著者
高橋 優太 今泉 洋 狩野 直樹 斎藤 正明 加藤 徳雄 石井 吉之 斎藤 圭一
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.375-383, 2008 (Released:2008-06-28)
参考文献数
13
被引用文献数
7 5

2003年12月から2006年11月にかけて,日本海に面した立地である新潟市にて降水中に含まれるトリチウムと各種陽イオン濃度の測定を行った。これにより本研究では,これらの関連性を明らかにすることで,気団移動の解析への有効性について検討した。サンプルとなる月間降水は擬似浸透水型の採水装置を用いて集められた。この結果,以下のことが明らかとなった。(1)降水中のトリチウム濃度とカルシウムイオン濃度との間に相関性がある。(2)季節によって,降水起源気団の持つトリチウム濃度が異なる。(3)この傾向は大陸性気団において顕著に現れる。(4)降水中のトリチウム濃度は大陸性気団の降水と海洋性気団の降水との混合比によって決まると推定できる。
著者
石井 吉之
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

降雨と融雪が重なって生じる融雪洪水の発生メカニズムを解明するため、2011~2013年の各融雪期に、母子里において模擬降雨の散水実験を行った。2012年の実験(積雪深170cm)では、散水開始後50~90分で積雪底面から流出が始まり、総散水量120~170Lに対し総流出量は46~48Lであった。散水量と流出量が定常となった時点における流出水に含まれる模擬降水の割合は、水および同位体の収支式から概ね6~7割と見積もられ、晴天日や弱い降雨時の融雪水とは異なった流出過程をとることが分かった。
著者
石井 吉之
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF HYDOROLOGICAL SCIENCES
雑誌
日本水文科学会誌 (ISSN:13429612)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.101-107, 2012 (Released:2013-04-16)
参考文献数
15
被引用文献数
3 1

降雨と融雪が重なった時の出水現象を明らかにする目的で,北海道の2 つの流域で研究が行なわれた。積雪内部の流出過程に着目した研究では,積雪底面から流出する水の90%以上が積雪内部に貯留されていた水であり,晴天時でも降雨時でもこの割合に大きな違いはなかった。降雨を伴った融雪出水時に現れる河川流量の大きなピークの成因を調べた研究では,増水前の初期流量がもともと大きいことや,降雨量に融雪量を加えた流入強度が大きいことが要因であることが明らかにされた。さらに,雪面上に著しい大雨があった場合を想定した模擬降雨実験では,1m2 の雪面上に6 時間かけて200L の模擬降雨を散布したが,積雪底面からの流出水は現れなかった。このことから,雪面上に多量の水が供給されると積雪内における水平方向の水の流れが予想以上に顕著になることが明らかになった。降雨と融雪が重なった時の出水現象を解明するためには,積雪下の地表面にどのような水供給があるかを知ることが鍵となり,積雪ライシメータを用いた積雪底面流出量の観測例を今後も増やしていく必要がある。
著者
斎藤 正明 今泉 洋 加藤 徳雄 石井 吉之 高橋 優太 斎藤 圭一
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-6, 2007-01-15 (Released:2011-03-01)
参考文献数
12

濃縮試料の計数率から未濃縮試料の計数率を差し引いたものは, 正味の計数率に (濃縮倍率-1) を乗じたものである。この関係を利用して, バックグラウンド計数を差し引くことなく正味の計数率を得ることができる。トリチウムの電解濃縮測定法に適用し, その結果を検証した。環境濃度レベルにおいて, 測定値及び測定誤差は従来法と同程度であった。この測定法はトリチウム濃縮分析において実用的にも有効であることが確認できた。
著者
鈴木 啓助 石井 吉之 兒玉 裕二 小林 大二 Jones H.G.
出版者
北海道大学
雑誌
低温科学. 物理篇 (ISSN:04393538)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.93-108, 1993-03
被引用文献数
6

融雪におよぼす森林の影響を検討するために,カナダ東部北方針葉樹林地において,融雪水の流出機構に関する調査を行なった。森林内外に気象・融雪に関する観測機器を設置し,その他の測定方法も内外で同一にして調査を行なった。その結果,森林内外の降水中のNH_4^+とNO_3^-の窒素化合物濃度については林内で林外より低濃度になっており,生物活動による化学変化および消費が推察された。また,積雪下面融雪水中の溶存物質濃度は,林外でのみ日変化が明瞭であり,日変化のパターンはH^+とNO_3^-が同じで,Ca^2^+とSO_4^2-はそれと逆の変動パターンを示す。林外での積雪下面融雪水の水量とH^+濃度による流出成分分離の結果,各融雪日の融雪初期には,積雪下層の積雪内部融雪水が,押し出し流によって流出し,その後に積雪表面から供給された当日の融雪水が流出すると考えられる。
著者
石井 吉之 平島 寛行
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

降雨と融雪が重なって生じる河川洪水の発生メカニズムを解明するため、北海道母子里で行われた積雪上への模擬降雨散水実験の結果を、雪氷防災研究センターで開発された積雪水分移動モデルによって再現できるかどうかを検討した。その結果、積雪底面流出の出現に最も効くと考えていた層境界の粒径コントラストは、層境界で浸透水の滞留を引き起こすという面では重要であるが、底面流出の出現やその流出率は、層境界を通過した後の水みちの発達の仕方に強く依存することが分かった。水みちが鉛直下向きに発達すると顕著な底面流出が出現し、水みちが側面方向に傾くと底面流出が出現しないことが明らかになった。
著者
石井 吉之 小林 大二
出版者
北海道大学
雑誌
低温科学. 物理篇. 資料集 (ISSN:03853683)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.11-20, 1995-03

北海道北部の母子里試験地の山腹斜面において地温の連続観測を行なった。1991年11月から1994年8月までの期間に,南西向き及び北西向き斜面の各々4地点で50cm, 100cm, 200cm深の地温を観測した。融雪期には全ての地点で顕著な地温低下が観測されたが,温度変化は 200cm深で最も大きく,50cm深で最小であった。一方,夏の大雨時には50cm深で最大の温度上昇が起きた。こうした変化は土壌水の圧力水頭の変化傾向と一致し,水頭変化の顕著な場所で大きな地温変化が生じている。
著者
佐藤 和秀 亀田 貴雄 石井 吉之 的場 澄人 高橋 一義 石坂 雅昭 竹内 由香 横山 宏太郎 小南 靖弘 川田 邦夫 渡辺 幸 飯田 俊彰 五十嵐 誠 竹内 望
出版者
長岡工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

北海道から本州の山形県,新潟県,富山県にいたる冬期の降積雪試料を採取し,主に酸性雪に関する化学特性の解析を行い,その実態の調査研究を実施した。報告例が少ない降積雪の過酸化水素濃度に関する多くの知見が得られた。より明確な因果関係の把握にはさらなる観測調査が必要であるが,大気汚染物質あるいは積雪の主要イオン濃度,過酸化水素濃度,pH,黄砂,雪氷藻類などの間にはいくつかの相関関係が見られ,融雪水のイオンの選択的溶出も観測された。
著者
石井 吉之 小林 大二
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

(1)北海道北部の多雪山地流域では、精度の良い水文・気象観測が十数年間にわたり継続されている。これらのデータを用いて各年の流域水収支を計算し、流域貯留量の年々変動を調べた。また、気温を変数とした積雪・融雪ルーチンとタンクモデルを用いた流出・貯留ルーチンからなる流域水収支モデルを構築し、積雪貯留量の変動が流減水収支に及ぼす効果を検討した。近年、日本各地に暖冬少雪傾向があると言われるが、この地域ではそのような傾向が見られるのか、また、その場合には流減水循環にどのような影響が現れるのかを、このモデルを用いて考察した。モデル計算の結果、積雪貯留量の大きな年々変動は単に冬期降水量ばかりに依存するのではなく、積雪期や融雪期の気温にも大きく依存することが示された。また、積雪貯留量の大小が夏期渇水期の河川流出高に及ぼす影響は小さいことが明らかになった。(2)上と同じ流域において、全融雪期間にわたって流域内における水及び化学物質の収支を明らかにし、その上で地中での流出過程を考察した。融雪水・混ざり水・地下水から成る3成分モデルによってハイドログラフ分離を行なった結果、地下水の流出寄与分は全融雪期間にわたって約40%とほぼ一定に保たれ、このために、融雪期における流域内での化学物質収支は流出過多になることが明らかにされた。(3)隣接する2つの森林小流域において融雪期の流出特性を比較した。2つの流域は面積・形状・地質・植生・土壌特性がよく類似しているにもかかわらず、土壌層に顕著な違いがあるために流出特性にもその影響が明瞭に現れた。また、土壌層が特に厚い内部小流域が流出の非ソースエリアとなるため、見かけ上は同じ流域面積でも実質的には異なることが明らかにされた。
著者
秋田谷 英次 石井 吉之 成田 英器 石川 信敬 小林 俊一 鈴木 哲 早川 典生 対馬 勝年 石坂 雅昭 楽 鵬飛 張 森
出版者
北海道大学
雑誌
低温科学. 物理篇 (ISSN:04393538)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.35-50, 1995-02

1994年3月上旬,中国黒竜江省の 1500km を車で走破し積雪と道路状況を調査し,道路雪害の実態を明らかにした。北海道と比べて寒冷ではあるが雪は極端に少なく,吹雪と吹溜の発生頻度と規模は小さい。しかし,除雪作業や車の冬期用装備がされていないため,交通量が増加すれば深刻な道路雪害となることが予想される。平地の農耕地内の道路は農地からの土砂で著しく汚れた圧雪た氷板からなり,そのため滑りの危険は小さいが,凹凸がはげしい。山地森林内の道路は汚れのすくない圧雪と氷板からなり,滑りの危険が大きい。この地方の特徴である道路に沿った並木は配置が不適当なため,吹雪の面から見ると,むしろマイナスの効果が大きい。吹雪対策としては側溝と盛り土された道路,および効果的な並木の配置がある。さらに,簡単な除雪機による吹雪直後の除雪が効果的である。山地の坂道やカーブでは滑り止めの土砂散布も必要である。