著者
小林 徹也 杉山 友規
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.287-290, 2017 (Released:2017-11-30)
参考文献数
19

The adaptability to ever-changing environment is one of the fundamental characteristics that differentiates living matters from non-living ones. The combination of passive adaptation by Darwinian evolution and active adaptation by sensing and decision-making shapes the mechanisms of adaptability. In this work, we outline that the biological adaptation shares a very similar structure with the stochastic and information-thermodynamics. Fitness, the macroscopic quantity to characterize evolutionary success, plays the similar role as the free energy in this structure. The fluctuation relation of fitness and information derived from the structure can be regarded as an extension of the concept of the evolutionary stable strategy.
著者
小林 徹也
出版者
物性研究・電子版 編集委員会
雑誌
物性研究・電子版
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, 2017-11

第61回物性若手夏の学校 集中ゼミ一般の物理系と異なり、細胞や個体などの生物集団は、自己の状態を変異させ、また自身の複製を生成することで増殖をすることができる。この変異と増殖のダイナミクスは生命進化を司る基本過程であり、その理解は非生物系と生物系の共通構造および本質的な差異を解明するためにも必須である。また、生物系は積極的に環境の情報を内部に取り込みそれを処理することにより、集団としての適応度(増殖率)を制御することができる。適応度と情報の関係を理解することは、我々の脳のような高度な情報処理機構が進化の過程でどのように選択されてきたのかを明らかにするためにも重要である。この問題に関し、本発表では増殖過程の有する数理構造に着目する。具体的には、増殖ダイナミクスの経路積分表現とそれに伴う遡及的表現を導入することにより、増殖過程に内在する統計物理的構造を明らかにする。この構造を用いることにより、確率熱力学と同様に、増殖集団の適応度などのマクロな諸量に成り立つゆらぎ関係を示す。また、この表現を活用することで、適応度と情報に成り立つ交換関係を、統一的に明らかにする。これらの生物学的な意義を議論するとともに、進化の問題への他の物理的アプローチの可能性についても言及をする。
著者
小林 徹也 上村 淳
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.086-089, 2013 (Released:2013-03-28)
参考文献数
20

Biological systems can operate robustly even with substantial stochasticity in their components. One possible but not yet proven mechanism to implement robust operation with noisy components is that relevant information for robust control is embedded in apparently stochastic signals. In this work, by employing Bayesian theory, we theoretically show that intracellular reactions with specific structures can implement statistically optimal dynamics to decode (extract) the relevant information embedded (encoded) within the apparently noisy signal. We also demonstrate that the decoding dynamics is related to a noise-induced transition, implying that optimal dynamics to suppress noise behaves as if exploiting noise for signal amplification.
著者
岡田 康志 松岡 里実 石島 秋彦 伊藤 創祐 川口 喬吾 池崎 圭吾 澤井 哲 佐々 真一 神原 丈敏 榎 佐和子 竹内 一将 猪股 秀彦 沙川 貴大 青木 一洋 小林 徹也 中島 昭彦 福岡 創
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2019-06-28

本領域は、生命現象を分子レベルから定量的に計測する技術の発展と、非平衡系の統計力学・情報熱力学理論の深化を背景とした、両者の融合領域である。生命現象の理解という具体的な課題に対して「情報を力、エネルギーと同列に物理的対象として議論する新しい物理学」を構築することで、生物学と物理学の間の新たな学際領域を開拓する。この目的を達成するために、本総括班は、領域内での生物系の実験研究と物理系の理論研究の学際融合研究を推進する
著者
小林 徹也 宮崎 彰 松澤 篤史 黒木 美一 島村 智子 吉田 徹志 山本 由徳
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.10-15, 2010 (Released:2010-02-12)
参考文献数
8
被引用文献数
3 1

ウコンおよびハルウコンの根茎におけるクルクミンの蓄積経過を調査した.ウコンにおいてクルクミン含有率は種イモで最も高く,次に2次分岐根茎,1次分岐根茎,主根茎,3次分岐根茎であり,地上部および根にはほとんど含まれていなかった.ウコンおよびハルウコンを5月に植付けると,種イモの乾物重は7月にかけて減少し,1次分岐根茎重は9月から11月にかけて急激に増加した.特にハルウコンでは9月から10月の生育中期に,ウコンでは生育中期(2006年)または10月から11月の生育後期(2007年)に根茎生長が最も盛んであった.ウコンにおいて種イモのクルクミン含有率は乾物重の減少に伴い増加し,1次分岐根茎より高濃度となった.1次分岐根茎のクルクミン含有率は9月から10月の根茎形成直後に増加したが,10月から11月の根茎肥大期にほとんど増加しないかやや減少した.一方,ハルウコンのクルクミン含有率は種イモにおいて5月から11月まで緩やかに増加したが,1次分岐根茎において9月から10月の根茎形成直後に有意に減少した.このようなクルクミン含有率の減少の結果,成熟期のクルクミン含有量(含有率×乾物重)はウコンに比べハルウコンで有意に低くなった.株当たりのクルクミン含有量は根茎収量の増加に伴い増加し,クルクミン含有量の増加のためには根茎収量の増加が重要であることが示唆された.貯蔵期間中のクルクミン含有率はウコンおよびハルウコンともほとんど変化しなかった.
著者
石岡 将樹 菊地 淳志 小林 徹也
出版者
北日本病害虫研究会
雑誌
北日本病害虫研究会報 (ISSN:0368623X)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.55, pp.143-145, 2004-12-15 (Released:2011-08-11)
参考文献数
10

アカヒゲホソミドリカスミカメの飛翔に及ぼす温度の影響を宙吊り飛翔法により解析した. 雌では, 25, 19, 16℃ と飛翔時の温度が低下するにつれて, 飛翔回数と最長飛翔時間, 積算飛翔時間が減少し, 25℃と16℃ との間では有意な差が認められた. 最長飛翔時間か ら, 16℃では長距離の飛翔は行われないと考えられる. 雄では, 有意差は認められないものの, 最長飛翔時間と積算飛翔時間は低い温度で低下する傾向があった.
著者
小林 徹也
出版者
茨城県立竜ヶ崎第一高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

1. 研究目的 : 高校生に考える力をつけるため, 数学の問題を解く際「結論から仮定へ」の推論をより利用させることを目標とし, 今回その推論を「解析」とし, 次の2つの解明を目的とした.A : 「解析」をその意識的な指導, 方向, 機能および名称に着目して整理することB : 高校生の「解析」の利用がどのようなものであるか同定すること.2. 研究方法 : 上記Aについては「解析」に関する国内外の先行研究を検討し, Bについては生徒へのアンケートを分析した.3. 研究成果 : 以下のことなどが明らかになった。Aについて :(1)「解析」指導については意識的に指導されているが限定的であること.(2)「解析」には3つの方向性と4つの機能が存在すること.(3)我が国では, 結論を得るために仮定の方に遡る推論の方向と, 解を発見する機能へ着目することが多かったこと.(4)「解析」に対して統一した名称がないこと.Bについて :(1)数学の問題の解答を分析した結果, 生徒は問題を解く際に, 誤った「解析」をすることがあり, それは公式や定理の記憶違い・適用の誤り・計算違い等であること.(2)数学の問題の解答を分析した結果, 正しい解析によって別解を作る例が存在したこと.(3)アンケートの分析により, 解析をどのように有効性を認識したかについては, 学校の指導よりも自分で気づいたとする割合が多いこと,(4)アンケートの分析により, 調査における決定問題を解く際に解析をしたとする生徒が少ないこと.4. 今後の課題 : 以上の成果を活かした授業実践研究が課題である.