著者
中野 敦行 山口 昌樹
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究 (ISSN:03861856)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.3-9, 2011-04-25 (Released:2017-05-23)
被引用文献数
15

唾液アミラーゼ活性(SAA)は,血漿ノルエピネフリン濃度と相関が高いことが良く知られており,ストレス評価における交感神経の指標として利用されている.ストレス研究への利用を目的として,本研究者らは携帯型の唾液アミラーゼモニターを実用化した.このバイオセンサは,使い捨て式のテストストリップと,唾液転写機構を備えた本体(130×87×40mm^3;190g)で構成されている.分析時間は1分ほどで,迅速なSAAの分析が可能である.本論文は,ストレッサーと唾液アミラーゼの変化量の関連性を定量的に示すことで,エビデンスの構築に資することを目的としている.今まで報告されてきた事例研究のデータを用い,ストレッサーを精神的なストレッサー,精神的・肉体的双方のストレッサー(心身ストレッサー),肉体的なストレッサーに分類した.ストレッサーに起因する唾液アミラーゼ活性の変化量を算出し,ストレッサーの種類で比較した.唾液アミラーゼは,その感度が鋭敏なことから,快・不快の判別が可能であることが示された.特に,急性のストレス評価に有効であると考えられた.このバイオセンサは,測定自体がストレスとなることなく,非侵襲,即時,随時,簡便なストレス計測手法として有効である.
著者
山口 昌樹
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.129, no.2, pp.80-84, 2007 (Released:2007-02-14)
参考文献数
18
被引用文献数
31 26 14

厚生労働省の人口動態統計資料によると,1977年から1997年までは年間20,000-25,000人で推移していた自殺者数は,1998年に一気に年間3万人を越え,それ以降3万人前後で推移している.このことからも,自殺に至る一因であるストレスが原因の神経精神疾患は,既に深刻な社会問題となったことが窺われる.さらに,ストレスは,神経精神疾患以外にも生活習慣病など様々な疾患の引き金のひとつと考えられている.そこで,ストレスの状態を遺伝子レベルで診断し,疾患の予防や治療につなげようとする試みが始まっている(1).これは,慢性ストレスの検査と言い換えることができよう.一方で,疾患の前段階,すなわち人が日常生活で感じているストレスの大きさを客観的に把握する試みもなされている.その目的のひとつは,自らのストレス耐性やストレスの状態をある程度知ることによって,うつ病や慢性疲労症候群などの発症を水際で食い止めようという予防医療である.もうひとつは,五感センシングが挙げられる.独自の価値観で快適性を積極的に追求する人が増えてきており,それと呼応するように,快適さを新しい付加価値とした製品やサービスが,あらゆる産業分野で創出されている(2).消費者と生産者の何れもが,味覚や嗅覚を定量的に知ることよりも,それらの刺激で人にどのような感情が引き起こされるかということ(五感センシング)に興味がある.これを可能にするためのアプローチのひとつが,唾液に含まれるバイオマーカーを用いた定量的なストレス検査である.これらは,急性ストレスの検査が中心的なターゲットといえよう.ストレスとは,その用語が意味する範囲が広く,研究者によっても様々な捉われ方,使われ方がなされていることが,かえって混乱を招いているようだ.代表的な肉体的ストレスである運動とバイオマーカーの関係については,これまでに様々な報告がなされている(3).筆者が注目しているのは,主として精神的ストレスであり,人の快・不快の感情に伴って変動し,かつ急性(一過性)もしくは慢性的に生体に現れるストレス反応である.ここでは,唾液で分析できるバイオマーカーを中心に,このようなストレス検査の可能性について述べてみたい.
著者
山口 昌樹 金森 貴裕 金丸 正史 水野 康文 吉田 博
出版者
一般社団法人 日本生体医工学会
雑誌
医用電子と生体工学 (ISSN:00213292)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.234-239, 2001 (Released:2011-10-14)
参考文献数
15
被引用文献数
17

It is more than a half-century since Dr. Hans Selye proposed that the reaction to an external stimulus to a human be called a “stress.” However, an index that can quantitatively evaluate the stress has not yet been established. We have focused on the change of α-amylase activity in saliva (salivary amylase) and carried out an in vivo evaluation in six normal subjects to define the levels of mental stress through amylase activity. In this evaluation, the Kraepelin Psychodiagnostic Test was used as a mental stressor for the subjects. In normal subjects, a comparatively quick response was observed by the experiment for stress load, which verified a correlation between mental stress and salivary amylase activity. The sign of gradient calculated from the salivary amylase activity was negative or positive, depending on whether the stress reaction is comfortable. Furthermore, when the salivary amylase activity and salivary total protein were measured, the effect of the salivary flow rate could be estimated. The change of salivary amylase activity was confirmed as being originated from stress. These results suggest that the monitoring of salivary amylase could be used as a noninvasive indicator of stress reaction.
著者
山口 昌樹
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.82, no.8, pp.731-734, 2016-08-05 (Released:2016-08-05)
参考文献数
14
著者
山口 昌樹
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.129, no.2, pp.80-84, 2007
被引用文献数
25 26

厚生労働省の人口動態統計資料によると,1977年から1997年までは年間20,000-25,000人で推移していた自殺者数は,1998年に一気に年間3万人を越え,それ以降3万人前後で推移している.このことからも,自殺に至る一因であるストレスが原因の神経精神疾患は,既に深刻な社会問題となったことが窺われる.さらに,ストレスは,神経精神疾患以外にも生活習慣病など様々な疾患の引き金のひとつと考えられている.そこで,ストレスの状態を遺伝子レベルで診断し,疾患の予防や治療につなげようとする試みが始まっている(1).これは,慢性ストレスの検査と言い換えることができよう.一方で,疾患の前段階,すなわち人が日常生活で感じているストレスの大きさを客観的に把握する試みもなされている.その目的のひとつは,自らのストレス耐性やストレスの状態をある程度知ることによって,うつ病や慢性疲労症候群などの発症を水際で食い止めようという予防医療である.もうひとつは,五感センシングが挙げられる.独自の価値観で快適性を積極的に追求する人が増えてきており,それと呼応するように,快適さを新しい付加価値とした製品やサービスが,あらゆる産業分野で創出されている(2).消費者と生産者の何れもが,味覚や嗅覚を定量的に知ることよりも,それらの刺激で人にどのような感情が引き起こされるかということ(五感センシング)に興味がある.これを可能にするためのアプローチのひとつが,唾液に含まれるバイオマーカーを用いた定量的なストレス検査である.これらは,急性ストレスの検査が中心的なターゲットといえよう.ストレスとは,その用語が意味する範囲が広く,研究者によっても様々な捉われ方,使われ方がなされていることが,かえって混乱を招いているようだ.代表的な肉体的ストレスである運動とバイオマーカーの関係については,これまでに様々な報告がなされている(3).筆者が注目しているのは,主として精神的ストレスであり,人の快・不快の感情に伴って変動し,かつ急性(一過性)もしくは慢性的に生体に現れるストレス反応である.ここでは,唾液で分析できるバイオマーカーを中心に,このようなストレス検査の可能性について述べてみたい.<br>
著者
中野 敦行 山口 昌樹
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究 (ISSN:03861856)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.3-9, 2011-04-25
被引用文献数
1

唾液アミラーゼ活性(SAA)は,血漿ノルエピネフリン濃度と相関が高いことが良く知られており,ストレス評価における交感神経の指標として利用されている.ストレス研究への利用を目的として,本研究者らは携帯型の唾液アミラーゼモニターを実用化した.このバイオセンサは,使い捨て式のテストストリップと,唾液転写機構を備えた本体(130×87×40mm^3;190g)で構成されている.分析時間は1分ほどで,迅速なSAAの分析が可能である.本論文は,ストレッサーと唾液アミラーゼの変化量の関連性を定量的に示すことで,エビデンスの構築に資することを目的としている.今まで報告されてきた事例研究のデータを用い,ストレッサーを精神的なストレッサー,精神的・肉体的双方のストレッサー(心身ストレッサー),肉体的なストレッサーに分類した.ストレッサーに起因する唾液アミラーゼ活性の変化量を算出し,ストレッサーの種類で比較した.唾液アミラーゼは,その感度が鋭敏なことから,快・不快の判別が可能であることが示された.特に,急性のストレス評価に有効であると考えられた.このバイオセンサは,測定自体がストレスとなることなく,非侵襲,即時,随時,簡便なストレス計測手法として有効である.

1 0 0 0 唾液は語る

著者
山口昌樹 高井規安共著
出版者
工業調査会
巻号頁・発行日
2004
著者
花輪 尚子 才木 祐司 山口 昌樹
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.49-56, 2008-02-25 (Released:2017-07-28)
参考文献数
24
被引用文献数
2

The purpose of this study is to evaluate the sedative effect of fragrances which have existed in Japan since long time ago such as sakura, ume and fuji. 17 healthy female Japanese subjects were enrolled (21.5±1.3yr). The salivary amylase activity (sAMY) was analyzed during the inhalation of fragrance. Using questionnaire, subjective evaluation was conducted. aAMY was significantly lower during inhalation of fragrance than control. Inhalation of fragrance affected subjects' work performance. Our results indicated that the Japanese fragrances induced the effect in Japanese females, as assessed by both analysis of sAMY and work performance.
著者
中野 敦行 長山 優 山口 昌樹
出版者
ライフサポート学会
雑誌
ライフサポート (ISSN:13419455)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.63-67, 2013-08-10 (Released:2014-10-22)
参考文献数
20

The purpose of this research is to demonstrate the influence of odor to physiological reaction when a subject’s experience is taken into consideration as a factor. Ten normal Japanese adult male (22.1 ± 1.1 years, mean ± SD) were enrolled. A mixture of spices including coriander, fenugreek, and cumin by the same ratio was used as the standard sample. Commercially available curry powder was used as the excellent sample. Three salivary biomarkers such as amylase, orexin, and β-endorphin were measured during baseline, inhalation and post-inhalation periods. Our results indicated that (i) change of the salivary orexin levels by inhalarion of spice was agreed with the result of subjective evaluation, (ii) the excellent sample showed more remarkable changes in physiology reaction than that of the standard sample. It was thought that a functional spice which it not only backs up delicacy, but have an effect which pulls out sensitivity may be designed.
著者
山口 昌樹 花輪 尚子 吉田 博
出版者
社団法人日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 : 日本エム・イー学会誌 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.161-168, 2007-06-10
参考文献数
26
被引用文献数
28

In order to realize a novel handheld monitor for the sympathetic nervous system, we fabricated an analytical system for salivary amylase activity (sAMY) using a dry-chemistry system called a"Cocoro Meter." The device to quantify sAMY using an activity rate method was completely automated. This method was made possible by the fabrication of a disposable test-strip equipped with built-in salivacollecting and reagent papers, and an automatic saliva transfer mechanism. Within a range of sAMY between 0-200 kU/l, the calibration curve for the monitor showed a coefficient of R^2=0.988 and CV (coefficient of variation) of 10.2%. The reproducibility between devices was within 10%. Moreover, it was demonstrated that : (i) the quantitativity of the sample collected by the test-strip was sufficient, (ii) the sublingual area was suitable as the sampling site of the saliva, and (iii) 30 s was sufficient for saliva sampling. Considering all of these effects including the saliva sampling site, a 12.1% CV was obtained for this monitor. A total of 1 min was sufficient to analyze the sAMY. Thus, this study demonstrated that the monitor might be used as a good index for psychological research.
著者
山口 昌樹 大向 一輝
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.137, no.2, pp.310-316, 2017-02-01 (Released:2017-02-01)
参考文献数
29

Modern society has seen a tremendous growth in the amount of digital data, however a database for human stress currently is not prevalent. Additionally, diagnostic criteria based on evidence, quantitative scales have not been fully established for stress. The purpose of this research is to provide visually presentation method of stress evidence paper in conjunction with web article in order to help people understand and overcome their stress. We propose a stress evidence search engine named “Kokoronoma” incorporated with i) a rate of evidence which express the relationship between the web article and the scientific paper, ii) human machine interface to show the rate of evidence visually. The fabricated stress evidence search engine was evaluated by the 10 young male users to compare with a multipurpose search engine as Google and Google Scholar. Three kinds of search problem as serotonin, mood disorder, and depression were used for the evaluation. As the results, Stress evidence paper and the rate of evidence were showed in conjunction with web article, automatically. The scores of subjective evaluation of the stress evidence search engine for visible observation images, intuitive awareness, and un-complicatedness showed higher than that of the multipurpose search engine. It was considered that the fabricated stress evidence search engine has an effective in reducing the stress of user.
著者
山口 昌樹 花輪 尚子 吉田 博
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.161-168, 2007 (Released:2008-08-08)
参考文献数
26
被引用文献数
10

In order to realize a novel handheld monitor for the sympathetic nervous system, we fabricated an analytical system for salivary amylase activity (sAMY) using a dry-chemistry system called a “Cocoro Meter.” The device to quantify sAMY using an activity rate method was completely automated. This method was made possible by the fabrication of a disposable test-strip equipped with built-in salivacollecting and reagent papers, and an automatic saliva transfer mechanism. Within a range of sAMY between 0-200 kU/l, the calibration curve for the monitor showed a coefficient of R2=0.988 and CV (coefficient of variation) of 10.2%. The reproducibility between devices was within 10%. Moreover, it was demonstrated that: (i) the quantitativity of the sample collected by the test-strip was sufficient, (ii) the sublingual area was suitable as the sampling site of the saliva, and (iii) 30 s was sufficient for saliva sampling. Considering all of these effects including the saliva sampling site, a 12.1% CV was obtained for this monitor. A total of 1 min was sufficient to analyze the sAMY. Thus, this study demonstrated that the monitor might be used as a good index for psychological research.
著者
村上 満 田原 祐助 竹田 一則 山口 昌樹
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.166-171, 2009-04-10 (Released:2009-09-09)
参考文献数
23
被引用文献数
3

Saliva sampling has some advantages that it is non-invasive, making multiple sampling easy and stress free. The purpose of this study is to evaluate the usefulness of salivary alpha (α) -amylase (sAA) as psychosomatic stress indexes in junior high school students. Seventy healthy (not non-attendance at school) subjects in first-year junior high school students were enrolled (12-13 yr). The sAA in the morning, daytime and early-evening were analyzed for 3 days. General Health Questionnaire (GHQ) -28 and State-Trait Anxiety Inventory (STAI) were conducted as mental health indexes, the all subjects divided two groups; high and low. High stress groups either GHQ-28 (social dysfunction) or STAI (state anxiety) showed significantly high sAA compared with those of low stress groups. The multiple regression analysis using sAA as dependent variable had applied between sAA and both mental health indexes. Although, there was no significance in low stress groups, a causal relationship was found in high stress groups. These results suggested that sAA is useful index for screening of healthy human not having especially psychosomatic stress but havingthe risk before being bad mental conditions such as a state of depression. The sAA might be a useful screening method for preventing to be a non-attendance at school.