著者
大野 聖良 オオノ セラ Sera ONO
雑誌
清泉女子大学人文科学研究所紀要
巻号頁・発行日
vol.38, pp.73-92, 2017-03-31

2000年国連で「国際組織犯罪防止条約」および付属議定書のひとつである「人身取引議定書」が採択され、国際社会および各国政府は人身取引の廃絶に向けて取り組んでいる。日本では2004年から人身取引対策が講じられ、主に外国籍女性の強制売春に焦点が当てられてきた。しかし、近年その被害は多様化し、人身取引をめぐる議論は大きく変容している。 本稿では、現代日本社会における人身取引問題の様相を捉えるため、人身取引の用語と概念の変遷を検討し、日本社会における「人身取引」の問題化の過程を明らかにする。 まず、日本の議論に少なからず影響を与えてきた国際社会におけるtrafficking in personsの議論を検討し、20世紀初頭の"white slave"(白人奴隷)問題からはじまり、1970年代から1990年代の国連を中心とした女性の人権をめぐる世界的な運動で登場するtraffic in women、2000年代に国際組織犯罪としてtrafficking in personsへと変遷する過程を示した。 次に行政・マスメディア・市民運動(NGO)を軸に日本社会における人身取引問題の議論を検討した。第二次世界大戦後、戦災孤児や貧しい農村の子どもを対象にした児童労働問題として「いわゆる人身売買」が端緒となり、赤線地帯の問題、1980年代後半から東・東南アジア女性の強制売春という女性の人権問題としての「人身売買」、2000年代には国際社会で優先課題となった国際組織犯罪という視点が加わり、日本社会で「トラフィッキング」「人身取引」が可視化される過程を示した。さらに、ここ数年、日本人少女を対象にした児童売春や「技能実習生」問題が新たな人身取引として捉えられはじめた背景についても言及した。 これらの検討を通じて、日本において人身取引が国内外の様々な文脈を通じて問題化されてきた過程と、現在も人身取引問題をめぐる境界線が常に揺れ動いている点を論じた。 In December 2000, the United Nations adopted "the UN Convention against Transnational Organized Crime" and its three protocols: Trafficking Protocol, Smuggling Protocol and Illicit Manufacturing Protocol. Until the Trafficking Protocol appeared, the term "Trafficking" had not been defined in international law, despite its incorporation in a number of international legal agreements. International society and each government have agreed to prohibit and eliminate trafficking in persons, and the Japanese government also started the National Action Plan against Trafficking in Persons in 2004. In Japan, trafficking in persons has been known as an issue concerning foreign women, especially from East Asia and Southeast Asia, who have been forced into prostitution. However, the recent discussion in Japan has been changing to a different consideration of sexual exploitation. The aim of this paper is to examine the transition of the term and concept of "trafficking in persons" in Japan as the process of its problematization. First, I consider the international context of trafficking in persons from the starting point of some international legal agreements against it. This issue started from "white slavery" in Europe at the beginning of the 20th century, and had changed to "traffic in women" as an issue of women's human rights in the 1970s―1990s. Since 2000, "trafficking in persons" has been regarded as "transnational organized crime", and has become a priority matter in international society these days. Next, I consider the Japanese context of trafficking in persons from the government, media and civil movements (NGOs). After WWⅡ, "so-called jinshin-baibai (human trafficking)" as child labor problems among war orphans and children in the poor rural villages paved the way for discussion of trafficking in persons. After that, it came to mean "red-light district" problems involving young women until the 1956 Anti-Prostitution Law, and it moved into consideration as "Jinshin-baibai", involving as forced prostitution among women from East and Southeast Asian countries along with the civil movements in the 1980s ―1990s. In concert with the international context, the Japanese government has regarded "trafficking" or "jinshin-torihiki (trafficking in persons)" as transnational organized crime since the 2000s. In addition, I refer to another tendency, showing how child prostitution among Japanese young girls and "Technical Intern Trainee" problems have come to be regarded as new forms of trafficking in persons, according to the government and NGOs. Through these examinations, this paper argues that trafficking in persons in Japan have been problematized by several different contexts in national and international discussions, and its boundary line has been fluid according to "what we should recognize as trafficking in persons".
著者
園田 桂子 大野 聖子 堀江 稔
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.5-15, 2020-03-05 (Released:2020-09-12)
参考文献数
17

SCN5Aは心臓ナトリウムチャネルをコードする遺伝子である.Brugada症候群(BrS)の遺伝子変異同定率は20%程度でしかないが,SCN5A変異はその大部分を占める.一方,様々な疾患とコピー数多型(CNV)との関連性が報告されているが,BrSでは2例の報告しかなく,アジア人では検討されていない.そこで,われわれは有症候性もしくは家族歴のある日本人BrS患者151人を対象とし,SCN5Aのサンガー法によるシークエンス解析とMLPA法によるCNVの検出を施行した.サンガー法により,20人の発端者にSCN5A変異を同定した.MLPA法は140人で結果を得ることができ,そのうち4人に各々異なるCNVを同定した(欠失3人,重複1人).4人中3人は致死性不整脈イベントを有しており,平均診断年齢は23±14歳と若年であった.安静時12誘導心電図では4人ともPQ時間は延長し,QRS幅は正常上限であった.これら4人の臨床像は,蛋白生成が減少するtruncating変異や,ナトリウム電流が著明に減少するミスセンス変異を有する患者群と類似していた.SCN5AのCNVは,有症候性もしくは家族歴のあるBrS発端者の2.9%に同定され,臨床像も重症であり,スクリーニングされるべき変異と考えられる.
著者
大野 聖子 佐藤 敬子 片岡 恵子 田中 結美 小原 優子 野田 あゆみ 小島 広美 細見 博子
出版者
日本環境感染学会
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.264-268, 2000-08-23
参考文献数
8
被引用文献数
2

1995年と96年の公務災害に申請された針刺し・切創事故をEPINet日本語版を用いて解析を行った.それに基づき携帯型針捨て容器の導入, 病棟で使用する滅菌処置セットに滅菌済みの膿盆を組み込むこと, ゴム栓よりの真空採血用にルアーアダプターを採用などの改善を行った.原因器材としてディスポの注射器針, 翼状針, 留置針, 真空採血針の全体に占める割合は2年平均14件全体の65%から6件30%に減少した.携帯型針捨て容器はコスト的にも100床あたり月5000円程度で一般病院でもまず試みうる対策と考えた.
著者
大野 聖二
出版者
日経BP社
雑誌
日経バイオビジネス (ISSN:13464426)
巻号頁・発行日
no.34, pp.50-52, 2004-03

研究成果を事業化したり、ベンチャーを起業したりする上で、不可欠な特許。特許に不備があったために起業に失敗する事例も後を絶たない。一方、産学連携が活発化する中で、大学や企業の研究者自身も特許に関する知識を身に付ける必要性が高まっている。
著者
勝田 優 小阪 直史 村田 龍宣 舩越 真理 井上 敬之 山下 美智子 杉田 直哉 勝井 靖 澤田 真嗣 大野 聖子 清水 恒広 藤田 直久
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.354-361, 2015 (Released:2015-12-05)
参考文献数
22
被引用文献数
2

病棟での輸液調製では,調製時の汚染防止により注意を払う必要がある.病棟での輸液調製の現状把握のため,空気清浄度,調製環境,輸液メニューについて血液内科と外科病棟を対象に多施設間調査を実施した.空気清浄度調査は,5施設9部署にて実施し,パーティクルカウンターとエアーサンプラーを用いて浮遊粒子数と浮遊菌の同定・コロニー数を測定した.環境と輸液メニューの調査は,9施設13部署を対象に,調製現場の確認と10日間の注射処方箋(7,201処方)を集計した.空気清浄度は,0.5 μm以上の粒子数が,最も多い部署で3,091×103,少ない部署で393×103個/m3であった.浮遊菌は,黄色ブドウ球菌は3部署のみの検出であったが,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌,Micrococcus属,Corynebacterium属やBacillus属は全部署より検出された.調製台は,9部署で空調吹き出し口の直下にあり,10部署でスタッフの動線上に設置されていた.混合のあった4,903処方のうち,3時間以上の点滴が31%を占めた.病棟での輸液調製マニュアルを整備していたのは,9施設中3施設のみであった.調査から,輸液調製台エリアの空気清浄度は低く,3時間を超える点滴が3割以上を占めるなど,細菌汚染が生じるリスクが高い可能性が示唆された.輸液汚染リスク軽減のため,日本版の病棟での輸液調製ガイドラインの策定が望まれる.
著者
吉川 博昭 西部 伸一 酒井 大輔 今西 宏和 大野 聖加 小林 克江 北村 晶
出版者
埼玉医科大学 医学会
雑誌
埼玉医科大学雑誌 (ISSN:03855074)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.1-11, 2018 (Released:2018-10-25)
参考文献数
18

【目的】脳神経外科術後早期に,不安定な循環動態や疾患の重症度とは関連のない高乳酸血症を経験することがある.脳神経外科予定手術患者を対象とし,術後早期の高乳酸血症の発症要因と術後合併症との関連について後方視的に検討した. 【対象と方法】予定脳神経外科手術患者のうち,麻酔導入後および手術終了直前に,動脈血ガス分析で乳酸値を測定した症例を対象とした.手術終了直前の乳酸値が2 mmol/L以上を術後早期高乳酸血症と定義し,高乳酸血症群と正常乳酸値群に分類した.患者背景,バイタルサイン,術前合併症と術前投与薬剤,手術術式,脳腫瘍の悪性度と大きさ,手術時間,出血量,動脈血ガス分析結果,周術期カテコラミン投与,集中治療室滞在日数,術後人工呼吸,術後合併症について群間で比較し,多変量ロジスティック回帰分析を行った. 【結果】対象患者 225名のうち 49名に術後早期高乳酸血症を認めた.高乳酸血症群では,脳腫瘍手術患者の割合,手術時間,術前乳酸値,出血量が高値であった(P < 0.05).多変量解析から,術前の高乳酸血症(オッズ比 27.83)と脳腫瘍手術(オッズ比 4.806)が術後早期高乳酸血症の発症要因として考えられた.脳腫瘍手術患者 89名のうち38名が高乳酸血症群であった.高乳酸血症群では正常乳酸値群に比較して,腫瘍が有意に大きかった(1016 mm² [四分位範囲:545,1951 mm²] vs. 780 mm² [四分位範囲:3 22,1107 mm²])(P= 0.02).また,2日以上集中治療室に滞在した患者が,術後早期高乳酸血症群で は正常乳酸値群よりも多かった(31% vs. 16%, P<0.05). 【結論】予定脳神経外科手術患者の術後早期高乳酸血症の発症要因は,術前からの高乳酸血症と脳腫瘍手術であった.術後早期高乳酸血症患者は,集中治療室滞在時間が長くなる可能性がある.
著者
大野 聖二
出版者
日経BP社
雑誌
日経バイオビジネス (ISSN:13464426)
巻号頁・発行日
no.39, pp.130-132, 2004-08

研究成果を事業化したり、ベンチャーを起業したりする上で、不可欠な特許。特許に不備があったために起業に失敗する事例も後を絶たない。一方、産学連携が活発化する中で、大学や企業の研究者自身も特許に関する知識を身に付ける必要性が高まっている。
著者
大山 勝 勝田 兼司 大野 聖 大野 郁夫 山本 真平 谷口 強 肥高 洋
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.779-789, 1979

Two cases of rhinoliths in a male aged 18 years and a female aged 52 years who complained of nasal obstruction with mucopurulent and sometimes, bloodstained discharge were reported. The fresh specimens of nasal calculi removed in the former case weighed 4.5 grammes and 3.0 grammes in the latter.<BR>In the scanning electron micrographs the core like as nucleus with furrow and polous structure were found.<BR>Electron probe X-rays microanalysis showed that S element was concentrically detected in the core and furrow, while Ca, P, Mg, Si, Al and Na levels were recognized much more highly in the surrounding polous or solid parts compared with that of the nuclei.<BR>From these ultrastructural characteristics and chemical composition, the genesis of rhinoliths were discussed.