著者
岡本 浩一郎
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.115, no.10, pp.887-893, 2012 (Released:2012-11-23)
参考文献数
12
被引用文献数
2

“外転神経麻痺”と“三叉神経第1枝 (V1) 領域の疼痛”の組み合わせはGradenigo症候群として知られ, 側頭骨錐体尖部 (以下, 錐体尖部) の病変を示唆する. Gradenigo症候群の患者のみならず, 耳鼻科的・眼科的疾患や脳病変の検索のために撮像されたCT・MRIで, 錐体尖部病変が認められることがある. これらの病変は, 耳鼻科的診察では直接視診・触診などすることができず, 内視鏡でも観察することが困難で, 生検なども容易ではない. 病変が積極的な耳鼻科的治療の対象か否かの判断に, 画像診断の果たす役割りが大きい.偶然発見される錐体尖部病変のうち, 治療的介入を要しない正常変異や病変は ‘Leave me alone’ lesionsといわれ, 介入を考慮する疾患と区別することが必要である. 偶然発見される代表的な ‘Leave me alone’ lesionsには(1)錐体尖蜂巣の左右差による非対称性錐体尖部骨髄, (2)錐体尖蜂巣内液体 (滲出液) 貯留, (3)脳瘤がある. これらの病態や疾患を, 耳鼻科的介入を考慮すべき錐体尖部 (破壊性) 病変と区別するためには, 錐体尖部の正常画像解剖の理解と, 日常臨床上重要な錐体尖部 (破壊性) 病変の画像所見の知識が必要である.
著者
宮腰 淑子 五十嵐 修一 永尾 侑平 井上 重宏 佐藤 朋江 関谷 可奈子 新保 淳輔 佐治 越爾 森田 健一 佐々木 修 岡本 浩一郎 佐藤 晶 山崎 元義
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.8-15, 2012-01-25 (Released:2012-01-27)
参考文献数
19
被引用文献数
1

【背景および目的】可逆性脳血管攣縮症候群(reversible cerebral vasoconstriction syndrome; RCVS)は,雷鳴頭痛を主徴とし,脳血管に可逆性の分節状攣縮を認める疾患である.本疾患の臨床経過と画像所見の経過の検討を目的とした.【方法】2004年6月から2010年12月までに当科にRCVSの診断で加療を行った6例について検討した.【結果】発症年齢は39-53歳(平均44歳)で,女性が4例,男性が2例であった.全例に雷鳴様頭痛を認めた.3例が脳卒中を発症し,全例が女性であった.脳出血が1例,くも膜下出血と脳出血との合併例が2例であった.ベラパミルが5例に投与され,症状改善がみられたが,1例に片麻痺の後遺症を残した.【結論】突然の激しい頭痛を訴える患者を診察する際には,RCVSを鑑別に含める必要がある.
著者
草部 雄太 竹島 明 清野 あずさ 西田 茉那 髙橋 真実 山田 翔太 新保 淳輔 佐藤 晶 岡本 浩一郎 五十嵐 修一
出版者
医学書院
雑誌
BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 (ISSN:18816096)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.957-961, 2017-08-01

呼吸器感染症の原因ウイルスの1つであるエンテロウイルスD68型による,稀な成人の脳脊髄炎の1例を報告する。患者は33歳男性。発熱,咽頭痛,頭痛で,5日後に両側顔面神経麻痺,嚥下障害,頸部・傍脊柱筋の筋力低下を呈した。頭部MRIのT2強調画像にて脳幹(橋)背側と上位頸髄腹側に高信号病変を有する特徴的な画像所見を認めた。血清PCRにより当時流行していたエンテロウイルスD68型が検出された。両側末梢性顔面神経麻痺を急性にきたす疾患の鑑別としてエンテロウイルスD68型脳脊髄炎も考慮すべきである。
著者
岡本 浩一郎 相場 恵美子
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.188-196, 2018-06-30 (Released:2019-07-01)
参考文献数
13

中枢神経の脳・脊髄は頭蓋骨や脊椎に囲まれ, 観察は容易ではない。意識障害, けいれん, 片麻痺などの神経学的症状を示す患者では, 病歴の聴取, 身体診察に加え神経学的診察により, 病変の局在と広がりを推定するが, 客観的に評価するために, 脳や脊髄の状態を確認できる神経画像検査を行う。   中枢神経系の画像診断を専門とする神経放射線科医 (神経画像診断医) は, CT, MRI, 血管造影や, 必要に応じて核医学検査などの各種画像検査で得られる情報を統合して, 脳や脊髄に生じている病理組織学的な変化を推察し, 疾患に特徴的な病理学的所見や病態生理学的変化と画像所見の整合性を考え, 臨床症状や経過, 診察所見を考慮しながら画像診断を進める。   神経放射線科医が臨床でどのように画像所見を確認して画像診断を進めるのか, 実際の症例の画像を例にとりその過程をお示しすることで, 神経疾患に携わる医療関係者の皆様の理解に貢献することを本稿の目的とする。