著者
名和田 義高 濱田 晃市 斎藤 聡
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.409-416, 2012 (Released:2012-08-09)
参考文献数
23

症例は24歳女性.18歳時より飲酒を開始し,飲酒量は増加し,2011年3月にアルコール性肝炎で他院に入院し保存的加療で改善した.その後も飲酒を継続したところ,同年6月に食欲低下・全身倦怠感が,さらに黄疸・発熱が出現し,当院を受診した.意識は清明なるも,発熱,AST優位の血清トランスアミナーゼの上昇,血清総ビリルビンの高度上昇,ALP・γ-GTPの高度上昇,プロトロンビン時間著明低下,CTにて高度脂肪化を認め,文部省高田班の診断基準に基づき重症型アルコール性肝炎と診断した.ビリルビン吸着療法,プレドニゾロンの投与を行い肝機能の改善を認めた.第30病日のCTで脂肪肝の改善を認め,第50病日に施行した肝生検では重症型アルコール性肝炎回復期の所見で,第72病日に退院となった.本邦の症例報告例の中では,最も若年で発症した重症型アルコール性肝炎かつ救命例であり飲酒量の詳細把握をしえた貴重な症例と考え報告した.
著者
斎藤 聡 八田 光弘 星 浩信 小柳 仁
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.27, no.9, pp.769-776, 1995-09-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
28

近年心臓移植再開の気運が高まり,心臓移植後患者の術後管理を我々が行う日も近い.移植後患者管理のためには,心臓移植後脱神経支配を受けた心臓の生理機能の理解が重要課題である.本論文では心臓移植によって脱神経支配を受けた移植心の安静時および運動負荷時の心機能を中心に考察を加えた.心臓移植によって移植心は自律神経系の調節機構を失っているにもかかわらずほとんどの心臓移植患者は生体の需要に対応できる生理機能が温存されNYHAI度の状態になり社会復帰することができる.移植心の安静時心機能はほぼ正常である.しかし拡張能障害,洞機能不全が認められることがありこれに対する注意が必要である.また移植心は運動負荷に対して正常心と同様心拍出量を増加させることができるが,そのメカニズムは運動初期のFrank-Starling機構,それ以後は血中カテコールアミンの作用という正常心とは異なる機構によって脱神経支配を代償している.また移植心の電気生理,薬理について言及したが,移植心の生理特性を理解すれば移植後の薬物治療も躊躇する必要はない.しかし移植心は脱神経支配に加え,拒絶反応,サイクロスポリン投与による高血圧,冠動脈硬化などによる心筋障害の危機にさらされているためこれらに対する厳重な経過観察が必要である.本論文において著者は,移植心の生理機能を考察し心臓移植は重症心不全患者に対する優れた治療であり,本邦においてはその治療体系において欠損した部分であることを示した.我々は心臓移植を心疾患治療体系の一部として組み込み,一般の理解を得る努力を続けるべきであると考える.
著者
中村 太一 斎藤 聡 池田 健次 小林 正宏 鈴木 義之 坪田 昭人 鯉田 勲 荒瀬 康司 茶山 一彰 村島 直哉 熊田 博光
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.94, no.3, pp.157-162, 1997-03-05 (Released:2011-06-17)
参考文献数
12

従来より肝性脳症合併肝硬変症例では頭部MRIT1強調画像にて淡蒼球に高信号域を認めるとされる. 今回各種慢性肝疾患で頭部MRIを施行し若干の知見を得た. T1強調画像の淡蒼球の高信号は慢性肝炎では21例中1例 (4.8%), 肝硬変では41例中32例 (78%) に出現し, Child分類別ではA59%, B78%, C100%であり, 出現率は肝機能と相関がみられた.この所見は経過観察により不可逆性であった.さらに脂肪抑制画像では高信号域はより明瞭となり, その原因が脂肪沈着でないことが示唆された. MRIの所見は慢性肝炎ではほとんどみられず, 肝硬変では脳症を発症する以前より病変を認め, 慢性肝疾患の重症度の予測に役立つと考えられた.
著者
今井 則博 池田 健次 瀬古 裕也 平川 美晴 川村 祐介 保坂 哲也 小林 正宏 斎藤 聡 瀬崎 ひとみ 芥田 憲夫 鈴木 文孝 鈴木 義之 荒瀬 康司 熊田 博光
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.758-760, 2010 (Released:2010-12-29)
参考文献数
5
被引用文献数
3 2

Miriplatin is a novel lipophilic platinum complex developed to treat hepatocellular carcinoma (HCC). Although HCC patients frequently have coexisting severe liver cirrhosis, there is no prospective data regarding clinical toxicity of miriplatin in HCC patients with severe cirrhosis. We retrospectively evaluated the safety and efficacy of transcatheter arterial chemotherapy with miriplatin in 34 HCC patients with severe liver cirrhosis (Child-Pugh grade B). An anti-tumor effect of complete response was achieved in 8 of 34 patients and no serious adverse events were observed. These results suggested that transcatheter arterial chemotherapy with miriplatin can be used safety for HCC patients with Child-Pugh B liver cirrhosis.
著者
名和田 義高 濱田 晃市 田島 浩子 西野 徳之 中澤 敏弘 十林 賢児 斎藤 聡
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.109, no.8, pp.1394-1400, 2012

症例は84歳女性.1998年よりC型肝硬変でフォローしていた.2008年に心房細動・脳梗塞を発症しワルファリンカリウムの投与を開始したが,2011年2月に食道静脈瘤破裂で入院した際に,門脈血栓を認めた.ダナパロイドナトリウムを14日間投与し門脈血栓は消失した.ワルファリンカリウム投与中に門脈血栓症が新たに出現し,さらにこの血栓がダナパロイドナトリウムで消失した点より貴重な症例と考え,報告した.<br>
著者
鈴木 義之 瀬崎 ひとみ 芥田 憲夫 鈴木 文孝 瀬古 裕也 今井 則博 平川 美晴 川村 祐介 保坂 哲也 小林 正宏 斎藤 聡 荒瀬 康司 池田 健次 小林 万利子 熊田 博光
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.147-149, 2011 (Released:2011-03-22)
参考文献数
4

To further improve therapeutic effect on chronic hepatitis C, we have administered NS3 inhibitor and NS5A inhibitor together, and examined effects of early antiviral agent therapy. The subjects were five cases where interferon is ineffective (null responders). The NS5A and NS3 inhibitors are oral drugs and were daily administered for 24 weeks. Figure 1 shows time-dependent change of the number of viruses after the therapy started, and rapid decrease of viruses is recognized. Within 12 hours, HCV-RNA decreased by more than 2 log IU/ml in every patient. Two patients became negative for the virus by the 15th day after the therapy started. Furthermore, 80% of cases by the 28th day and all the cases by the 56th day became negative. The new therapy has manifested excellent early antiviral effect.