著者
坂部 貢 角田 正史 高野 裕久 欅田 尚樹 立道 昌幸 松田 哲也
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

「いわゆる化学物質過敏症」患者を対象として、化学物質曝露と身体症状出現の相関性の有無について、自律神経機能の変動を主としてリアルタイム測定した。また、本症の主症状である「嗅覚過敏」の病態解析について、脳科学的な解析を行った。1)総揮発性有機化合物(TVOC)変動と自律神経機能の変動は、統計学的に強く相関した。しかし、TVOCの変動と自覚症状については相関は認めなかった。2)脳科学的解析では、嗅覚刺激による前頭前野の活動が、本症では対照群に比して活発化していることがわかった。本症は、化学物質の毒性学的影響というよりも、「臭い刺激」が契機となる、心身相関を主体とした状態であることがわかった。
著者
中尾 恵 黒田 知宏 小山博史 小森 優 松田 哲也 高橋 隆
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.2255-2265, 2003-08-15
参考文献数
29
被引用文献数
8

本稿では,高度な手術シミュレーションへの適用を目的とした軟組織切開フレームワークを提案する.最初に,質点系における各ノード間に生じる張力によって,軟組織の緊張状態をモデル化する.また,質点系のリモデリングと適応型の四面体分割手法によって,複数の四面体によって構成される3次元仮想オブジェクトに対する切開をシミュレートする.本手法は,組織切開後のトポロジーの変化とリアルタイムな変形に関する一貫した記述を与え,組織の物理的特性を反映した切開創を導出する.さらに,オブジェクト構成要素の階層構造を用いた力学計算の局所化によって,大規模なオブジェクトに対する広範囲でかつ対話的な操作を実現する.ノード階層を用いたリフレッシュレート管理機構は計算精度と計算コストの制御を可能とし,安定なシミュレーションを提供する.上記手法を1台の力覚デバイスをともなった実験システムに実装し,成人男性から取得した胸部MRIデータを適用した.導出される切開創の形状と計算時間に関する定量的な検証の結果,提案フレームワークが高精度かつ対話的な組織切開シミュレーションを提供することを確認した.This paper proposes a framework to simulate soft tissue cutting for advanced surgery simulation.A strained status of soft tissues is modeled as tension between neighboring vertices in a particle-based model.Both remodeling particle systems and adaptive tetrahedral subdivision achieve cutting simulation of tetrahedral objects.These methods deal with topological change and real-time deformation after soft tissue cutting consistently,and present volumetric cuts based on physical characteristics.Local calculation using dynamic elements hierarchy enables interactive and global cutting into large objects.Management structure of refresh rate performs stable simulation by controlling real time performance and simulation quality.3D MRI dataset acquired from an adult man was applied to simulation system with a force feedback device.Quantitative evaluation of calculation time and quality of cuts confirmed that our framework contributes to accurate and interactive tissue cutting.
著者
松田 哲也 伊藤 岳人 鈴木 春香 丸谷 俊之 松島 英介 小島 卓也
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.257-261, 2011 (Released:2017-02-16)
参考文献数
21

統合失調症の思考障害について,意識的・無意識的な意思決定システム,構え,自己認知という観点から考察する。我々は課題遂行時,まだそれに慣れていないときには,意識的な思考システムが優位に働くが,繰り返し行うことで無意識的な思考システムに移行する。一方,環境に変化があったときはそのシステムを必要に応じて切り替える。スムーズな思考には,このような柔軟な思考システムの切り替えが必要なのである。この切り替えには,構えが重要な役割をもつ。構えは繰り返し課題を行う中で整理され,単純化されていく。これには,自己認知(セルフ・リフレクション)による,自分の思考,行動に対する評価からの正確なフィードバック信号が必要である。思考には,これらの機能が正確に働くことが必要であるが,統合失調症は,これら一連の思考過程の何らかの異常があることで思考障害が引き起こされている可能性があるのではないかと考えられる。
著者
馬場 新悟 菅 幹生 大城 理 湊 小太郎 松田 哲也 小森 優 高橋 隆 徳富 義宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.350, pp.23-27, 2000-10-06
被引用文献数
4 1

近年, ロボット手術支援など医療分野で力覚提示技術が注目されている.しかし, そのヒューマンインターフェースに関する性質は必ずしも十分には検討されていない.この研究では, 力覚フィーフォバックディスプレイ装置でペン型ジンバルのインターフェースを利用する場合を対象に, 人間の力覚特性, すなわち, 振動刺激閾値周波数特性とその弁別閾の特性を心理物理的実験によって明らかにした.これらの結果は, 力覚デバイスを用いてVRシステムを設計する際の基礎的データとして利用できる.
著者
松田哲也
雑誌
脳精神医学
巻号頁・発行日
vol.14, pp.91-98, 2003
被引用文献数
1
著者
山本 恭弘 中尾 恵 黒田 知宏 小山 博史 小森 優 松田 哲也 坂口 元一 米田 正始 高橋 隆
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌. E, センサ・マイクロマシン準部門誌 = The transactions of the Institute of Electrical Engineers of Japan. A publication of Sensors and Micromachines Society (ISSN:13418939)
巻号頁・発行日
vol.123, no.3, pp.85-91, 2003-03-01
参考文献数
11
被引用文献数
9 4

In field of cardiovascular surgeries, palpation of aorta plays important roles in decision of surgical site.This paper develops palpation simulator of aorta based on a finite element based physical model.The proposed model calculates soft tissue deformation according to the affection of inner pressure and the operation of a surgeon.The proposed method is implemented on a prototype with dual PHANToM device.Experimental results confirmed our model achieves real time simulation of the surgical palpation.
著者
天野 晃 松田 哲也 水田 忍
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,臓器としての生物学的知見が豊富な心臓を対象として,近年急速に解明が進み実現されるようになった,タンパク分子機能に基づく精密な細胞モデルを元に,心筋細胞の配列,組織の微小循環,冠動脈血流,心筋組織の力学的特性に基づいた心臓の3次元拍動モデルの実現を目指した.まず,左心室3次元拍動モデルの編集ツールを実現し,シミュレーションアルゴリズムとして,心筋細胞のタンパク分子機能に基づいたモデルが生成する収縮力と,材料特性に基づく3次元形状の変形を精密に計算する連成シミュレーションアルゴリズムを提案した.次に,心臓拍動モデルの形式的記述と,実験プロトコルの形式的記述言語としてPSPMLを設計した.さらに,日々蓄積される生物学的知見を容易に導入し,有効性等を評価するシステムとして,形式的に記述された心筋細胞モデルを非専門家が安全に編集可能で,さらに実験プロトコルの修正も可能な編集システムを実現した.また,心臓拍動の精密な再現に不可欠な血管系のモデルとの連成計算を行うシステムを実現した.このシステムにより,様々な細胞モデル,左心室モデル,血管系を用いたシミュレーションにおいても,自由に組み合わせを変更して循環動態シミュレーションが可能となった.最後に,これらのシステムを用いて,左心室構造力学モデルにおける応力評価を行った.心臓は拍動に伴う能力や効率を最大化するため,収縮末期における応力分布が均等化するように細胞配列が最適化されているという仮説があるが,実際の心臓で心壁内部の応力が評価できないため,仮説の検証にはシミュレーションモデルが利用されるようになってきている.構築したシステムを用いて,収縮末期における心壁の応力分布を評価した.この結果,従来の報告で評価が困難であった心尖部において,明瞭な応力集中を確認できた.これは,バチスタ手術等の外科手術において,経験的に重要性が認識されている心尖部の重要性を示唆する結果であると考えることができる.