著者
鈴木 恵輔 加藤 晶人 光本 (貝崎) 明日香 沼澤 聡 杉田 栄樹 中村 元保 香月 姿乃 井上 元 柿 佑樹 中島 靖浩 前田 敦雄 森川 健太郎 土肥 謙二
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.35-38, 2021-03-31 (Released:2021-03-31)
参考文献数
10

ジフェンヒドラミンは抗ヒスタミン薬であり過量内服により多彩な中毒症状を呈するが, 重症例では最悪死に至ることがある。近年インターネットなどで取り上げられ, 自殺目的での中毒症例の増加が懸念されている。今回, 市販の抗ヒスタミン薬の大量服薬により心肺停止に至った症例を経験したので報告する。17歳女性。公園内で倒れているところを通行人が発見し救急要請。ジフェンヒドラミン12,000mg内服したと推定され, 救急隊現着時には心肺停止状態であった。当院救命救急センター来院時も心肺停止状態であり蘇生することはできず永眠となった。後日ジフェンヒドラミンの血中濃度を測定したところ, 来院時の血中濃度は26.73µg/mLと過去に報告されている心肺停止症例と比較しても高値であった。OTC医薬品として簡単に手に入る薬剤での死亡症例のため治療側も販売側も十分に注意していく必要があると考えられる。
著者
鈴木 恵輔 加藤 晶人 光本(貝崎) 明日香 沼澤 聡 井上 元 中島 靖浩 前田 敦雄 森川 健太郎 八木 正晴 土肥 謙二
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.611-615, 2020-08-31 (Released:2020-08-31)
参考文献数
10

ジフェンヒドラミンは抗アレルギー薬,風邪薬,睡眠改善薬などとして用いられている。今回,ジフェンヒドラミン4,990mgを内服した急性中毒例に対して血液透析を施行し,血中濃度測定を行った症例を経験した。症例:22歳,女性。意識障害のため当院に搬送され,眼振や痙攣を認めた。現場に落ちていた空包からジフェンヒドラミン中毒を疑い,人工呼吸器管理,血液透析などの集中治療を行った。第4病日には抜管し意識清明となり,本人よりレスタミンUコーワ錠®などを内服したことを聴取した。その後,合併症なく経過し第8病日に自宅退院となった。血中濃度測定を行うと腎排泄だけでなく,効果が乏しいと考えられていた血液透析によってもジフェンヒドラミンが除去されることが示唆された。したがって,重症のジフェンヒドラミン中毒例では血液透析を考慮してもよいかもしれない。
著者
中村 俊介 三宅 康史 土肥 謙二 福田 賢一郎 田中 幸太郎 森川 健太郎 有賀 徹
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.7, pp.312-318, 2011-07-15 (Released:2011-09-13)
参考文献数
19
被引用文献数
1

背景:熱中症の後遺症として中枢神経障害を生じた症例の報告は散見されるが,発生に関わる要因について検討されたものは少ない。目的:熱中症の臨床所見から中枢神経系後遺症の発生要因を明らかにする。方法:2006年,2008年に日本救急医学会熱中症検討特別委員会が実施した症例調査であるHeatstroke STUDY 2006およびHeatstroke STUDY 2008から中枢神経系後遺症を生じた症例,および対照として後遺症なく生存したIII度熱中症の症例を抽出し,各々の診療情報について分析を行った。結果:全症例数は1,441例であり,中枢神経系後遺症は22例(1.5%)で認めた。重複したものを含め後遺症の内容は,高次脳機能障害15例,嚥下障害6例,小脳失調2例,失語および植物状態が各1例であった。中枢神経系後遺症を生じた群の男女比は13:9,平均年齢は62.6歳であり,一方,後遺症なく生存したIII度熱中症は計286例で男女比213:72(不明1),平均年齢55.4歳であった。来院時の臨床所見については,中枢神経障害を生じた群で90mmHg以下の血圧低下,120/分以上の頻脈を多く認めたが,後遺症なく生存したIII度熱中症群との間に有意差はなかった。一方,Glasgow coma scale(GCS)の合計点,体温,動脈血ガス分析のbase excess(BE)において有意差を認め(各々p=0.001,p=0.004,p=0.006),また来院後の冷却継続時間についても有意差がみられた(p=0.010)。結語:中枢神経系後遺症の発生例では来院時より重症の意識障害,高体温,BE低値を認め,冷却終了まで長時間を要していた。中枢神経系後遺症を予防するためには,重症熱中症に対して積極的な冷却処置および全身管理,中枢神経保護を目的とした治療を早急に行うことが重要である。
著者
中村 元保 加藤 晶人 井上 元 鈴木 恵輔 中島 靖浩 前田 敦雄 森川 健太郎 八木 正晴 土肥 謙二
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.407-410, 2020-12-28 (Released:2020-12-28)
参考文献数
7

症例は89歳の女性。身長147cm, 体重43kgと小柄で慢性閉塞性肺疾患 (Chronic Obstructive Pulmonary Disease : COPD) の既往歴がある。1カ月前から呼吸困難を自覚していた。朝に呼吸困難が増強したためにツロブテロールテープ2mgを1枚胸部に貼付したが, 症状改善ないために夕方に2枚目を胸部に追加貼付した。追加貼付2時間後から動悸, 嘔気を自覚したために救急要請した。救急隊到着時は意識レベルJCS1であったが, 嘔吐が出現し意識レベルJCS100まで低下し当院へ救急搬送された。搬送時意識障害は改善傾向であり, 胸部に貼付されていたツロブテロールテープ2枚を剝離したところ動悸と嘔気が消失した。臨床症状よりツロブテロールテープによる中毒症状が疑われた。貼付薬は容易に自己調整できるが, 高齢者や乳幼児など管理能力に問題がある場合や, 低体重の症例では使用方法に注意が必要となる。また, 救急対応の際には全身観察での貼付薬の有無の確認も必要となってくる。
著者
川又 達朗 刈部 博 土肥 謙二 苗代 弘 平林 秀裕 村上 成之
出版者
一般社団法人 日本脳神経外傷学会
雑誌
神経外傷 (ISSN:24343900)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.21-29, 2007-12-27 (Released:2022-06-27)
参考文献数
24
被引用文献数
1

In order to clarify clinical characteristics of "traumatic" intracranial hypotension (TIH) treated in Japan, 100 Japanese articles were reviewed and compared to 201 foreign articles. The results revealed the features of TIH in Japan as follows; 1) prolific numbers of the reported cases (227 cases) (foreign cases; 15 cases), 2) high incidence (69%) of traffic accident as a cause of injury (foreign cases; 20%), 3) long periods from injury to diagnosis; more than 1 year in many cases, 4) CSF leakage from lumber regions in vast majority cases (foreign cases: cervicothoracic regions; 91%), 5) fewer cases (55%) showing postural headache (foreign cases; 86%), 6) fewer cases (49%) showing dural enhancement on Gd-MRI (foreign cases; 93%), 7) fewer cases treated conservatively (foreign cases; 71%), 8) high numbers of blood patch procedure per patient, 9) lower cure rate (22%) by blood patch procedure (foreign cases; 100%). These results suggest that the clinical entity of TIH treated in Japan differs from that treated in foreign countries.
著者
土肥 謙二 加藤 晶人 八木 正晴
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1056-1065, 2021-09-10

Point・診断については低髄液圧症に関する症状を理解し,直接的な髄液の漏出を証明するために診療指針に基づいて画像診断を行う.・治療についてはまず安静と十分な補液を行う.硬膜下血腫合併例では患者ごとの病態と緊急性を判断して治療の優先順位を決定する.・病名については臨床・研究ともに未だ混乱している.グローバルな研究を推進するためには正しい診断と病名の統一が必要である.
著者
福田 賢一郎 森川 健太郎 八木 正晴 土肥 謙二 村上 雅彦 小林 洋一 中島 靖浩 中村 元保 香月 姿乃 鈴木 恵輔 井上 元 柿 佑樹 前田 敦雄 加藤 晶人
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.58-68, 2020

患者に対する医療安全の確保は感染管理とともに病院における危機管理の骨格である.さらに病院評価としても院内の医療安全システムの構築が求められている.近年では予期せぬ院内急変への対応だけではなく,院内急変の予防に向けた取り組み(RRS:Rapid Response System)が注目されている.昭和大学病院および昭和大学付属東病院では緊急性に応じて院内急変プロトコールがいくつか存在する. RRS導入前における予期せぬ院内急変について,特に緊急性の最も高い緊急コード事例(コードブルー事例)について検討を行った.方法:2014年4月から2018年3月までの4年間にコードブルーの要請があった症例129例を対象として解析を行った.院内急変のうち入院患者は41.0%であり,その他が外来患者や患者家族・職員であった.平均年齢は63.6歳であった.心肺停止症例は26.4%であり,平均年齢は71.2歳であった.心肺停止症例の82.4%は入院患者であった.発生頻度は入院1,000人当たり4.36人であった.心肺停止患者のうち44%で蘇生に成功したが,神経機能が急変前まで改善した例は全心肺停止症例の20.6%のみであった.心拍再開までの時間が短い症例で神経機能予後は良好であった.昭和大学病院および昭和大学付属東病院では院内心肺停止の発生頻度は過去の報告よりは少ない傾向にあったが,今後の院内急変対応の課題としては院内心停止患者の救命率をより向上させること,さらには院内心停止発生率をさらに低下させるためRRSの導入を含めたシステムの構築が必要である.院内発生の心肺停止症例でも予後不良例は依然として存在している.したがって,院内急変あるいは院内心肺停止を予防することが将来的な病院の医療安全の確保の方策として極めて重要である.
著者
土肥 謙二 大滝 博和 小川 武希 宮本 和幸
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本検討の目的は熱中症モデルにおけるneuroinflammationの病態のメカニズムを明らかにすることであった。まず本研究ではいまだ確立されていなかったマウスの熱中症モデルを開発し、生理学的評価、血液学的評価、ミネラル補充の効果について明らかにした。さらに現在は酸化ストレスの評価や水素水を用いた新規治療法の開発に向けた検討を行っている。また、熱中症モデルにおいては腸管のダメージが組織学的に強かったことから重症熱中症モデルにおけるneuroinflammationと脳-腸管によるsystemic inflammationとの関係について再検討している。