著者
吉田 緑 鈴木 大節 松本 清司 代田 眞理子 井上 薫 高橋 美和 小野 敦
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.39, pp.P-72, 2012

現在日本では農薬のヒト健康影響指標には、一日許容摂取量が慢性曝露に対する指標として設定されている。近年、海外や国際評価機関においては、この指標に加え、ヒトが極めて短期間に農薬を摂取した際の急性曝露影響に対する健康影響が評価され、その指標として急性参照用量(acute reference dose, ARfD)が設定されている。日本では急性影響評価は実施されていないが、ヒトが農薬等を短期間曝露した場合の急性影響評価およびその指標を設定は、食の安全のために重要である。そこで本研究では、食品安全委員会で公開された評価書およびFAMICで公開された農薬抄録を用いて、これらの農薬のARfDの設定を試みた。設定の基準として農薬の国際評価機関であるFAO/WHO 合同残留農薬専門家会議の基準を基本とした。[結果及び考察] 約200農薬の公開データからシミューレーションを行った結果、90%以上の農薬についてARfDの設定を行うことができた。ARfD設定根拠となる試験は発生毒性試験、急性神経毒性試験、薬理試験が多く、約30%の農薬で設定の必要がないと考えられた。農薬の作用機序別の比較では、全てのコリンエステラーゼ(ChE)阻害剤でARfD値設定が必要であり、その値は他の剤に比べて低く、ADIと近い値を示した。これはChE阻害作用が短時間に起きるためと考えられた。長鎖脂肪酸の合成阻害、細胞分裂時の紡錘糸機能阻害および昆虫の神経細胞に作用する剤ではADIとARfDの乖離が平均で300倍以上と大きいものが多かった。約10の農薬では急性影響に関するデータ不足によりARfDを設定できなかった。これらのデータ不足の多くは、評価書内の記載の充実(=投与開始直後に認められた変化の種類と観察時期)や投与翌日の検査を追加することで、多くの場合改善されると考えられた。
著者
松本 清 OGUNWANDE I.A.
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

ナイジェリア産植物であるAcacia Tortilis葉中に含まれる精油成分をGC及びGC-MS分析により明らかにした。すなわち、本植物葉をジエチルエーテル(室温、1昼夜処理)にて抽出を行い、濃縮物を被険試料とした。GC条件として、DB-5及びDB-FFAP(ともに30m*0.32mm)カラム、60-240℃(3℃/min)、FID検出を採用した。また、GC-MS分析条件としては、DB-5カラムを用いて、イオン化電圧70eVで行った。ピークの同定は、GC法によるretention index値の一致並びにGC-MSライブラリーによる推定によって行った。その結果、本植物葉より収率0.12%のオイル状香気濃縮物を得ることができ、GC及びGC-MS分析の結果、本被険物のオイル組成はモノテルペン類20.4%、セスキテルペン類52.2%、脂肪族並びに芳香族化合物(17.2%)で構成されていることを明ちかにした。最終的に69種類の揮発性化合物を同定することができた。この中で、主要香気成分は、α-humulene(12.0%),α-cadinol(10.6%),nerolidol(9.9%),γ-cadinene(7.4%),α-phellandrene(4.7%),ρ-cymene(4.0%),(E)-carveol(3.1%),γ-terpinene, methyl eugenol(ca2.0%)及び2-(E)-octenal(6.0%)であると判断された。本植物葉はハーブ系素材としての展開が期待されるが、主要香気成分組成を考慮すると、すっきりとした清涼感のある素材としての活用性が期待される。
著者
堀川 和彦 小野寺 武 三浦 則雄 松本 清 都甲 潔
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OME, 有機エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.228, pp.85-88, 2006-09-01
被引用文献数
1

現在,爆発物の探知には訓練された犬や金属探知機などが使用されているが,これらの方法には信頼性,コストなどの面で多くの課題がある.そこで本研究では,抗原抗体反応と表面プラズモン共鳴(SPR)センサを組み合わせたSPR免疫センサを用いて,爆薬であるトリニトロトルエン(TNT)の検出を行った.このとき置換法と呼ばれる検出方法を用い,この置換法に用いる複合体抗原の種類を変えることでTNT検出下限にどのような影響が現れるかを調べた.その結果,複合体抗原-抗体の自然解離が大きい複合体抗原を用いることで検出下限を低下させられることが示唆された.
著者
松本 清二 岩田 勝哉
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類學雜誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.35-41, 1997-05-26
被引用文献数
1

Paternal egg guarding and mouthbrooding of larvae and juveniles were observed in the swamp-eel, <I>Monopterus albus</I>. In aquaria, the male guarded and cared for eggs in the bubble nest floating inside a plastic tube (5 cm in dia-meter, 50 cm in length). It was suggested that spawning and fertilization occurred outside the nest tube, and that the male carried the fertilized eggs (ca. 4 mm in diameter) in his mouth and inserted them into the bubble mass. Until the hatching of larvae (7-8 days after spawning), the male frequently added fresh bubbles into the bubble mass. As soon as the larvae (18-21 mm in TL) hatched and emerged from the bubble nest, the male sucked them into his mouth. Fifty juveniles (32-37 mm in TL) and two yolk-sac larvae (22 mm in TL) were released from the mouth of a male collected from a natural habitat. Those juveniles were retrieved by the male, some of them voluntarily returning to the male's mouth. The mouthbrooding male frequently performed pumping behavior (i.e., inflating and deflating the buccopharyngeal cavity), thereby acquiring to take fresh air. Eggs removed from the bubble nest successfully hatched only when directly exposed to aeration. In addition, only about 40% of the hatched larvae survived more than 10 days when they were kept in well-aerated water without the male parent. These suggest that both the bubble nest and mouthbrooding are indispensable for successful development and survival of eggs and larvae in this species, which inhabits swamps and paddy fields.
著者
受田 浩之 中田 勇二 松本 清 筬島 豊
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.723-727, 1990-11-05
被引用文献数
7 7

単一の酸素電極でワイン中のL-リンゴ酸とエタノールを同時定量するフロー型酵素センサーを開発した.L-リンゴ酸の定量にはリンゴ酸脱水素酵素(MDH), ジアホラーゼ(DI)及びメディエーターとしてビタミンK_3を, 又エタノールの定量にはアルコール酸化酵素(AOD)を用いて, 各反応で消費される酸素量を酸素電極で測定することにより, 各成分濃度を間接的に求めた.試料は並列に配置したMDH, DI固定化リアクター及びAOD固定化リアクターに同時に注入され, 各リアクターを通過した後, 合流され, 酸素電極を装着したフローセルに送液された.L-リンゴ酸定量用流路{ビタミンK_3飽和0.05Mピロリン酸塩緩衝液(pH9)}及びエタノール定量用流路{0.05Mリン酸塩緩衝液(pH8)}の流量を各々0.5及び1.0ml min^<-1>に設定したところ, 二つのピークが重なりなしに得られ, 定量範囲は各々0.09〜0.9mM, 18〜50mM, 分析速度は15検体/時であった.本法をワインの分析に適用したところ, F-Kit法及びHPLC法との良好な一致が認められた.
著者
松本 清 佐久間 春夫
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究 (ISSN:03861856)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.47-53, 2009-04-25

本稿では,競争的状況におけるP300について,平均振幅の分析から得られた結果を確かめるために,主成分分析(PCA)を用いて分析された.P300は競争の結果を呈示することによって誘発され,その競争では競争心の高い被験者と低い被験者が見える相手または見えない相手とともに,予告刺激を伴う反応時間課題を行った.その結果,slow waveやPINVといった8つの主成分が抽出され,3番目の成分は競争結果の呈示後約300msでピークとなっていたためP300と同定された.P300の振幅を反映しているとされる成分得点について,被験者の競争心の高さ,相手の可視性,勝敗,頭皮上の分布の効果が調査された.競争心の高い人は,見えない相手との競争的状況の方が見える相手とよりもP300が増大した.競争心の低い人は,見える相手と競争した時の方が見えない相手とよりも,P300が増大し反応時間が短縮した.これらの結果は,競争心の高い人が競争的状況下では注意資源を分散させることによって活発に情報処理を行い,競争心の低い人の覚醒レベルが見える相手と競争する時に増加したことを示唆している.競争条件での負けた試行よりも勝った試行におけるP300の増大が全体的に観察され,このことは競争事態における課題が勝つことを目指して遂行されたことを示している.頭皮上の分布は,これまでに報告されているように,頭頂部よりも中心部に,左半球よりも正中部に優位であった.本研究の結果は先行研究の結果を支持し,競争的状況下の認知活動の新しい特徴を見出した.