hydroxy group compared to hericenone F. 3-Hydroxy-hericenone F showed the protective activity dose-dependently, however hericenones F, I and J did not have any activity at the concentration of 10μg/mL. Therefore, we suggested that the hydroxy group of 3-hydroxy-hericenone F was important for the protective activity. This is the first report of a new hericenone which has the protective activity against ER stress-dependent cell death. The further study using more hericenones is needed for the understanding of the structure-activity relationship.
著者
増野 和彦
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本きのこ学会誌 (ISSN:13487388)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.122-127, 2019

里山地域のきのこ生産に寄与するため,多くの人々が手軽に参加できるきのこの栽培および増殖技術の確立,および栽培品種の開発を図り,以下の研究成果を得た.1.「わりばし」および「つまようじ」に菌を培養した種菌による原木きのこ栽培の簡易接種法を考案して,クリタケについて実用性を実証し「きのこの接種法」として特許を取得した.2.クリタケ自然集団内におけるミトコンドリアDNA(mtDNA)の高い変異性を明らかにした.3.クリタケは菌糸束や根状菌糸束を形成して土壌中の木質の基質を介してテリトリーを広げていく生態を有しており,また,これらクリタケの基礎的な知見を基に,殺菌原木栽培・培養菌床の埋設によるクリタケの自然増殖誘導技術を開発し実証した.4.ナメコ,ヌメリスギタケ,ヤマブシタケ,クリタケ等のきのこ遺伝資源を収集し,これらを活用することで品種開発を果たした.
著者
竹内 嘉江 小出 博志 増野 和彦 松瀬 収司
出版者
長野県林業総合センター
雑誌
長野県林業総合センター研究報告 (ISSN:1342775X)
巻号頁・発行日
no.20, pp.41-64, 2006-05

アカマツ林におけるマツタケ増産のための環境改善施業効果について,平成12~16年の5年間調査と試験を行った。主な内容は次のとおりである。(1) 上伊那郡辰野町と下伊那郡豊丘村に各々0.5haの試験地を設定して,気象観測と発生量調査等を行った。(2) マツタケのシロ数は,5年間に辰野町施業区では1箇所,対照区では0箇所で変動なく,豊丘村施業区では22箇所,対照区では8箇所で変動がなかった。(3) 豊丘村試験地での5年間の子実体発生状況をみると,施業区では合計1,137本,46.3kgとなり,対照区と比較して340%本,359%生重となった。(4) 5年間の豊丘村施業区での発生本数の推移をみると,25年間の平均値と比較して127,34,63,138,114%となり,作柄の規則性は認められなかった。(5) イノシシ掘り起こし被害を防止するため,n-ラク酸を散布する試験を行ったが,効果判定は明確にできなかった。(7) シロの前線に位置する広葉樹の根圏を枯らしてシロを広げる施業を行ったところ,子実体発生本数の増加が認められた。(9) 子実体発生本数と気象条件との関係を調べた結果,相関係数r=0.82となる豊凶指数を見出すことができた。
著者
山田 明義 久我 ゆかり 小倉 健夫 増野 和彦
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

1.マツタケ菌根合成系にエビオス(窒素源)を添加することで,苗の生育不良を回避できることを明らかにした.2.新たに開発した二層培養法により大量調製したマツタケとショウロの土壌接種源を野外の自然土壌条件下でアカマツ実生に接種した結果,ショウロでは外生菌根の形成に成功し本技術が実用的側面を有することを明らかにした.3.アミタケ,ショウロ,シモフリシメジ,ホンシメジの菌根苗を直接野外条件下に大量に植え付けた結果,菌株によっては十分な菌根の増殖が見られ,菌根苗定着の実用的な技術になりうる事を明らかにした.4.マツタケ類、イグチ類、チチタケ類を含む39種64菌株について菌根苗をポット培養し順化した結果,シモフリシメジ,ミネシメジ,クマシメジ,スミゾメシメジの4種で子実体発生に成功した.5.マツタケ,アミガサタケ,チャナメツムタケで複数の菌株を確立し培養特性を把握した.このうちマツタケでは,チョウセンゴヨウ,ヒメコマツ,ならびにドイツトウヒとも菌根形成する事を明らかにした.6.ハルシメジがウメの実生根系にも菌根を形成することを明らかにし,また,ウメ苗木根系に胞子散布することで菌根形成させうる事も明らかにした.これにより,ウメ苗木とハルシメジ胞子を用いた実用的な菌根苗作出が可能なことを明らかにした.7.マツタケのシロに接してアクリルチューブを埋設し,ミニリゾトロンを用いて継続観察した結果,チューブ近傍でのシロの回復は必ずしも速やかではなく,他の菌根菌が散発的に増殖しうることを明らかにした.8.ミニリゾトロンを用いてクリタケの土壌中での動態を長期継続観察した結果,菌糸束の発達,分枝,分解と再形成といった動的挙動があり,菌糸束が地中での菌糸体拡散において重要な役割を果たしうることを明らかにした.発達した菌糸束の顕微鏡観察により,主に外層と内層からなる二重構造が形成されることを明らかにした.
著者
辻井 弘忠 末成 美奈子 増野 和彦
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.1, pp.73-79, 2003-03

長野県林業センターで系統維持しているヤマブシタケ(Hericium erinaceum)6系統(国内産4,台湾産1,中国産1)を供試し,ヤマブシタケ子実体の収穫所要日数および収量ならびに子実体抽出エキスのHeLa細胞に対する細胞毒性活性を調べた。すなわち,栽培培地基材であるコーンコブミール含有量の違いや栄養剤添加が,子実体の収穫所要日数および収量に及ぼす影響ならびに各系統の子実体抽出エキスのHeLa細胞に対する細胞毒性活性に及ぼす影響を調べた。その結果,実験に用いたヤマブシタケ6系統の子実体抽出エキスともHeLa細胞に対する細胞毒性活性がみられた。子実体の収穫所要日数が少なく,子実体の収量の多い系統はY5とY6,子実体エキスのHeLa細胞に対する細胞毒性活性の強い系統はY1とY2であった。栽培培地基材であるコーンコブミールを添加すると子実体の収穫所要日数は短かくなり,子実体の収量は少なかったが,コーンコブミール添加によって子実体抽出エキスのHeLa細胞に対する細胞毒性活性は高まった。栄養剤(フスマ)添加によって,子実体の収量は少なくなったが,子実体抽出エキスのHeLa細胞に対する細胞毒性活性は高くなった。これらのことから,ヤマブシタケの系統は台湾産および中国産より国内産のY1~3系統のものを使用し,栽培培地基材としてはコーンコブミールを,栄養剤としてはフスマをそれぞれ添加して栽培すれば,HeLa細胞に対する細胞毒性活性の強い子実体を生産出来ることが判明した。