著者
大野 智子 山田 節子 三森 一司 髙山 裕子 熊谷 昌則 髙橋 徹 逸見 洋子 駒場 千佳子 長沼 誠子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】日本調理科学会特別研究平成24~25年度『次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理』の聞き書き調査を通して,秋田県における次世代に伝えるべき家庭料理を析出すると共に、その地域特性を明らかにすることを目的とした。<br>【方法】調査地域は,行政区分に準じた鹿角,北秋田,山本,秋田,由利,仙北,平鹿,雄勝の8地域とし,昭和35~45年頃までに郷土料理として定着した次世代に伝え継ぎたい家庭料理の聞き書き調査を実施した。調査対象者は,当時の調理担当者である年代の19名とした。聞き書きにより得られた料理を地域区分に従って,ごはんもの,そば・うどん他麺類,おかず,汁もの・鍋もの,漬物,おやつ・お茶うけ,正月(年越し)料理/祭り・行事の料理の項目に分類した。<br>【結果】全体として得られた料理は110(ごはんもの7,おかず37,汁もの・鍋もの17,漬物13,おやつ19,行事の料理17)であった。全地域において挙げられた料理は,日常食の山菜料理,かやき料理であった。県の花として制定されているふきのとうを始め春の山菜を利用した保存食や,季節の魚や山菜等を合わせて煮た「かやき(貝焼き)」は,山と海の幸豊かな秋田県の食の特徴を表しているものとも言える。漁業が盛んな山本地域では,ハタハタに食塩を加え長期間発酵させた「しょっつる」,乾燥したエゴノリを煮溶かし冷やし固めた「えご」等,魚や海藻を主とした料理が並んだ。年神に供えた鏡餅を夏季まで保存し,長寿を祈願して6月1日に食べる「凍み餅(歯固め餅)」が,雄勝地域ではハレ食として食されていた。また,豊富な米と雪深い秋田の象徴とも言える「いぶりがっこ」,「ふかしなす漬け」等の発酵食が日常食に挙げられた。
著者
髙橋 徹 熊谷 昌則 髙山 裕子 大野 智子 山田 節子 三森 一司 逸見 洋子 駒場 千佳子 長沼 誠子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】日本調理科学会特別研究平成24〜25年度『次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理』の聞き書き調査を通して,秋田県における次世代に伝えるべき家庭料理を抽出し,「副菜」に着目してその特徴と調理特性について明らかにすることを目的とした。</p><p>【方法】秋田県内8調査地域(鹿角・北秋田・山本・秋田・由利・仙北・平鹿・雄勝)において,昭和35〜45年頃に調理を担当していた対象者19名(女性,74.2±7.8歳)に聞き書き調査を実施した。調査から得られた110の料理のうち,副菜に該当した料理の特徴および調理特性について検討した。</p><p>【結果および考察】副菜に該当した36の料理のうち,漬物が13と約1/3を占めていた。有名となった「いぶりがっこ」の他に,「ふかしなす漬け」や「平良かぶの漬物」等,米麹を使用する漬物も見られた。漬物の原料となるダイコン,カブ,ナスには伝統野菜も用いられている。また,山菜やキノコ料理も豊富で,「ぜんまいの一本煮」,「カタクリの花のクルミ和え」,「ばっけみそ」,「なめこと大根おろしの酢の物」,「なっつ」などが挙げられた。「なっつ」は,漬物の原型ともいわれ,野菜やキノコをだし汁や塩辛で和えたものである。「てん(ところてん)」,「えご」,「寒天料理」に代表される,寒天(海藻)を利用した料理は県内全域で食されており,その種類も豊富であった。他県では日常的に食されている「煮しめ」が,正月(年越し)や行事の料理として継承されている地域もあった。</p>
著者
布施 陽子 江川 千秋 杉本 由美子 大和田 沙和 矢﨑 高明 大野 智子 福井 勉
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1795, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】我々は妊婦を対象とした理学療法を検討し,幾つかの研究を行ってきた。女性は妊娠によって様々な身体的変化を生じ,身体的愁訴として腰痛,尿失禁などのマイナートラブルが問題視されている。妊婦は腹部が前方へ突出するに従いsway-back姿勢となり易く,それに伴い,骨盤帯における運動機能が破綻し腰痛を生じてしまう可能性がある。骨盤帯における運動機能を再構築するための方法の中に腹横筋エクササイズ(以下,EX)があり,従来検討を繰り返してきた(2008~2014布施)。今回,腰痛を呈する妊婦に対し,腹横筋EXを実施し,疼痛,筋機能,頸管長にどのような影響を与えるかについて検討したので報告する。【方法】対象は腰痛を呈した妊婦50名(妊娠周期28.1±5.5週,平均年齢33.3±4.4歳,身長1.6±0.1m,体重57.7±8.2kg,BMI22.5±2.4 kg/m2)とし,事前に医師による診察を実施し早産の危険性がないと判断された妊婦とした。対象者に対し,1.超音波診断装置による視覚的フィードバックを用いた腹横筋収縮学習(第49回日本理学療法学術大会により腰痛を呈する妊婦への腹横筋EXとして有効性を研究),2.ストレッチポール上背臥位(第44回日本理学療法学術大会により腹横筋EXとして有効であるとしたものであり,ストレッチポールの種類については個々に評価した上で実施),3.ストレッチポール上背臥位でのu・oの発声(第46回日本理学療法学術大会により腹横筋EXとして有効であると立証),4.ストレッチポール上背臥位での上肢課題運動(第45回日本理学療法学術大会により上肢外転側と反対側の腹横筋EXとして有効であるとしたものであり,左右の回数については個々に評価した上で比率を検討し実施),5.立位での上肢課題運動(第47回日本理学療法学術大会により上肢外転側と反対側の腹横筋EXとして有効性を検討したものであり,左右の回数については個々に評価した上で比率を検討し実施),6.呼吸指導(第47回日本理学療法学術大会により腹横筋EXとして有効であると立証)の6種類の腹横筋EXの中から個別性を検討・評価した上で1つ以上の腹横筋EXを選択し,各対象者において約30分個別に実施した。計測項目は,1)疼痛スケール(VAS),2)脂肪および側腹筋群(外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋)の筋厚,3)頚管長の3項目とし,それぞれ目盛りのない10cm線,超音波診断装置(HITACHI Mylab Five),経膣超音波を用いて計測した。1)は対象者による自己評価,2)は理学療法士による計測,そして3)は医師により実施された。頚管長測定は,介入による切迫早産の兆候を確認するテストバッテリーとして実施した。また,計測肢位は2)ベッド上安静背臥位,3)産婦人科内診台上安静座位とした。2)はわれわれの先行研究で高い信頼性が得られた位置である,上前腸骨棘と上後腸骨棘間の上前腸骨棘側1/3点を通る床と垂直な直線上で,肋骨下縁と腸骨稜間の中点にプローブを当てて,腹筋層筋膜が最も明瞭で平行線となるまで押した際の画像を静止画として記録した(第43回日本理学療法学術大会により計測方法の信頼性を研究)。以上3項目を,介入前後に計測した。統計的解析は,対応のあるt検定を実施し有意水準1%未満で検討した(SPSSver18)。【結果】1.1)疼痛スケール,2)腹横筋厚に差を認め,1)は有意に減少し,2)は有意に増加した(p<0.01)。2.3)頸管長については差を認めなかった(p=0.89)。3.2)脂肪厚,外腹斜筋厚,内腹斜筋厚については差を認めなかった。【考察】本研究では,腰痛を呈する妊婦に対し,我々が先行研究にて立証してきた腹横筋EXを実施した結果,腰痛の緩和,腹横筋厚の増加を認めた。腹横筋は体幹深層筋群の1つであり,姿勢保持作用・腹腔内圧調整作用を持つと言われている。腹横筋EXを実施した事で妊娠により増大した腹部を効率的に支えられるようになり疼痛の緩和に繋がったと考えられる。妊娠24週未満で頚管長が25mm以下では標準的な頚管長に比べ6倍以上早産になりやすいとされているが,介入前後で頸管長差がなかったことから,本研究での実施内容は早産リスクを高めるほど過度な腹圧をかけたEXではないと考えられた。【理学療法学研究としての意義】本研究結果から骨盤帯における運動機能を再構築する方法として本研究での腹横筋EXが腰痛を呈した妊婦に対して安全かつ有効であることが示された。今後,妊娠経過に伴う姿勢制御機能破綻から引き起こされる疼痛に対する予防的位置付けとして本研究での腹横筋EXが貢献できると考えられる。
著者
髙山 裕子 熊谷 昌則 大野 智子 山田 節子 三森 一司 高橋 徹 逸見 洋子 駒場 千佳子 長沼 誠子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】日本調理科学会特別研究平成24~25年度『次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理』の聞き書き調査を通して、秋田県における次世代に伝えるべき家庭料理を抽出し、前回平成28年度大会の特別企画において主食の特徴について報告した。今回は得られた料理の「おやつ」に着目し、その特徴と調理特性について明らかにすることを目的とした。<br />【方法】秋田県内8調査地域(鹿角・北秋田・山本・秋田・由利・仙北・平鹿・雄勝)において、昭和35~45年頃に調理を担当していた対象者19名(女性、74.2±7.8歳)に聞き書き調査を実施した。調査から得られた110の料理について、主食・主菜・副菜・汁物・おやつに分類した。そのうち、おやつに該当する料理を抽出し、その特徴および調理特性について調査した。<br />【結果】おやつに該当した料理は23品目で、多くは日常、食されているものであるが、祭り・行事にて食されるものも5つ挙げられた。調理操作では、「蒸す」が全地域で多かったが、「揚げる」「焼く」も見られた。主材料では、米・米粉を使用するものが多く、県内全域において、おやき、干し餅・あられが、各地域で、ゆみそ、ごま巻き餅、バター餅、ままづけ、厚焼き、あさづけ、なんばこ、松皮もち、ゆべしが挙げられた。また、米・米粉以外に、県央部の沿岸地域においては、魚を使った磯部揚げ、県南部の内陸地域において、豆腐を主材料にした、豆腐カステラ、豆腐巻きなどが地域固有のおやつとして継承されていた。
著者
菅原 久美子 和泉 眞喜子 宮下 ひろみ 中村 恵子 會田 久仁子 村上 知子 菊地 和美 北山 育子 真野 由紀子 松本 祥子 大野 智子 高橋 秀子 齋藤 寛子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.129, 2010

【目的】米利用の地域性および米消費減少の要因を探るために、東北・北海道地方における米の摂取・調理状況に関する調査を実施し、前報<SUP>1)</SUP>では米の嗜好、摂取頻度、米に対する意識等について報告した。本研究では、米飯と代表的な米料理の摂取・調理状況について、東北・北海道地方における特徴と地域性について比較検討した。【方法】前報<SUP>1)</SUP>、同様である。<BR>【結果】三食とも米飯を摂取する割合は、全体で46.6%であるが、各県・道別にみると山形県71.4%、北海道29.9%となり、一日の米飯回数には地域差がみられた。山形県では黒米、宮城県では五穀米の使用が多い特徴がある。また無洗米の使用経験は各県道ともに多く、認知度や利便性等が広く浸透していることが窺われた。残りご飯は炒飯、雑炊としての利用が最多であるが、焼きおにぎりへの利用には地域差がみられた。おにぎりの具材はいずれも鮭、梅干しが上位であるが、たらこは秋田・青森県、こんぶは青森・岩手・宮城県、かつおぶしは北海道で多かった。炊き込みご飯、混ぜご飯、ちらし寿司を作る割合は各々88.4%、75.7%、62.6%であり、炊き込みご飯は秋田県、混ぜご飯は福島県、ちらし寿司は岩手県で作る割合が多く、いずれの米料理も、具の調理状況と盛りつけ時の具の飾り方には地域的特徴がみられた。具材を種類別にみると、炊き込みご飯では山形県のいも類(しらたき、こんにゃく)ときのこ類、北海道の藻類(ひじき、海苔)と魚介類(ほたて貝、ほっき貝)、混ぜご飯では宮城県の鮭の出現率が高く、地域の特産物が多く利用されている状況が窺われた。<SUP>1)</SUP>日本調理科学会平成21年度大会研究発表要旨集、p.47(2009)
著者
大野 智子 寺井 仁 徳永 弘子 立山 和美 笠松 千夏 武川 直樹
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 61回大会(2009年)
巻号頁・発行日
pp.103, 2009 (Released:2009-09-02)

目的 大皿,銘銘皿など,食事の提供形態は,複数人で食事を共にするときのコミュニケーションに影響すると考えられる.共食場面において,共有された「大皿」がコミュニケーションの質に与える効果について「聞き手の応答」の形態に着目し検討を行った. 方法 分析対象は,3人グループでの共食中の映像である.実験では,「世代」として「高校生」と「主婦」,「食事形態」として銘々の皿に食事が配膳される「銘々皿」と,大皿を囲んで自由に取り分ける「大皿」の各2水準,計4条件が設定された.実験時間は30分間である. 分析では,会話中の聞き手の応答として,他者の発話を受ける姿勢が弱い「うなずき」,他者の発話を受ける姿勢が強い「あいづち」に注目した.「うなずき」は頭部の上下運動のみによる応答で,「あいづち」は“うん”などの言語行動を伴う応答である.また聞き手が話し手に応答した際の,両者の視線を合わせて分析することにより,コミュニケーションの質について総合的な分析を行った. 結果 高校生と主婦の両世代とも,大皿において「聞き手の応答回数」が多い結果となり,大皿が聞き手の応答を促進している可能性が示された.応答の形態に着目すると,大皿では銘々皿に比べ「あいづち」が多く,積極的な会話の姿勢が形成されていたことが示された.また,応答発生時の話者と聞き手の視線は,銘々皿では自分の食べ物に集中している一方,大皿では各所に配られていたことが確認された. 以上の結果から,大皿という共有空間が中心に存在することにより,食べるという行為の過程において視線配布の広がりを生み,互いに発話を受ける姿勢を強める結果となり「活発なコミュニケーションの場」が作り出されていたことが示唆される.
著者
大野 智子 鎌田 好美 佐々木 玲
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.45, 2013 (Released:2013-08-23)
被引用文献数
1

【目的】これまでに、ゼラチン、寒天、米粉をゲル化剤に用いて、秋田県の郷土料理のひとつである「豆腐カステラ」の高齢者用ソフト食の開発を試みてきた。本研究では、高齢者施設等で利用されている3種のゲル化剤を使用し、物性および食味を比較検討することを目的とした。【方法】材料は、絹ごし豆腐、上白糖、鶏卵とし、ゲル化剤には介護食用寒天、ゼラチン寒天、ソフティア2を用いて3試料を調製した。物性の測定は、消費者庁が定める特別用途食品「えん下困難者用食品許可基準」の試験方法に準拠した。試料を直径40mm、高さ20mmの容器に15mm充填し、直線運動により物質の圧縮応力を測定することが可能な万能試験機(5544 社製:INSTRON)を用いて、直径20mm、高さ40mmの樹脂製のプランジャーにより、圧縮応力10mm/sec、クリアランス5mmで2回圧縮測定した。得られた記録曲線から硬さ、付着性、凝集性を算出した。さらに、20代女子学生をパネルとし、評点法を用いて食味に関する官能評価を行った。評価項目は、外観、色、硬さ、べたつき、飲み込みやすさ、口中でのばらつき、口中での残留感、おいしさ、総合的評価の9項目とした。【結果】物性測定の結果、硬さ、付着性、凝集性のいずれも介護食用寒天とソフティア2を使用した試料がえん下困難者用食品許可基準Ⅱに該当した。ゼラチン寒天を使用した試料は他の試料に比べて有意に硬く、基準に該当しない結果となった。官能評価では、外観、硬さ、べたつき、飲み込みやすさ、口中での残留感、おいしさの6項目に関して有意差が認められ、ソフティア2、介護食用寒天、ゼラチン寒天の順によいと評価された。