著者
村田 伸 津田 彰 稲谷 ふみ枝 田中 芳幸
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.88-95, 2005-04-20
被引用文献数
24 29

本研究は, 在宅障害高齢者110名(平均年齢83.1歳, 男性17名, 女性93名)を対象に, 転倒歴と注意力及び身体機能を評価し, 転倒に影響を及ぼす要因を検討した。転倒経験群28名, ニアミス(転倒しそうになった)体験群33名, 非経験群49名の3群間の比較において, 転倒経験群とニアミス体験群のTrail making test-Part A(TMT-A)は, 非経験群より有意に小さく, 身体機能の自己認識の逸脱は有意に大きかった。また, 転倒経験群の最大一歩幅, 歩行速度, 足把持力, 足関節背屈角度の4項目は, ニアミス体験群と非経験群より有意に低値を示した。さらに, 転倒歴の有無を目的変数としたロジスティック回帰分析の結果, 注意の指標としたTMT-A, 足把持力, 足関節背屈角度のオッズ比が有意であった。本結果は, 立位姿勢保持が不安定な在宅障害高齢者では, 身体機能の低下, とくに足把持力や足部可動性などの足部機能の低下が転倒の危険因子であることのみならず, 注意力の低下も転倒を引き起こす重大な要因であることを明らかにした。
著者
安田 直史 村田 伸
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.55-63, 2014-07-01 (Released:2014-09-12)
参考文献数
43
被引用文献数
1 2

[目的]本研究の目的は,フットケアと足把持力トレーニングの介入を要介護高齢者に行い,その効果について無作為化比較対照試験によって検討することである。[方法]対象は52名,フットケアと足把持力トレーニングを行う群18名,足把持力トレーニングのみを行う群17名,コントロール群17名の3つの群に分けた。介入は週に2回,12週間実施した。足把持力,足部柔軟性,Functional Reach Test,歩行速度,重心動揺,握力,大腿四頭筋筋力を介入前後に測定した。[結果]二元配置分散分析の結果,フットケアとトレーニングの併用群の足把持力,足部柔軟性,FRT,歩行速度は有意に高まり,トレーニングのみの群やコントロール群と比較しても有意に高値を示した。また,トレーニングのみの群の足把持力,FRT,歩行速度も介入後有意に高まり,コントロール群と比較して有意に高値を示した。[結論]フットケアと足把持力トレーニングの併用を行うことは,トレーニングを単独で行うより足部柔軟性が改善され,足把持力が増強し,動的立位バランスの向上や歩行速度が増加することが示唆された。
著者
竹井 和人 村田 伸 大田尾 浩 安田 直史 甲斐 義浩
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.89-92, 2012 (Released:2013-04-02)
参考文献数
20

[目的]下肢荷重力および臀部荷重力を端座位で計測可能な装置を作成し,その測定器から得られる測定値の臨床的意義について検討した。[対象]要介護女性高齢者23名(要介護認定:要支援1~要介護1,平均年齢83.8±8.5歳,平均体重44.0±8.6?)とした。 [方法]下肢荷重力および臀部荷重力測定値と身体機能(座位保持能力,歩行能力,下肢筋力)との関連を,ピアソンの相関係数を用いて分析した。[結果]下肢および臀部荷重力は各身体機能との間に有意な正相関が認められた。また,下肢荷重力と臀部荷重力との間に有意な正相関が認められた。[結語]本測定器は,下肢機能の評価に加え,体幹機能を含めた総合的な身体機能評価としての活用が期待できる。
著者
村田 伸 津田 彰 中原 弘量
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.213-217, 2005 (Released:2005-09-02)
参考文献数
29
被引用文献数
2 2

本研究は,健常成人16名(男性7名,女性9名,平均24.8±3.7歳)を対象に,音楽聴取と精神作業負荷(数字の逆唱と果物の想起課題)が重心動揺に及ぼす影響を検討した。重心動揺の指標とした総軌跡長と外周面積は,3条件間で有意に異なり,精神作業負荷条件での重心動揺が統制条件(無音状態)での重心動揺より有意に大きかった。音楽聴取条件での重心動揺については,有意差が認められなかった。これらの知見より,受動的音楽聴取以上に精神作業負荷が,身体動揺の増加を惹起することが明らかとなった。
著者
岩瀬 弘明 村田 伸 阿波 邦彦 松尾 奈々 山﨑 康平 米山 智彦 小松 直正 重田 裕子 窓場 勝之
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.163-167, 2013 (Released:2013-05-24)
参考文献数
22

本研究の目的は,高齢入院患者を対象に,異なる歩行速度における下肢筋力の貢献度を明らかにすることである。方法は,入院中の高齢患者13名を対象に,光学式歩行分析装置を用いて最速歩行と最大低速歩行の歩行パラメーターを計測した。また下肢筋力の代表値として,大腿四頭筋筋力と足把持力を評価した。歩行条件別に下肢筋力との関連を検討した結果,足把持力は最大低速歩行時の歩行率,歩幅,重複歩距離,立脚時間,遊脚時間との間に有意な相関が認められた。一方,大腿四頭筋筋力は最速歩行時の歩行率,立脚時間,遊脚時間との間に相関を示す傾向が認められた。最速歩行時の足趾把持力および最大低速歩行時の大腿四頭筋筋力は,すべての歩行パラメーターと有意な相関は認められなかった。これらの知見から,足把持力は最大低速歩行時の姿勢の安定化に関与している可能性が示された。一方,大腿四頭筋筋力は,身体を前方へ進める推進力としての役割が大きいことが推察された。
著者
稲谷 ふみ枝 津田 彰 村田 伸 神薗 紀幸
出版者
久留米大学大学院心理学研究科
雑誌
久留米大学心理学研究 (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
no.7, pp.35-40, 2008
被引用文献数
1

本研究の目的は,高齢者介護施設職員の精神的健康度に対するワークストレスとその認知的評価の影響を検討することである。対象は,特別養護老人ホームとグループホームに勤務する46名(男性8名,女性38名),平均年齢43.1歳±11.8,平均勤続年数4.4年±2。7である。指標は,(1)GHQ28,(2)離職状況,(3)Zarit介護負担感尺度の改訂版,(4)介護ストレス認知評価尺度・身体的消耗感,(5)仕事の魅力・コントロール・介護信念評価尺度等。対象者のGHQの平均得点は7.6(GHQ法)で全体的に健康度が低く,GHQのハイリスク群の特徴として,年齢が若く主観的健康状態が不良で,仕事以外の心配事を抱えていた。精神的健康度の影響要因として,身体的消耗感,介護負担感の個人負担因子が抽出された。またFollow-up期間中に離職した8名全員が,第1回目調査時のハイリスク群に属していたことが明らかとなった。
著者
村田 伸 大田尾 浩 村田 潤 堀江 淳
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.101-104, 2011 (Released:2011-03-31)
参考文献数
16
被引用文献数
6 4

〔目的〕本研究は,Frail CS-10の有用性を検討するために,ADLとの関連について検討した。〔対象〕虚弱もしくは軽度要介護高齢者159名(男性65名,女性94名)とした。〔方法〕Frail CS-10と大腿四頭筋筋力について,FIM-MならびにFIM-M下位項目との関連をスピアマンの順位相関係数を用いて性別毎に検討した。〔結果〕Frail CS-10と大腿四頭筋筋力は,男女ともに今回評価したFIM-MおよびすべてのFIM-M下位項目とそれぞれ有意な相関が認められた。ただし,その相関係数から関連の強さを判断すると,FIM-Mのすべての項目でFrail CS-10の方が大腿四頭筋筋力よりも関連が強かった。〔結語〕従来から下肢機能の代表値として用いられている大腿四頭筋筋力よりもFrail CS-10の方が,虚弱高齢者のADLとより関連することが示唆された。