著者
平尾 智隆 井川 静恵 梅崎 修 松繁 寿和
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は,学歴ミスマッチ(教育過剰と教育過少)が賃金に与える影響を統計的に検証することにある。具体的には,同じ学歴を獲得したにもかかわらず,より低い学歴しか求められない職業に就いた者(教育過剰者)とその学歴に見合った職業に就いた者(教育適当者)の賃金を比較する。また,より高い学歴が求められる職業に就いた者(教育過少者)の賃金を教育適当者のそれと比較する。研究の結果,①教育過剰者は教育適当者に比べて賃金が低いこと,②教育過少者の賃金は教育適当者のそれと比べて高いこと,③学歴ミスマッチの賃金に与える影響は,若年層よりも中高年層において,また男性よりも女性において大きいことが明らかになった。
著者
村澤 昌崇 椿 美智子 松繁 寿和 清水 裕士 筒井 淳也 林 岳彦 宮田 弘一 中尾 走 樊 怡舟
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

本研究は,因果推論の勃興を契機とし,社会科学の半ば慣習的な統計分析が再考を迫られると認識した.そこで,従来は因果分析とされたが,厳密には因果推論ではない分析を仮に“説明”とし,その再定義,モデル評価,係数の解釈に関する新たな理論を構築する.この取組について、社会科学の方法論について深遠な議論を展開している専門家、心理学、経済学、統計科学、データサイエンスを代表する専門家と共同し議論を深めていく。併せて、新たな実験的調査を実施し、得られた情報に関して、新たな"解釈"の可能性を検討する。
著者
平尾 智隆 梅崎 修 松繁 寿和
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.99-109, 2011-10-20 (Released:2018-02-01)

本研究の目的は,企業人事部アンケート調査の個票データを用い,企業内における大学院卒従業員の処遇プレミアム(採用,初任給,賃金上昇率,昇進,初任配属の優位性)がこの10年余りでどのように変化したのかを分析することにある。近年,大学院の量的拡大・質的変容が起こっているが,大学院教育の労働市場効果については,学術的にも政策的にも重要な課題であるにもかかわらず,ほとんど検証がなされてこなかった。コホートデータを分析した結果,1998年調査時より2009年調査時において,学部卒従業員と比較した大学院卒従業員の処遇プレミアムは目減りしていることが確認された。特に文系においては,学部卒と大学院卒の代替的関係が顕著であった。産業の高度化やグローバル化が高度職業人の需要を喚起することが期待されていたのだろうが,少なくともこの10年余りで見る限り,その供給増を吸収する需要増はなかったといってよい。