著者
小口 高 山田 育穂 早川 裕弌 河本 大地 齋藤 仁
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

日本地球惑星科学連合(以下連合と記す)には、2005年の発足時から地理学に関連する学会が団体会員として参加している。2019年2月の時点において、連合の50の団体会員のうち学会名に地理の語を含む学会が6つある。他に学会の英語名に Geographical を含む学会や、地理学と関連が深い地図学や地形学の学会なども参加しており、地理学は連合の中で一定の役割を果たしている。特に、連合の地球人間圏セクションでは地理学の研究者が主体的に活動している。一方、地理学関連の諸学会の会員の中で、連合の大会や活動に参加している人の比率は低い。この理由として、地理学者の過半を占める人文地理学者が理系色の強い連合に親近感を持たないことや、各学会が独自の春季大会等を行っており、連合大会と重複感があることなどが挙げられる。しかし、連合と地理学が強く結びつくことは、双方にとってメリットがあると考える。近年、文科省などが科学における文理連携・融合を重視しているため、連合の活動を理系の研究以外にも広げることが望ましいが、この際には文理の連携を長年実践してきた地理学が貢献できる。一方、2022年度に高等学校の地歴科で必修となる新科目「地理総合」において、自然災害や地球環境問題が重視されていることに象徴されるように、地理学の関係者が地球科学の素養を高める必要も生じている。本発表では、連合と地理学が連携しつつ発展していくための検討を行う。発表者は連合大会に継続的に参加している3世代の自然地理学者、人文地理学者、および修士まで工学を学んだ後に地理学のPhDとなった研究者の5名であり、多様な側面からの考察を試みる。
著者
仁平 裕太 山田 育穂 関口 達也
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2017年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100228, 2017 (Released:2017-05-03)

近年の日本では,緑被率に代わり,緑視率が人の意識に与える影響についての注目が高まってきている.特に,建物が密集する都心部において緑を確保することの重要性は高く,実際に,緑の基本計画に緑視率向上の政策が示されている自治体も存在する.また,緑視率が人に与える影響についての研究も複数存在するが,植生の配置が人々の意識に与える影響を充分に評価できているとは言いがたい.そこで本稿では,都市部における植生の量・配置を定量的に指標化し,人々の景観に対する主観的評価に与える影響を分析する.そして、得られた知見を適切な植生配置の一助とすることを目的とする.重回帰分析を用いて植生の量と配置が人々の評価に与える影響について分析した結果,目線上部にある植生は,高評価につながることが示された.つまり,植生を多く配置できない場合,中木や高木を中心に植栽を整備する方が景観上好ましいことが示唆された.
著者
山田 育穂 岡部 篤行
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.923-928, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
10

空間自己相関は,地域の空間的な近接性と属性的な類似性との関連を示す概念であり,都市空間で発生する事象の空間分布やその背景にあるプロセスを理解するうえで,重要な役割を担っている.MoranのI統計量は,地区データの空間自己相関を扱う際に最も広く用いられている手法のひとつであるが,その潜在的な問題については一般にあまり認識されていない. MoranのI統計量による検定がその分布の漸近的な正規性を仮定して構築されているのに対し,通常のデータでI統計量の正規性が達成される可能性は低い.従って,I統計量の正規性を仮定した仮説検定では結果に偏りが生じる恐れがあり,またこの問題を避けて用いられるシミュレーションによる検定方法であっても,結果にはシミュレーションに特有のばらつきが生じる.そこで,本研究ではMoranのI統計量の確率分布の裾野に着目した大規模シミュレーションを通じて,仮説検定で用いられる棄却限界値の推定式を構築する.達成の難しいI統計量の正規性や都度のシミュレーションに依らない平易な推定式を提供することで,検定結果の安定と信頼性の向上に資することを目的とする.
著者
浅見 泰司 山田 育穂 貞広 幸雄 中谷 友樹 村山 祐司 有川 正俊 矢野 桂司 原 正一郎 関野 樹 薄井 宏行 小口 高 奥貫 圭一 藤田 秀之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

あいまいな時空間情報概念の整理、あいまいな時空間情報に既存の時空間情報分析を行った時の影響分析、まわり、となりなどの日常的に使われながらも意味があいまいな空間関係の分析ツールの開発、時空間カーネル密度推定手法の開発、歴史地名辞書の構築と応用分析、あいまいな時間の処理方法の提案、古地図と現代地図を重ねるツールの開発、あいまいな3次元地形情報の分析、SNSの言語情報の空間解析、あいまいなイラストマップのGPS連動ツールの開発、スマートフォン位置情報データの分析、アーバンボリュームの測定と応用、あいまいな敷地形状の見える化などの研究成果を得た。
著者
山田 育穂
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.435-442, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
16

本研究では、空間解析において標本調査により収集された空間データを用いることが及ぼす影響を明らかにすることを目的として、統計的シミュレーションに基づく検証を行った。分析対象地域内に他より高い属性値を持つ空間単位のクラスターが存在する様々な空間パターンを確率的に発生させて、そのクラスターを検出する空間解析を、母集団全体を用いて行った場合と特定の抽出率で得た標本に基づき行った場合とで、結果がどのように変化するかを分析した。空間解析に使用したのは、空間的自己相関の分析に広く用いられるローカルMoran統計量である。分析の結果、第一種の過誤については、その発生回数・空間分布共に母集団に基づく解析と標本に基づく解析の間に大きな差はないことが分かった。一方、クラスターの検出力は、標本の抽出率が低下すると共に低下すること、その傾向は特にクラスターの辺縁部で顕著であることなどが明らかとなった。今後は、一定の検出力を保つために必要な抽出率あるいは標本数などについて、他の空間解析手法も含めた包括的な検証が望まれる。
著者
岡部 篤行 山田 育穂
出版者
青山学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、空間自己相関を検定する統計量として頻繁に使用されているモランのI指標の正確な使用方法を提案したものである。多くの既存研究では、研究対象地域を構成するゾーン数がせいぜい100程度であれば、モランのI指標に正規性が仮定できるとして、空間自己相関がないという帰無仮説の統計的検定が行われている。本研究は、そのような多くのゾーン数であっても正規性は仮定できないことを示し、通常の利用方法は間違いを起こしやすいことを指摘した。この欠点を克服すべく、本研究では膨大な数のモンテカルロシミュレーションを行い、帰無仮説の元での限界値の数表を作成した。この数表を使うことで正確な統計的検定が可能となった。