著者
最上 晴太 近藤 英治 千草 義継
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

前期破水は早産の主要な原因である。早産は時に出生児に合併症・後遺症を残し、医学的・社会的に大きな問題である。本研究では、①ヒト羊膜において破水前に微細な損傷→修復という細胞外マトリックスのリモデリングが行われ、恒常性の維持機構があるか、②胎仔マクロファージ欠損マウスを用いて、自然免疫による羊膜の修復機構をin vivoで解析、③細胞外マトリックスによる前期破水の治療法の探索を行う。このように前期破水を「卵膜の恒常性の破綻」という新たな観点からとらえて、早産の予防・治療法の開発を目指す。
著者
久保 のぞみ 最上 晴太 万代 昌紀 近藤 英治
出版者
一般社団法人 日本周産期・新生児医学会
雑誌
日本周産期・新生児医学会雑誌 (ISSN:1348964X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.243-250, 2021 (Released:2021-09-06)
参考文献数
43

出生児の細菌叢形成は,母体細菌叢,胎生期の環境,分娩方法などに影響される.さらに抗生剤の使用,食事,母乳栄養,環境など出生後の因子が児の細菌叢をかたち作る.児の細菌叢は免疫系の形成に深くかかわり,正常な細菌叢が形成されない場合,喘息,炎症性腸疾患,自己免疫疾患などの発症リスクを増加させる.近年,新生児の正常な細菌叢の形成を目的とした,母体の腟分泌物の新生児への移植などが試みられ,アレルギー疾患などの新たな予防法として期待されている.
著者
小林 弘尚 最上 晴太 高橋 希実 馬場 長 近藤 英治 小西 郁生
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.405-409, 2015 (Released:2015-11-27)
参考文献数
13

リステリア感染症は主にグラム陽性桿菌のListeria monocytogenesにより引き起こされる.この比較的まれな感染症は,周産期では時に流産,早産,子宮内胎児死亡を生じ,予後不良の疾患である.症例は35歳の初産婦,妊娠5週ごろに生ハムとチーズを海外で摂取した既往がある.妊娠9週で39.5℃の発熱を認め受診した.血液培養ではListeria monocytogenesが検出され,直ちに抗生剤による治療を開始した.母体はしばらく弛張熱が続いたが徐々に症状は改善された.しかし稽留流産となった.子宮内容物の病理診断では,多数の好中球浸潤と絨毛の壊死が著明であった.グラム染色では菌体を検出できなかった.妊婦が高熱を発症したときはリステリア感染症を鑑別に入れ,血液培養がその診断に必須である.ペニシリン系の抗生剤を迅速に使用することで母体の予後を改善することができる.〔産婦の進歩67(4):405-409,2015(平成27年10月)〕
著者
小西 行郎 秦 利之 日下 隆 諸隈 誠一 松石 豊次郎 船曳 康子 三池 輝久 小西 郁生 村井 俊哉 最上 晴太 山下 裕史朗 小西 行彦 金西 賢治 花岡 有為子 田島 世貴 松田 佳尚 高野 裕治 中井 昭夫 豊浦 麻記子
出版者
同志社大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-06-28

発達障害とりわけ自閉症スペクトラム障害(以下ASDと略す)について、運動、睡眠、心拍、内分泌機能、体温などの生体機能リズムの異常を胎児期から学童期まで測定し、ASDにはこうした生体機能リズムの異常が症状発生の前、胎児期からでも見られることを発見した。それによって社会性の障害というASDの概念を打ち破り、生体機能リズムの異常としてのASDという新しい概念を得ることができた。この研究を通して、いくつかのバイオマーカを選択することが可能になり、科学的で包括的な診断方法を構築すると共に、障害発症前に予防する先制医療へ向けて展望が開けてきた。