著者
後藤 博之 杉浦 敏文 原田 幸雄 数井 暉久
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.497-501, 1999-04-15 (Released:2010-10-28)
参考文献数
19

腕時計用に開発された自動発電機構がリードレスペースメーカー電源としてどの程度有効であるか, その可能性について検討した. SEIKO社製の腕時計から, 発電機構とキャパシタ (0.33F) を取り出して適宜固定し, ポリビニル製カプセルに納めた (AGS). AGSを2.0V (0.66J) に満充電して, 市販のCMOS-ICを使って製作したパルス発生回路の電源とした. 本回路は1.47mAのパルス (0.5rnsec, 1Hz) を510Ωの負荷抵抗に供給し続けた. この際のAGS電圧は, 加速度発生装置 (±1.7G, 2Hz) を使った発電により1.6Vに維持した. AGS (0.66J) は, パルス発生回路と麻酔下の雑種成犬の心筋に420mJを供給し, 140bpmのペーシングを60分間維持した. 右心室壁に固定したAGSは, 1心拍につき13μJの発電をした. 以上よりAGSは心臓を刺激する充分なエネルギーの供給を期待できると考えられる.
著者
引網 宏彰 柴原 直利 村井 政史 永田 豊 井上 博喜 八木 清貴 藤本 誠 後藤 博三 嶋田 豊
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.699-707, 2010 (Released:2010-10-30)
参考文献数
6

リウマチ性多発筋痛症(PMR)に対して,漢方治療が奏効した5症例について報告する。さらに,これら5症例を含む当科でのPMR治療例10例について検討した。その結果,有効症例は6症例であった。そのうち,1例はステロイド剤の投与を拒否した症例であったが,他の5症例は筋痛症状や炎症反応の出現により,ステロイド剤の減量が困難な症例であった。また,1例を除いて,CRPは3.0 mg/dl以下であった。一方,無効症例では高度の炎症反応を示しており,ステロイド剤の投与が必要であった。有効症例には駆瘀血剤(疎経活血湯,桃核承気湯,桂枝茯苓丸,腸癰湯加芍薬,薏苡附子敗醤散,当帰芍薬散)が投与されていた。以上より,PMRでステロイド剤の減量が困難な症例や炎症反応が軽度である症例には,漢方薬は治療の選択肢の一つとなりうると考えられた。さらに駆瘀血剤の積極的な使用がPMRの治療に有用である可能性が示唆された。
著者
後藤 博三 嶋田 豊 引網 宏彰 小林 祥泰 山口 修平 松井 龍吉 下手 公一 三潴 忠道 新谷 卓弘 二宮 裕幸 新澤 敦 長坂 和彦 柴原 直利 寺澤 捷年
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.471-476, 2008 (Released:2008-11-13)
参考文献数
22
被引用文献数
1

無症候性脳梗塞患者に対する桂枝茯苓丸を主体とした漢方薬の効果を3年間にわたり前向き研究により検討した。対象は富山大学附属病院ならびに関連病院を受診した無症候性脳梗塞患者93名で男性24名,女性69名,平均年齢70.0±0.8才である。桂枝茯苓丸エキスを1年あたり6カ月以上内服した51名をSK群,漢方薬を内服せずに経過を観察した42名をSC群とし,MRI上明らかな無症候性脳梗塞を認めない高齢者44名,平均年齢70.7±0.7才をNS群とした。3群間において,開始時と3年経過後の改訂版長谷川式痴呆スケール,やる気スコア(apathy scale),自己評価式うつ状態スコア(self-rating depression scale)を比較した。また,SK群とSC群においては自覚症状(頭重感,頭痛,めまい,肩凝り)の経過も比較検討した。その結果,3群間の比較では,自己評価式うつ状態スコアにおいて開始時のSK群とSC群は,NS群に比べて有意にスコアが高かった。しかし,3年経過後にはNS群は開始時に比較し有意に上昇したが,SK群は有意に減少した。さらに無症候性脳梗塞にしばしば合併する自覚症状の頭重感において桂枝茯苓丸は有効であった。以上の結果から,無症候性脳梗塞患者の精神症状と自覚症状に対して桂枝茯苓丸が有効である可能性が示唆された。
著者
関矢 信康 引網 宏彰 古田 一史 小尾 龍右 後藤 博三 柴原 直利 嶋田 豊 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.811-815, 2004-11-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

難治性の気管支喘息の3症例に対して咽喉不快感, 動悸, 自汗を目標として清暑益気湯を投与した。目標とした症状および所見は速やかに改善した。さらに発作の回数が著明に減少あるいは消失した。そのほか3症例に共通していた事柄は中年期であること, 発作が通年性であること, 心窩部不快感, 心下痞〓, 臍上悸を認めることであった。これまで清暑益気湯は夏やせ, 夏まけに対して用いられることが多かったが中年期の気管支喘息の長期管理薬 (コントローラー) としても認識されるべき処方であると考えられた。
著者
渡部 泰明 西村 慎太郎 綿拔 豊昭 近本 謙介 後藤 博子 入口 敦志 神作 研一 劉 嘉瑢 黄 昱 加藤 聖文 齋藤 真麻理
出版者
人間文化研究機構国文学研究資料館
雑誌
国文研ニューズ = NIJL News (ISSN:18831931)
巻号頁・発行日
no.61, pp.1-16, 2022-06-20

●メッセージ創立50周年を迎えて●研究ノート【基幹研究】地方協創によるアーカイブズ保全・活用システム構築に関する研究国文学研究資料館所蔵木藤才蔵コレクションの基礎的研究について●エッセイ寺院調査と文学研究共同研究の場の豊かな学び●トピック100年へのエントランス―「法人第4期」の国文研スタート―国文学研究資料館創立50周年記念式典・講演会・展示大衆文化の今昔物語―日本古典籍セミナー北京2021―ないじぇる芸術共創ラボ アウトプットイベント4件2021年度のアーカイブズ・カレッジを顧みて総合研究大学院大学日本文学研究専攻の近況
著者
岩本 美江子 百々 栄徳 米田 純子 石居 房子 後藤 博 上田 洋一 森江 堯子
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.1116-1123, 1989-02-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
25
被引用文献数
7 17 2

これまで著者らは生体に対する騒音ストレス作因の生理的影響に関する研究を行うなかで,生理的のみならず心理的な影響をも把握することの必要性を感じた。物理的ストレスが心理的,情動的ストレスとなって不安を生ずる事は,Aiken1)の不安とストレスは[異体同形]であるとの提言からも考えられることである。従来不安の問題は,Kierkegaard2)に代表されるように,主として哲学ことに宗教と倫理学の課題であった。それを心理学の領域で,はじめて病態心理との関連において概念づけたのは精神分析学を樹立したFreud3)であり,彼は神経症的状態の治療においても不安を中心的な問題として重視した。一般に用いられるようになった最初の不安検査は,Taylor4)によって開発され公表された顕在性不安尺度(Manifest Anxiety Scale: MAS)である。その後一連の不安研究の後,Cattell and Scheier5)やLazarusら6)は不安をその特質から一過性にみられる気分としての不安状態と不安への陥りやすさとして捕えられる性格傾向としての不安特性の二つに分けることを提案した。この二つの不安についてSpielberger7)が明確に定義づけをした。すなわち不安には,ある状況下で大きく変動するような状態としての不安(state-anxiety以下A-Stateと略記)と,ある個人において比較的一定していると言われる性格特性としての不安(trait-anxiety以下A-Traitと略記)の二つがある。さらにSpielberger, Gorsuch and Lushene8)は諸種の不安尺度を検討して,既存のどの尺度も状態としての不安と性格としての不安を区別せずに測定しており,不安に関するこれまでの全ての質問票テストはA-Traitを測定していると指摘し,最終的にこのA-StateとA-Traitを測定する尺度として1970年に状態-特性不安尺度State-Trait Anxiety Inventory(略してSTAIと呼ばれる)を発表した。本研究の目的は,若年者および高齢者,また各種状態におけるSTAIの検査結果から,この尺度の妥当性,信頼性を検討することである。さらに衛生学分野において,環境の変化特に騒音が人に対して精神的ストレス因子となって負荷したときのSTAIの応用の良否を検討することをも目的とするものである。
著者
柴原 直利 嶋田 豊 伊藤 隆 新谷 卓弘 喜多 敏明 後藤 博三 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.43-50, 2000-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
20

C型慢性肝炎は高率に肝硬変症へと進展し, 自然治癒の可能性は非常に低いとされている。筆者らは, 和漢薬治療によりC型肝炎ウイルスが消失したC型慢性肝炎の一例を経験した。症例は37歳の女性。1982年の第一子出産時に輸血を受けた。1983年1月頃に全身倦怠感を自覚し, 慢性肝炎と診断され治療を受けていた。1988年に肝生検により慢性活動性肝炎と診断され, 同年5月に当科を受診した。初診時より補中益気湯・桂枝茯苓丸を併用投与し, 自覚症状は改善したが, ALT値は不変であった。しかし, 柴胡桂枝湯合当帰芍薬散投与後より徐々にALT値に改善が得られ, 加味逍遥散料に転方した1996年5月以降は正常化した。ウイルス学的検査においては, 柴胡桂枝湯合当帰芍薬散投与中である1995年3月に測定したHCV RNA定量では104 Kcopies/mlを示したが, 1998年4月以降は検出感度以下となった。
著者
後藤 博三 藤本 誠 渡辺 哲郎 引網 宏彰 小尾 龍右 野上 達也 永田 豊 柴原 直利 嶋田 豊
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.189-197, 2010 (Released:2010-07-01)
参考文献数
19
被引用文献数
3 4

視床痛は視床出血や視床梗塞後に伴う難治性中枢性疼痛として知られている。しかし,薬物療法や外科的治療法が試みられているが確実な治療法がない。我々は難治性の視床痛6例に漢方治療を試み,症状の軽減した4例を経験した。症例は年齢27才から70才の男性4例,女性2例であった。診断は右視床出血3例,左視床出血1例,右視床梗塞2例で,発症後から漢方治療までの期間は6カ月から12年と幅があった。改善した4例では症状がほぼ消失から4割程度減弱した。改善例は全例,烏頭・附子含有方剤が用いられていた。抑肝散加陳皮半夏が精神症状の強い2例で有効であった。また,駆瘀血剤のみで十分改善を認めた症例もあった。症状が長期にわたる症例では,有効例でも症状は残存した。さらに難治例は症状が固定しており,強い麻痺等を伴う症例であった。
著者
後藤 博三 籠浦 正順 嶋田 豊 小暮 敏明 諸橋 正昭 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.207-215, 2001-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
19

菌状息肉症の腫瘍期の症例に対し, 電子線照射やIFN-γの局所療法などの西洋医学的治療に加え, 和漢薬治療を併用し, 長期間良好な経過を得ている症例を経験したので報告する。症例は40歳・男性・会社員。平成3年12月, 上肢を中心に紅斑が出現し全身に拡大した。平成9年7月, 体幹に皮膚腫瘤の形成を認め当院皮膚科にて皮膚生検により菌状息肉症腫瘍期と診断。同年9月に当部を初診し, 潰瘍を伴う皮膚腫瘤や皮疹を目標に, 十味敗毒湯, 托裏消毒飲, 内托散, 〓帰膠丈湯等を使用した。また, 電子線照射施行時の口渇や照射部の熱感に対して白虎加人参湯を, 併発する下痢や全身倦怠感に対して黄耆建中湯等を適時用いた。以後, 皮膚科におけるIFN-γと免疫療法を継続し, 小腫瘤の再発時に托裏消毒飲等を用い良好に経過している。今後も, 慎重な経過観察が必要であるが, 和漢薬の併用が本症例に有用であると考えられた。
著者
嶋田 豊 後藤 博三 引網 宏彰 関矢 信康
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、脳虚血による神経細胞障害に対する和漢薬(漢方薬)の保護作用とその作用機構をin vivoの基礎研究によって明らかにすることである。スナネズミー過性脳虚血モデルを用いて、漢方薬の経口投与の海馬CA1領域の錐体細胞の遅発性神経細胞死に対する効果、脳虚血後の海馬及び皮質における過酸化脂質(LPO)、一酸化窒素(NO)代謝物、スーパーオキサイド(O_2^<-・>)とヒドロキシルラジカル(HO^・)消去活性、ならびに抗酸化酵素活性に及ぼす効果について検討した。漢方薬は虚血7日前から、最長で7日後まで投与した。その結果、漢方方剤・釣藤散あるいは生薬・釣藤鈎の経口投与は、虚血7日後の海馬CA1領域の錐体細胞の遅発性神経細胞死を抑制した。また両者とも、虚血後の海馬におけるLPOとNO代謝物の生成を抑制した。虚血を行わない実験で、釣藤散あるいは釣藤鈎の経口投与は、海馬及び皮質ともにO_2^<-・>及びHO^・の消去活性を増強し、虚血後も海馬及び皮質ともにO_2^<-・>及びHO^・の消去活性を増強した。抗酸化酵素活性については、スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)、カタラーゼ(CAT)及びグルタチオンパーオキシダーゼ(GSH-Px)を測定した。虚血を行わない実験では、海馬及び皮質ともにCAT活性が上昇したが、SOD及びGSH-Px活性は変化がなかった。虚血後のCAT活性は、釣藤散あるいは釣藤鈎投与によって海馬及び皮質ともに増強を認めた。以上の成績より、一過性脳虚血モデルにおいて釣藤散あるいは釣藤鈎の経口投与は遅発性神経細胞死に対して保護作用を有し、その機序の一つとして脳内のCAT活性の増強を介する抗酸化作用の関与が示唆された。
著者
小林 豊 喜多 敏明 柴原 直利 後藤 博三 寺澤 捷年
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.73-78, 1999-07-20
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

再発性口内炎に清熱補血湯が奏効した四症例を報告した。清熱補血湯の使用目標は「血虚と血中燥熱があり, そのために口舌に瘡を生じ, びらんし, 痛み甚だしく, 長く癒えないもの」といわれている。症例は全てが女性であったが, 妊娠や分娩を契機に, あるいは月経のたびに再発性口内炎が増悪する傾向がみられた。また, 一例はベーチェット病の急性増悪による発熱や炎症など全身症状が治まった後に発症した再発性口内炎症例であった。これら血虚が悪化しやすい状態に伴った再発性口内炎に清熱補血湯が有用である可能性が示唆された。
著者
後藤 博俊
出版者
中央労働災害防止協会
雑誌
安全と健康 (ISSN:18810462)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.576-579, 2015-06
著者
萬谷 直樹 後藤 博三 藤永 洋 嶋田 豊 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.275-280, 1999-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
19

慢性便秘は一般に弛緩性便秘と痙攣性便秘に分類される。 痙攣性便秘には刺激性下剤は不向きであり, 長期の使用は原則として禁忌とされている。しかし実際には, 服用しなければ排便が得られないという理由で, 刺激性下剤が連用されていることも多い。今回, 加味逍遥散が奏功した慢性便秘の4例を経験した。症例1~3は痙攣性便秘であり, 症例1, 3, 4は刺激性下剤を常用していた。いずれも刺激性下剤や大黄含有方剤で, 腹部不快感や頻尿などの症状が出現する患者であった。加味逍遥散を使用し,良好な排便が得られるとともに, いらいら, のぼせ感, 肩こり, 倦怠感, 月経痛, 頻尿などの全身症状も改善された。刺激性下剤を連用していた3例は, その離脱が可能となった。慢性便秘の薬物治療においては, 刺激性下剤の長期連用を回避するために,加味逍遥散などの漢方方剤が果たす役割は大きいと考えられた。