著者
松田 直樹 金子 文成 稲田 亨 柴田 恵理子 小山 聡
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0499, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】運動錯覚とは,実際に運動を行っていないにも関わらず,あたかも運動が生じているような自覚的運動知覚が脳内で生じることである。近年,我々はKanekoらが報告した視覚刺激による運動錯覚を用いて,脳卒中片麻痺患者に治療的介入を実施し,急性効果を検証してきた。本研究では,発症後10年を経過した脳卒中片麻痺患者に対して,視覚刺激を用いた運動錯覚と運動イメージを組み合わせた治療的介入を実施し,上肢の自動運動可動域に急性的な変化が生じたので報告する。【方法】対象は,平成14年に被殻出血を発症した右片麻痺症例(50代男性)であった。Br. stage上肢・手指II,下肢IIIであり,表在・深部感覚は共に重度鈍麻であった。認知機能に障害はなかった。治療的介入方法は,視覚入力による運動錯覚と運動イメージの組み合わせ(IL+MI),動画観察と運動イメージの組み合わせ(OB+MI),運動イメージ単独(MI)の計3種類とし,別日に行った。IL+MIでは,視覚刺激による運動錯覚を誘起するため,事前に撮影した健側手指屈伸運動の映像を左右反転させ,麻痺側上肢の上に配置したモニタで再生し,対象者に観察させた。さらに,動画上の手指屈伸運動とタイミングが合致するように,麻痺側手指の屈伸運動を筋感覚的にイメージするよう教示した。OB+MIでは,IL+MIと同じ映像を流したモニタを,対象者の正面に設置し,観察させた。そして,IL+MIと同様に動画に合わせて運動イメージを行わせた。MIでは,麻痺側手指屈伸運動の運動イメージのみ実施させた。各治療は20分間とし,2週間以上の期間をあけて実施した。日常生活上で本人が希望することとして肘関節屈曲運動があったことから,運動機能評価として,各治療の前後に麻痺側肘関節の自動屈曲運動を実施した。肩峰,上腕骨外側上顆,尺骨茎状突起にマーカーを貼付し,対象者の前方に設置したデジタルビデオカメラによって撮影した映像から,最大肘関節屈曲角度を算出した。また,IL+MIにおいて,上腕二頭筋及び上腕三頭筋に表面筋電図を貼付し,肘関節屈曲運動中の筋活動を治療前後で記録した。さらに,ILを実施した際に,どの程度運動の意図(自分の手を動かしたくなる感覚)が生じたかを,Visual Analog Scale(0:何も感じない~100:とても強く感じる)で評価した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,研究者らが所属する大学および当院倫理委員会の承認を得て実施した。また,対象者に対しては書面にて研究の内容を説明し,同意を得た上で実施した。【結果】IL+MIでは,治療前と比較して,治療後に最大肘関節屈曲角度が増大した(治療前3.1°,治療後56.1°)。これに対し,OB+MIとMIでは治療前後で大きな変化を示さなかった(OB+MI:治療前3.6°,治療後1.2°,MI:治療前2.3°,治療後3.4°)。また,IL+MI後においては,治療前後で上腕二頭筋の筋活動の増加が確認された。さらに,IL中にはVisual Analog Scaleで98と強い運動の意図が生じた。IL+MI後には,対象者から「力の入れ方を思い出した」という内観が得られた。【考察】本症例においては,OB+MI及びMIでは自動運動可動域に変化が生じなかったのに対し,IL+MIでは自動運動可動域が拡大した。このことから,視覚刺激により運動錯覚が生じたことが,自動運動可動域の改善に寄与した可能性があると考える。本研究では,手指の運動錯覚により上腕の筋に急性効果が生じた。Kanekoらは,視覚刺激による運動錯覚中に補足運動野・運動前野の賦活が生じることを報告している。高次運動野は一次運動野と比較して体部位局在の影響が少ないことから,本研究においては,手指の運動錯覚に伴う高次運動野の賦活が上腕の運動機能に影響を与えた可能性があるものと推察する。以上より,本研究では視覚刺激による運動錯覚と運動イメージを組み合わせた治療的介入が,脳卒中片麻痺患者における上肢の自動運動可動域に対して,急性的な変化を生じさせる可能性が示された。【理学療法学研究としての意義】本研究は,視覚刺激による運動錯覚と運動イメージの組み合わせが,慢性期脳卒中患者の運動機能に対して,急性的な変化を生じさせることを示した最初の報告である。本研究で用いた治療方法は,非侵襲的かつ簡便であり,本研究は理学療法における新たな治療方法の開発という点で意義深いといえる。
著者
松井 太樹 小山 聡 栗原 正仁
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回全国大会(2018)
巻号頁・発行日
pp.4Pin106, 2018 (Released:2018-07-30)

近年、深層強化学習が人工知能研究者の関心を集めている。深層強化学習とは深層学習と強化学習を組み合わせた手法であり、強化学習で用いる関数を深層学習で近似することで、3Dビデオゲームのピクセルのような複雑な環境を用いて学習を行うことが可能となった。しかし、このような学習はときより、少しの入力されたピクセルの差によりエージェントの行動が全く異なるものとなる、といったような問題に直面することがある。本研究ではこのような問題に対して、3D仮想空間Minecraft内のエージェントの視野の方向に着目して深層強化学習に与える影響を分析した。
著者
小山 聡子
出版者
慶應義塾大学藝文学会
雑誌
芸文研究 (ISSN:04351630)
巻号頁・発行日
no.89, pp.251-234, 2005

立仙順朗教授退任記念論文集はじめにI フィオレンティーノの舞踊観II バレエ=パントマイムの実状と、それに対するフィオレンティーノの反論III フィオレンティーノによるダンス描写とバレエ史における価値IV フィオレンティーノの舞踊評の惜しまれる点結び
著者
鈴木 雅大 佐藤 晴彦 小山 聡 栗原 正仁 松尾 豊
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.1499-1513, 2016-05-15

ゼロショット学習は,1度も学習したことのないカテゴリの画像を,補助情報を頼りに分類する手法である.ゼロショット学習を実現する様々な手法の中でも,補助情報に属性を用いた属性ベースゼロショット学習が最もよく知られている.しかし既存研究では,各属性の画像特徴量への現れやすさを考慮していなかった.本稿ではこのような度合いを属性ごとの観測確率と呼び,観測確率を含めた新たなモデルを提案した.そして提案したモデルの妥当性の検証および既存研究との比較実験によって,提案手法が既存手法と比較して有効性の高いモデルであることを示す.
著者
小山 聡 石田 亨
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.1266-1274, 2001-08-01
被引用文献数
5

本論文では, モバイル環境におけるWeb情報の活用に適した新しいインタフェースとして, 情報ナビゲーションエージェントを提案する. これまでの情報検索システムは, 検索結果のユーザへの表示とそれに基づくクエリの変更を通して多くの情報をいかに絞り込んでいくかが中心的課題であり, デスクトップ環境での利用に適した方法であった. それに対して我々のエージェントは, 検索対象の属性の制約条件を用いて近似解を生成し, ユーザとの対話を通して情報を得ることにより, 漸近的により良い情報へとナビゲートしていくことができる. その際に, エージェントがキーワード間の連想ルールを用いて検索条件の解決と新たな検索条件の追加を行う手法を提案した. また, 連想ルールを不用意に用いるとナビゲーションの失敗を導くため, 統計的検定とグラフ構造の解析を用いた連想ルールの精錬を行うことを提案し, その有効性を確認した.
著者
小山 聡 馬場 雪乃 大向 一輝 堂腰 裕明 鹿島 久嗣
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.182, pp.1-6, 2014-08-20

多くの国々においてオープンデータめ取組みが進んでおり,様々な統計データが行政等によって公開されている.しかしこれらのデータは画像やPDFの形式で与えられるものが少なくなく,分析やサービスの開発などでの再利用を妨げている.そこで,クラウドソーシングを用いて,画像として与えられたレガシーな統計データを機械可読な表形式に変換する枠組みを提案する.その際,作業者に表だけを作成させるのではなく,画像をスプレッドシート上でグラフとして視覚的に再現させるタスク設計を行った.このタスク設計により,データの誤りに気付き易くなる効果に加えて,再現されたグラフオブジェクトのプロパティとして項目名や系列といったデータの構造を容易に取り出し,作業結果の統合や品質管理に利用することが可能となる.国土交通省が公開している観光白書を対象に評価実験を行い,提案手法の有効性を検証した.
著者
小山 聡子
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.17-31, 2011-08-31

ミクロレベルのソーシャルワークや心理臨床アプローチに寄せられる各種の批判を踏まえて,社会福祉教育における相談援助演習がそのカリキュラム冒頭で強調する「自己理解と他者理解」「他者とのコミュニケーション能力」等の涵養につき,今後のあり方を探るため,(1)各接批判動向を整理し,(2)ソーシャルワーク教育に果たす演劇的手法の意味を確認したうえで,(3)A女子大学社会福祉学科人間関係コース導入授業で演劇的手法を取り入れたグループワーク実践の結果を分析した.社会構成主義,障害理解の社会モデル,臨床心理批判等を踏まえるなら,導入の授業場面で起こった,(1)認知と体感の統合,(2)評価なしの空間における自由な振る舞いの発見を,単に個々人の気づきや変容志向のみに還元しないことが重要である.演劇的手法を取り入れたグループワークが,大局ではソフトな集団管理と価値の押しつけにならないよう,変わるべき制度のあり方とセットで論じることをはじめとする教育実践への示唆を得ることができた.
著者
三木 康暉 佐藤 晴彦 小山 聡 栗原 正仁
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.27, 2013

本発表では、クラウドソーシングを用いてゲームレベルの設計を効率的に行うシステムを提案する。ゲームのステージをインターネット上のワーカーに配信し収集したプレイログから、ステージの難易度を判定し、ユーザーに適切なゲームレベルを構築する方式を開発する。
著者
和田 由紀子 小山 聡子 本間 昭子 松岡 長子 葛綿 隆子 桑野 タイ子
出版者
新潟青陵大学・新潟青陵大学短期大学部
雑誌
新潟青陵大学紀要 (ISSN:13461737)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.209-218, 2004-03-10
被引用文献数
2

本研究では、経験を通して習得する「看護業務の作業効率を高める要因」を明らかにすることを目的として、臨床における看護業務を作業の順序性・効率性・連続性の視点からそのすすめ方の実際を調査し検討した。対象は経験年数18年目と21年目の看護師各1名であり、休日と平日の8:30から11:30までの全行動について、VTRとチェックリストで連続的に撮影し記録した。病棟内各場所への移動、受け持ち患者間の移動及び看護業務を実施する順序性等について検討したところ、両者に情報収集に関する移動、頻度、時間、活用等で差異が認められた。今後、さらに質的検討を加えることにより看護業務を計画的かつ効率的にすすめる教育訓練に役立てられることが示唆された。
著者
田中 克己 チャットウィチェンチャイ ソムチャイ 田島 敬史 小山 聡 中村 聡史 手塚 太郎 ヤトフト アダム 大島 裕明
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

ウエブからの同位語等の概念知識の抽出,ウエブ検索クエリの意図推定・自動質問修正,ウエブ情報の信憑性分析,ユーザインタラクションやウエブ1.0情報とウエブ2.0情報の相互補完による検索精度改善に関する技術開発を行った.
著者
大島 裕明 小山 聡 田中 克己
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告データベースシステム(DBS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.72, pp.345-351, 2004-07-14
被引用文献数
2

個人のコンピュータには,その個人がどのような知識を持っているか,どのような考え方をしているか,ということが分かる情報が含まれている.しかし,それらはコンピュータに利用できるような状態にはなっていない.現在,さまざまな分野でシソーラスのような一般的な概念体系が用いられているが,個人のコンピュータに存在するコンテンツから個人的な概念体系が作成されれば,さまざまな分野におけるパーソナライザーションが可能になる.本稿では,個人コンピュータに存在する文書とその分類の方法から,個人的な概念体系を作成する手法について提案を行い,作成された個人的な概念体系を用いてウェブ情報検索におけるパーソナライゼーションを行う手法について提案を行う.A personal computer has a lot of documents. Those include much information that shows what the user is interested in, knows, and so on. However, the computer just has the information and it can not be used automatically. Now, common concept classification like thesaurus is used in many fields, so if the personal concept classification is created automatically based on the personal contents in the personal computer, it will be possible to be personalized in many fields. In this paper, we propose the way to create the personal concept classification from the personal contents and the method of the Web search personalization.
著者
小谷 彬 大島 裕明 小山 聡 田中 克己
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DE, データ工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.149, pp.35-40, 2006-07-06

Webサイトには効率よく必要な情報を得るために,サイトマップが存在し,そのサイトの構造や内容に基づいて情報が整理され提示されている.ユーザにとっては,それが複数のWebサイト間で同様の形式で整理されていることが望ましい.なぜなら類似したWebサイト間において,共通の項目に関するページを比較して閲覧することは,ユーザにとって負担であり困難でもあるからである.そこで我々は複数のWebサイト間における共通属性を抽出し,その共通属性の各属性に該当するWebページを抽出する手法を提案する.その結果,複数のWebサイトに共通のサイトマップが生成できることになる.共通属性抽出においては,属性を一語で表すための手法について述べ,さらに属性間の階層化や類似属性の統合のために,複数の語で属性を現す属性拡張の手法についても述べる.