著者
野田 篤 利光 誠一 栗原 敏之 岩野 英樹
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.2, pp.99-113, 2010 (Released:2010-10-13)
参考文献数
82
被引用文献数
9 8

上部白亜系の和泉層群は横ずれ堆積盆を西から東へ埋積した地層と言われているが,四国の西部と東部とでは岩相や地質構造に違いがあり,堆積盆の埋積過程やテクトニクスが異なっていた可能性がある.今回,四国中央部の新居浜地域の和泉層群を調査し,北縁相の楠崎層と主部相の磯浦層・新居浜層の3つの新しい地層名を定義した.新居浜層に挟在する珪長質凝灰岩を用いたフィッション・トラック年代は79.1±2.2 Maを示した.また,新居浜層の泥岩から産出した放散虫化石群集は,前期-中期カンパニアン階のDK群集帯に対比された.これらの結果は新居浜層の堆積年代が中期カンパニアン期であり,四国西部(松山地域)に分布する同層群とほぼ同時期に堆積したことを示唆している.本地域の和泉層群の岩相や地質構造は四国西部と東部に見られる同層群の両方の特徴を持っており,その堆積盆形成・埋積プロセスの過渡期に堆積した地層であると考えられる.
著者
松田 外志朗 栗原 敏修 浅沼 博司 中江 晴彦 冨吉 浩雅 森田 正則 嶋津 岳士 平出 敦
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical journal of Kinki University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1-2, pp.71-79, 2012-03-01

[抄録] 糖尿病患者の増加及び高齢化に伴い, 低血糖症例は増加している.重症症例は, 意識障害などのため他者の援助を必要とし, 救急搬送されることが多い.低血糖症例にいかに対応するかは救急医療の現場において重要な問題である.近畿大学医学部附属病院では, 低血糖症例のほとんどが救急診療部門(ER)において初期治療がなされている.当院ERにおいて, 2008年4月から2010年3月までの2年間で84回の低血糖によるER受診があった.意識障害あるいは意識消失を主訴とする症例が多く, 高齢者の割合も高い.内分泌代謝内科で治療されている症例は半数以下であり, 糖尿病以外の疾患のために他の診療科かかりつけとなっている症例が多かった.低血糖症例に対し適切な初期診療を行うために, 当院における低血糖症例の特徴を検討し, 初期診療において必要な情報について解説する.また, 初期診療において, 注意を要する症例として, 低血糖が10時間以上遷延した7症例, 糖尿病治療を受けていなかった非糖尿病の12症例をとりあげる.さらに, 患者の高齢化や社会的な要因から留意すべき点について考察する.
著者
伊藤 剛 中村 和也 日野原 達哉 栗原 敏之
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.345-358, 2021-10-13 (Released:2021-10-20)
参考文献数
46
被引用文献数
5

本論では,足尾山地鳴神山東方に分布する足尾帯ジュラ紀付加体の大間々コンプレックス及び黒保根–桐生コンプレックスから産出した放散虫を報告する.三畳紀放散虫及びコノドント片が大間々コンプレックスのチャートから産出した.中期ジュラ紀のバッジョシアン期及びバトニアン前期の放散虫が大間々コンプレックスと黒保根–桐生コンプレックスの泥岩から得られた.先行研究で両コンプレックスから報告された中では,泥岩に含まれるバッジョシアン期の放散虫が最も若い記録であった.従って,本研究で報告したバトニアン階下部の泥岩は,より若い記録となる.
著者
栗原 敏 福田 康一郎 佐藤 達夫 江藤 一洋 福島 統 神津 忠彦 高瀬 浩造
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2001

1.共用試験Computer-based Testing (CBT)の試験システムの開発および運用に関する研究:平成13年度にCBTシステムの基本的開発を行った。データベース構造および問題入力ソフトについては東京慈恵会医科大学において総合試験システム(Exam98)を参考に研究、開発を行い、出題方式(コンピュータ試験)、サーバーでの問題管理などは独自開発を行い、平成14年2月からの第1回CBTトライアルに投入した。第1回トライアルで発見されたシステム上の問題点を平成14年度の本研究により改修し、平成15年2月からの第2回CBTトライアルに投入している。2.MCQ問題の作成とその質の確保に関する研究:第1回トライアルでは5肢択一形式のいわゆるタイプAの多肢選択問題を出題し、出題したすべての問題を解答率、識別指数、解答パターンを参考に検証した。この検討の結果、共用試験CBTの問題の質を確保するためには、項目反応理論の適応が必要であるとの結論に至り、現在、項目反応理論のCBTへの適応の検討が続いている。第2回CBTトライアルでは、さらにわが国の独自開発による順次解答型連門形式を試行している。順次解答2連門形式、順次解答4連門形式は、コンピュータ試験の特性を生かしたもので、問題解答後次の問題に移ったら前の問題には戻れないタイプのもので、紙と鉛筆の試験では実施できなかったものである。このタイプを用いることで、受験者が一つの症例について順次情報が集積されていく過程の中での判断を問うものである。本形式は米国のSTEP1にもなく、わが国独自の出題形式である。3.客観的臨床能力試験(OSCE)の開発と運用に関する研究:平成13年度の共用試験OSCEは医科、歯科あわせて20校で、少数トライアルとなった。この第1回OSCEトライアルでの学生成績を集め、評点の評価者間較差の研究を行った。4.歯学における試験の作成と運用に関する研究:医科、歯科ではとくにOSCEの課題に大きな相違があり、その相違が運用にどのように影響するかのデータを集積した。
著者
栗原 敏之
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, pp.620-639, 2004-10-15
参考文献数
65
被引用文献数
3 21

飛騨外縁帯の福地-一重ヶ根地域と九頭竜湖-伊勢川上流地域に露出する凝灰質砕屑岩相のシルル系・デボン系において放散虫生層序の検討を行った.7つの主要なセクションで認められた放散虫化石群集に基づき,下部シルル系ランドベリー統から下部デボン系エムス階に対比される計8つの群集帯を設定し,飛騨外縁帯のシルル系・デボン系凝灰質砕屑岩層の時代を詳細に議論した.従来,飛騨外縁帯と黒瀬川帯・南部北上帯のシルル系・デボン系は,凝灰質砕屑岩層の堆積年代やシルル系石灰岩層の有無等,相違点が強調されてきた.しかし,放散虫化石帯に基づく対比から,後期シルル紀ラドロウ世から前期デボン紀エムス期の凝灰質砕屑岩層は,その発達状況において高い類似性があることが明らかになった.この類似性は,3地帯のシルル系・デボン系が形成時において深く関連していたことを示す.
著者
栗原 敏之
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.109, no.11, pp.635-647, 2003-11-15
参考文献数
55
被引用文献数
4 16

飛騨外縁帯福地地域に分布する吉城層は,その時代についてオルドビス紀,シルル紀および前期デボン紀と諸説が存在した.また,不整合とされたデボン系福地層との関係も,福地層の層序から問題点が指摘されていた.今回,吉城層の模式均一の谷の西方に位置するカナシロザコの枝沢において,新たに吉城層と考えられる地層の露出を確認した.露頭から採取した凝灰質な砂岩泥岩互層の泥岩部および露頭付近の転石として得られた珪長質な凝灰質泥岩から前期デボン紀Emsianを示す放散虫化石が得られた.従来報告されている吉城層の放散虫化石群集(Zadrappolus yoshikiensis群集)と今回発見された群集から,吉城層の時代は後期シルル紀Pridoliから前期デボン紀Emsianの前期である可能性が高い.この時代論は古城層と福地層がほぼ同時代の地層であることを示す.したがって,両側の接触関係が不整合である可能性は極めて低い.
著者
草刈 洋一郎 平野 周太 本郷 賢一 中山 博之 大津 欣也 栗原 敏
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.123, no.2, pp.87-93, 2004 (Released:2004-01-23)
参考文献数
25

正常の心臓は律動的な収縮·弛緩を繰り返し,全身に絶え間なく血液を送り出している.これは,細胞内Ca2+-handlingを中心とした興奮収縮連関が規則正しく行われている結果である.一方で興奮収縮連関が破綻すると,収縮不全や拡張不全が招来されることが明らかになってきた.心筋細胞内Ca2+handlingの調節には多くのタンパク質が関わっているが,中でも筋小胞体のCa2+ポンプであるSERCA2a(心筋筋小胞体Ca2+-ATPase)が中心的な役割を果たしている.近年,分子生物学的手法を用いて,SERCA2aを心筋に選択的に過剰発現させると,心肥大や心不全になりにくいことが指摘されている.しかし,これまでの遺伝子変異動物を用いた研究では主として慢性心不全に関する研究は多いが,急激に起こる心機能の低下の原因に関する研究は少ない.そこで,今回我々は,SERCA2a選択的過剰発現心筋を用いて,急性の収縮不全や拡張不全を起こす病態時に,SERCA2aの選択的機能亢進により細胞内Ca2+-handlingと収縮調節がどのような影響を受けるのかについて調べた.急性収縮不全をきたす病態として,呼吸性(CO2)アシドーシスを用いた.アシドーシスならびにアシドーシスからの回復時における細胞内Ca2+と収縮張力を,SERCA2a過剰発現心筋と正常心筋とで比較した.アシドーシス時の収縮抑制に対しても,またアシドーシスからの回復時の収縮維持に関してもSERCA2a過剰発現心筋は正常心筋よりも収縮低下が抑制された.この結果は虚血性心疾患の初期などでおこるアシドーシスによる収縮不全に対して,SERCA2aの選択的発現増加による細胞内Ca2+-handlingの機能亢進が有用であることを示唆している.
著者
栗原 敏夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.760-761, 1995-12-20 (Released:2017-07-11)
被引用文献数
1

[工夫した点](1)試験紙を用いることで感覚効果を高めた。(2)希硫酸を陽極に銅板, 陰極に炭素棒を用いることで, 陽極で酸素の発生がなく銅が溶出する。(OH^-よりCuが酸化されやすい)陰極では水素発生の後, Cu^<2+>が還元され銅が析出する。
著者
内野 隆之 栗原 敏之 川村 信人
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.4, pp.249-252, 2005 (Released:2005-08-01)
参考文献数
23
被引用文献数
22 27

Early Carboniferous radiolarians were newly discovered from siltstone of the Nedamo Complex in the Hayachine Terrane, Northeast Japan. This siltstone and other clastic rocks along with greenstone and chert are the components of an accretionary complex. Radiolarian fauna contains Palaeoscenidium cladophorum Deflandre that ranges in age from Early or Middle Devonian to Early Carboniferous. Since the Fe-Mn chert intercalated in a MORB-type basalt of the Nedamo Complex was assigned an age of Late Devonian (Hamano et al., 2002), the accretionary age of the Hayachine Terrane is no older than Late Devonian, most probable Early Carboniferous. This is the first report of an Early Carboni-ferous accretionary complex recognized by biostratigraphic data in Japan.
著者
鈴木 敬介 栗原 敏之 植田 勇人
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.4, pp.307-322, 2019-04-15 (Released:2019-08-08)
参考文献数
43
被引用文献数
5

飛騨外縁帯の岐阜県高山市本郷地域に分布する,従来,ペルム系森部層に一括されていた砕屑岩層について岩相層序とジルコンのU-Pb年代を検討し,これらを森部層と堂殿層(新称)に区分した.両層の砂岩には火山岩片が豊富に含まれていることから,ジルコンのU-Pb年代において,最も若い年代の集団の年代値が堆積年代である可能性が高い.U-Pb年代の検討の結果,森部層下部~中部の堆積年代の下限は約263~256Maで,中期~後期ペルム紀に堆積した可能性が高い.森部層上部のジルコン年代値の最も若いピークは前期三畳紀を示し,同層の年代は前期三畳紀にまで及ぶ可能性がある.堂殿層の堆積年代は,砂岩中のジルコンのU-Pb年代に基づくと,約186~181Ma(前期ジュラ紀)である可能性が高い.堂殿層は,下部ジュラ系来馬層群の漏斗谷層上部~北又谷層および蒲原沢層上部に対比できる.