- 著者
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杉山 寿美
平岡 美紀
大重 友佳
石永 正隆
- 出版者
- 日本調理科学会
- 雑誌
- 日本調理科学会大会研究発表要旨集 創立40周年日本調理科学会平成19年度大会
- 巻号頁・発行日
- pp.107, 2007 (Released:2007-08-30)
【目的】 結合組織蛋白質コラーゲンは三重らせん部位とテロペプタイド部位で構成,食肉の硬さを決定している。我々は生姜プロテアーゼがコラーゲン繊維の構造が緩む条件下でテロペプタイド部位のみに作用することを報告している。このことは生姜搾汁が生肉の筋繊維を分解する一方でコラーゲン繊維を分解せず「すじ」が残ることを示している。本研究は新調理システムでの食肉蛋白質の変化を把握・利用し,生姜搾汁でコラーゲンを分解,食肉を軟化することを目的とした。
【方法】 鶏もも肉は中心温度75℃までオーブンで加熱した。その後,65℃の温湿蔵庫で保存したもの,急速冷却し再加熱したもの,生姜搾汁を加熱前後で添加したものを試料とした。コラーゲンは酸可溶性コラーゲン:ASC,ペプシン可溶化コラーゲン:PSC,不溶性コラーゲン:ISCとして抽出し,定量した。剪断強度はかみそり刃を装着したレオメーターで筋線維に垂直方向で測定した。
【結果】 加熱により総コラーゲン量は減少しゼラチン化が認められたが,ISC量は増加しコラーゲン繊維の収縮が推察された。加熱肉のISC量は冷却保存・再加熱したもののISC量と同程度であったが,温蔵したものでは著しく減少した。生姜搾汁を加熱後(温蔵前)に添加した場合は,総コラーゲン量,ISC量が著しく減少した。これは収縮したコラーゲン繊維がゼラチン化するとともに,構造弛緩に伴いプロテアーゼが作用した結果であると考えられた。この総コラーゲン量,ISC量の減少と剪断強度の低下,官能評価の結果は一致していた。すなわち,温蔵中のコラーゲンの構造変化とプロテアーゼ作用を利用することで,噛み切りやすい鶏肉が調製されることが示された。