著者
堀 愛 中村 祥子 外平 友佳理 岩野 俊郎 谷口 初美
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.421-429, 2006-12-01

ヒトと動物の共通感染症は現在200種以上が知られており,動物園従業員(飼育係,獣医師など)にとって重要な産業保健上のリスクの一つである.動物園で感染症の伝播を防ぐためには,従業員,来園者,動物,そして施設(環境)のそれぞれに対する感染症対策が必要となる.本稿では,わが国の動物園感染症対策の先駆けとして某動物園において感染症対策システムを構築した事例を産業保健の観点から報告する.本システムは,1.通常時の感染症予防活動および2.感染症発生時に備えた危機管理体制の2つの要素から成る.また,事業所の実情に合致し地域に根ざした持続的な感染症対策システムとするため,産業医,獣医師,地域感染症対策チームなどの専門家が協働した.
著者
谷口 初美 山田 美恵子 内藤 知佐子 内海 桃絵 任 和子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.2_71-2_79, 2014-06-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
34

【目的】新人看護師のリアリティ・ショックの現状を理解し,大学から臨床へのスムーズな移行を促す看護基礎教育のあり方を探ること。【研究方法】A大学を卒業後,A大学の附属病院に就職した新人看護師10名を対象に,質的研究の記述的現象学を用い実施した。本研究はA大学医学部とA大学病院看護部の倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】新人看護師のリアリティ・ショックの要因として,①求められる能力のハードルが高すぎ,何もできない自己に対するショック,②職場における先輩との人間関係がクローズアップされ,基礎教育のときから臨床現場に即した看護ケア,high riskケアと接遇の必要性が明らかになった。【考察】安全で質の高い臨床実習を保障するため先進国が実施している大学と臨床が協働で取り組むシミュレーション教育のシステム構築の必要性が示唆された。
著者
谷口 初美
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.569-577, 2011-01

本研究の目的は, ホノルルに移りまだ異文化社会に慣れない時期に母になった日本人女性の出産経験が彼女たちの人生にもたらした意味を探求し記述することである。本研究は対象者の生きた経験の意味を理解し対象者の主観的な意識に焦点を当てる記述的現象学を用いた。対象者は10名でデータ分析はColaizziの分析方法を使用した。分析の結果, 次の4つのカテゴリーで表された。『外国で暮らすことへのチャレンジ』『母となることへのチャレンジ』『母になるゴールへ向かって』と『他者との新しい関係』であった。外国での出産経験は異文化適応だけでなく多くの身体的精神的困難をまねいた。ハワイの家族中心の社会環境は日本人カップルにとっては好都合であり, 夫とともに初めての出産を経験したことでより強い夫婦の絆を培い, 新しい命である児からの励まし, そして親や周囲への再認識と感謝の念が表された。また, 母になることで自分自身が新しい家族にとってかけがえのない存在であることを認識した。ホノルルでの出産経験は彼女たちの精神的な成熟を促し, 母親になったことを肯定的に受け止めさせていた。
著者
巽 正志 西田 憲一 岩出 義人 谷口 初美 福田 和正 古市 徹 秋永 克三 吉岡 理 大熊 和行
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.268, 2010

三重県桑名市の不法投棄現場は有機溶剤系の廃棄物が多く投棄されており、それらVOCを含む汚染地下水が周辺に拡散したサイトである。そのサイトでは、2002年度から遮水壁による汚染物質の囲い込みおよび揚水循環浄化法により環境修復事業を実施している。その経過については既に本学会で発表した。今回は、高濃度汚染除去後に微生物分解による減衰を低濃度汚染残留地の浄化に採用するため、三重県では微生物叢によるモニタリング方法、および微生物分解によるVOC汚染浄化の調査研究を行っており、これまで行った試験結果について報告する。 クローンライブラリー法により汚染サイトの土壌等の菌叢調査を実施した。VOC含量の高い土壌中ではAciobacter sp.の存在比が高かった。また、現場地下水にVOCを添加した系でベンゼン、トルエンの微生物分解試験を行った結果、約50時間で分解された。
著者
谷口 初美 福田 和正 王 岩 HINOUE Mitsuo 山内 和紀 市原 剛志 水野 康平 石松 維世 世良 暢之 濱崎 光宏 高橋 浩司 堀川 和美
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.349-367, 2004-09-01
被引用文献数
4

廃棄物処分場や不法投棄現場においてガス発生が多発している.硫化水素ガス発生予測の基礎となる土壌細菌叢の動態を量的,質的に評価するための遺伝子工学的検査法を構築することを目的に,従来の染色法,培養法による検証と共に,実験手法の確立を行った.全菌数測定にreal time PCR法を導入し,その有用性を明らかにした.Direct PCRにより増幅した16S rRNA遺伝子の塩基配列決定により,菌種の同定を行った.硫化水素ガス発生に関与するイオウの酸化または還元菌群の頻度を調べた結果,復旧作業中の不法投棄現場では,深層部の土壌で,無芽胞硫酸還元菌とイオウ酸化細菌群が高頻度に同程度検出された.埋立廃棄物処分場では,深層部に有芽胞硫酸還元菌やClostridium属菌が多く検出され,イオウ酸化細菌群はほとんど検出されなかった.硫酸還元菌については嫌気培養法により同様の結果を得た.理化学検査の結果,硫酸イオン濃度は不法投棄現場では深層部に,埋立処分場では表層部に高かった.廃棄物処分場や不法投棄現場では硫化水素ガス発生の潜在的危険性が示唆され,遺伝子工学的検査システムが土壌の微生物叢評価および処分場のガス発生予知に有用であると考えられる.
著者
小川 みどり 高田 真一朗 高橋 正雄 安田 悦子 渡瀬 真梨子 谷口 初美
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.401-410, 2006-12-01

手洗いおよび手指消毒は最も基本的な感染防止策である.現在,速乾性擦式消毒剤による手指衛生が国際的なゴールドスタンダードとなっている.しかし,我々の調査では,2004年に10.4%(48人中5人),2005年に34.3%(35人中12人)と多くの無効例が認められた.2005年の検体について,コロニーの形態より円形,不整形,拡散性コロニーに大別し,残存菌の性状を調べた.円形コロニーはブドウ球菌属の菌であり,不整形・拡散性のコロニーはグラム陽性有芽胞桿菌であると考えられた.消毒後の菌数が消毒前と同数以上あるいは300個以上の無効例の中で,ブドウ球菌属の菌が残存したと考えられる場合が3例,セレウス菌を含むグラム陽性有芽胞桿菌が残存したと考えられる場合が9例であった.医療現場では,速乾性擦式消毒剤による手指消毒を過信することなく,必要に応じて滅菌手袋の着用などの対策を講じるべきである.