著者
西川 大志 松永 美希 古谷 嘉一郎
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.451-457, 2013-12-25 (Released:2014-03-01)
参考文献数
40
被引用文献数
7 1

This study investigated the effects of rumination (reflective pondering and brooding) on automatic thoughts (both negative and positive) and depressive symptoms. University students (N=183; 96 men) completed the Self-Rating Depression Scale (SDS), Automatic Thoughts Questionnaire-Revised (ATQ-R), and Response Style Scale (RSS). We conducted a path analysis which included gender as a factor. The results revealed that brooding was associated with negative automatic thoughts. Negative automatic thoughts contributed to the aggravation of depressive symptoms. In contrast, reflective pondering was associated with positive automatic thoughts. Positive automatic thoughts contributed to the reduction of depressive symptoms. These results indicate that rumination does not affect depressive symptoms directly. We suggest that rumination affects depressive symptoms indirectly through automatic thoughts, and that there are gender differences in the influence process.
著者
戸澤 杏奈 松永 美希 土屋 政雄 中山 真里子 熊野 宏昭
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.21-028, (Released:2022-12-07)
参考文献数
25

本研究の目的は、日本語版Work-related Acceptance and Action Questionnaire(WAAQ)を作成し、その信頼性と妥当性を検討することであった。研究1では、日本語版WAAQを作成し、就業者180名を対象に構造的妥当性、内的一貫性、仮説検証(収束的妥当性)を検討した。その結果、日本語版WAAQが高い内的一貫性、一部の構造的妥当性および収束的妥当性を有していることが示された。研究2では、就業者2,071名を対象に構造的妥当性、仮説検証(収束的妥当性とサブグループ間の比較)を検討し、うち320名を対象に再検査信頼性と測定誤差を検討した。その結果、日本語版WAAQが高い収束的妥当性、十分な構造的妥当性を有していること、年代、業種、職種におけるサブグループ間を比較すると小さな効果量が見られること、また測定誤差が示された。一方、再検査信頼性には課題が残された。
著者
松永 美希 土屋 政雄
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.133-142, 2020-05-31 (Released:2020-10-23)
参考文献数
29

本稿では、主に職場メンタルヘルス対策における予防の枠組みから、認知行動療法の適用と課題について報告した。一次予防では、広く健康な人々にもストレスへの気づきや対応を促すためにも認知行動療法を活用したストレスマネジメントが有用である。二次予防では、メンタルヘルス不調者への早期介入に認知行動療法の諸技法は適しており、職場調整をねらった他職種や人事労務との連携においても認知行動療法による問題理解の明快さは有用である。三次予防では、休職者の復職支援や精神障害者の職場適応に向けた症状コントロールや働き方に関する意思決定などに認知行動療法が適用されている。近年では、これらの予防的取り組みにおいて、マインドフルネスやアクセプタンス&コミットメント・セラピーといった第三世代の活用事例も増えている。今後は、生産性の向上などポジティブな側面にも認知行動療法の適用を広げていくことが課題である。
著者
松永 美希 鈴木 伸一 貝谷 久宣 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.157-166, 2006-09-30 (Released:2019-04-06)

われわれは、腹痛への予期不安が強い全般性社会不安障害の28歳男性患者を経験した。患者は、他者からの否定的評価を恐れて、10年近く社会的交流を回避していた。この症例に対して、認知行動療法(リラクセーション、社会的スキル訓練SST、認知再構成法、エクスポージャー)を行った。その結果、リラクセーションを用いて不安に伴う身体症状に対処できるようになり、SSTでは、社会的交流に必要な振る舞いを獲得し、認知再構成法やエクスポージャーを通して、不合理な思い込みや他者からの否定的評価に対する不安が低減した。全13回の面接終結後、社会的機能は著しく改善し、フォローアップ期においてもその改善が維持されていた。本報告では、本症例の治療経過と、社会不安障害に対する認知行動療法の効果について検討した。
著者
藤原 直子 大野 裕史 日上 耕司 久保 義郎 佐田 久真貴 松永 美希
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.159-173, 2010-06-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
6

本研究では、「気になる子」を担任する幼稚園教諭(コンサルティ)に対する集団コンサルテーションプログラムを作成・実施し、その効果を検討した。6名のコンサルティに対して全6回(フォーローアップ1回を含む)のプログラムを実施し、行動の見方や対応方法を応用行動分析学に基づき教授した。また、グループワークにおいては、コンサルティが行った「気になる子」の観察記録をもとに対応方法を検討した。その対応をコンサルティが実践した結果、対象児の行動に改善がみられた。さらに、コンサルティが子どもに対応する際に感じるストレスが軽減し、保育者としての効力感が向上した。満足度アンケートによる評価も高く、このコンサルテーションの内容は、幼稚園において実施可能であり、その対応方法は「気になる子」の支援に有効であることが示唆された。
著者
松永 美希 鈴木 伸一 岡本 泰昌 吉村 晋平 国里 愛彦 神人 蘭 吉野 敦雄 西山 佳子 山脇 成人
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.181-191, 2012
参考文献数
29

本稿では、広島大学病院において心理士が中心になって実施しているうつ病の集団認知行動療法(cognitive behavioral group therapy:CBGT)について、薬物療法との併用効果を検討した。当院のCBGTプログラムは、心理教育、セルフモニタリング、行動活性化、認知再構成といった技法を用いた12セッションから構成されている。本プログラムの効果を検討するため、うつ病患者74名について、CBGT前・後・12ヵ月後で、ベック抑うつ質問票(BDI)、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)、DSM-IVの全体的機能評価(GAF)、36-item Short-Form Health Survey(SF-36) 、自動思考尺度改訂版(ATQ-R)、非機能的態度尺度(DAS)を実施した。その結果、CBGT後において抑うつ症状(BDI,HAM-D)、非機能的認知(DAS,ATQ-R)の得点が有意に減少しており、また社会的機能(GAF,SF-36)の得点は有意に上昇していた。したがって、すべての指標において改善が認められた。またこれらの改善は1年以上維持されている可能性が示唆された。
著者
岡本 泰昌 木下 亜紀子 小野田 慶一 吉村 晋平 松永 美希 高見 浩 山下 英尚 上田 一貴 鈴木 伸一 山脇 成人
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.237-243, 2007-03-31 (Released:2016-12-01)

In this article, we present our neuroimaging studies by functional Magnetic Resonance Imaging (fMRI) about the brain mechanism of cognition toward elucidation of pathophysiology in depression. The first and second data show the brain mechanism (Kurosaki et al., 2005; Ueda et al., 2003) related to dysfunctional beliefs and systematic cognitive errors identified by Beck (1967), and the third is that (Tanaka et al., 2004) related to differential activation hypothesis proposed by Teasdale (1988). Lastly, we also show the change of brain function before and after cognitive behavioral group therapy (CBGT). Depressed patients before the CBGT showed attenuated activation in the dorsolateral prefrontal cortex, parietal cortex, and striatum were activated during the task. After the CBGT, the brain activation in good responders was restored as same as that in healthy control. However, in poor responder, there was no change on brain activation between before and after CBGT.
著者
松永 美希 中村 菜々子 三浦 正江 原田 ゆきの
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.88.15223, (Released:2017-05-10)
参考文献数
30
被引用文献数
4

“Reality shock” is defined as the discrepancy between an individual’s expectations established prior to joining to an organization and their perceptions after becoming a member of the organization. The purpose of this study was to develop a scale to measure factors leading to reality shock in first-year teachers, and to confirm its reliability and validity. A scale was developed based on factors leading to realty shock, and a survey was conducted on 219 first-year teachers (90 men, 129 women, mean age 25.18 years). Structure analysis based on factor analysis revealed that this scale consisted of four factors; “inter-personal relations in the workplace”, “lack of experience”, “relationship with students or parents”, and “pressure at work”. Given that high scores of the scale were associated with negative changes in perceptions of work, we showed that the scale was concurrently valid. Multiple regression analysis showed that realty shock significantly influenced stress responses, and that it had particular positive effects on anxiety and depression. Future studies will need to elucidate factors that buffer the effects of reality shock, and develop interventions to prevent worsening mental health in first-year teachers.