- 著者
-
板谷 厚
- 出版者
- 北海道教育大学
- 雑誌
- 挑戦的萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2016-04-01
本研究は,組体操を「不安定な相手の身体とのかかわり合いの中で姿勢を維持する活動」と捉え,発達学的・体力学的観点から評価し,教材的価値を多面的に捉え直すことで,組体操の多様な行い方と評価観点を新たに提示することを目的とする.当該年度は,当初,組体操の姿勢制御にかかわる感覚統合機能に対するトレーニング効果およびコアトレーニングとしての効果を検討するために,健康な大学生を対象者とするトレーニング実験を実施する予定であった.しかし,旭川市立保育所の要請で幼児対象の運動遊びを実施する機会に恵まれたこともあり,三年目に予定していた組体操の多様な行い方と評価観点の提示についての研究を前倒しして実施した.組体操の多様な行い方のひとつとして運動遊びプログラム「ぼうけんくみたいそう」を開発した.「ぼうけんくみたいそう」は,ごっこ遊びの要素を強く打ち出したストーリー仕立ての組体操であった.物語の進行とともに,ひとりで行うポーズ(9種類)から2人組(5種類),3人組(2種類)へと段階的に複雑になるよう全16種類の組体操による演技を構成した.また,イメージをふくらませるために効果音や音楽を適宜用いた.組体操の効果を評価するために,保育所の年長児を対象にバランスの測定を実施した.プログラムのはじめと終わりに木のポーズ(閉眼片足立ち)を30秒間行い,その様子をビデオ撮影した.動画から30秒間の制限時間内に木のポーズを最大で何秒間維持できたかを測定した.対応のあるt検定の結果,木のポーズ持続時間は終わりではじめよりも高い値を示した(はじめ: 8.17 ± 8.33 s, 終わり: 11.07 ± 9.01 s, P = 0.022).したがって,「ぼうけんくみたいそう」は,幼児の閉眼片足立ち時間を即時的に向上させると考えられる.また,閉眼片足立ち時間は,組体操の効果を評価する方法として有用である.