著者
岡野 裕行
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.270-287, 2008-12-25

文学館研究は図書館学や博物館学に比べると発展が遅れている学問分野であるが,それでも近年においてはその数が少しずつ増加している傾向にある。その時期は一般に,全国文学館協議会が発足した1995年以降であると考えられている。この点を確認するために,国立国会図書館の「雑誌記事索引」による文献調査を行ってみたところ,1995年以前と1996年以後との間で文献数やその内容面に関する相違点を見出すことができた。また,同時期には文学館に関する図書についても同様の変化が見られた。すなわち文学館研究は,ここ10年ほどの間に発展していったものと推測される。
著者
岡野 裕行
出版者
情報メディア学会
雑誌
情報メディア研究 (ISSN:13485857)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.15-35, 2010-11-01 (Released:2010-11-01)
参考文献数
40
被引用文献数
1

文学館に関する図書は,ガイドブック (日本全国の文学館の概略紹介) の形態で,これまでに 18 点出版されている.それらの収録内容を,独立系文学館,依存系文学館,転用系文学館,非文学館の 4 形態に分類して個々の特徴を見いだし,その結果を比較検討すると,その歴史的変遷は大まかに 4 期間 (1980 年代以前,1980 年代~1990 年代初頭,1990 年代中頃,1990 年代末~現在) に分けられる.それらは <文庫> という一般名詞で呼ばれていた「<文庫> の時代」, <文庫> と併記する形で <記念館> という用語が用いられた「<記念館> の時代」, <文庫> という用語の使用例が減少し, <文学館> という用語が普及し始めた「<文学館> の時代の到来と <文庫> の時代の終焉」, <文学館> という用語が一般名詞として確立された「<文学館> の時代」というような,4 段階の発展を見せている.すなわち, <文庫> の代わりに <文学館> という用語が一般名詞として広く使用されるようになったのは,わずかにここ十数年間の出来事と見なすことができる.
著者
岡野 裕行
出版者
情報メディア学会
雑誌
情報メディア研究 (ISSN:13485857)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.41-61, 2008-12-01 (Released:2008-12-01)
参考文献数
67

文学館という機関は日本近代文学研究者に対する専門図書館としての役割を担っている.しかし文学館ではオンライン検索の普及が遅れており,検索システムを実現化している例はそれほど多くはない.12館の文学館において公式サイトでのオンライン検索システムの提供が行われているが,それらは例外的なものであり,(1)所蔵資料の特殊性,(2)孤立したシステム,などの問題を抱えているのが現状である.文学館のオンライン検索の課題としては,(1)公式機関としての信頼性,(2)存在情報の公開,(3)所在情報の公開,(4)詳細な解説の付与,などに注意を払う必要がある.オンライン検索システムの発達を含め,文学館は日本近代文学研究に関する専門図書館としての機能を充実させていくことが求められる.
著者
岡野 裕行
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.233-237, 2011-06-01 (Released:2017-04-20)
参考文献数
25

文学館と呼ばれる施設は,文学を対象とした専門図書館として機能している。また,文学館は博物館や文書館としての特徴も兼ね備えている。図書館と文学館との連携には,施設の規模による違いが見られる。連携を考える場合には,それぞれの施設の形態のみに注目するのではなく,収集対象としている資料の主題分野のほか,それに関係する個人や団体にも関心を払うことが求められる。
著者
岡野 裕行
出版者
情報メディア学会
雑誌
情報メディア研究 (ISSN:13485857)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.29-40, 2019

<p><tt>大学図書館における学生協働の多くは,大学図書館職員が図書館業務の一部を学生に任せる形態になっている.そのため,当初は学生と大学図書館職員のみに関係する活動と認識されていた.この取り組みが全国各地の大学へと普及するにつれて,大学図書館職員以外の人や組織との協働関係も築かれるようになった.また,協働関係が多様化することで,その活動場所も大学図書館内に制限されることなく,空間的な広まりも見られるようになった.学生が自らを協働の主役に位置づけ,立場の異なる人たちと協働関係を築くことで,大学図書館の活性化活動で培った力を,さまざまな機会に応用できるようになった.学生たちが協働相手とパートナー関係を結び,学びの形を自らデザインし直す機会を得ることで,学生視点による創造的活動の成果を大学図書館へ還元することができる.</tt></p>
著者
岡野 裕行
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.47-55, 2012-11-10 (Released:2018-01-12)

図書館は単に本を読むためだけの空間ではない。昨今は人と人とが出会うための「場」づくりを目指すような図書館が増加しているように、そこを訪れる利用者に本や人との新たな出会いを提供し、知的好奇心を刺激するような創発的な空間へと変わってきている。また、ウェブの普及に伴って本の情報流通過程が大きく変化を遂げており、「本との出会い」を促す仕組みが従来よりも多様なものとなっている。読者や読書について考える際には、そのような本と人とが繋がるきっかけづくりの取り組みにも注目していく必要がある。
著者
常川 真央 小野 永貴 岡野 裕行 谷村 順一
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.314-317, 2018-12-08 (Released:2018-12-21)
参考文献数
6

文芸同人誌は日本の独自の文芸活動として発展し,作家の揺藍期を研究する格好の資料である.しかし,新興の文芸同人活動である「文学フリマ」の文芸同人誌に関しては,網羅的かつ体系的なデータベースは構築されてこなかった.本研究では日本大学芸術学部文芸学科に寄贈された文芸同人雑誌即売会『文学フリマ』の第3回から現在に至るまでの約一万冊以上におよぶ見本誌に基づき,文芸同人誌に適したデータモデルについて検討した.その結果として,同人誌を対象とする既存のメタデータモデルは,同人誌固有の性質である「委託販売関係」などを扱えない課題を発見した.
著者
岡野 裕行
出版者
筑波大学
巻号頁・発行日
2006
被引用文献数
2

資料編: 付属資料3: 文学館の出版形態
著者
岡野 裕行
出版者
情報メディア学会
雑誌
情報メディア研究 (ISSN:13485857)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.21-38, 2006 (Released:2007-03-12)
参考文献数
51

一般に文学館の機能には,「図書館的機能」と「博物館的機能」の二つがあるとされている.だが,図録,館報,目録,復刻などの発行物があるように,文学館には第三の機能として「出版者的機能」も含まれていると考えられる.その中でも復刻は,研究者に新たな事実の発見を促し,通時的な事実の確認を可能とするために,日本近代文学研究において重要な資料となっている.日本近代文学館の図書と雑誌の復刻を調べたところ,累計で2,056冊の発行冊数となっていることを確認した.また,1967年から1985年までの間に,そのうちの95%が作製されていたことが判明した.1986年以降に復刻がほとんど作製されなくなった理由として,復刻を望まれる資料の払底,他の出版者の参入,著作権,原本の未入手,復刻技術の消散,資金不足があったと推測される.