著者
山田 茂樹 大島 まり 尹 彰永 伊藤 広貴 渡邉 嘉之 前田 修作 武石 直樹 大谷 智仁 和田 成生 野崎 和彦
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.Annual59, no.Proc, pp.764-766, 2021 (Released:2021-10-17)

【背景・目的】閉鎖空間の頭蓋骨内を脳血液がスムーズに灌流するために脳脊髄液が拍動し、脳代謝による老廃物の排泄と放熱のために脳間質液と脳脊髄液が灌流する(グリンファティックシステム)と考えられている。この複雑な脳内の流体の動きを具現化した数理モデルは未だ存在しない。我々は、主要な脳動脈を3Dモデル、その末梢動脈を1Dモデル、さらに細動脈を0Dモデルで結合し、これを全身循環モデルに組み込んだマルチスケール脳循環数理モデルをこれまでに構築しており、このモデルに脳脊髄液の動きを統合したいと考え、現状と課題を報告する。【方法・結果】健常者の3D MRIから形体情報を収集し、4D Flow MRIから3D流速を収集して、3D画像解析ワークステーションで計算する。脳、脳脊髄液腔(脳室・くも膜下腔)と脳血管は、各々の撮影条件でデータ収集が必要であり、現状は統合できないため、それぞれ個別にサーフェイスモデルを作成し、流速情報を3Dモデルの流入・流出境界条件を設定して、CFD解析に用いる必要がある。【結論】心拍に同期した脳脊髄液の3D動態は、脳血液の灌流による脳の拍動が駆動力となっており、脳循環に連動している。新知見を考慮した脳循環と脳脊髄液の動きを統合した動態解析の数理モデルは非常に複雑であり、未だ課題は多い。また、加齢に伴う脳萎縮、脳代謝の低下、動脈硬化は、脳循環と脳脊髄液の動態に大きく影響すると考えられるが、未解明の領域である。
著者
保科 克行 重松 邦広 岡本 宏之 宮田 哲郎 大島 まり 山本 創太 山本 晃太
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

われわれは大動脈瘤の破裂しやすさをモデルを用いて検討してきた。嚢状瘤は破裂リスクが高いとされるがその定義はされていない。瘤を仮想楕円にあてはめて、「横長」のもの、またフィレット半径(大動脈と瘤のつなぎ目に当てる円)の小さい縦長のものは、頂点において応力が高く破裂しやすく、嚢状瘤の定義の一部としてよいのではないかという結論になった。これは胸部大動脈瘤において拡張速度の検討が行われたがはっきりとした臨床上の裏づけができなかった。今回、腹部大動脈瘤の破裂症例を集積し、コントロール群とマッチングを行って検討した。破裂群は、瘤が横長であること、またフィレット半径が小さいことにおいて、有意に差があった。
著者
川越 至桜 大島 まり 石井 和之
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 37 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.330-331, 2013-09-06 (Released:2018-05-16)

産業界と教育界を結びつける新しい科学技術教育として、東京大学生産技術研究所の次世代育成オフィスが中心となり産業界と協力した出張授業を実施し、その授業を基に実験教材を開発した。また、開発した実験教材を使用して2校で出張授業を実施した。その結果、実験教材を用いた出張授業は、科学技術や産業界への興味・関心を喚起し、理科や科学の学習だけでなく、科学技術の社会的な役割や意義を理解する上で有効と考えられる。
著者
大島 まり 川越 至桜 石井 和之
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.59-66, 2015 (Released:2015-06-30)
参考文献数
11

Science and technology have continued to become more diversified in recent years, leading to further promotion of science, technology, engineering and mathematics (STEM) education and to advances that can be incorporated into science education. The Office for the Next Generation (ONG) was founded in 2011 at the Institute of Industrial Science (IIS), the University of Tokyo, to promote STEM education through outreach programs in collaboration with various industries. In this paper, we present several outreach programs designed and conducted by the ONG. The collaborative university/industry programs aim to encourage students in primary and secondary schools to deepen their understanding of STEM as well as the social roles and significance of science and technology. One of the goals of our outreach programs has been the development of a series of lectures by IIS professors and teaching materials such as experiment kits and visual materials based on the lectures. The visual materials will be provided as DVDs or YouTube videos. The materials will be provided with classroom instructions according to the curriculum of the related subjects, including social studies. We also describe the workshops developed jointly by ONG and industries. The outreach programs have been evaluated by questionnaire survey and by interviews of lecturers and people in industry. Lastly, we provide a summary of the challenges and the future prospects of the STEM education and outreach programs in university/industry collaboration.
著者
小林 敏雄 高木 清 大島 まり
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

低温体療法は脳の一部に血液が流れなくなる虚血性血管障害型の脳卒中に有効であり、1980年代より試みられている。虚血性血管障害が起きると欠血により脳内温度が40度近くに上昇し、このため神経障害が起こり、最悪の場合には死に至る。低温体療法を用いて体を冷やすことで脳の温度を2度から3度下げることにより、発病後の回復経過が良好である症例が報告されている。しかし、現在行われている低温療法は全身を長時間にわたって冷やすため、患者の体力負担が増大し、かえって危険になる場合が起こり得る。そこで、頭と頸部だけを冷やすことにより効果的かつ患者の負担が軽減できるような選択的脳冷却療法が模索されている。本研究では脳内温度の調節のメカニズムを把握すると同時に効率的な選択的脳冷却療法の指針を構築するため、脳内の熱輸送のモデリングおよび数値解析を行った。以上より、本研究では以下の3つのテーマに重点を置いて研究を行った。(1)脳内熱輸送のモデリング(2)数値解析システムの開発(3)医用画像および臨床データとの比較・検証(1)では脳血管網において熱交換を行っていると考えられている、内頸動脈の海綿静脈洞を模擬した同軸円管における対向流型熱交換について、直円管モデルと屈曲管モデルでの数値解析を行った。(2)数値解析にはFIDAPを用い、動脈・静脈の入口に50mmの導入部を設けて安定化を図っている。それぞれの密度・比熱は血液および血管壁で等しく、伝熱方程式に熱拡散係数を与えることで温度の計算を行う。(3)実際の脳冷却を行う際には0.2℃から0.3℃の温度低下が必要とされ、今回の解析でその条件を満たすことが確認された。屈曲管は2次流れの影響により直円管よりも伝熱量が増加し、また拍動流入を与えることで温度境界層が壁面近傍だけでなくなり、より動脈の冷却が促進されることが分かった。
著者
大島 まり 石上 雄太 早川 基治
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.9, pp.710-715, 2014 (Released:2014-09-25)
参考文献数
10

脳動脈瘤の発症, 成長, 破裂は, 血流によって引き起こされる力学的刺激が重要な役割を果たすことが指摘されている. 力学的刺激には, 圧刺激, 進展刺激, ずり刺激の3つが挙げられ, その中でも特に壁面せん断応力は内皮細胞に影響を与え, 脳動脈瘤を考える際に重要な力学的刺激といわれている. 本研究は, これらの力学的刺激を定量的に捉えるために, 医用画像や計測データから得られる患者の血管形状に対して数値解析を適用し, 患者個別の血行動態の情報を得るとともに予防や診断を生かすことのできる支援システムの構築を目指している. 本論文では, 血液の流体力学 (血行力学) や患者個別のシミュレーションの概説とともに, より生体に近い現象を再現するための末梢血管や血管壁の弾性の影響を考慮したマルチスケール血流—血管壁の数値解析について紹介する.
著者
坂東 佳憲 大石 正道 大島 まり
出版者
日本流体力学会
雑誌
日本流体力学会年会講演論文集 (ISSN:13428004)
巻号頁・発行日
vol.2007, 2007-08-06

This paper aims to visualize and measure flow structure in the cerebral aneurysm model, which is based on the medical image data. Since a blood vessel has bend and bifurcation with pulsatile blood flow, the flow structure becomes complex in the three-dimensions. The stereo PIV technique is applied to measure and visualize the flow. We calculate the wall shear stress using measurement data and the geometry data of lost model, which is used to make cerebral aneurysm model. As results of measurement at the peak systole in the pulsatile inflow condition, the flow runs into the tip of the aneurysm. The wall shear stress of the region of the aneurysm is lower than that of the region of the vessel.