著者
根本 淳子 鈴木 克明
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.309-318, 2006
被引用文献数
8

本研究では,近年eラーニングなどの自己学習教材において,その必要度が増しているシナリオ型教材の開発に有効とされる,インストラクショナルデザイン理論の一つゴールベースシナリオ理論(GBS)が日本で活用されることを目的に分析し,紹介する.GBSの論理的根拠であるCBR (Case-Based Reasoning)学習理論を併せて紹介する.この理論がより簡単に活用できるようにGBSチェックリストを開発した.チェックリスト開発には,教材開発の手法を応用し,形成的評価および改善を行った.GBSチェックリストには既存教材の強みと弱みを明確にさせ,リ・デザインへのヒントを整理できる機能も含んでいることが確認された.
著者
根本 淳子 竹岡 篤永 高橋 暁子 市川 尚 鈴木 克明
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.427-439, 2023-12-20 (Released:2023-12-16)
参考文献数
20

インストラクショナルデザイン(ID)分野では国際的には状況に応じて新しいものを生み出すデザインの重要性が指摘されているが,国内ではこの高次のスキル向上を支援するプログラムは存在しない.本研究では状況に応じたデザイン力に着目し,大学授業の改善支援を担う上級インストラクショナルデザイナー(上級IDer)向けに,他者(クライアント教員)への提案に必要な視点「寄り添う」を養成する講座を開発した.関連プログラムの位置づけを整理し,授業改善提案に先立ちクライアント教員の状況やニーズを聞き取ることができる支援ツール「8つの質問」を開発した.試行の結果,本講座参加者は,クライアント教員の授業への思いに寄り添う授業改善を提案ができていた.クライアント教員に寄り添う視点を取り入れるための仕掛けづくりができた.今後はクライアント教員の授業改善の度合いから「寄り添う」ことができたかどうかを確認していく予定である.
著者
高橋 暁子 根本 淳子 竹岡 篤永 市川 尚 鈴木 克明
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.249-258, 2023-06-20 (Released:2023-07-14)
参考文献数
17

本研究では,Instructional Design(ID)の専門家の養成を目指した「大学版上級ID 専門家養成講座」のワークショップを題材に,修了者の継続的な参加が修了者自身にどのような意義があるのかを明らかにしようとした.参加者アンケートから,前年修了者がファシリテータとしてワークショップに参加したことで,参加者は有用なアドバイスを得られたと感じていることが示唆された.また,前年修了者に対するフォーカスグループインタビューでは,ワークショップへの継続参加がリフレクションの機会になっていることなどが示唆された.一方で,継続参加の効果についてさらなる分析が必要であることが確認された.
著者
仲道 雅輝 竹岡 篤永 根本 淳子
出版者
日本リメディアル教育学会
雑誌
リメディアル教育研究 (ISSN:18810470)
巻号頁・発行日
pp.2021.07.20.02, (Released:2021-09-01)
参考文献数
14

初年次教育における学生の学習経験の質向上に向けた授業改善の取り組みとして,Parrishの「ID美学第一原理」に示される学習者要因(4要因:意図・プレゼンス・開放性・信頼感)を枠組みとした「授業改善ヒント集;学習者要因編」を作成した。このヒント集の項目は,初年次教育に携わる教員への半構造化面接法により導き出されたものである。授業改善の方策として,意図20項目,プレゼンス35項目,開放性21項目,信頼感24項目が抽出できた。これらは,授業を通じて,学生の学習経験の質の向上に取り組もうとする教員の自己評価や授業改善の手掛かりとなるものである。
著者
竹岡 篤永 根本 淳子 吉田 明恵 高橋 暁子
雑誌
研究報告教育学習支援情報システム(CLE) (ISSN:21888620)
巻号頁・発行日
vol.2016-CLE-20, no.5, pp.1-4, 2016-11-11

大学連携による e ラーニングの質保証ガイドラインに基づいたチェックシートを試作した.チェックシートとガイドラインとを一体化させ,対象コンテンツの情報をチェックシートに記載することによってガイドラインの内容を保証させるようにした.また,チェックシートをガイドラインに準拠させる中で,ガイドラインの見直しにも取り組んだ.この一連の経緯を報告する.
著者
宮崎 誠 喜多 敏博 小山田 誠 根本 淳子 中野 裕司 鈴木 克明
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.66-75, 2016-10-07

我々は,熊本大学大学院教授システム学専攻で利用することを意図し,Sakai CLEのeポートフォリオツールであるOSPによるeポートフォリオシステムを開発した.開発にあたっては,本専攻のコンピテンシーベースの授業設計に合わせてシステムの要件定義を行い,OSPを採用したうえで不足した機能要件については,OSPをカスタマイズし,Blackboard Learning System CE6.0からSakai CLEへ自動連携するためのオリジナルツールを開発した.また本専攻のコンピテンシーリストにも対応しており,LMS上の学習成果物はeポートフォリオシステムに自動連携されるため,学生の最終試験の振り返りで利用した結果で有用であることが示唆された.
著者
鈴木 克明 根本 淳子
出版者
熊本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究では、欧米において「学びたさ」についてのインストラクショナルデザイン研究で注目が集まっている「美学・芸術的な視座」からの設計原理が我が国においてどこまで援用可能かを検討し、我が国独自の原理導出を目指した。教育工学の隣接領域で展開しているペルソナ技法やユーザーストーリー等関連研究の知見を取り入れ、パリッシュが提唱したIDの美学第一原理を検討し、意欲向上につながる学習経験を実現する方策を試みた。
著者
仲道 雅輝 竹岡 篤永 根本 淳子
出版者
日本リメディアル教育学会
雑誌
リメディアル教育研究 (ISSN:18810470)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.179-189, 2021 (Released:2022-08-20)
参考文献数
14

初年次教育における学生の学習経験の質向上に向けた授業改善の取り組みとして,Parrishの「ID美学第一原理」に示される学習者要因(4要因:意図・プレゼンス・開放性・信頼感)を枠組みとした「授業改善ヒント集;学習者要因編」を作成した。このヒント集の項目は,初年次教育に携わる教員への半構造化面接法により導き出されたものである。授業改善の方策として,意図20項目,プレゼンス35項目,開放性21項目,信頼感24項目が抽出できた。これらは,授業を通じて,学生の学習経験の質の向上に取り組もうとする教員の自己評価や授業改善の手掛かりとなるものである。
著者
鈴木 克明 根本 淳子
出版者
教育システム情報学会
雑誌
教育システム情報学会誌 (ISSN:13414135)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.168-176, 2011-04-30 (Released:2018-07-27)
参考文献数
19
被引用文献数
5

This paper provides an overview of research trends around three First Principles regarding the design of instruction. Merrill’s First Principles of Instruction proposes five common principles based on constructivist theories of instructional design. Reigeluth adopted them as foundational principles in his work, together with situational principles to propose a scheme of common knowledge base. Keller has proposed First Principles of Motivation to Learn, consisting of five ground rules based on commonly used ARCS Model with a newly added factor of “Volition.” It reflects current research focus on self-regulated learning. Parrish’s Aesthetics Principle of Instructional Design tries to advocate aesthetic consideration to design not only learning materials, but also experiences of learning.
著者
根本 淳子 柴田 喜幸 鈴木 克明
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.259-268, 2011
被引用文献数
1

本論文は,教育実践において学習デザインの定期的な改善サイクルを実現することでよりよい教育実践を生み出すことの重要性に焦点を当てたデザインベース研究のアプローチによる実践研究の報告である.国内では新しい学習デザインであるストーリー中心型カリキュラム(SCC)を採用した実践を取り上げ,SCC応用の可能性の手がかりを探りつつ,より深い学びを目指した実践に取り組んだ結果から得られた知見を整理した.学習デザインの定期的な改善サイクルを通じ,実践者のリフレクションを促すだけではなく,学習者の内容理解を深めていくことについて確認した.その結果,学習者個人と学習共同体双方への影響を確認することができた.本実践は,本論文の対象である2008年度と2009年度の実践を踏まえ,現在三回目のサイクルの最終段階にある.更なる検証を通じ新しい学習アプローチがより広く使われていくために,知見をデザイン原理として整理し,SCC実践に関する学習者の声を収集し整理していくことが課題となる.