著者
末永 隆次郎 前田 勝義 山田 統子 沖 真理子 照屋 博行 高松 誠
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.134-146, 1986-07-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
27
被引用文献数
2 2

過去のいちごハウス栽培者の健康調査成績から, いちご栽培作業では、腰部等への負担の大きいことが推測された。そこで、年間を通してのいちご栽培者の生活時間構造を明らかにするとともに、収穫i期における収穫作業と選果・箱詰作業について、腰部を中心とした労働負担の調査を実施した。作業姿勢の面からみると, 収穫作業においてはいちごの生物学的制約から中腰姿勢を強いられ, 選果・箱詰作業では畳の上などでの坐位姿勢が中心であった。そして, いちご栽培者の腰部等への負担を明らかにするために, なす栽培者を対照として自覚症状および疲労部位調査を実施するとともに, 脊柱の柔軟性の測定を行なった。その結果, いちご栽培者は腰部に関する疲労症状の有訴率が高く, 脊柱の柔軟性も劣ることが明らかとなった。次に, いちごの収穫時と選果・箱詰時の代表的.な作業姿勢を実験室内で再現し, 表面筋電図を用いて筋負担の程度を検討した。また, 収穫時に無意識にとられていた “肘一膝” 中腰姿勢については, 腰部等への負担軽減姿勢と考えられたが, 筋電図による解析結果と生体力学的解析結果とから判断して, この姿勢は筋負担の軽減よりも, むしろ腰仙関節にかかる力のモーメントの軽減, すなわち骨, 関節, 靱帯などに対する負担の軽減によるものと推測された。最後に, いちご栽培者の腰部を中心とする慢性局所疲労の軽減策について考察を加えた。
著者
高橋 豊 前田 勝司 中野 隆一 唐木 邦明 真下 進
出版者
土質工学会
雑誌
土質工学会論文報告集
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, 1976

標記工法によってその基礎工事が行なわれた大型原油タンクに関して, 貯油開始後5年間にわたって実測されたタンク底板およびシェル部の沈下と, 追跡調査として5年目に行なわれた土質調査の結果が, 工事の前後に行なわれた調査結果との対比において報告されている。これらの測定, 調査結果から以下の事柄が確認されている。1.圧密試験, 沈下解析によると, タンク荷重下での地盤内応力分布に関しては, ブーシネスク式から求めたものは, 実測値から導き出したものに十分対応する。2.実測された沈下曲線等により, タンク荷重のような長い周期での変動荷重は, 長期的には, ある定荷重が作用した時と同様の圧密曲線が得られる。3.タンクと周辺地盤の不同沈下の方向が同一であることから, タンクに発生する沈下は, 基礎底面下の地盤の初期条件の差とともに周辺地盤にも影響をうけることがわかった。また, これらの長期的に測定された沈下は, 地盤改良部以下の圧密沈下であり, これを残留沈下として許容する設計法の妥当性が, 観測, 土質試験によって確認されたとしている。
著者
井上 俊 竹内 康浩 竹内 寿和子 山田 信也 鈴木 秀吉 松下 敏夫 宮垣 仁実 前田 勝義 松本 忠雄
出版者
社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.73-84, 1970-03-20 (Released:2008-04-14)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

In 1967 there occurred many polyneuropathy cases in household vinyl sandal manufacturers at F-disrict in Mie prefecture. In this district among 3, 210 people (788 families) most of them engaged in vinyl sandal manufacture (as of Oct, 1967). Ninety three patients suffering from polyneuropathy were found by our survey. Out of these 93 patients those suffering from sensory polyneuropathy were 53, from sensorimotor polyneuropathy 32 and from sensorimotor polyneuropathy with muscle atrophy 8 (cf. Tab. 1). The work conditions and the factors contributing to the intoxication's were investigated, and the method of prevention was suggested. The results are as follows. (1) The patients occurred in 1961 at first and the number of them increased rapidly from 1965 and showed a peak in 1967 (cf. Tab. 2). This increase was in parallel with the amount of adhesives containing "n-Hexane" used in this district (cf. Tab. 3, 4). Outbreak of many patients in winter and spring may due to poor ventilation in winter. (2) The causative substance was considered to be "n-Hexane". But "n-Hexane" on sale contains 2-methylpentane, 3-methylpentane, n-hexane, and methylcyclopentane, and the quantity of n-hexane in "n-Hexane" is about 60% (cf. Fig. 6). (3) The work conditions of the vinyl sandal manufacturers among whom many cases of "n-Hexane" intoxication occurred were as follows. 1) The work was primitive household manufacture and living rooms were used as the working place (cf. Fig. 1, 3). 2) As adhesives containing a large quantity of highly volatile "n-Hexane" were used in narrow rooms, the concentration of "n-Hexane" vapor became high and reached about 500-2500 ppm in the work room. The vapor concentrations were especially high in winter because of closed windows. (cf. Fig. 7, 8, 9). 3) Since the workers (subcontractors) were paid by the number of manufacturedgoods, their working period was unrestrictedly long and some worked for 14 hours per day (cf. Fig. 10). 4) The work intensity was high and some starched 3, 000 times per day. It seems that the more the times of starching, the heavier the degree of symptoms (cf. Fig. 11). 5) As the adhesives were used with hand brushes, the vapor concentrations were high at the site near the noses of the workers, so that they inhaled the organic solvent vapor at high concentrations. 6) As the organic solvents vapor ignite easily, the work rooms were not heated and they were working at quite low temperatures in winter (cf. Tab. 5). 7) The workers were not instructed as to the toxicity and the handling method of the organic solvents. 8) Usual health supervision was not performed at all. (4) The chief cause of the occurrence of intoxications was that a large amount of the organic solvents was used under very poor work conditions as above mentioned combined with neglected supervision. Moreover, that which gave impetus to the occurrence of the intoxication was that the easily drying adhesives containing a large quantity of "n-Hexane" were used in order to increase the number of the manufactured goods, because the pay per one of the goods was not increased for these several years in spite of the recent inflation. (5) As the urgent measure for the prevention, though instruction on the toxicity and the handling method of the organic solvents, improvement of the ventilation and the working methods, guidance by the health center and so on were made, these are only certain aspects of measures for the prevention. The danger of the intoxication may not be perfectly removed without the fundamental reform in the work conditions.
著者
前田 勝義 平山 八郎 張 正博 高松 誠
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.398-407, 1979-09-20
被引用文献数
1

日本産業衛生学会「頸肩腕症候群」委員会が,「手指作業者」健康診断のためのアンケート調査表を1972年に提起して以後,この調査表は,各方面で使用され,頸肩腕障害の症状の多様性については,多くの研究者の注目するところとなった.しかしながら,この障害の進展の中で,多様な自覚症状がいかに発現するかについての具体的解析事例は,あまり報告されていない. われわれは,紙巻きタバコ製造工場の女子流れ作業者117名についての健康調査成績をもとに,自覚症状や日常生活の不便・苦痛がいかに展開するかについて,R.L.Zielhuisらの提起したvalidityの計算方法からヒントを得て解析した.その結果,次のことが明らかとなった. 1) 障害の初期には,頸・肩のこり・だるさ,目の疲れ,聞こえにくさ,などの症状が顕在化する. 2) 障害の中期には,初期症状に加え,頸・肩・腕・手の痛み,四肢のだるさ,からだのだるさ,頭痛・頭重,いらいら,もの忘れなどの症状が顕在化する. 3) 障害の後期には,中期の症状に加え,背・腰の痛み,背のだるさ,腕・手のしびれ,手・足の冷え,目の痛み,不眠などの症状が顕在化する. 4) 日常生活の不便・苦痛は病期が進むにつれて多くなる. 以上のごとき症状の展開は,「頸肩腕症候群」委員会による頸肩腕障害の定義・病像分類と基本的に一致していると思われた.またこの障害の診断にあたっては,頸・肩・腕・手の症状のみならず,からだのだるさ,頭痛・頭重,いらいら,もの忘れ,不眠などの一般症状も重視すべきであり,これらの一般症状はE.Grandjeanのいうclinical fatigueの場合に出現する症状と同じカテゴリーに含まれると考察した.
著者
前田 勝義 平山 八郎 高松 誠
出版者
Japan Society for Occupational Health
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.8-21, 1977

紙巻きタバコ製造工場の巻上げ・包装工程の女子流れ作業者に頸肩腕障害が多発した事例を経験し, 作業内容の解析を行なうとともに, 117名の女子流れ作業者につき健康調査を行ない, 次の結果をえた.<BR>(1) この工場の流れ作業では, 上肢を反復使用し, 作業姿勢は拘束的で, 作業ペースの規制度は強い.作業は単調で, 一部の作業では神経・感覚器系の負担が大きいと思われた.<BR>(2) 1労働日内での流れ作業時間のしめる長さ, 製品の流れ速度, 作業動作上の負担, などは, 工程により違いがあったが, 作業負担が大きい工程では, 自覚症の訴えが強かった.<BR>(3) 健康診断の結果に基づき, 日本産業衛生学会頸肩腕症候群委員会の病像分類 (改訂案) により症度判定したところ, 1度 : 12名, II度 : 63名, III度 : 36名, IV度 : 6名, V度 : 0名で, この工場の女子流れ作業者全員の15.7%以上が, IIIまたはIV度であることが明らかになった.<BR>(4) 日本産業衛生学会頸肩腕症候群委員会作成の自覚症状調査表等の回答結果は, 諸検査成績とよく対応していたので, これらの調査表の利用価値は高いと思われた.<BR>(5) 流れ作業者調査表の回答結果の解析から, 障害の強い者では, (i) 作業姿勢, 作業速度, 精神面での負担が大きく, (ii) 作業に伴う疲労の発現部位は拡大し, 神経・感覚器系の症状も強く現われ, 作業後の疲労も強く, (iii) 睡眠障害を訴える者が多く, 疲労を翌日へ持ち越す者も多く, こうした状況を反映して, 薬剤を服用する者も増加し, 治療を受ける者も増加することが明らかにされた.<BR>以上の結果に基づき, この工場における頸肩腕障害の発症過程につき考察し, その業務起因性を明らかにし, 健康管理, 衛生教育の必要性について述べた.
著者
大槻 晃 橋本 伸哉 土屋 光太郎 佐藤 博雄 吉田 次郎 和田 俊 石丸 隆 松山 優治 前田 勝 藤田 清 森永 勤 隆島 史夫 春日 功 鎌谷 明善 村野 正昭 多紀 保彦 平野 敏行 白井 隆明 荒川 久幸 兼廣 春之 平山 信夫
出版者
東京水産大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

本研究はROPME-IOCの要請に答えるものとして計画された。本年度の主目的は、調査海域を更に広げて昨年と同様な継続的な観測を行うと共に、ROPME側から要望のあったホルムズ海峡における流向・流速の係留観測を再度試みることであったが、ROPME側で係留流速計の調達が出来なかったこともあり、急きょ底生動物採取等に時間を割り振ることになった。又本年度は、最終年度となるため、ROPME事務局のあるクウェートに入港するこを計画した。本研究グループは、研究練習船「海鷹丸」を利用する海域調査班(研究者7名、研究協力者8名)と車で海岸を調査する陸域調査班(研究者4名)とに分かれて行動した。海域班としては、ROPME事務局が計画した調査航海事前打ち合わせ会(9月26〜27日)に、研究代表者と「海鷹丸」船長2名がクウェートに赴き航海計画、寄港地、ROPME側乗船人数等を伝え、要望事項を聴取した。陸域調査班は、10月28日成田を出発し、バハレーンを経て、クウェートに入り、車を利用して海岸に沿って南東に下り、サウジアラビアのアルジュベールで調査を終了し、11月7日に帰国した。各地点で原油汚染・被害の聞き取り調査、研究試料・魚類試料の収集、水産物の流通・利用の調査を行った。海域調査班は、11月15日に遠洋航海に出発する「海鷹丸」に調査研究器材を積載し、アラブ首長国連邦アブダビ港で乗船すべく12月11日成田を出発した。シンガポールを経て、アブダビに到着、13日には「海鷹丸」に乗船し、器材の配置等研究航海の準備を行った。12月14日ROPME側研究者14名(クウェート4名、サウジアラビア7名、アラブ首長国連邦1名、オマーン1名、ROPME事務局1名。尚、カタールから1名乗船予定であったが出港時間迄に到着しなかった)をアブダビ港で乗船させ、12月15日朝調査を開始するため、出港した。先ず、ホルムズ海峡付近に向かい、1993年に調査した最もホルムズ海峡側の断面から調査を行い、徐々に北上、アラビア湾中部海域に向った。アラブ首長国連邦クワイアン沖からサウジアラビア・アルジュベール沖までの7断面24地点の調査を行い、12月26日予定より1日早くクウェートに入港し、ROPME側研究者及び日本側研究者全員下船した.調査成果の概要は、以下の通りである。1)全ての地点で、湾内水塊移動及び海水鉛直混合調査のためのCTD観測、溶存酸素及び塩検用試料採取と船上分析を行い、観測データを得た。2)全ての地点で、栄養塩測定用試料採取(オルト燐酸イオン、珪酸、アンモニュウムイオン、硝酸塩、亜硝酸塩)を行い、更にそれらの船上分析を行い、観測データを得た。3)海水中の原油由来の溶存微量炭化水素分析用の試料採取、及び船上抽出を行った。4)全ての地点で、底泥の採取に成功した。5)全ての地点で、ボンゴネット及びプランクトンネットによる動・植物プランクトンの採取を行い、幾つかの地点で基礎生産力の測定を行った。6)全ての地点で、海水の光学的特性と懸濁粒子の分布調査を行った。7)全ての停泊地点で、3枚網、籠網、縦縄、釣りによる魚類採取を行う予定であったが、航海後半の悪天候の為、前半に6調査地点に限られた。8)全ての地点で、稚魚ネット引きを行い試料を得た。12月27日には、ROPME事務局関係者2名、日本側研究者7名及び、ROPME研究者7名が参加し、ROPME事務局において、「海鷹丸」による調査結果を主体とした成果発表会をどのように行うか検討会がもたれた。その結果、1995年12月5〜8日まで東京水産大学で行うことが決定した。12月30日クウェート空港を出発し、シンガポール経由で12月31日参者全員帰国した。
著者
上田 雅俊 山岡 昭 前田 勝正 青野 正男 鈴木 基之 長谷川 紘司 宮田 裕之 鴨井 久一 楠 公仁 池田 克巳
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.223-235, 1988-03-28
被引用文献数
11 1

塩酸ミノサイクリン(MINO)を2% (力価)含有する歯周炎局所治療剤(LS-007)を歯周ポケットに1週間隔で4回連続して投与する群と,2週間隔で3回連続して投与する群の二群に分け,46名の歯周炎患者に投与し,その臨床的有効性,安全性,有用性ならびに細菌学的効果を検討した。その結果,両群ともに歯肉炎指数,ポケットの深さなどの臨床症状がLS-007投与後に有意な改善を示すのと同時に,歯周ポケット内に生息するB. gingivalisをはじめとした歯周病原性細菌であるとされているものを効果的に消失せしめた。また,安全性では軽度の不快感が1例に認められたのみであった。一方,それらの細菌に対するMINOおよび他の抗生物質のMICを測定した結果,MINOは他剤よりも強く幅広い抗菌性を有することを認めた。以上の結果より,LS-007は歯周炎治療において臨床的ならびに細菌学的に有効かつ安全で有用性の高い製剤であることが確認できた。