著者
富永 隆 貞広 幸雄
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.76, no.10, pp.743-758, 2003-09-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
13
被引用文献数
1 4

本研究では,学区を構成するさまざまな物理的環境に焦点を当て,GIS上の空間データを用いた学区再編案の導出手順を提示し,東京都北区の小中学校統廃合問題に適用した.特に各中学校区が複数の小学校区を包含する学区形態(スクールファミリー)に注目し,学区再編におけるスクールファミリーの導入を検討した.実証分析ではいくつかの通学条件を目的変数として区割りを最適化することで具体的な学区案を導出し,得られた学区案における通学環境を定量的に測定,比較評価した.分析の結果,スクールファミリー導入により通学距離は増大するが,最大通学距離を制約条件とすることで現実的な通学距離に抑えることが可能であることがわかった.また,現状および学校統廃合時のいずれの学校配置においても,学区再編時にスク-ルファミリーの導入は物理的に可能であることが確認できた.したがって,スクールファミリーは学区再編の議論における一つの現実的な選択肢であるといえる.
著者
貞広 幸雄
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.405-417, 1997-07-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本稿は,点分布図における空間クラスターの知覚を記述する定量的モデルを提案するものである.地理学において,点のクラスターは最も基本的な空間概念の一つであり,その分析に際しては分布図を用いたクラスターの観察が必ずといってよいほど行われる.しかしながら,クラスターの知覚は点の表示方法に大きく依存するため,場合によってはクラスターが見出しにくいという問題をもたらす.したがって,効率的な分析を行うには,点分布図の表示とクラスター知覚の関係を正確に把握し,その都度適切な表示方法を選択する必要がある.そこで本稿では,表示された点分布図とクラスター知覚の関係を定量的に記述するため,確率モデルに基づいた点クラスター知覚モデルを提案する.ここでは点の局所密度という概念を導入し,点対がクラスターとして知覚される確率を定式化する.さらに,提案したモデルを実際の実験結果に適用し,その有効性と問題点を検証する.
著者
貞広 幸雄
出版者
公益社団法人 日本不動産学会
雑誌
日本不動産学会誌 (ISSN:09113576)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.118-127, 2009-04-10 (Released:2015-07-23)
参考文献数
60
被引用文献数
2 1

This paper reviews the papers discussing the evaluation and regulation of big-box retailers in Japan. Topics discussed in papers are classified into one of the four categories:1)descriptive analysis of store location, 2)evaluation of the effects of big-box development, 3)regulation of big-box retail stores, and 4)store closure in downtown area. Outline of existing studies is briefly summarized, from which directions of future studies are shown.
著者
浅見 泰司 山田 育穂 貞広 幸雄 中谷 友樹 村山 祐司 有川 正俊 矢野 桂司 原 正一郎 関野 樹 薄井 宏行 小口 高 奥貫 圭一 藤田 秀之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

あいまいな時空間情報概念の整理、あいまいな時空間情報に既存の時空間情報分析を行った時の影響分析、まわり、となりなどの日常的に使われながらも意味があいまいな空間関係の分析ツールの開発、時空間カーネル密度推定手法の開発、歴史地名辞書の構築と応用分析、あいまいな時間の処理方法の提案、古地図と現代地図を重ねるツールの開発、あいまいな3次元地形情報の分析、SNSの言語情報の空間解析、あいまいなイラストマップのGPS連動ツールの開発、スマートフォン位置情報データの分析、アーバンボリュームの測定と応用、あいまいな敷地形状の見える化などの研究成果を得た。
著者
貞広 幸雄
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100003, 2012 (Released:2013-03-08)

本論文では,GISとインターネット情報を用いて,江戸末期~明治初期の歴史空間データを簡便に作成する方法を提案する.ここでは初等中等教育や地域情報のインターネット上での発信などでの利用を念頭に置き,情報の厳密さよりも作成の簡便さを重視した方法を採用する.対象地域は現在の千葉県全域であり,主として江戸末期~明治初期の以下4種の空間データを整備した.1) 地形,2) 人口分布,3) 交通網,4) 行政区.
著者
相 尚寿 岡部 篤行 貞広 幸雄 太田 守重
出版者
一般社団法人 地理情報システム学会
雑誌
GIS : 理論と応用 = Theory and applications of GIS (ISSN:13405381)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.89-98, 2008-12-31
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

<p>Due to the increase in a necessity, operability, and data availability, spatio-temporal analysis has been gathering popularity. However, there are few studies focusing on systematic reviews of it. This paper first shows basic concepts for spatio-temporal analysis such as geometrical representation of entities and changeability of attribute values over time. Then the paper constructs a matrix showing the characteristics of earlier studies. The matrix consists of two stages, where the first stage concerns the temporal representation and types of the entities, and the second stage concerns spatial representation, changeability of location, shapes and attribute values. The matrix helps us to understand the characteristics of the studies and uniqueness or similarity when compared to others.</p>
著者
貞広 幸雄 奥貫 圭一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,複数の空間オブジェクト分布間の相互関係を分析する手法を開発し,その実際の適用を通じて実用性の検証を行った.空間分割構造,ポリゴン分布,点分布の3つの空間オブジェクト分布について,位相関係,階層関係,補完関係,隣接関係という4種類の空間関係を抽出し,可視化する手法を開発した.いずれの手法も,離散構造をグラフとして取り扱い,その中で典型的なパターンを抽出するコンピュータアルゴリズムを用いている.
著者
小池 束紗 貞広 幸雄 對間 昌宏
出版者
一般社団法人 地理情報システム学会
雑誌
GIS-理論と応用 (ISSN:13405381)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.25-31, 2019-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1

The image of region often is not identical with the actual boundary of the region, sometimes the image crosses over the boundary. In this study, we focus on the building name, which includes place name, and analyze about the determinants of place name exuding (exuding phenomenon). We use GIS data of 23 wards of Tokyo in Japan, and focus on the 934 place names to analyze the spatial distributions. Our findings show that railway-station, high-rise buildings, and large infrastructure (river) in the region influence the place names to cross over the region because they play as a symbol in the region. Moreover, we can see low-exuding-places are located around high-exuding-places, because high-exuding-places are distributed overall in Tokyo. The average distance of exuding is nearly the same as the distance of walk, and the distance of exuding is high near the boundary of Tokyo, because of the frequent use of car in the area. It is found that the image of region is relevant to the range of life and activity.
著者
関口 達也 貞広 幸雄
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.269-282, 2015-05-01 (Released:2019-10-05)
参考文献数
22

本稿では,簡便かつ多面的に商業環境の評価を行う新たな手法の提案を行う.具体的には,1)総充足度,2)安定度,3)重要度,の三つの指標を用いて,地域における商業環境を複数の観点から評価する方法を提案する.仮想的な地域と実地域へ手法を適用し,各指標の性質を検討した結果,以下の知見が得られた.1)いずれの指標も,地域の店舗の立地・規模の差異を考慮した評価が可能である,2)総充足度は地区の店舗の充足性を評価し,店舗数の増加に対して指標値の増分には一定の逓減性がみられる,3)安定度は各地区の総充足度が少数の店舗に依存するか否かを判断する指標で,充足度と併用すると,地区の総充足度の特定の店舗への依存性を評価できる,4)重要度は各地区の総充足度の向上に大きく貢献する店舗が高く評価される指標で,充足度,安定度との併用により,地域の総充足度の向上に最も寄与している店舗の閉店が及ぼす影響を視覚化できる.
著者
森岡 渉 岡部 篤行 貞広 幸雄
出版者
一般社団法人 日本統計学会
雑誌
日本統計学会誌 (ISSN:03895602)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.115-131, 2019-09-30 (Released:2020-04-02)
参考文献数
13

店の出店や閉店の戦略をたてる立地マーケティングにおいて,地域の店の盛衰状況動向を分析することは基本的な分析である.そこで,本研究では,盛衰動向状況の基礎的分析として,ジニ係数を活用した地域内の店舗立地集中度測定法を提案する.その方法は,基本的にジニ係数を踏襲しているが,新たに,順序統計量を用いて店舗の空間偏在度を統計的に検定する方法と,ジニ係数を求める際に用いるローレンツ曲線を活かして,店舗が集中している「ホットスポット」を検出する方法を開発した.それらの方法を,電話帳から得られる東京都渋谷区内の各4分の1地域メッシュ(250~mメッシュ)に含まれる各種店舗数データに適用し,渋谷区における店舗施設立地の全体的な集積度と局所的な集積度を測定し,方法の有効性を確認した.
著者
稲坂 晃義 貞広 幸雄
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.75, no.650, pp.889-896, 2010-04-30 (Released:2010-06-14)
参考文献数
14
被引用文献数
1 2

A retail facility is one of an important part of people's daily life. Recently, retail distributions created by a collection of retail facilities change are rapidly effected by fashion, economic trends, urban redevelopments, and so forth. These rapid changes need to be traced and clearly understood to prevent residents and visitors of the city from their inconveniences. This paper proposes a method using circular statistics for analyzing and visualizing direction of retail distribution expansion in urban space. HSV color space is used for result visualization. An empirical study is done with NTT Townpage data of Shibuya ward.
著者
小口 高 貞広 幸雄 村山 祐司 久保田 光一 奥貫 圭一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

大学3~4年生を対象としたGISのオンライン実習のための教材を整備し、大学の授業や講習会等で試験運用した。教材の公開にあたっては、独自のドメイン(http://gis-oer.csis.u-tokyo.ac.jp/)を取得し、GitHubを通じて正式公開に向けた試験公開(第1段階の公開)を行った。また、教材の活用状況を評価するために、前年度に課題となった外部ツールの仕様変更に対応しているオープンソースのプラグインを新たに用いて、活用状況を評価するシステムを構築した。教材の主要な内容は、GISの基本に関する総括的な書籍である「GISスタンダード」に沿っており、地理系の学部や関連学科における実習授業と対応させるようにした。これとは別に、インターネットを通じてGISを利活用するためのWeb GISに関する教材と、地形データを3Dプリンターで可視化するための手法に関する教材も整備した。インターネットを通じたGIS利活用のための教材は、WebGISと関連するツールを利用して、地理情報を可視化する手法や配信する手法を解説した。地形データを用いた3Dプリントのための教材では、GISのデータを3Dデータに変換する手法や、3Dプリントの手順を解説した。前年度からの継続の実践として、「GISスタンダード」と対応した教材を東京大学地球惑星環境学科などの授業において実際に試用し、アンケートなどを通じて利用者からのフィードバックを得た。今年度の授業では、前年度の事例を踏まえて改良した教材を用いたため、課題であった実習の難易度が軽減されたことが確認できた。さらに、教材に将来的に応用できる可能性がある地理情報システムを用いた応用研究を、研究協力者の早川裕弌氏や瀬戸寿一氏らとともに進めた。
著者
相 尚寿 岡部 篤行 貞広 幸雄 太田 守重
出版者
一般社団法人 地理情報システム学会
雑誌
GIS-理論と応用 (ISSN:13405381)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.89-98, 2008-12-31 (Released:2019-04-11)
参考文献数
30
被引用文献数
1

Due to the increase in a necessity, operability, and data availability, spatio-temporal analysis has been gathering popularity. However, there are few studies focusing on systematic reviews of it. This paper first shows basic concepts for spatio-temporal analysis such as geometrical representation of entities and changeability of attribute values over time. Then the paper constructs a matrix showing the characteristics of earlier studies. The matrix consists of two stages, where the first stage concerns the temporal representation and types of the entities, and the second stage concerns spatial representation, changeability of location, shapes and attribute values. The matrix helps us to understand the characteristics of the studies and uniqueness or similarity when compared to others.
著者
泉 岳樹 岡部 篤行 貞広 幸雄 花木 啓祐 一ノ瀬 俊明
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境システム研究 (ISSN:09150390)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.171-178, 1999-10-15 (Released:2010-06-04)
参考文献数
15
被引用文献数
1

This paper predicts the effects of the capital relocation on a thermal environment using a meso-scale meteorological model. Five candidate cities, Tomakomai, Nasu, Hamamatsu, Toki and Ueno, are chosen for study areas.The simulation results show that temperature will rise in all the candidate cities after the relocation. The temperature rise averaged over a day is from 0.5 to 1.0 degree centigrade in each candidate city. In the coastal candidate cities, Tomakomai and Hamamatsu, the temperature will rise not only in new capital regions but also in the leeward regions because of the sea breeze.Relative contribution of land cover changes and anthropogenic heat to the temperature rise are also compared. The temperature rise in the daytime is brought mostly by land cover changes. At night the influence of anthropogenic heat becomes large, and in some candidate cities it becomes greater than that of land cover changes. These results imply the energy-saving at night is effective for controllingthe temperature rise in a new capital.
著者
山内 啓之 小口 高 村山 祐司 久保田 光一 貞広 幸雄 奥貫 圭一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

これまでにGIS教育の充実のために、科学研究費を用いた複数のプロジェクトが行われ、基本となるコアカリキュラムと講義用教材が整備された。しかし、実習に関する検討は少なかった。GISを活用できる人材の育成には、大学の学部や大学院等における実習を通じた教育が重要である。<br> そこで、GISの実習用教材を開発し、公開するプロジェクトを平成27年度より開始した(科学研究費基盤研究A「GISの標準コアカリキュラムと知識体系を踏まえた実習用オープン教材の開発」、平成27~31年度、代表者:小口 高)。本プロジェクトでは、学部3~4年生の実習授業や自主学習を対象とした教材の開発と試験公開を行い、一般公開に向けて修正と改良を重ねてきた。本報は、これまでに整備してきた教材とその公開についてまとめたものである。<br> 今回整備した教材は、日本独自の地理情報科学の知識体系を教科書として編集した『地理情報科学 GISスタンダード』(浅見ほか編, 2015)の章構成に基づいている。GISの操作手法の解説には、無償のソフトウェアとデータを用いた。ソフトウェアは、様々な実習環境に対応できるQGISを主に用いた。QGISはバージョン更新が頻繁であるため、長期的にリリースされていた安定版のQGIS2.8を基本とした。しかし、リモートセンシング・データの解析、空間データベース、ネットワーク分析などの基礎的な内容や、空間統計学的な内容を含む教材においては、QGISのみでの対応が困難なため、GRASS GIS、PostGIS、CrimeStatなど複数のソフトウェアを組み合わせて使用した。<br> 教材で用いるデータは、国土数値情報やオープンデータなどとし、背景地図が必要な場合は、地理院タイルを利用した。以上のソフトウェアやデータを活用して、『地理情報科学GISスタンダード』の中で、実習の内容を含む6章~23章と26章に対応した教材を整備した。<br> 教材は、PowerPointファイルと記述が容易なMarkdownファイルでまとめ、GitHubにアップロードし、WEBで試験公開した。その後、編集や管理のしやすいGitHub上で、修正や改良を重ねた。GitHubでの公開は、Pull Request機能やIssue機能による低コストでの教材管理を目的としたものである。教材編集に一般利用者が参加できることから、ソフトウェアのバージョン更新に対応できるソーシャルコーディング的な教材運用も期待できる。 <br> 教材は、GitHubとGitBookを連携させ、閲覧しやすいWEBページで公開する。GitBookは、Markdownファイルの表示や閲覧に特化したサービスである。GitHubリポジトリのMarkdownファイルを読み込むことで、両リポジトリ間での双方向的な編集と表示が可能になる。また、簡易なコメント投稿機能や複数のファイル形式でのダウンロードなど、利用者に便利な機能が標準で用意されている。 <br> 教材には、クリエイティブコモンズに基づいて、CC BY-SA 4.0のライセンスを付与した。表記は &copy; GIS Open Educational Contents WG, CC BY-SA 4.0とした。これは、表示-継承の条件下において、幅広い用途での自由な利活用を認めることを意味する。<br> 本プロジェクトの成果は、大学等でのGIS実習や、学生や市民の自主学習に利用できるようにインターネットで一般公開する。今後は、公開した教材の運用とともに、一般利用者からPull Requestを受けつつ教材を更新していく仕組みの構築や、インターネットを活用したWEB GIS教材の整備等について検討する予定である。
著者
貞広 幸雄
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.44.3, pp.787-792, 2009-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
14

点分布は、都市における様々な施設や移動体などを表現する最も基本的なオブジェクトである。本論文は、点分布間の関係を分析する新しい手法を提案するものである。ここでは特に、離散空間上に分布する点に焦点を当て、その相互関係を扱う。一対の分布間の関係を定義することから始め、多数の分布間の相互関係を各種の指標、地図的表現、グラフ表現などによって記述し、分析を行う。提案した手法は学校の施設配置計画に適用し、その有効性を検証する。