著者
鈴木 泰博 大田 秀隆
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

最近,脳波のガンマー帯域に相当する40Hzの 神経刺激(視聴覚や触覚)が,アルツハイマー病などの認知症治療に有効である可能性が示されている。それらの研究では従来,強度が一定の神経刺激が用いられてきたが,本研究では熟練技術者のマッサージの圧力変化を参考に,快の感情を惹起させる40Hzの神経刺激を生成する。そして生成された神経刺激により認知症患者へ介入する臨床研究を行い,その有効性を調査する。一般に認知症は患者によって病状の変化や多様性大きい。そのため,神経刺激に対する生体応答を蓄積して学習することで,個別医療的に各々の患者にあわせ最適な神経刺激を提供することが可能なシステムを構築する。
著者
秋下 雅弘 江頭 正人 小川 純人 大田 秀隆 岡部 哲郎 喩 静 柴崎 孝二 孫 輔卿
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では性ホルモン様作用を有する漢方薬の成分を用いて血管、神経、乳癌、前立腺癌の細胞に対する作用を検討し、臓器別作用を網羅的に解析・分類した。具体的に、乳癌細胞ではエストロゲンと類似した細胞増殖能をもつ生薬成分ともたない成分で分類できた。前立腺癌細胞ではテストステロンと類似した細胞増殖能をもつ成分はなかった。血管ではすべての生薬成分が平滑筋細胞の石灰化を性ホルモンと同様に抑制する効果があった。神経細胞ではginsenoside Rb1がアポトーシスによる細胞傷害を保護する作用があった。このような成果からホルモン補充療法の代替薬として新規薬剤の開発へつながることが期待できる。
著者
板倉 有紀 伊藤 和恵 佐藤 美智子 佐藤 はま子 大田 秀隆
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.151-161, 2019-08-30 (Released:2021-02-26)
参考文献数
14

「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」では認知症高齢者等にやさしい地域づくりが目指されている.本稿では,認知症啓発・予防および認知症当事者支援が行われる秋田県羽後町の事例を取り挙げる.「若竹元気くらぶ」と「うごまちキャラバンメイト・認知症サポーター協会」という二つのグループの認知症に関する活動が成立する背景要因を検討する.特に「認知症予防」という考え方が,どのように働いているかに焦点化する.認知症予防の取り組みは認知症当事者を結果的に排除するという議論がなされてきたためである.「若竹元気くらぶ」は,認知症予防のための活動として始まったが認知症当事者支援の場にもなっている.「うごまちキャラバンメイト・認知症サポーター協会」は「若竹元気くらぶ」から独立して結成され,当事者支援のための活動として始まったが認知症予防に関心のある会員を取り入れ活動を継続している.いずれの活動においても保健福祉に関する専門知識を持つ行政職員や住民が活動に深く関与している.地域社会において認知症予防という考え方は,認知症の当事者の参加の機会にもなりうる.当事者の参加のためには専門職の関わりかたが重要である.
著者
大田 秀隆 本多 正幸 山口 泰弘 秋下 雅弘 大内 尉義
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.627-631, 2012 (Released:2013-03-04)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

プロトンポンプ阻害薬であるランソプラゾール長期内服によるcollagenous colitisが原因となった,慢性に持続する水様下痢症の一例を報告する.症例は75歳女性.ランソプラゾール(30 mg/日)内服開始後より水様性下痢および体重減少が持続し,上部・下部消化管内視鏡・便中脂肪精査・消化管シンチが施行されたが,上部消化管内視鏡で萎縮性胃炎を認めた以外に異常所見は認められず,以後2年以上にわたり慢性的な下痢が持続していた.2011年5月末より,下痢症状に加え,歩行障害・意識障害が出現し,原因精査および加療目的に入院となった.入院後,薬剤性の下痢を疑ってランソプラゾールを中止しファモチジン(20 mg/日)に変更,中止後数日で下痢は軽快消失しており,同剤によるcollagenous colitisが原因として疑われた.下部消化管内視鏡による病理組織検体からcollagenous colitisの所見を認め,確定診断に至った. collagenous colitisは特に高齢女性に多いことがわかっている.原因不明の難治性下痢症として放置されることが多く,長期間持続する下血を伴わない水様下痢が主症状であり,腹痛・体重減少・低蛋白血症を伴うこともある.これらの症状は,通常は原因薬剤の中止のみで数日~数週で症状は改善し治癒するが,放置されたまま原因不明の下痢症として扱われている場合も多い.これら慢性的な下痢症状は,高齢患者のADLを著しく低下させ,また介護者による負担をも増やすことになる. 今回の症例のように確定診断には,その他の原因疾患の除外・下部内視鏡検査正常所見・下部消化管内視鏡による大腸粘膜生検が必須であるが,確定診断に至る前にcollagenous colitisを念頭に,原因となる薬剤を中止してみることが重要であると考えられ,ここに報告する.