著者
石坂 雅昭
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.229-238, 1995-09-15
被引用文献数
6 13

雲粒付雪片について,落下速度を初めとする落下に関する諸物理量を,可能なかぎり同時かつ直接的に測定した.雲粒付雪片は,雲粒の付着の度合いに応じて3タイプに分けた.その結果,落下速度はLangleben (1954)の提出したV=kD<SUP>n</SUP>(Dは雪片の融解直径)の形に書けた.また,雲粒付きの度合いが多い雪片ほど,n,k とも大きくなる傾向もこれまでの結果と同じであった.雪片の空中での落下姿勢は,逆円錐形で落ちてくるものが最も多かった.密度σは,大きさdとともに低下し,その関係は,濃密雲粒付雪片で,σ・d<SUP>0.81</SUP>=0.027となり,傾向は,Magono and Nakamura (1965)の結果と同じであるが,その関係式は,彼らのσ・d<SUP>2</SUP>=0.02 とは異なった.雪片の質量は,どのタイプの場合も,横方向から見た断面積にほぼ比例し,最大粒径とは,およそその2乗に比例する関係が得られた.また,レイノルズ数300~2500の範囲の抵抗係数を計算によって求めることができた.値は大きくばらついたが,どのタイプも,多くは0.4から1.3の間に分布し,同じ範囲のレイノルズ数における球と円柱の抵抗係数の間の値をとり,レイノルズ数の増加とともにわずかに低下する傾向が見られた.また,これらの諸量の関係からV=kD<SUP>n</SUP>形の式を検討した結果,kやnの値には,抵抗係数とレイノルズ数の関係や,横方向(水平方向)の大きさと融解直径の関係を反映することがわかった.そして,後者については,雲粒が多く付いているタイプの雪片では,少ないものに比べ,融解直径の増加に対する大きさの増加が小さいこと,すなわち重くなる割に水平方向の大きさの増加が小さいことが,特に融解直径の大きい領域で終速度を大きくする要因であることがわかった.
著者
石坂 雅昭
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.23-34, 1995-03-15
被引用文献数
8 3

日本の積雪地帯のうち,メッシュ気候値が整備されている地域を,その地域の積雪の堆積環境から推定される雪質を考慮して,「湿り雪地域」,「乾き雪地域」,および「しもざらめ地域」の三つに分けた.ただし,湿り雪地域と乾き雪地域の境界は,さほど明瞭ではないので,その中間的な遷移領域として「中間地域」を設けた.湿り雪地域では,厳冬期にも融雪や降雨による積雪表層からの水の浸透によって,積雪の全層が水を帯び,雪温は一冬季をとおしてほぼ0℃で経過し,温暖変態が支配的である.一方,これより気候的に寒い地域でしもざらめ雪地域でない積雪地域を乾き雪地域とした.すなわち乾き雪地域では,厳冬期には雪温が0℃以下に保たれることが多く,寒冷変態が卓越する.しもざらめ雪地域では,寒冷な上に積雪が少ないので,積雪層内の温度勾配が大きく,しもざらめ雪が発達する.湿り雪地域と乾き雪地域は気温によって,またしもざらめ雪地域は,気温と積雪量によって決まると考えた.前者は筆者らが行った中部地方の積雪調査にもとづき,1月の平均気温の気候値から推定した.すなわち,1月の平均気温が0.3℃以上の気候値をもつ地域が湿り雪地域に,-1.1℃以下が乾き雪地域に分類され,その間の気温帯は中間地域となった.また,後者は秋田谷・遠藤(1982)の判別式の変数に気候値から推定したものを代入して求めた.
著者
秋田谷 英次 成田 英器 小林 俊一 和泉 薫 対馬 勝年 石坂 雅昭 楽 鵬飛
出版者
北海道大学
雑誌
低温科学. 物理篇 (ISSN:04393538)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.51-61, 1994-03
被引用文献数
2

中国黒竜江省は冬期の降水は少なく寒冷な気候帯にある。現地で冬期間の気象観測,さらに3月には積雪調査と道路状況を視察した。その結果次の事が明かとなった。積雪が少なく寒冷なため,積雪はしもざらめ雪の発達が著しい。また,しもざらめ雪は結合力が弱いため,いったん堆積した雪が強風下で大陸性地吹雪と呼ばれる吹雪となる。この吹雪が堆積すると寒冷な気象の下で硬しもざらめ雪を形成する。近年,中国では道路交通の重要性が増したが,道路の維持管理や車の性能が冬道には不十分である。そのため,道路上の吹き溜りは量が少なくて大きな交通障害となったり,大事故の恐れがある。その対策には吹き溜り防止工,道路の維持管理および車の冬期装備を考慮しなければならない。
著者
石坂 雅昭
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.229-238, 1995-09-15 (Released:2010-02-05)
参考文献数
16
被引用文献数
13

雲粒付雪片について,落下速度を初めとする落下に関する諸物理量を,可能なかぎり同時かつ直接的に測定した.雲粒付雪片は,雲粒の付着の度合いに応じて3タイプに分けた.その結果,落下速度はLangleben (1954)の提出したV=kDn(Dは雪片の融解直径)の形に書けた.また,雲粒付きの度合いが多い雪片ほど,n,k とも大きくなる傾向もこれまでの結果と同じであった.雪片の空中での落下姿勢は,逆円錐形で落ちてくるものが最も多かった.密度σは,大きさdとともに低下し,その関係は,濃密雲粒付雪片で,σ・d0.81=0.027となり,傾向は,Magono and Nakamura (1965)の結果と同じであるが,その関係式は,彼らのσ・d2=0.02 とは異なった.雪片の質量は,どのタイプの場合も,横方向から見た断面積にほぼ比例し,最大粒径とは,およそその2乗に比例する関係が得られた.また,レイノルズ数300~2500の範囲の抵抗係数を計算によって求めることができた.値は大きくばらついたが,どのタイプも,多くは0.4から1.3の間に分布し,同じ範囲のレイノルズ数における球と円柱の抵抗係数の間の値をとり,レイノルズ数の増加とともにわずかに低下する傾向が見られた.また,これらの諸量の関係からV=kDn形の式を検討した結果,kやnの値には,抵抗係数とレイノルズ数の関係や,横方向(水平方向)の大きさと融解直径の関係を反映することがわかった.そして,後者については,雲粒が多く付いているタイプの雪片では,少ないものに比べ,融解直径の増加に対する大きさの増加が小さいこと,すなわち重くなる割に水平方向の大きさの増加が小さいことが,特に融解直径の大きい領域で終速度を大きくする要因であることがわかった.
著者
熊倉 俊郎 陸 旻皎 石坂 雅昭 田村 盛彰 山口 悟
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

季節的な大雪や強い降雪は雪国の社会生活に危険を及ぼす。これを避けるために除雪、防護柵設置、安全情報の配信などが行われているが、その際に、本来利用したいのにできないのが、雨か雪かあられかの降水種別情報である。理由は、粒子種別を正確にかつ簡易的に自動で行う機器がないためである。そこで、ここでは簡易的な雨・雪・あられの判別器を試作し、特別なデータ処理により、自動では難しいとされる雪とあられの判別率を8割にまで高めた。また、この降水種別データを用い、未解明な課題に対して新たな知見を得た。
著者
佐藤 和秀 亀田 貴雄 石井 吉之 的場 澄人 高橋 一義 石坂 雅昭 竹内 由香 横山 宏太郎 小南 靖弘 川田 邦夫 渡辺 幸 飯田 俊彰 五十嵐 誠 竹内 望
出版者
長岡工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

北海道から本州の山形県,新潟県,富山県にいたる冬期の降積雪試料を採取し,主に酸性雪に関する化学特性の解析を行い,その実態の調査研究を実施した。報告例が少ない降積雪の過酸化水素濃度に関する多くの知見が得られた。より明確な因果関係の把握にはさらなる観測調査が必要であるが,大気汚染物質あるいは積雪の主要イオン濃度,過酸化水素濃度,pH,黄砂,雪氷藻類などの間にはいくつかの相関関係が見られ,融雪水のイオンの選択的溶出も観測された。
著者
秋田谷 英次 石井 吉之 成田 英器 石川 信敬 小林 俊一 鈴木 哲 早川 典生 対馬 勝年 石坂 雅昭 楽 鵬飛 張 森
出版者
北海道大学
雑誌
低温科学. 物理篇 (ISSN:04393538)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.35-50, 1995-02

1994年3月上旬,中国黒竜江省の 1500km を車で走破し積雪と道路状況を調査し,道路雪害の実態を明らかにした。北海道と比べて寒冷ではあるが雪は極端に少なく,吹雪と吹溜の発生頻度と規模は小さい。しかし,除雪作業や車の冬期用装備がされていないため,交通量が増加すれば深刻な道路雪害となることが予想される。平地の農耕地内の道路は農地からの土砂で著しく汚れた圧雪た氷板からなり,そのため滑りの危険は小さいが,凹凸がはげしい。山地森林内の道路は汚れのすくない圧雪と氷板からなり,滑りの危険が大きい。この地方の特徴である道路に沿った並木は配置が不適当なため,吹雪の面から見ると,むしろマイナスの効果が大きい。吹雪対策としては側溝と盛り土された道路,および効果的な並木の配置がある。さらに,簡単な除雪機による吹雪直後の除雪が効果的である。山地の坂道やカーブでは滑り止めの土砂散布も必要である。
著者
早川 典生 陸 旻皎 川田 邦夫 富所 五郎 宮下 文夫 石坂 雅昭 渡辺 伸一
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1.分布型流出モデルによる松花江1998年洪水の解析松花江流域全域について、格子間隔30分の分布型流出モデルを開発し、1998年大洪水の流出解析を行い、洪水現象の発生を再現させることができた2.1 松花江流域の積雪量調査を行い、資料を収集して積雪量分布の概略を把握した。2.2 分布型モデルによる融雪流出解析松花江流域の支川,拉林河と甘河において,降水量,流量データを取得し,その分布特性を調べた.その結果,降水量分布に顕著な標高依存特性が見られた。拉林河において,格子間隔90mの分布型流出モデルを開発した。このモデルについて、降水量,流量データを取得し,洪水流出解析、融雪流出解析を行った。その結果洪水流出解析では計算流量が実測流量に比べて少なく出る傾向があった。融雪流出解析では融雪初期の流量を再現するために気温の日較差を考慮した計算手法を考案した。