著者
佐々木 あや乃 藤井 守男
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

研究代表者は、『精神的マスナヴィー』の逸話部分の下訳を終え、出版に向け訳書の解説執筆に着手した。研究分担者は、ルーミー研究に不可欠な基本文献蒐集をおこない、『精神的マスナヴィー』全篇の翻訳も鋭意続行した。『精神的マスナヴィー』の数多の写本の存在が知られているが、本研究では、当初の予定通りニコルソン版を底本とし、データベースを作成する作業を進めるため、研究代表者はエンジニア班と校閲・入力班を組織し、本年度はほぼ毎月研究会を開催し、進捗状況を報告しあう機会をもった。作業途中で、イランの言語・文学アカデミー(ファルハンゲスターン)から最新のマスナヴィーが出版されたとの情報を得て最新版を入手したものの、ニコルソン版との差異がかなり激しいことが判明したため、この版は採用せず、当初の予定通りニコルソン版を底本としたデータベース作成を続行することとした。また、ニコルソン版では、冒頭から2835詩行までが、マスナヴィー最古の版であるコニヤ版を反映しきれていないという事実も判明した(ニコルソン版は2836詩行以降はコニヤ版を完全参照している)ため、本研究においては、ニコルソン版とコニヤ版を比較しながら、2835詩行までの完全版データベースを構築するという方針転換を強いられることとなった。よって、毎月の研究会開催により鋭意準備を進めた結果、今年度は1200詩行前後までの校閲と入力、修正作業にとりかかり、作業のペースを把握することとした。次年度(最終年度)でコニヤ版に基づいた、全2835詩行のデータベース構築が完成する予定である。
著者
月村 辰雄 中川 久定 葛西 康徳 川中子 義勝 中川 純男 佐々木 あや乃 多賀 茂 羽田 正 月村 辰雄 松浦 純
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1999

本研究は,古典の受容に関してもっとも重要なファクターであると考えられる古典教育について,現代,世界の各地域でどのように意義づけられ,どのように教えられ,かつそれぞれの文明圏にどのような効果を及ぼしているのかを,内外の研究者を招いて共同討義によって明らかにし,その上でさらに考察を深めようとしたものである。本年度は4名の研究者を講演に招いた。その結果,近代の古典学の源流の一つともいえるベルリン大学における古典教育の具体像,近現代を通じて200年以上も古典研究のエリート層育成に力があったフランスのコンクール・ジェネラルというシステム,が明らかとなった。また,ホメロス以来の光輝ある古典の伝統と現代ギリシア語による一般大衆教育との鋭い対立という問題を抱えるギリシアの実情報告は,古典教育の持つマイナス面に対する意識を新たにさせた。(これは今後の検討課題である。)以上のより詳細な内容は,特定領域研究「古典学の再構築」研究成果報告書第7分冊,B03調整班報告書において発表される。
著者
佐々木 あや乃
出版者
東京外国語大学
雑誌
東京外国語大学論集 (ISSN:04934342)
巻号頁・発行日
no.68, pp.99-128, 2004
著者
佐々木 あや乃 羽田 正 枡屋 友子 佐々木 あや乃
出版者
東京外国語大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1999

11世紀に成立した、フェルドゥスィー作の『シャーナーメ(王書)』は、イラン人が自らの文化を強く意識した代表的作品であり、ペルシア語世界屈指の古典である。栄耀栄華を誇っていたペルシアが7世紀中葉にアラブに征服された後、沈黙の2世紀を経て、シュウービーヤと呼ばれる文化的ナショナリズムのうねりが起こってきた中で、ペルシア語文化圏に伝わる神話や伝説・語りを通して、フェルドゥスィーがまとめあげたのが、この『シャーナーメ』なのである。これまで、11世紀の成立時から現代に至るまでの各時代において、『シャーナーメ』の有した社会的意義を明らかにすることを目的とした研究を行ってきた。14年度はイラン本国に焦点を絞り、イラン文部省(高等教育省)、イラン国会図書館、フェルドウスィー大学(在マシュハド)等の協力を得て、以下の調査を行った。(1)イラン国内の『シャーナーメ』写本の所在についてのデータをまとめる。(2)イラン・イスラーム革命(1979年)の前後で、イランの国語教科書にとりあげられた『シャーナーメ』に変化がみられるか、変化があるとすればいかなる変化がみられるのかを探る。イラン文部省(高等教育省)で、革命前・後、革命後現政権が落ち着きを見せ始めた1990年代、及び現在の4期にわたり、小・中・高校の国語教科書を閲覧、調査にあたる。(3)イラン国内のマイノリティー(ペルシア語を母語としない人々)にとっての『シャーナーメ』とは何かについての研究を進めた。A.エンジャヴィー氏の『フェルドゥスィーの書』3巻をもとに分析を進め、現地での各マイノリティーヘのインタビュー等も含め、『シャーナーメ』とマイノリティーとの関わりを探索する。(4)『シャーナーメ』らしさが表れている物語の翻訳を試みる。中学・高校の教科書に必ずとりあげられている「ロスタムとアシュクブースの物語」では、戦闘場面の勇壮さが鋭い音とリズムの組み合わせ、スケールの大きな比喩表現を用いて描かれている。勇士たちの言葉の掛け合い、嘲笑や挑発までもが見事に表現しつくされた物語であり、傑作中の傑作であるといえよう。
著者
藤井 守男 佐々木 あや乃
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、神秘主義の発展過程からみて重要性が際立つ3つのペルシア語説教テクストの特徴を明らかにするため、独自の検索機能を設定した「ペルシア語説教テクスト文例対比データベース」を構築した。これを活用することで、13世紀の後半に頂点を迎えるペルシア神秘主義文学の形成過程に、ペルシア語説教テクストが果たした役割の学問史的位置づけを実証的に提示することが可能となった。
著者
藤元 優子 藤井 守男 山岸 智子 ターヘリー ザフラー 佐々木 あや乃 竹原 新 アーベディーシャール カームヤール 佐々木 あや乃 鈴木 珠里 竹原 新 タンハー ザフラー ターヘリー 藤井 守男 前田 君江 山岸 智子 山中 由里子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究はイランにおける多様な文学的言説を、ジェンダーを分析的に用いて総合的に検証することで、文化的周縁に置かれ、常に歪められてきたイラン女性の実像を明らかにし、ひいてはイスラーム世界に対する認識の刷新を図ろうとした。古典から現代までの文学作品のみならず、民間歌謡、民話、祭祀や宗教儀礼をも対象とした多様なテクストの分析を通して、複数の時代・階層・ジェンダーにまたがる女性の文学的言説の豊潤な蓄積を立証することができた。