- 著者
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井田 喜明
山岡 耕春
渡辺 秀文
- 出版者
- 東京大学地震研究所
- 雑誌
- 東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
- 巻号頁・発行日
- vol.63, no.2, pp.183-200, 1988-11-11
伊豆大島火山の山頂火口で,1986年12月以後に発生した3回の小噴火について,その発生機構を考察し,以下のモデルを提案する.伊豆大島火山の北西山腹の地下には,約5kmの深さにマグマだまりが存在する.1986年11月の山頂噴火と割れ目噴火では,マグマだまりの圧力が高まり,そこからマグマが上昇した.その後伊豆大島火山ではマグマの後退が進行し,そのような状況下で,12月以後の小噴火が発生した.マグマの後退は,火道内に空洞をつくり,同時にマグマの圧力を低下させて,水蒸気の発泡を促進する.1987年11月16日の噴火前には,長い前駆期間を通じて,水蒸気の発泡,移動と,火道上部におけるその蓄積が進行した.水蒸気の発生,上昇過程は,火山性微動を生み,空洞に蓄積された水蒸気の高まりは,地震と噴気の活動を活発化した.十分に高まった水蒸気圧は,最終的には,噴火と対応する爆発を起こすに至った.一方,1986年12月18日と1987年11月18日の噴火では,マグマの後退のために生じた火道内の空洞が,重力不安定で崩壊した.旧火口内部にたまっていたマグマは,3回の小噴火で段階的に地下に逆流した.逆流は,1987年11月18日の噴火のときが最も顕著で,その効果は,火道を伝わってマグマだまりの圧力を急激に高め,伊豆大島内外の傾斜や体積歪に,系統的な変化をもたらした.