著者
熊谷 智義 広田 純一
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.23, no.23-suppl, pp.253-258, 2004-11-30 (Released:2011-04-13)

筆者らは、これまで、市町村総合計画の策定過程における住民参加の実態について、岩手県内の農村部町村の事例分析を行い、いかなる条件を有する市町村にどのような住民参加システムが望ましいかを解明することを目的に、住民参加のシステムとして、「事務局参加型」、「審議会充実型」、「住民意見聴取型」の3類型化を試み、現状と課題を明らかにしてきた。また、それらの検証のため、東北地方399市町村を対象としたアンケート調査を行い、類型分けの妥当性やそれぞれにおける課題等について考察を進めてきた注1。これまでの研究の中で、検討案の作成段階に住民が関わることから、「事務局参加型」が最も住民意向をダイレクトに反映することができるシステムであると考えてきた。ただし、「事務局参加型」では、計画素案までを住民参加型で作成しても、それが審議会で審議される際に、または庁内での検討時に、修正される可能性があり、その場合の調整作業が課題であることを明らかにした。そのため、これらの課題をクリアしている事例を調べる必要があり、町村部のもっとも進んだ事例を調査することが望ましいが、現状では適切な事例が見あたらず、以下の理由から、都市部の三鷹市を調査・分析の対象に選んだ。三鷹市の場合は、審議会を廃止しその機能を市民による検討組織に持たせること、また庁内での検討結果を説明するなどのフィードバックを行うことで、課題に対応している。また、三鷹市においては、'70年代より、住民参加の取り組みが行われ、その経験が蓄積されてきており、その中に、他の自治体で住民参加を進める際の参考となるものが見いだせる注2) 。さらに、同じ「事務局参加型」に分類されるシステムを採用している場合でも、個々の状況を比較すると、参加の技術、かける手間の面でも差があり、三鷹市の先駆性が際だっている。そこで、本稿では、三鷹市の総合計画策定における住民参加システムに注目し、3つの類型分けの観点から、実態を分析することを通し、町村部でこのような住民参加システムを適用する場合に必要な諸条件について、また、町村部にはそのまま適用することができない三鷹市固有及び都市特有の条件についてe有効な知見を得ることを目的としている。
著者
広田 純一 八巻 一成 藤さき 浩幸 土屋 俊幸
出版者
岩手大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1996

本研究の目的は、都市住民の中山間地域の農山村を舞台とした滞在型レクリエーション(=グリーンツーリズム)へのニーズに応えるとともに、中山間地域の活性化、およびそれを通じた農山村地域の環境保全を図るために、中山間地域の地域資源(自然、歴史文化、人材)をトータルに演出して観光資源として活用する方策を検討することである。最終年度である本年度は、中山間地域の滞在型レクリエーションの成功事例を比較検討し、その成功要因とともに、地域資源の観光資源としての生かし方のノウハウを探った。その結果、多くの事例は行政主導型であるが、その後の成功の如何は、主として地域住民の主体的参加および地域外の常連客(リピーター)づくりをいかに実現するかにかかっていること、その意味で、観光資源づくりの技術的なノウハウよりは、行政による住民のモチベーションの引き出し方、そして行政と住民の連携による受け入れ体制作りが重要であることが明らかになった。また、各種の施設づくり(宿泊施設、交流体験施設、直売所、農産物加工施設、飲食施設、地域の自然・歴史文化の展示施設等)やふるさと体験ツアーなどは、企画・計画策定段階から地域住民の参画を求めることによって、住民の参加意欲を引き出すことができるので、滞在型レクリエーションの受け入れ体制づくりの手段としても有効であることがわかった。さらに、持続的な滞在型レクリエーションを成立させるためには、宿泊、飲食、体験インストラクションなどについて、地域内の有機的な分業体制を敷くことが重要であることもわかり、成功事例の地域も含めて、今後の課題と言える。
著者
齋藤 朱未 服部 俊宏 藤崎 浩幸 広田 純一
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.II_31-II_36, 2016

本研究の目的は, 農家の起業活動の一環として注目されている農家レストランについて, 農家レストランの存在が地域住民の意識の変化にどのような影響を与えているのかを明らかにすることにある.そのために, まず立地条件の異なる2つの農家レストランを選定した.1つは農村集落型であり, もう1つは住宅地型である.これら2つの農家レストランを対象に, 地域住民がどの程度農家レストランの存在を認識し, 実際に利用しているのか, さらに地域住民の意識変化についてアンケート調査で把握した.その結果, 農村集落型の農家レストランでは地域住民の認知度, 利用は高く, 安全安心な生産物や食の提供に対して意識変化がみられた.住宅地型の農家レストランでは, 地域内からの利用は多いが, 認知度は2極化しており, 安全安心, 地域住民同士の交流といった項目に意識変化がみられた.
著者
向井田 善朗 熊谷 智義 広田 純一
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.18, no.18-suppl, pp.31-36, 1999-11-20 (Released:2011-04-13)
参考文献数
11

Folk museums of which functions are to collect, storage, display, research and educate local cultural and natural heritage, can contribute to make local people find the values of the countryside, to generate their feelings of pride and attachment to it, and to promote revitalization of rural community.We analyzed potentials of folk museums on these functions by questionnaires and case studies in Iwate Prefecture. The results are that the folks museums now don't have enough abilities to contribute to revitalization of rural community because of poor management systems, shortage of stuffs and budget, and lack of philosophy.
著者
佐藤 慶 山本 信次 広田 純一 Kei Sato Shinji Yamamoto Jun-ichi Hirota 岩手大学大学院農学研究科 岩手大学農学部 岩手大学農学部 Graduate School of Agriculture Iwate Univ. Faculty of Agriculture Iwate Univ. Faculty of Agriculture Iwate Univ
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画論文集 = Transactions of rural planning (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.241-246, 2001-12-07
参考文献数
5
被引用文献数
3

本研究では、地域づくりの優良事例の内容をミクロに分析し「住民主導」の内実を明らかにすることを目的とした。本事例からは、地区住民から出された要望を地域リーダーが具体化し、それを自治会役員会が承認し、地区全体の活動として実施するという、活動における地域リーダー層の役割を明らかにすることができた。こうした地域リーダー層以外の一般住民の意識と活動に対する関与の実態を明らかにすることを目的としたアンケート調査を行った。その結果、地区住民の中には「地域づくりを支持はするが、自ら積極的にかかわりたいとまでは思わない」といういわば「消極的支持層」が存在することが明らかになった。In J area in Murone village, Iwate Prefecture, several community activities have been found to contribute to revitalization of the rural community and people's exchange with visitors. This study is to analyze the involvement of local people in the development process of those activities, to discuss how the activities became possible and to analyze the consciousness of local people about those activities. The result of the questionnaire are summarized as follows : 1) a half or more local people agreed to do those activities, 2) though some of them had intention of leaving up those activities to someone else.
著者
八巻 一成 広田 純一 小野 理 土屋 俊幸 山口 和男
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.219-226, 2000-08-16
被引用文献数
7

森林レクリエーション計画においては, 利用ニーズに合った多様なレクリエーション体験の提供が重要な課題である。本研究では, このような視点からレクリエーション空間の計画, 管理のあり方を示したROS(Recreation Opportunity Spectrum)を取り上げ, わが国の森林レクリエーション計画における有効性を探った。まず, わが国における森林レクリエーション空間の実態とレクリエーション計画システムの現状を考察し, 課題を明らかにした。つぎに, ROSの成立過程, 基本概念, 計画作成プロセス, 適用事例について解説し, ROSとは何かを明らかにした。最後に, わが国の森林レクリエーション計画における意義および役割を検討した。その結果, ROSの特色であるレクリエーション体験の多様性という視点が非常に有効であると考えられた。
著者
佐々木 優希 広田 純一 和田 風人
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.203-208, 2013
被引用文献数
2 2

東日本大震災の被災地では,仮設住宅の集団入居が叶わず,分散居住を強いられた地域が多く,コミュニティの維持が困難な状況となっており,活動が休止状態であったり,解散した町内会も出ている。東日本大震災から,2年が経ち,多くの地区でようやく防災集団移転促進事業などが着工に至り,住宅再建への目途が立ち始めた一方で,被災地では人口流失やコミュニティの希薄化,復興協議に対する住民の不満,浸水域の具体的な利用方法など,課題がまだ山積している。これらの課題に対処していくには,行政やNPOなどの力も重要であるが,地域住民の結束力が不可欠であり,従前から地域住民の意向集約の場であり窓口ともなる町内会への期待は高い。著者らは,既報で,東日本大震災の被災地において,住民が分散居住したことにより,コミュニティの希薄化・脆弱化の問題が顕著であり,これを避けるための手段として町内会単位の情報共有や集落行事の再開,復興協議の重要性を指摘した。過去の震災復興の例では,山崎や北後らは自治会に対応する小さなスケールを単位で既存集落の居住者構成や空間構成に配慮することが住宅再建後のコミュニティの持続・継承に寄与すると指摘している。さらに北後らは,その条件として従前の路地空間への配慮,仮設団地の地区内での確保,地縁的コミュニティの継続,事業計画の決定前の住民との協議の重要性などを指摘している。しかし,これらの調査は震災から10年以上経過した後のものであり,内容も事業の手法に関する指摘が多い。また,仮設住宅内や災害公営住宅のコミュニティに関しては優れた研究が多いものの,元の自治会・町内会のコミュニティの変容に関する研究は少ない。そこで本研究では,東日本大震災の大津波によって甚大な被害を受けた岩手県釜石市の町内会を対象とし,町内会会員の分散状況とその把握状況,震災前後の町内会行事の変化,復興に向けての行政との協議状況を調査し町内会の現状と課題を整理することを目的とする。
著者
田中 豊 別所 辰哉 広田 純一
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.19, no.19-suppl, pp.295-300, 2000-12-08 (Released:2011-04-13)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

We analyze in this paper how the human network in a local community has been developed through the green tourism movement in the case of Yuda town in Iwate prefecture. We investigated who and how have been involved in the green tourism process by interviews and questionnaries to the related people. The findings are as follows; 1) The green tourism was managed by the Cooperatives and the local government in the carly stagr, but has turned to become locals people managing systems. 2) The green tourism movement has created and strengthen human networks within the local community. 3) Good initiatives of the local government was one of the most important factors to produce good results.
著者
冨田 正彦 広田 純一 隅田 裕明 佐藤 嘉倫 結城 史隆 八木 宏典
出版者
宇都宮大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1989

低水準ながら高度な生態学的平衡が長期に亙って維持されていた地域生態系が、開発行為によって急変革を余儀なくされている典型例として南アジアの天水田地域の最近の潅漑開発地の村落を選び、その(1)域生態系の構造、特にその自然構造、生産構造および生活構造の相互関係構造(2)潅漑開発に伴う地域生態系構造の変化と、随伴する系要素間の不整合の発現状況(3)前項の不整合の解消過程などを、導入潅漑開発の仕様・機能と併せて調査し、地域生態系に発現した不整合の潅漑開発機能との関係づけを目的として昭和62年に第1次調査を実施した研究の第2次調査である。第1次調査は主として試・資料収集、ヒアリング等により(1)、(2)を実施したが、(3)不整合の解消過程については現象のトレ-スに依る他ないので、観察集落を設定し、現地研究者の協力のもとに経過記録を続けて本年の第2回調査に至ったものである。調査は現地での学際討論を重視して全員が行動を共にし、平成元年8月1日〜9月20日に実施された。調査地域はインドのタミルナドゥ州アランタンギ地区(エガプルマル-村)とネパ-ルのテライ地方チトワン地区(モハナ村)である。タミルナドゥ州調査は昭和62年が本調査で今年は補足調査のため実調査日程は10日間で、Grand Anicut Canal(GAC)の第11支線水路系を選んで行政的なGAC管理と地域農民の水管理との補完関係とその結果としての用水供給実態を把握するとともに、その受益農村のサンプルとして同支線20番スル-ス受益地のエガプエウマル-集落(Egaperumalur Eri)を選んでGAC受益区域に入る以前の50年前にさかのぼって現在までの集落の経済、社会構造の変化を調べた。用水管理実態調査の方法はおもに各関係行政部局からの資料、記録デ-タの収集と、システム各部位の操作・管理責任者からの現地でのヒヤリングによった。エガプルマル-集落調査は集落に保管されている記録類の収集・解続が主で、集落の古老と現在の役員農民の協力のもとの実施した。なお、これらの全てにはコインバト-ル農科大学(Sivanappann教授他)の調査協力を受けた。テライ平野調査は昭和62年度は予備調査的段階に留まっていて、今回が実質的な本調査であったため30日間の実調査日をかけて約600haの受益水田面積を対象として5年前に完成しているPancha