- 著者
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山口 勇
関戸 茂子
見里 朝正
- 出版者
- 日本農薬学会
- 雑誌
- 日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, no.4, pp.523-529, 1982-11-20
- 被引用文献数
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7
殺菌性抗いもち剤およびプロベナゾールは, いもち病菌の色素合成(黒色化)に影響を与えなかったが, トリシクラゾール, CGA 49104, フサライド, ペンタクロロベンジルアルコール(PCBA)は菌系によるポリケタイド系のメラニン生合成を阻害または攪乱し, 中間体 : シタロンおよび代謝物 : 2-ヒドロキシジュグロン(2-HJ, 黄色色素)を共通に蓄積した.ただ, フサライドとPCBAはフラビオリン赤色色素の蓄積にはあまり影響しなかった.これら薬剤のセロハン膜法による付着器からの侵入阻害は葉鞘検定の結果とよく一致し, 薬剤の一次作用点が宿主側よりは菌側にあることを示唆した.また, これら薬剤は, いもち病菌付着器の黒化も抑制するが, トリシクラゾール, CGA 49104の存在下にメラニン合成の後期中間体 : バーメロンまたは1, 8-ジヒドロキシナフタレンを添加すると, 付着器からセロハン膜への穿入回復は明瞭でなかったものの, 着色阻害は完全に回復した.一方, 2-HJとシタロンは, いもち病菌の感染過程に影響することが認められ, メラニン合成阻害に基づく付着器の未熟に加えて生理活性中間体の蓄積も薬剤の有効性に関与している可能性が考えられた.