著者
二瓶 篤史 戸井田 麻理乃 吉永 亮太 松田 雅弘 新田 收 小山 貴之 久保田 直行 勝又 泰貴 泉 良太 網本 和 坂村 雄介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Bd1462, 2012

【目的】 脳卒中治療ガイドライン2009で脳卒中後の半側空間無視(USN;Unilateral Spatial Neglect)に対し、根拠がある方法が紹介されているが、十分科学的な報告は少ない。現在のUSNの治療法の多くは、左空間を意識させる、頚部への電気刺激、無視側への体幹の回旋、プリズム眼鏡の利用などが挙げられる。その中で、視覚探索訓練はエビデンスレベルBを得ている。今回、近年普及しているタブレット型コンピューターのipadで新規に治療も可能なアプリケーションを作成した。これは科学的に認められている視覚探索訓練をもとに作成し、ゲーム感覚に実施できることが特徴である。また、ipadのため持ち運びが可能であり、病室でも自主練習が可能である。そこで今回、USN患者の新しい治療法となるかを検討すべく、ipadでの治療前、直後での即時効果を検討した。本研究は理学療法士協会の研究助成の一部を用いて行った。【方法】 対象は脳血管障害により左片麻痺・半側空間無視を呈した右利き7名(年齢58~88歳;70.7歳;男性5名,女性2名)、平均発症日数94.7(SD76.2:27-209日)、平均FIM64.6(SD8.2)、平均MMSE20.2(SD1.3)であり、治療アプリケーションが使用できる症例であった。ipadの治療アプリケーションは、左右端から5つの円(円列)が毎秒100mm以下のゆっくりした速さで青色の円が画面に現れるように設定した。画面を横切る5つの円のうち1つが途中で赤色に1施行中2回変化させた。円列は左右からランダムに10回モニターを横切り、どの位置でどの円の色が変更されるかはランダムとした。検査者は対象者に「色が変化したら、その円を画面上でタッチしてください」と指示した。ipadの治療前、直後で線分末梢試験と線分二等分試験を実施した。線分末梢試験は末梢した本数、線分二等分試験は中央をより偏位した距離を右に偏位するほど正の値で算出した。統計処理はSPSS 19.0 for Windowsを用い、ipadでの治療前後の線分二等分試験と線分末梢試験の数値をウィルコクソンの符号付順位和検定にて分析を行い、なお有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 全対象者に対して、事前に本研究の目的と方法を説明し、研究協力の同意を得た。本研究は首都大学東京荒川キャンパス倫理審査委員会の承認を得た。【結果】 ipadにおける治療前の線分二等分試験は中央より右に23.86±22.52mm偏位していたのが、治療直後の線分二等分試験は中央より右に12.43±22.50mm偏位しており、有意に中央に偏位した。(p<0.05)ipadにおける治療前の線分末梢試験は22.86±15.53本消去したのが、治療直後の線分末梢試験は26.57±12.91本消去し、有意に消去する本数が増加した。(p<0.05)【考察】 視覚探索訓練は科学的に推奨される治療法の1つである。今回、簡易的に持ち運べるipadを利用して、治療ソフトの開発を行い治療前、直後の即時効果を検討した。治療効果の検討には現在までに使用されている線分二等分試験と線分末梢試験を適応した結果、両方の試験において治療前、直後で有意な差があった。現在までの多い報告では、右より左に動き光や動く物を目で追わせることでUSNが改善したものが多い。今回も色の変化を右または左から動く円を注視させるために、注意を促すことが可能であり、左への注意が改善したことが考えられる。また、右からだけではなく、左から移動する円にも注意を払わなければならず、右からの追走以外にも左から移動するものにも注意することで空間注意が即時的に改善したと考えられる。【理学療法学研究としての意義】 近年普及しているタブレット型コンピューターのipadを利用して、視覚探索訓練のアプリケーションを作成した。即時効果の検討を行った結果、治療効果が認められた。また、今学会にて同時に信頼性と妥当性の検討も行った。持ち運び可能で、本人のペースで実行可能であり、ゲーム感覚があるために取り組みやすい。今後は効果の継続や、対照群を設定することで効果の更なる検証が必要だと考えられる。さらに即時効果の影響や、長期的な影響の結果がADLに対する影響を詳細に検討することで、科学的に効果のあるリハビリテーション手段として確立することが可能になるのではないかと考えられる。
著者
渡邊 彩美 新田 收 松田 雅弘 櫻井 瑞紀
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0240, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】腰痛は大多数の日本人が経験する最も多い症状の一つである。腰痛の既往があることは,腹横筋の筋活動低下による筋厚減少および表在筋の過剰な筋活動による筋厚増大と関連することが報告されている。内腹斜筋は体幹深部筋群に含まれ,インナーユニットとして体幹の安定性に寄与するとの報告がある。筋肉量の評価方法としてMRIのT2強調像を用いた方法が挙げられる。MRIの組織分解能は現在存在する検査機器の中で最も精度が高い。腰痛者において腹横筋の筋厚減少は報告されているが,表在および深部筋,筋断面積比についての検討はない。本研究の目的は,腰痛者における深部筋の筋断面積を健常者および表在筋と比較することである。【方法】対象は半年以上腰痛のない成人男性10名(27.6±3.7歳,168.4±4.9cm,58.8±5.8kg)を健常群(A群),疼痛誘発テストで陽性かつ半年に1回以上の頻度で右側に腰痛を生じる成人男性10名(26.1±3.8歳,169.5±5.3cm,61.0±9.0kg)を腰痛群(B群)とした。神経学的・整形外科的疾患を有する者,測定日に腰痛を有する者,心因性疼痛の要素がある者は除外した。測定項目は第3・4腰椎間高位水平断の左右の表在筋(外腹斜筋)と深部筋(腹横筋+内腹斜筋)の面積[mm2]とした。T2強調像はPhilips社製MRI(Achieva 3.0T Quasar-dual)を使用した。撮像肢位は両上肢拳上の背臥位とした。ImageJ(1.48v)を使用し筋断面積を計測した。統計解析は筋断面積を従属変数,腰痛経験の有無と表在筋か深部筋かの2要因を独立変数とした二元配置分散分析を行い,交互作用があった場合には単純主効果の検定をボンフェローニ法により行った。統計ソフトはIBM spss ver19を用い,本研究の有意水準は10%とした。【結果】ICC(1,3)の結果は0.971であり,高い信頼性を認めた。筋断面積[mm2]は右側では表在筋がA群1849.2±373.7,B群2324.5±790.3,深部筋がA群1825.1±526.4,B群1560.1±611.7で交互作用を認めた。単純主効果の検定ではB群の表在筋と深部筋間に有意差を認めた。左側では表在筋はA群2291.1±407.1,B群2458.7±594.5,深部筋はA群1776.9±520.0,B群1714.5±549.9で交互作用は認められなかった。【結論】腰痛群では疼痛部位と同側の表在筋と深部筋の筋断面積の差が健常群に比べて大きくなっていた。先行研究同様に表在筋の筋断面積増大と深部筋の筋断面積減少を認め,腰痛経験が表在筋の筋厚増大に関連していることが明らかとなり,内腹斜筋を含めた深部筋の筋厚減少が示唆された。
著者
塩田 琴美 細田 昌孝 高梨 晃 松田 雅弘 宮島 恵樹 相澤 純也 池田 誠
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.817-821, 2008 (Released:2009-01-28)
参考文献数
21
被引用文献数
3 3

[目的]本研究は,静的・動的なバランス能力と筋力の相関性および静的・動的バランステストの特異性について,検討することを目的として行った。[対象]対象者は21名(21-82歳)であった。方法:はじめに,静的バランス能力として,開眼および閉眼での30秒間の静止立位での重心動揺面積を測定した。次に,動的バランス能力として,Equi-testを用いてAdaptation testを施行した。更に,筋力テストとして,膝関節伸展筋力,足関節底屈および背屈筋力を測定し,静的・動的バランス能力との相関関係を明らかにした。[結果]今回の研究結果から,静止立位での重心動揺面積と筋力には相関は認められなかった。一方で,動的バランス能力と筋力においては,有意な相関関係が認められた(p<0.05)。[結語]これらの結果より,静止立位で重心動揺面積などを単に測定することは,姿勢定位のみに対する評価であり,対象者の動作課題に対する身体能力を反映しえないと考えられた。しかしながら,動的バランス能力の測定は,下肢筋力などと相関が高く,日常生活に即した有用な姿勢制御の安定性の評価となりえると考えられた。
著者
松田 雅弘 楠本 泰士 酒井 弘美 伊藤 公一 田上 未来 阿部 紀之 関 亮祐 本藤 伸男 山﨑 友豊 赤池 優也 二瓶 篤史 新田 收
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.495-499, 2016 (Released:2016-08-31)
参考文献数
10

〔目的〕マイクロビーズ製クッション上での臥位が,関節可動域と筋緊張に及ぼす影響を通常のベッド上臥位と比較して明らかにすることとした.〔対象と方法〕回復期脳卒中後片麻痺患者9名(52~84歳)とした.同一対象者に20分の臥床をクッション(クッション条件),およびベッド上背臥位で(臥位条件)行わせ,前後でのROMt,筋緊張(MAS),僧帽筋上部線維の筋硬度の変化と変化量を対応のあるt検定により統計学的に解析し,その違いを条件間で比較した.〔結果〕クッション条件では介入前後で,麻痺側肘屈曲,頸部左回旋角度に有意差がみられた.筋緊張,筋硬度も軽減している症例が多かった.〔結語〕マイクロビーズ製クッションが,脳卒中患者に対して筋緊張の軽減と関節可動域の増大に効果をもたらすことが示唆される.
著者
松田 雅弘 渡邉 修 来間 弘展 村上 仁之 渡邊 塁 妹尾 淳史 米本 恭三
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.117-122, 2011 (Released:2011-03-31)
参考文献数
22
被引用文献数
8 5

〔目的〕脳卒中により利き手側の片麻痺を呈した場合,利き手交換練習を行うことが多い。そのため健常者における非利き手での箸操作の運動時,イメージ時,模倣時の脳神経活動を明らかにした。〔対象〕神経学的な疾患の既往のない右利き健常成人5名(平均年齢20.7歳)とした。〔方法〕課題は,左手箸操作運動課題,左手箸操作イメージ課題,左手箸操作の映像をみながら箸操作運動課題(模倣課題)の3種類とし,その間の脳内活動を3.0T MRI装置にて撮像した。〔結果〕運動課題では左右感覚運動野・補足運動野・小脳・下頭頂小葉・基底核・右Brodmann area 44が賦活した。イメージ課題では,運動課題と比べ左感覚運動野・小脳の賦活が消失していた。模倣課題では,左右感覚運動野・補足運動野・上下頭頂小葉・Brodmann area 44が賦活した。〔結語〕イメージ課題と模倣課題には,運動課題時に賦活する領域を両課題とも補う傾向にあることから,箸操作訓練の際には運動課題のみではなく両者を取り入れて行う意味があることが示唆された。
著者
楠本 泰士 菅原 仁 松田 雅弘 高木 健志 新田 收
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.168-173, 2019 (Released:2019-06-20)
参考文献数
15

【目的】本研究の目的は,痙直型脳性麻痺(以下,CP)者における安静時と足関節等尺性背屈時のH 波の振幅値変化の違いを明らかにすることとした。【方法】対象は粗大運動能力分類システムにてレベルⅠ,Ⅱ,ⅢのCP 群14 名と健常者である対照群14 名とした。CP 群では下肢随意性検査を行い,利き足を決定した。両群で利き足でのヒラメ筋のH 波最大振幅値を安静時と等尺性背屈時とで比較した。【結果】対照群は等尺性背屈時にH 波最大振幅値が有意に低下したが,CP 群は振幅値が低下した者が8 名,上昇した者が6 名であり,全体としては変化がなかった。【結論】CP 者は足関節等尺性背屈時にヒラメ筋への相反抑制がかからない者がおり,健常者と比べて脊髄前角細胞の興奮性が十分に制御されていなかった。CP 者の腓腹筋やヒラメ筋のストレッチでは,背屈時のH 波振幅値の上昇と低下に合わせて,相反抑制の効果を組み合わせるか判断する必要性が示唆された。
著者
相澤 高治 松田 雅弘
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.889-892, 2010 (Released:2011-01-28)
参考文献数
20
被引用文献数
2

〔目的〕股関節屈伸筋力とジャンプ能力との関係について検討すること。〔対象〕整形外科的疾患のない健常成人男女16名を対象とした。〔方法〕等速性筋力測定器を用いて測定された角速度60,180,および300 deg/secでの股関節屈伸筋力のピークトルク体重比と,片脚での「垂直ジャンプ」,「前方ジャンプ」,「三段跳び」,および「6 m間跳躍時間」との関係をPearsonの相関係数により検討した。〔結果〕股関節屈曲筋力では角速度180,300 deg/secと4種目の片脚ジャンプすべてとの間に相関を認めた。角速度60 deg/secの股関節屈曲筋力と「垂直跳び」との間に相関を認めた。股関節伸展筋力では4種目の片脚ジャンプとの相関を認めなかった。〔結語〕股関節屈曲筋力が関与する姿勢制御能力や着地動作能力および出力方向制御とジャンプ能力が関係したと考えられる。
著者
松田 雅弘 田上 未来 福原 一郎 花井 丈夫 新田 收 根津 敦夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに】我々は福祉用HALを用いた運動療法が,発達期中枢神経障害児者の歩行・バランス能力に対して,即時的・長期的効果について報告してきた。今回,発達期中枢神経障害児者の膝関節の動きに対して,単関節HAL(以下,HAL-SJ:single joint type)を用いた運動療法を実施した。その効果について,担当PTにアンケートを実施し,HAL-SJが運動機能に及ぼす影響について検討したので報告する。【方法】発達期中枢神経障害児者に対し,HAL-SJを使用した理学療法士5名(経験年数約10~30年)に使用目的および時間,その効果に関してアンケート調査を実施した。対象となった発達期中枢神経障害児者は13名(平均年齢13.2歳,9-12歳,男性7名,女性6名,痙性四肢麻痺4名,痙性両麻痺7名,痙性片麻痺2名),GMFCSI:2名,II:3名,III:4名,IV:4名であった。アンケート調査時の使用回数は1回目12名,2回目以上7名の計19回のアンケートについて分析を行った。運動療法の効果に関しては5件法を用いて,目的にそった効果について検討した。また,自由記載にて使用方法とその効果について調査した。【結果】HAL-SJを利用した目的は,両側(16回)または一側膝関節(3回)に装着して,随意性の向上(14回)と立位練習(14回),歩行練習(6回),段差昇降練習(3回),その他(自転車)であった。HAL-SJを用いた平均運動時間39.5±12.6分(20-60分)であった。膝関節の随意性の改善は平均2.8±1.2点,歩行の改善は平均3.5±0.9点,立位姿勢制御の改善は平均3.7±1.0点,立ち上がり動作は平均3.8±0.8点,段差昇降の改善は平均4.0±0点となった。目的とする姿勢動作時には,HAL-SJを利用することで立位・歩行時の機能改善,特に膝伸展筋の活動が向上して立位時の支持性の改善がみられた。その他,筋活動を視覚的にPTまたは患者自身が確認でき,フィードバックしながら運動が可能である,軽量のため動作練習を行いやすいなどの自由記載があった。【考察】HAL-SJを使用した運動療法の効果は,装着した膝関節の動きだけではなく,近位関節である股関節制御も高め,立位・歩行機能の改善につながった。HAL-SJ,福祉用HALと異なり,生体電位は大腿の筋のみで,制動する関節は膝関節の1関節でなる。発達期中枢神経障害児者の下肢運動は,分離運動が困難なため,HAL-SJが膝関節の分離運動を促すことで,下肢関節にトータル的な運動制御の改善がなされ,身体運動が円滑になったと考えられる。特に,立位・歩行制御を目的とした運動療法の一部として有効的な手段になると考えた。視覚的なフィードバックはPTにも患者にも有効的で,その情報をもとに運動指導や学習が可能なことも効果を実感した一助になったと考えられる。また,福祉用HALは小児を対象とした場合,身長制限が問題となるが,HAL-SJはその制限に関わらず使用することが可能である。</p>
著者
松田 雅弘 渡邉 修 来間 弘展 村上 仁之 渡邊 塁 妹尾 淳史 米本 恭三
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.117-122, 2011
被引用文献数
5

〔目的〕脳卒中により利き手側の片麻痺を呈した場合,利き手交換練習を行うことが多い。そのため健常者における非利き手での箸操作の運動時,イメージ時,模倣時の脳神経活動を明らかにした。〔対象〕神経学的な疾患の既往のない右利き健常成人5名(平均年齢20.7歳)とした。〔方法〕課題は,左手箸操作運動課題,左手箸操作イメージ課題,左手箸操作の映像をみながら箸操作運動課題(模倣課題)の3種類とし,その間の脳内活動を3.0T MRI装置にて撮像した。〔結果〕運動課題では左右感覚運動野・補足運動野・小脳・下頭頂小葉・基底核・右Brodmann area 44が賦活した。イメージ課題では,運動課題と比べ左感覚運動野・小脳の賦活が消失していた。模倣課題では,左右感覚運動野・補足運動野・上下頭頂小葉・Brodmann area 44が賦活した。〔結語〕イメージ課題と模倣課題には,運動課題時に賦活する領域を両課題とも補う傾向にあることから,箸操作訓練の際には運動課題のみではなく両者を取り入れて行う意味があることが示唆された。<br>
著者
松田 雅弘 渡邉 修 来間 弘展 津吹 桃子 村上 仁之 池田 由美 妹尾 淳史 米本 恭三
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.387-391, 2006 (Released:2007-01-11)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

手指対立運動時の感覚運動野(sensorimotor cortex: SMC)の賦活の左右差を,機能的MRIを用いて検討した。対象は右利きの健常成人12名で,1秒間に1回の速度で連続的に手指対立運動を自発的に行う課題を右手,左手各々において行った。右手,左手運動時の対側SMCの平均賦活信号強度は,右手運動より左手運動で有意に高かった(右手,左手,各々11.68,16.82, p<0.05)。さらに,右手運動時は対側SMCのみに賦活が見られたのに対して,左手運動時は両側SMCに賦活がみられた。以上の結果は,巧緻性の低い左手は右手に比べ、多くの神経活動を必要とすることを示唆している。