著者
鈴木 秀人
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.106_1, 2016 (Released:2017-02-24)

我が国の運動部に見られる「体罰」や「しごき」といった暴力的行為のルーツとして従来語られてきた所謂「軍隊起源説」には、1930年代にミリタリズムの影響で運動部が変容していったとする戦前起源説と、戦後に軍隊経験者が運動部に軍隊の行動様式を持ち込んだとする戦後起源説がある。本研究者による戦前・戦後期の運動部経験者に対するインタビュー調査等では、その2つとも当てはまらない旧制高校、2つとも当てはまる私立大学予科、戦前説のみ当てはまる師範学校等々、その実相は多様で複雑である。本研究では、「軍隊起源説」のように歴史上のある時点に起源を設定し、その一点から現在の問題状況が生起したと把握する理解を退け、かかる俗説による説明を日本の社会はなぜ共有、或いは許してきたのかを、戦後から高度経済成長期における「戦中派」の意識の変容を焦点に考察する。そこでは、軍隊経験に積極的な意味が見出されていく時期に、「戦中派」のスポーツ指導者が自身の軍隊経験とスポーツを結びつける言説が表明されていくことに注目する。
著者
佐々木 良輔
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.283_3, 2016 (Released:2017-02-24)

●近年、子どもの保健室利用数が増え、その訴求内容も多様化・深刻化している。そのため、養護教諭を複数配置にする等、定数増員が社会から要請されている。一方、男性の養護教諭の配置数が最近徐々に増えてきた。今後予想される養護教諭の採用数拡大に対し、男性もその需要に応えていく必要がある。●そこで本研究では、学校において子どもたちには絶好の保健指導の機会となりえる、救急処置(傷病の応急手当等)に焦点を当てる。中でも、男性養護教諭の救急処置に対する意識を明らかにし、今後、女性だけではなく男性ももっと積極的に養護教諭という職業として子どもの身体教育に携われるような学校環境を推進・構築するための資料の獲得を目的とした。●方法は、「第5回男性養護教諭友の会(2014年)」の参加者を対象に、“一次救命処置”・“応急手当”・“その他の対応”等を内容とした質問紙を用いて、集合調査を行うこととした。●まとめると、養護教諭に男女は関係なく、専門職として幅広い知識と技術を持つため研修を受け学び実践するべきであって、その上で、男性養護教諭は「父性」等といった“男性性”を活かし、児童生徒対応を行うべきであるとの結論に至った。
著者
荒木 達雄
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.62_1, 2016 (Released:2017-02-24)

内田良氏の提言で組(立)体操がクローズ・アップされ、文科省の指針発表にまで発展した。この問題は、体育の授業内ではなく「体育祭」という「スポーツ・イベント」内での事故が多発しているためである。もともとは体操領域に「組(立)体操」は位置しているわけであるが、指導要領にその種目の文言が戦後、一度明記されたのみであり、現在の「体つくり運動」でも明記されていない。また、名称の不徹底も問題となっている。それは「組立体操」、「組体操」の区別の仕方である。「組立体操」は、人間が2段、3段に積み上げて造形美を表現する「静的」な運動形態である。「組体操」は、2人以上で互いの力を利用し合って動く、「動的」な運動形態である。体育の指導者であれば、この違いを理解したうえでこれらの運動種目を指導すべきであろう。また、普段の授業内での練習した種目を厳選したうえで、体育祭での発表作品として選択すべきと考える。今回は、「組立体操」、「組体操」の目的を明確にして実践例を参加者に体験してもらい、発表作品にまで発展させていく企画である。
著者
伊藤 詩織 佐々木 万丈 北村 勝朗
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.127_1, 2016 (Released:2017-02-24)

女性スポーツ競技者にとって、月経期間に痛みや症状があることは、競技力向上を目指す上でストレッサーとなることが予測される。本研究は経血の処置方法に着目し、布ナプキンの使用を女子大学生スポーツ競技者に適用することで、月経症状に対する意識に変容が見られるか検討をおこなった。A大学で部活動やクラブチームに所属している学生7名を対象とした。1か月目の月経期間は市販ナプキンで過ごし、その後3か月の月経期間は、ガーゼとコットンを体調によって組み合わせて使用し、月経期間が終了する毎にアンケート調査をおこなった。分析の結果、市販ナプキンの使用時に自覚された「ムレ」「かゆみ」などの不快感が有意に低減し、また認知的評価では、日常生活における月経随伴症に対するコントロール感の向上が示された。これらの結果から、市販ナプキンよりも通気性や保温性のある布ナプキンを使用することで、月経症状に対する意識が改善したと考えられる。さらに、月経による愁訴の一つである「集中力の低下」が低減したことも示され、布ナプキンを使用することが、より競技に集中することができるなど、競技力向上の一助となる可能性のあることが考えられる。
著者
矢邉 洋和 梅澤 秋久
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.294_2, 2016 (Released:2017-02-24)

2009年の米国教育省は、オンライン学習の効果を対面状況と比較した上で報告し、中央教育審議会答申(2012)では、これからの時代を見据え、「教室外学修」の重要性を説いている。本研究では、小学校4年生の体つくり運動において、オンラインストレージを用いた家庭での動画視聴(以下家庭での動画視聴)による反転学習型の授業を実践した。保護者へのアンケートおよびインタビューによる分析を通して、家庭での動画視聴におけるメリットとデメリットが示唆された。6回の動画配信のうち、保護者も平均5.4回視聴し、平均3.3回は、子どもと一緒に動画を見ていた。動画を一緒に見ながら、「学習へのアドバイス」や「称賛」、「学習内容への質問」といった会話が生まれる傾向が認められた。保護者自身の動画視聴への「楽しみ度合」と、「授業のねらいへの理解」、「1時間ごとの子どもの変化への気づき」、「負担感のなさ」に統計的に有意な相関関係が認められた(p<0.05)。ネットワーク自由記述およびインタビュー分析にはテキストマイニングソフトKH Coderを用い、分析を行った。
著者
小石 麿由桂
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.182_1, 2016 (Released:2017-02-24)

本研究の目的は水泳の自由形におけるターン動作の速い選手と遅い選手の動作の違いを比較検討し、速いターン動作の特徴を明らかにすることであった。大学競泳選手男子8名のターン動作を高速度カメラで撮影し二次元動作分析を行い、ターンタイムは壁から3mの地点を通過し、ターン動作を終え再び通過するまでとした(3RTT)。水平方向の頭頂及び重心の移動距離と第1局面(最終ストロークのキャッチから頭を下げるまで)タイム(r=0.64、0.82)、垂直方向の重心移動距離と第3局面(足が壁に接地している間)タイム(r=0.69)の間に有意な相関がみられたが、第2局面(頭が下がり、足が壁に接地)のタイムと3RTTには相関がみられなかった。F.Puelら(2012)は「最高のターン時間は回転を開始する時の頭から壁との距離、水平速度の力のピーク、ターンの間の通り道の長さの削減によりもたらされる」と述べている。これらのことから3RTTを短くするためには以下のことが重要である。1)ある程度壁に近づいて回転開始時の頭と壁との距離を短くし、第1局面の移動距離を短くする。2)第3局面のタイムを短くするために垂直方向の動きを小さくする。
著者
内田 良
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.61_2, 2016 (Released:2017-02-24)

リスク研究において、ゼロリスクは神話である。リスク研究の使命は、ゼロリスクを目指すことではなく、さまざまな活動のリスクを比較検討することから、とくにリスクが高いものについてそのリスクを低減していくことにある。スポーツ事故のなかでこの数年話題となった組(立)体操や柔道もまたそのような視点からリスクが検討されるべきであり、「安全な組(立)体操」「安全な柔道」こそが最終的な目標となる。 組(立)体操についていうと、近年、組み方の巨大化と組み手の低年齢化が進み、立体型ピラミッドの場合、幼稚園で6段、小学校で9段、中学校で10段、高校で11段が記録されている。頂点の高さ、土台の負荷、崩れるプロセス等において多大なリスクが想定される。実際に小学校において組(立)体操は、体育的活動のなかでは跳箱運動、バスケットボールに次いで負傷件数が多く、かつ実施学年((5~)6年生)や地域(実施していない学校や自治体もある)が限られるため、事故の発生率は高いと推定される。なお、低い段数でも事故が多く起きていると考えられることから、高低にかかわらず安全な指導方法を学校に伝えていくことが、私たちの課題である。
著者
竹内 秀一
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.105_2, 2016 (Released:2017-02-24)

運動部活動などを舞台に物語が紡がれるスポーツ漫画は、我々とスポーツとの関わりを映し出すひとつの鏡といえる。例えば、1990~96年に井上雄彦氏によって連載された『スラムダンク』は、多くの若者をバスケットボールへと駆り立てた。このような現象を松田(2009)は、「マンガに描かれたスポーツ世界のリアリティが、逆に現実世界のスポーツのリアリティ感覚の受皿となる」と述べる。すなわち、スポーツ漫画は単なる表象文化ではなく、他方スポーツに新たな現実を生起させる循環装置にもなっているのである。ところで、漫画が世代ごとの「アイデンティティ」を確認する役割を担うという報告(諏訪、1989)もある。ここより、スポーツ参与者の同一性(=プレイヤー・アイデンティティ)を基底している言説、あるいは揺らぎのダイナミクスをスポーツ漫画から捉えることができるのではないか。そこで本研究では、スポーツ漫画におけるキャラクターの表象について、「アイデンティティ」という補助線を用いて考察していく。そして、そこから透けてみえる運動部活動における現代的な力学の様相を明らかにすることを目的とする。
著者
池田 志織 遠藤 俊郎 安田 貢 三井 勇 田中 博史 横矢 勇一 飯塚 駿
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.141_2, 2016 (Released:2017-02-24)

チーム力とは「環境や課題の変化に適応しながら、成果に直結させることのできるチームレベルの能力」(池田、2009)と定義されているが、チーム力に関してスポーツチームを対象として行われた研究はわずかである。そこで本研究は2015年度春季関東及び関西大学バレーボール1部リーグに所属する男女バレーボールチーム(男子18チーム496名、女子19チーム603名)を対象に質問紙調査を行い、集合的効力感、チームの振り返り、スポーツ・コミットメントがチーム力にどのような影響を与えるかを検討することを目的とした。重回帰分析の結果、集合的効力感の「準備力」、「結束力」と、チームの振り返りの「タスクの振り返り」、「社会的振り返り」がチーム力のコミュニケーション能力(R2=.77)、目標設定(R2=.74)に対して正の影響を与えていた。このことから、日頃からチーム内で話し合いをして、課題を見極め改善していくことによって、チーム力が高まるのではないかと示唆された。また、各メンバーのコミットメント能力が高すぎると、チームとしての機能を失い、チーム力を低下させる可能性が示唆された。
著者
大森 肇
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.52_3, 2016 (Released:2017-02-24)

一過性の運動はパフォーマンスの低下すなわち疲労を招く。競技などにおいて、運動パフォーマンスの向上を目論む立場からは、疲労は軽減するに越したことはない。しかし、生体防御という観点からは疲労は必要不可欠でもある。ヒトを含めた動物には、素早く力強く動く必要が生じることがある。しかしそれは長くは続かない。身体に何の警告もなければ、生体が破綻するからである。逆に緩徐な運動は長く続けられる。そして、運動の長さに対する疲労の出現機構も上手く備わっている。特に競技ではそうした生体防御機構にいかに抗うかを競っているという見方もできる。本演題では、高強度持久性運動時の疲労とそれを軽減するシトルリンの作用機序について、筋と肝の臓器連関をベースに我々の研究の一端を紹介する。シトルリンは一酸化窒素産生と血流改善、あるいはアンモニア解毒亢進の観点から、運動パフォーマンス向上のためのサプリメントとして注目されている。我々はラットの疲労困憊走モデルを用いて、運動強度とシトルリン投与効果の関係、また投与効果の背景について、筋、血液、肝のアミノ酸動態と臓器連関から検討した。
著者
奥田 愛子 中込 四郎
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.138_3, 2016 (Released:2017-02-24)

後年の競技へのコミットメントの様式と自伝的記憶(原風景、スポーツ原体験、等)との関係性について明らかにすることを目的として、これまで本研究者らは多様な角度から検討を加えてきた。本研究では、成人期まで同一のスポーツキャリア経験(ともに同一種目において思春期から大学卒業後の企業所属のアスリートとして活躍)を重ねてきた2組(A・B)の一卵性双生児アスリートの自伝的記憶について、質問紙ならびに面接を通してその特徴を検討した。その結果、2組の双生児間での原風景は同一で、それは高い力動性を伴う活動であり、相互のかかわり合いが認められる内容であった。また、スポーツ原体験では達成感や競合へのモチベーションの体験が語られ、幼少期の体験をその後の身体活動への興味関心へとつなげていた。つまり、後年まで継続されるキャリアと同様に自伝的記憶においても強い重なりが認められた。さらに競技キャリアでの双生児間の関係性について、「一人よりは二人の方が頑張れる。心強い存在」(A)、「二人で一緒に頑張るという姿勢はずっとある。<略>お互いにライバルという感じはなかった」(B)と語っており、そこでもまた重なりが認められた。
著者
板谷 厚 増澤 拓也 吉田 雄大
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.151_1, 2016 (Released:2017-02-24)

【目的】本研究は、三人で行う簡単な組体操を実施し、その前後に開眼条件(EO)と閉眼条件(EC)における静止立位動揺を調査することで、立位制御における視覚入力に対する依存性が低下することを検証した。【方法】若年成人女性15名を対象とした。対象者は3人一組で実験に参加した。まず各参加者はEOとECで30秒間の静止立位をそれぞれ2回ずつ実施し、足圧中心(COP)軌跡を記録した(pre)。その後、3人組で行う組体操(ピラミッド、サボテンおよび扇)を、各対象者がすべての役割を経験するよう3回ずつ実施した。休憩の後、再び静止立位を実施した(post)。COPの動揺速度を算出し、これらからロンベルグ率(EC / EO)を求めた。【結果】反復測定分散分析の結果、動揺速度において視覚条件×測定時間の交互作用に有意性が認められ、ECのみpostで低下した(p = .009)。対応のあるt検定の結果、ロンベルグ率はpostでpreより低下した(p = .018)。【結論】組体操は立位制御における視覚入力に対する依存性を低下させ、その他の感覚入力に対する依存性を高めることが示唆される。
著者
谷本 道哉
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.155_1, 2016 (Released:2017-02-24)

背景:スポーツチャンバラは、子供から大人まで楽しめるレクリエーションスポーツである。スポーツチャンバラの運動特性を検証した研究は少ない。その生理学的負荷特性に関する知見を得ることには大きな意義がある。方法:被験者には10名の健常な成人男性を用いた。実験① 1分× 10ラウンドの1対1の自由乱取りを行い、その際の酸素摂取量等を測定した。実験② チャンバラの代表的な攻撃動作・よけ動作を行い、その際の床反力・筋活動レベルの評価を行った。実験③ チャンバラでの反りよけ動作を行いその際の体幹伸展角度の評価を行った。また、実験①-③すべてにおいて比較対象としてチャンバラ以外の動作での測定を行った。結果:実験① 10ラウンドのチャンバラの乱取りでの平均酸素摂取量は31.5 ± 5.9ml/min/kgであり、時速8kmの走行をやや上回る程度であった。実験② チャンバラの攻撃動作の上下肢の筋活動レベルおよびよけ動作の下肢の筋活動レベルはテニスのスイングと同程度であった。実験③ チャンバラの反りよけ動作の最大体幹伸展角度は95.6 ± 22.0°であり、ラジオ体操の後屈動作と同程度であった。
著者
住野 幾哉 山口 香 小林 好信 橋本 佐由理
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.285_2, 2016 (Released:2017-02-24)

近年、水泳の萩野公介が北島康介の、「ありのままでいいんだ」との言葉で蘇生し、リオオリンピック出場を決めた。言葉によるエンパワーメントの重要性が再確認された出来事である。スポーツ選手に対する言葉掛けには大きな意味がある。キックボクシングは相手と対峙し打撃を主とする競技であり、心理面へのアプローチが競技パフォーマンスに及ぼす影響は非常に大きいと推察される。本研究は、キックボクシング選手がエンパワーメントされる言葉についての知見を得ることを目的に、選手が励まされた言葉は何であったのかに着目してインタビュー調査を行った。対象は学生キックボクシング選手10名である。分析方法は、ジョナサン・スミス(Smith J. 1997)の解釈学的現象学的分析を参考にスーパーバイザーの指示の下で分析を行った。その結果、彼らが励まされたと感じた言葉は大きく「賞賛」「教示」「励まし」「受容」というカテゴリーに分類された。なかでも「励まし」「受容」に分類されたものが多かった。また、指導者が与える言葉だけではなく、家族、先輩、チームメイトなどといった重要他者から発せられる言葉が選手に与える影響が大きいこともわかった。
著者
松浦 孝明
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.343_2, 2016 (Released:2017-02-24)

[はじめに] 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律が施行され、教育現場においても施設設備だけでなく、授業内での適切な教材の使用や障害の特性に配慮した指導が求められている。しかし、文部科学省等から合理的配慮事例集が示されているが、体育授業に関する事例はほとんど見られない。本研究では、地域の小学校等に在籍する肢体不自由児に対する合理的配慮事例集を作成し、今後のインクルーシブな体育授業の充実に寄与することを目的とする。[方法] 筑波大学附属桐が丘特別支援学校の教育相談による支援事例および地域の小学校や中学校から転入した児童生徒に対するアンケート結果から、体育授業の参加を困難とすると思われる要因(障害特性、認知特性など)を整理するとともに、適切な配慮について整理する。[まとめ] 体育授業への参加を困難にする要因は、身体の動かしにくさ、ボールや用具の扱いにくさ、車いすなど補助具の利用、視覚情報処理の難しさ等に整理された。また、合理的配慮の事例は、施設設備、教材、指導法、人的配置などに分類し、体育授業全般に共通するものと個別の指導内容に応じたものに整理することで利用しやすい事例集になると思われた。
著者
岸本 卓也 春日 晃章 坂井 智明
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.349_2, 2016 (Released:2017-02-24)

本格的な高齢社会を迎えたわが国では、加齢に伴う体力低下や機能障害の予防及び身体活動能力の維持増進に関して質の高い研究成果に基づく保健対策が求められている。本研究では、岐阜県T市が推奨するリズムダンスユニットへ所属の高齢者64名のうち、2015年と2016年の体力測定に参加した64~80歳の女性高齢者22名を対象とした。そして継続的なリズムダンス活動が体力の維持、増進にいかなる効果があるのか明らかにすることを目的とした。測定内容は、棒上バランス、長座体前屈、立位ステッピング、脚筋力、握力、体格および体組成であり、分析には対応のあるt検定を用いた。分析の結果、全身反応時間において有意な向上が認められた。また棒上バランス、長座体前屈、脚筋力、握力では有意な低下は認められなかった。一方、立位ステッピングのみ加齢に伴う有意な低下が認められた。この結果からリズムダンス活動は、体力の維持や著しい低下を防ぐ効果があると示唆される。また様々なテンポの曲や複雑な振付を仲間と合わせる中で切り替えや体の軸を保つ動作が養われ、これらのことがバランス能力や筋発揮反応時間の短縮に好影響を及ぼしていると推測される。
著者
山田 理恵
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.329_1, 2016 (Released:2017-02-24)

古戦場の舞台や合戦にまつわる伝説に因んで、綱引きが行われる県境の地域がある。また、経済的事情等により中止された県境綱引きもある。発表者は、伝統綱引きによる地域開発との比較において、地域の歴史や伝説を題材にした県境綱引きに着目し、現地調査および資料調査を行ってきた。本研究では、その一環として、鹿島(加賀市)の綱引き伝説が、県境綱引きとして現代に再生された事例について考察する。その伝説では、美しい鹿島の森をめぐり、加賀の女神と越前の男神がそれぞれ綱を作り鹿島に巻き付け引き合っていたが、なかなか勝負がつかなかったところ、男神の綱が切れ尻もちをつき鹿島は加賀の方に少し動き、男神の大きな尻もちの跡は北潟湖になったという。このような伝説に基づき、2015年10月、広域的な交流と活性化を目的として「第1回鹿島の森伝説 越前・加賀県境綱引き」が、北潟湖の湖畔、鹿島の森を望む「越前加賀県境の館」前(福井県と石川県の県境)で開催された。県境一帯を一つの地域としてとらえ、地域の伝説に登場する綱引きを現代に蘇らせたこの県境綱引きは、スポーツによる地域開発を考察するうえでの好事例と位置づけられる。
著者
金子 伊樹 高橋 珠実 新井 淑弘
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.150_1, 2016 (Released:2017-02-24)

免疫力の向上は、疾患を事前に防ぐ効果があり、よりよい生活を営む上で重要な因子となっている。現在、運動不足や偏食、ストレスなどの生活習慣の乱れから免疫力の低下が問題となっている。定期的な運動習慣は、生活リズムの改善、また健康に良いことが知られているが、そのメカニズムはあまり明らかになっていない。そこで我々は、多種多様な場面で行われているレジスタンス運動を用いて、習慣的な運動の効果を免疫関係の因子に着目して研究を行った。運動習慣のない学生を対象者として集め、トレーニング群とコントロール群の2群に無作為に分け、1か月のトレーニング期間を設けた。1か月のトレーニング期間の前後に、2群に一過性のレジスタンス運動を行わせ、運動前、直後、30分後の3時点で採血を行い、抹消血中の白血球数と免疫機能調節因子の濃度を調べた。その結果、1か月のトレーニング期間後の運動直後に、白血球数と免疫機能調節因子の濃度がコントロール群対してトレーニング群で増加した。これらの結果から、習慣的に行われるレジスタンス運動は一過性運動時の免疫力増加の可能性を示唆した。
著者
柳澤 佳恵 澤江 幸則 齊藤 まゆみ
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.335_1, 2016 (Released:2017-02-24)

在宅の知的障害者の多くは、日中活動の場として通所施設を利用している。約7割の事業所は、健康増進活動として何らかの運動やスポーツを実施していたが、その活動目的は、体力増進や健康保持が中心であった。一方で、休日の余暇の実態を見ると、テレビやビデオを見て過ごす時間が多く、事業所内で経験した活動が日常生活で生かされているとはいえない。事業所での健康増進活動が、普段の生活の中で継続していけるよう予め利用できる社会資源を活用していないこと、体力増進や健康保持が中心で、楽しみや今後の生活の広がりにまで目を向けて実施されていない可能性がある。事業所で実施する運動やスポーツは、リハビリテーションや運動量を確保することだけを目的とするのではなく、利用者が楽しみながら意欲的にかつ継続して活動できるように支援することが大切だといわれている。そこで本研究は、通所施設での健康増進活動の在り方を考察することを目的に、どのような活動、支援体制及び社会システム等が必要なのかを、実際に活動に携わっている施設職員、家族、当事者及びその関係者から、インタビュー調査を実施したので報告することにした。
著者
増澤 拓也
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.134_1, 2016 (Released:2017-02-24)

近年様々なバランストレーニングが行われているが、その中の1つとしてスラックラインと呼ばれる2点間に張った平たいテープ上でバランスをとる綱渡りのようなスポーツが、バランス能力を向上させるトレーニングとして注目されている。また、姿勢安定には体幹部の堅牢性が重要視されており、体幹部のトレーニングとして自重を用いた不安定環境にて負荷をかけるサスペンショントレーニングに関心が集まっている。本研究の目的は、スラックラインを用いた基底面動揺トレーニングおよびサスペンショントレーニングを用いた体幹トレーニングが姿勢安定性向上に及ぼす影響を明らかにすることである。実験参加者を基底面動揺トレーニング(BT)群と体幹トレーニング(CT)群に配置し、週3回のペースで合計10回のトレーニングを実施した。その訓練前後において重心動揺計とビデオカメラを用い、姿勢安定性の評価・分析をおこなった。BT群では体幹部を積極的に動かすことで姿勢制御し、CT群では体幹部を動かないように保持することでバランスを安定させることが示唆された。