著者
秋山 岳 岩倉 成志
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D1(景観・デザイン) (ISSN:21856524)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.45-56, 2012

近年,わが国ではプロのデザイナーによって鉄道車両が設計され,旅行の付加価値を向上させる事例がみられるが,全国的な展開には至っていない.その理由のひとつに,車両デザインと需要増との関係性が明らかではないため,事業者が鉄道車両のデザイン化に消極的であることがあげられる.本論文では,小田急ロマンスカーを対象とし,鉄道車両の車内デザインを考慮した需要予測モデルの構築を目指す.そのために,1)車内色彩デザインの計測手法,2)色彩快適度関数の構築,3)車内デザインの評価手法,4)需要予測モデルの構築,以上4点を検討する.本論文で構築したモデルを用いた分析の結果,車両をデザインすることで,他交通機関からの利用者の転換が望め,一定の収入増加が見込めることを確認した.
著者
岩倉 成志
出版者
芝浦工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

近年、交通施設整備の事業採択の判断は、費用対効果分析の結果に左右されるが、その信頼性は、交通需要の予測値、時間価値や大気汚染、騒音等の社会的費用原単位の精度、建設費と建設期間の見通しに依存することが大半である。一般に、交通行動モデル、社会的費用原単位ともに実行動データを用いて作成することが望ましいとされているが、被験者に知覚バイアスが発生している状態でパラメータを推定し、知覚バイアスの発生構造を同定しないまま将来予測を行ったり、社会的費用を推定すれば、誤った分析結果となることは自明であり、それをもとにした交通ネットワーク計画は社会的に大きな損失をもたらす。筆者は、習慣的行動による情報探索の低下が、知覚バイアスを発生させる大きな要因と考えている。よって、本研究は、(1)習慣的行動メカニズムの検討を行った後、各種の事例に基づいて、(2)知覚バイアスの発生を確認した上で、(3)習慣的行動を強める要因を把握し、(4)習慣性の強さ(習慣強度)を測定する方法を検討する。さらに、(5)習慣形成要因と習慣強度、知覚バイアスとの因果連鎖を分析し、(0)知覚バイアスを考慮した離散選択モデルを構築することを目的とする。本年度は、供用後5年を経た鉄道新線を対象に需要の定着過程のデータ収集と分析とを行った。時系列の需要総量を把握するために、都市交通年報の断面交通量データおよび東京都交通局の所有する輸送需要データを取得した。平成14年度に都営大江戸線利用者、非利用者を対象に実施したインターネットを用いたアンケート調査の同一被験者にパネル調査を行い、経路利用および、知覚誤差の経年変化と習慣的行動との関係を把握した。インターネット調査では平成14年度インターネット調査の被験者(モニター)と同一の被験者が対象となるため、(株)アサツーディケイのインタニネット調査システムKNOTsを利用した。このデータ取得が研究補助のうちの大半である。取得できたパネルデータは、通勤目的トリップを104サンプル、私事目的トリップを101サンプル取得することができた。これらのデータにより、新しい交通ネットワーク供用後の転移速度と速度を決定づける習慣的行動との関係の解明を行った。こうした実行動と知覚状況に関する実データの解析とともに、知覚誤差の減少とともに、新規路線の需要定着が進む交通行動モデルの理論画からの検討を行った。複数の方法の検討を行ったが、特に経路選択行動とサービス水準の知覚値を同時決定する同時方程式モデルの体系で検討を試みた。
著者
小林 渉 岩倉 成志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_1067-I_1074, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
10

筆者らが開発を進めてきた遅延の発生や波及を高精度に再現する列車遅延連鎖シミュレーションシステムは,信号保安システムの改良や輸送力増強に伴うオペレーションの変更など広範な遅延対策の効果を計測することができるが,遅延対策として有効な階段やコンコース増設などの駅構造の改良の効果を計測することはできなかった.このため本研究では,駅構造の違いによって乗車位置が変化し,それが列車遅延に与える影響を予測可能にする乗車駅ホーム上の旅客の乗車位置選択モデルを構築する.ケーススタディとして階段を増設をした場合の遅延予測を行う.結果として乗車位置選択モデルは乗車分布と降車分布を概ね再現できた.シミュレーションシステムでの再現性もおおむね良好であり,また駅改良による遅延削減の例も示すことができた.
著者
小林 渉 渡部 翔平 岩倉 成志 山下 良久
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_693-I_700, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
16

わが国の都市鉄道需要予測モデルの変数には乗車待ち時間が含まれているが,現行の方法では乗車待ち時間を運転間隔の半分と設定している.これは,運転間隔の長い駅の待ち時間を過大に与えている可能性がある.本研究では,大都市圏の駅における待ち時間の設定方法の提案を目的として,運転間隔が 2.5 分から 30 分の間で列車が等間隔に運転している 26 駅で実測調査を実施した.調査の結果,運転間隔が 7.5 分以上の路線では利用者の平均乗車待ち時間が運転間隔の半分より小さくなり,運転間隔が長くなると,かい離が大きくなった.この結果は,海外の既存研究の成果とも整合する.また,乗車待ち時間を改良した鉄道経路選択モデルのパラメータ推定の結果,乗車時間と乗車待ち時間のパラメータ比が増加することを確認した.
著者
吉枝 春樹 小林 渉 岩倉 成志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.43-62, 2020 (Released:2020-04-20)
参考文献数
25

東京圏の都市鉄道は莫大な乗降者数による停車時間の伸長が,混雑率緩和のための運行頻度増のネックとなっている.これを極めてシンプルな着想で解決する.それは,現在の信号システムに比べ,列車間隔をより短く制御できる移動閉そくシステムで運行頻度を増やして,列車毎の乗降者数を減じ,停車時間を縮減して,大幅に混雑率を低減させるというものである. このため,2つのアプローチをおこなった.まず,運転理論に基づく分析で,最小運転間隔90秒の可能性を示す.次に,停車時間を規定する乗降行動と列車挙動のエージェントシミュレーションモデルを構築する.これを用いて停車時間と運行間隔の縮減を分析し,検討路線では移動閉そくと主要駅の改良により95秒間隔で運転でき,大規模な線増投資を行わずに,混雑率150%まで緩和できることを示した.
著者
岩倉 成志 新倉 淳史 高平 剛
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集
巻号頁・発行日
vol.2004, no.765, pp.39-48, 2004

本研究では経路選択行動におけるサービス水準の知覚誤差を分析する. 離散選択モデルは分析者側が設定したサービス水準を用いることが通常だが, 特定の経路に系統的な知覚誤差が発生する場合は, 知覚誤差をランダム項で吸収できない. 東海道線と横須賀線の利用者を対象に知覚誤差の分析を行った結果, 所要時間や混雑率に大きな知覚誤差が発生すること, またその要因として過去のサービス悪化の記憶や個人の路線の評価, 情報探索性向などが影響することを明らかにした. 以上の観察結果をもとに, サービス水準の知覚誤差モデルを構築するとともに, 選択肢集合の形成と選択行動を同時表現するPLCモデルで習慣強度を考慮した経路選択モデルを検討した.
著者
岩倉 成志 屋井 鉄雄
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.109-114, 1990
被引用文献数
2

<p>A new station in the existing line has been provided variously because of a lack of the appropriate institution. Petitioned stations were widely known before the privatization of JNR. Now, development of residential districts or improvement of public transports are still required in metropolitan areas. From the view point of urban and transport planning, it is important to establish new process for a new station and to appreciate it and the effect. The purpose of this study is to state a new direction for station provision ment ioned above. Information from a few examples were collected in detail and the process was summarized. After land price models were calibrated, capital gain from a new station and area development were assessed.</p>
著者
清田 裕太郎 岩倉 成志 野中 康弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_1059-I_1066, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
20
被引用文献数
1

2011年3月11日に発生した東日本大震災で首都東京の交通網は完全に麻痺した.道路交通網においても例外ではなく,大規模なグリッドロック現象が発生した.今後首都圏付近で発生する地震に備え,震災時におけるグリッドロック現象の時空間拡大プロセスの分析を行い,震災による渋滞現象の実態を明らかにすることを目的とする.本研究では,タクシープローブデータを解析し3月11日の首都東京のグリッドロック拡大を時系列で分析し,上下車線別のグリッドロック発生リンクの特定とボトルネックと推定される地点を抽出した.
著者
岩倉 成志 吉枝 春樹 小林 渉
出版者
芝浦工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

東京圏の都市鉄道は,極めて高い混雑率の路線が存在し,列車遅延も発生している.抜本的な輸送力増強が必要だが,予算の縮小や投資リスクで,大規模投資は困難である.わが国は運行間隔120秒程度が最小だが,海外では90秒で運行されている.わが国でも運行間隔90秒まで引き上げれば,混雑率180%を140%以下まで緩和できる.エージェントシミュレーションと運転曲線図の2種の検証で,既存ストックを最大限に活用した超高頻度運行の可能性を検討した.結果,移動閉そくシステムの導入で,田園都市線と半蔵門線で大幅に運行間隔を縮小できることが判明した.また,渋谷駅の容量増強で,運行間隔90秒を達成できることを示した.
著者
岩倉 成志 渡辺 将一郎 土居 厚司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.709-714, 2000
被引用文献数
1

本研究は、道路交通の配分予測に用いられるBPR関数を応用した都市鉄道のリンクコスト関数の構築を目的とする。小田急小田原線上り方向の急行・準急列車を対象に運行本数と駅乗降者数によって変動する各列車の表定速度を表現可能なモデルを作成した。この後、パラメータ推定の安定性、再現性、パラメータ感度等のモデル特性に関する考察を行った。
著者
荻原 貴之 岩倉 成志 野中 康弘 伊東 祐一郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_589-I_595, 2014

羽田空港リムジンバスは,復路(空港発)に対して往路(空港着)の利用割合が低い傾向にある.これは乗換えがなく着席して空港へ向かえる快適性を有する一方で,道路交通状況による所要時間変動が利用者へ不安を与えていることが一因と考える.<br>本研究では,この現状を踏まえ,羽田空港アクセスを対象に旅行時間信頼性が利用者の交通機関選択行動に与える影響を把握する.具体的には,リムジンバスの年間の実績所要時間データとアンケート調査から得た利用者行動データをもとに,平均分散アプローチによる交通機関選択モデルを構築し,旅行時間信頼性の評価を行うと共に各種提案されている旅行時間信頼性指標と利用者の選択結果との整合を考察する.結果として,標準偏差,BT,TT80-TT20,TT70-TT30等の指標が利用者評価と整合性が高いことが分かった.
著者
秋山 岳 岩倉 成志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D1(景観・デザイン) (ISSN:21856524)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.45-56, 2012 (Released:2012-10-19)
参考文献数
12

近年,わが国ではプロのデザイナーによって鉄道車両が設計され,旅行の付加価値を向上させる事例がみられるが,全国的な展開には至っていない.その理由のひとつに,車両デザインと需要増との関係性が明らかではないため,事業者が鉄道車両のデザイン化に消極的であることがあげられる.本論文では,小田急ロマンスカーを対象とし,鉄道車両の車内デザインを考慮した需要予測モデルの構築を目指す.そのために,1)車内色彩デザインの計測手法,2)色彩快適度関数の構築,3)車内デザインの評価手法,4)需要予測モデルの構築,以上4点を検討する.本論文で構築したモデルを用いた分析の結果,車両をデザインすることで,他交通機関からの利用者の転換が望め,一定の収入増加が見込めることを確認した.
著者
佐藤 宏紀 増渕 迪恵 岩倉 成志
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
鉄道技術連合シンポジウム(J-Rail)講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, no.16, pp.749-752, 2009-12-02

Recently, the designed railway vehicles are expanding in Japan. Odakyu Electric Railway Company has 6 kinds of vehicles "Romancecar"; each of them has different design. Showing the effect of quality designed vehicles for passengers contributes to vehicle development. This study aims to develop the Train-Choice-Model what is able to estimates the effect. This model built by utility function that has some variables of design. The 930 sample data were collected by qxiestionnaire for passengers. As a result of analysis, it became clear that the quality designed car increase Train-Choice-Probability.
著者
佐藤 宏紀 増渕 迪恵 岩倉 成志
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
交通・物流部門大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, no.18, pp.351-354, 2009-12-02

Recently, the designed railway vehicles are expanding in Japan. Odakyu Electric Railway Company has 6 kinds of vehicles "Romancecar"; each of them has different design. Showing the effect of quality designed vehicles for passengers contributes to vehicle development. This study aims to develop the Train-Choice-Model what is able to estimates the effect. This model built by utility function that has some variables of design. The 930 sample data were collected by questionnaire for passengers. As a resi.ilt of analysis, it became clear that the quality designed car increase Train-Choice-Probability
著者
岩倉 成志 高橋 郁人 森地 茂
出版者
一般財団法人 運輸総合研究所
雑誌
運輸政策研究 (ISSN:13443348)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.31-40, 2013

<p>相互直通運転が行われ,遅延が発生しやすい路線環境にある東急田園都市線と東京地下鉄半蔵門線を対象に,遅延の連鎖のメカニズムを分析し,列車ごとの遅延時間をマルチエージェントモデルで再現し,遅延対策効果を予測する技術を開発した.中核となる駅間走行時間推計モデルと乗降時間推計モデルの2つのサブモデルの現況再現性は良好な結果を得ることができた.サブモデルを統合したモデルの再現精度は,再乗車旅客の行動の再現に未だ課題があるものの一定の精度は得られたものと考える.またいくつか遅延対策の効果を予測した結果,示唆的な情報を得ることができた.</p>
著者
岩倉 成志
出版者
芝浦工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

潜在クラスモデルを用いてアプリオリに選択行動モデルをセグメンテーションするための方法論を研究した.この方法は期待するパラメータ範囲の初期値を外生的に与えて, EMアルゴリズムによって各セグメントの尤度を最大化するモデルである.観光地の選択行動や列車選択の際の内装色彩の評価,地方部の交通機関選択行動のデータを取得し,提案したモデルの可能性や今後の課題を明らかにした.