著者
森松 嘉孝 木下 正治 松岡 昌信 嶋田 亜希子 堀田 まり子 坂本 照夫 相澤 久道
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.11, pp.612-617, 2004-11-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
12

We report a rare case of progressive severe pulmonary failure due to exposure to dimethyl sulfate vapor. The patient is a 48-year-old man who carried four bottles of dimethyl sulfate on the carrier of a truck and one of them was broken. After he had been cleaning up the carrier for an hour while covering his nose and mouth with a dry towel, he had felt pain of his eyes, pharyngolarynx and nose. He went to an emergency hospital on foot 3 hours after exposure, because he felt obstruction of the pharyngolarynx, hoarseness and dyspnea. He was immediately intubated due to severe hypoxia and was immediately administered hydrocortisone intravenously, and methylprednisolone inhalation therapy was prescribed for ten days. Tracheostomy was performed the 5th day following the onset of symptoms because of severe laryngeal edema. Sputum and strider continued after steroid therapy was suspended because of Pseudomonas aeruginosa infection. The steroid therapy was resumed as transbronchial lung biopsy suggested peribronchiolar inflammation with granulation change, and he improved promptly. However, he had another bout of pneumonitis thereafter, and dyspnea and hypoxia gradually developed. Home oxygen treatment was introduced the 5th year after onset, and then roentgenogram showed severe emphysematous change, and now he is listed for lung transplantation. We ewcommend a high dose of steroid in the acute phase and a low dose of erythromycin for a long term in case of lung injury due to exposure to dimethyl sulfate.
著者
久保 達彦 蓮沼 英樹 森松 嘉孝 藤野 善久 原 邦夫 石竹 達也
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.403-411, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
24
被引用文献数
1

目的 環境負荷の少ないクリーンなエネルギーとして,風力発電の導入が先進国を中心に世界各国で進んでいる。一方で,風力発電施設からの低周波音・騒音に関して近隣住民の健康被害の訴えが報告されており,わが国においても風車騒音に係る基準やガイドライン策定の検討が行われている。そこで本研究では,今後,健康影響を考慮にいれた低周波音・騒音基準の設定を行う上で参考となる知見を明らかにすることを目的に,風力発電風車の近隣住民を対象にした疫学研究について文献レビューを実施した。方法 風力発電風車からの騒音に伴う健康影響に関する疫学研究論文を,PubMEDを用いて収集した。また最新の情報を収集するために関連国際学会Inter-Noise 2013, Wind Turbine Noise 2015の抄録からも追補的に情報を得た。抽出された疫学研究論文を研究デザイン,研究対象者,曝露評価,アウトカム,交絡要因および研究結果に関する情報別に整理しエビデンステーブルを作成した。結果 近隣住民を対象とした疫学研究として11件が抽出された(うち2件は国際学会抄録)。アウトカムとして,騒音の知覚(Perception),アノイアンス(Annoyance:騒音によるうるささ),ストレス,睡眠との関連が報告されていた。風車騒音とアノイアンス,主観的評価に基づく健康指標の間には統計的に有意な関連が繰り返し報告されていた。影響の大きさは,A特性音圧レベル1 dB増加あたりオッズ比1.1程度と2つの研究が報告していた。その他のアウトカムでは影響の大きさに関して研究間比較ができなかった。交絡因子として,風力発電への姿勢,景観に対する姿勢,風力発電からの経済的恩恵,風車の可視性,音への感受性,健康への懸念との影響が報告されていた。結論 風力騒音とアノイアンスについては,主観的評価に基づく健康指標の間には統計的に有意な関連が繰り返し報告されていた。ただし,アノイアンスが風力発電施設建設に対する心理的影響なのか,騒音曝露による心理的影響なのかについて,現状のエビデンスにおいてはその区別が明確にはつけられない状況であった。
著者
松本 悠貴 石竹 達也 内村 直尚 石田 哲也 森松 嘉孝 星子 美智子 森 美穂子 久篠 奈苗
出版者
Japan Society for Occupational Health
雑誌
産業衛生学雑誌 = Journal of occupational health (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.154-164, 2013-09-20
被引用文献数
2

<b>目的:</b> 睡眠は単に睡眠時間のみで良好か不良かを判断できるものではなく,睡眠の導入や維持といった睡眠の質,就寝時刻や起床時刻といった規則性まで考慮しなければならない.しかしながら,それらすべてを一度に評価できる指標は現在のところ存在しない.本研究は睡眠の規則性・質・量の3要素を評価するための質問票を独自に開発し,その信頼性と妥当性の検証を行うことを目的とした. <b>対象と方法:</b> 対象は製造業およびサービス業に従事する日勤労働者563名(男性370名,女性193名)で,平均年齢は40.4歳であった.先行研究および専門家との討議を参考に,規則性・質・量それぞれ7項目,計21項目からなる質問紙を作成・編集した.まず項目分析を行い,その後因子分析にかけて構成概念妥当性を検証した.信頼性はクロンバックα信頼性係数を算出して求めた.また,主成分分析およびクラスター分析にて標準化・分類を行い,生活習慣や日中の眠気,ストレス,持病の有無などを比較することにより,判別的妥当性の検証を行った. <b>結果:</b> 項目分析および因子分析にて,21項目中6項目が除外対象となったが,予測通り規則性・質・量の3因子構造が得られた.α信頼性係数はそれぞれ0.744,0.757,0.548であった.量因子として作成した2項目が規則性因子として抽出されていたが,それ以外は予測通りの因子として抽出された.入眠困難,熟眠障害,中途覚醒,早朝覚醒はすべて質因子として一定の負荷量を示していた.判別的妥当性については,最も点数の高いグループで健康意識が高くストレスや日中の眠気を感じていない者の割合が有意に高かった.一方で,最も点数の低いグループではストレスや持病などの睡眠障害リスクファクターを有している者の割合が有意に高かった. <b>考察:</b> 今回我々が開発した質問票にて,睡眠の規則性・質・量における構成概念妥当性が示された.しかしながら,分析過程にて不適切と判断され除外された項目や,予測していた因子とは異なる因子として抽出された項目が存在し,信頼性および内容的妥当性については課題が残った.今後これらの質問項目について再度編集・改訂し,より信頼性・妥当性を高めていく必要がある.また,年齢や性等による影響を除いたより詳細な判別的妥当性の検討も要する.
著者
緒方 さつき 森松 嘉孝 幸崎 弥之助 工藤 昌尚 田尻 守拡 井 賢治 渡邉 健次郎
出版者
日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.99-103, 2006-03-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
9

症例は42歳の男性。400ccの自動二輪車運転中に左側の駐車場から無灯火で出てきた普通車の右側面に衝突し,当院へ搬送された。来院時,呼吸は腹式呼吸で,両上下肢の知覚が消失し,両上下肢で徒手筋力テスト0であった。病的反射の出現は認めなかったが,肛門反射が完全に消失していた。重症の下位頸髄損傷を疑うも,頸椎単純X線,頭部CT,頸髄・胸髄・腰髄MRI検査にて異常所見は認めなかった。その後,6年前の急性一過性精神病性障害の既往が判明し,転換性障害の診断にて入院となった。徐々に症状の改善がみられ,リハビリテーション目的にて第13病日に他院へ転院となった。救急の現場において,症状と検査所見が一致しない事例をみた場合,精神病性障害である可能性に留意すべきである。
著者
松本 悠貴 石竹 達也 内村 直尚 石田 哲也 森松 嘉孝 星子 美智子 森 美穂子 久篠 奈苗
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.154-164, 2013 (Released:2013-10-23)
参考文献数
32
被引用文献数
2 2

目的: 睡眠は単に睡眠時間のみで良好か不良かを判断できるものではなく,睡眠の導入や維持といった睡眠の質,就寝時刻や起床時刻といった規則性まで考慮しなければならない.しかしながら,それらすべてを一度に評価できる指標は現在のところ存在しない.本研究は睡眠の規則性・質・量の3要素を評価するための質問票を独自に開発し,その信頼性と妥当性の検証を行うことを目的とした. 対象と方法: 対象は製造業およびサービス業に従事する日勤労働者563名(男性370名,女性193名)で,平均年齢は40.4歳であった.先行研究および専門家との討議を参考に,規則性・質・量それぞれ7項目,計21項目からなる質問紙を作成・編集した.まず項目分析を行い,その後因子分析にかけて構成概念妥当性を検証した.信頼性はクロンバックα信頼性係数を算出して求めた.また,主成分分析およびクラスター分析にて標準化・分類を行い,生活習慣や日中の眠気,ストレス,持病の有無などを比較することにより,判別的妥当性の検証を行った. 結果: 項目分析および因子分析にて,21項目中6項目が除外対象となったが,予測通り規則性・質・量の3因子構造が得られた.α信頼性係数はそれぞれ0.744,0.757,0.548であった.量因子として作成した2項目が規則性因子として抽出されていたが,それ以外は予測通りの因子として抽出された.入眠困難,熟眠障害,中途覚醒,早朝覚醒はすべて質因子として一定の負荷量を示していた.判別的妥当性については,最も点数の高いグループで健康意識が高くストレスや日中の眠気を感じていない者の割合が有意に高かった.一方で,最も点数の低いグループではストレスや持病などの睡眠障害リスクファクターを有している者の割合が有意に高かった. 考察: 今回我々が開発した質問票にて,睡眠の規則性・質・量における構成概念妥当性が示された.しかしながら,分析過程にて不適切と判断され除外された項目や,予測していた因子とは異なる因子として抽出された項目が存在し,信頼性および内容的妥当性については課題が残った.今後これらの質問項目について再度編集・改訂し,より信頼性・妥当性を高めていく必要がある.また,年齢や性等による影響を除いたより詳細な判別的妥当性の検討も要する.
著者
松本 悠貴 内村 直尚 石田 哲也 豊増 功次 久篠 奈苗 森 美穂子 森松 嘉孝 星子 美智子 石竹 達也
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.128-140, 2014 (Released:2014-10-18)
参考文献数
55
被引用文献数
6 6

目的:ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)に代表される睡眠尺度の多くは,実際の睡眠時間や日中の眠気といった量的問題や,睡眠の維持・導入といった質的問題を捉えてある.それらに加えて,24時間型社会となった今日では起床時刻・就寝時刻といった位相の問題まで視野に入れていく必要があり,かつ睡眠の位相・質・量のいずれに問題があるのかを把握するためには各々に測定・評価しなければならない.そこで我々は位相・質・量の3つの睡眠関連問題について測定する3次元型睡眠尺度(3 Dimentional Sleep Scale; 3DSS)の日勤者版を開発した.本研究はその信頼性・妥当性を検証することを目的とする.対象と方法:対象は製造業およびサービス業に従事する日勤労働者635名(男性461名,女性174名)で,平均年齢は40.5歳であった.質問紙は全17項目から成り,事前研究結果および専門家との討議を参考に睡眠の位相・質・量に関する質問を設定した.回答偏向分析後,探索的および確認的因子分析を行った.信頼性はクロンバックα信頼性係数を算出して求め,尺度の得点化・上位-下位分析を行った.仮説検定ではPSQIおよびSDSより位相・質・量それぞれに関連した項目を抜粋し,3DSSの各尺度得点との相関をみて収束的妥当性および弁別的妥当性の検証を行った.また,PSQIの総合点と3DSSの各尺度得点との相関についても検証を行った.結果:回答偏向分析にて回答に大きな偏りはみられなかった.探索的因子分析の結果2項目が削除されたが3つ因子が抽出され,位相に関する質問5項目,質に関する質問5項目,量に関する質問5項目の計15項目となり,確認的因子分析においても15項目モデルの方が適合度が高かった.α 信頼性係数は下位尺度毎では位相 = 0.685,質 = 0.768,量 = 0.717であった.仮説検定では,収束的妥当性については仮説がすべて採択された.弁別的妥当性については新尺度および既存尺度の質尺度と量尺度の間で仮説をやや上回る相関がみられていた.PSQIの総合点と3DSSの各尺度得点との相関についてもすべて仮説が採択された.考察:本研究において,我々の開発した3次元型睡眠尺度(3DSS)の日勤者版について,日勤労働者を対象として使用するにあたり,必要と考えられる信頼性・妥当性が示された.今後さらに対象者数を増やし調査を重ねることで尺度の標準化およびカットオフ値の設定を行っていきたい.
著者
緒方 さつき 森松 嘉孝 幸崎 弥之助 工藤 昌尚 田尻 守拡 井 賢治 渡邉 健次郎
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.99-103, 2006

症例は42歳の男性。400ccの自動二輪車運転中に左側の駐車場から無灯火で出てきた普通車の右側面に衝突し,当院へ搬送された。来院時,呼吸は腹式呼吸で,両上下肢の知覚が消失し,両上下肢で徒手筋力テスト0であった。病的反射の出現は認めなかったが,肛門反射が完全に消失していた。重症の下位頸髄損傷を疑うも,頸椎単純X線,頭部CT,頸髄・胸髄・腰髄MRI検査にて異常所見は認めなかった。その後,6年前の急性一過性精神病性障害の既往が判明し,転換性障害の診断にて入院となった。徐々に症状の改善がみられ,リハビリテーション目的にて第13病日に他院へ転院となった。救急の現場において,症状と検査所見が一致しない事例をみた場合,精神病性障害である可能性に留意すべきである。
著者
松本 悠貴 石竹 達也 内村 直尚 石田 哲也 森松 嘉孝 星子 美智子 森 美穂子 久篠 奈苗
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 = Journal of occupational health (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.154-164, 2013-09-20
参考文献数
32
被引用文献数
2

<b>目的:</b> 睡眠は単に睡眠時間のみで良好か不良かを判断できるものではなく,睡眠の導入や維持といった睡眠の質,就寝時刻や起床時刻といった規則性まで考慮しなければならない.しかしながら,それらすべてを一度に評価できる指標は現在のところ存在しない.本研究は睡眠の規則性・質・量の3要素を評価するための質問票を独自に開発し,その信頼性と妥当性の検証を行うことを目的とした. <b>対象と方法:</b> 対象は製造業およびサービス業に従事する日勤労働者563名(男性370名,女性193名)で,平均年齢は40.4歳であった.先行研究および専門家との討議を参考に,規則性・質・量それぞれ7項目,計21項目からなる質問紙を作成・編集した.まず項目分析を行い,その後因子分析にかけて構成概念妥当性を検証した.信頼性はクロンバックα信頼性係数を算出して求めた.また,主成分分析およびクラスター分析にて標準化・分類を行い,生活習慣や日中の眠気,ストレス,持病の有無などを比較することにより,判別的妥当性の検証を行った. <b>結果:</b> 項目分析および因子分析にて,21項目中6項目が除外対象となったが,予測通り規則性・質・量の3因子構造が得られた.α信頼性係数はそれぞれ0.744,0.757,0.548であった.量因子として作成した2項目が規則性因子として抽出されていたが,それ以外は予測通りの因子として抽出された.入眠困難,熟眠障害,中途覚醒,早朝覚醒はすべて質因子として一定の負荷量を示していた.判別的妥当性については,最も点数の高いグループで健康意識が高くストレスや日中の眠気を感じていない者の割合が有意に高かった.一方で,最も点数の低いグループではストレスや持病などの睡眠障害リスクファクターを有している者の割合が有意に高かった. <b>考察:</b> 今回我々が開発した質問票にて,睡眠の規則性・質・量における構成概念妥当性が示された.しかしながら,分析過程にて不適切と判断され除外された項目や,予測していた因子とは異なる因子として抽出された項目が存在し,信頼性および内容的妥当性については課題が残った.今後これらの質問項目について再度編集・改訂し,より信頼性・妥当性を高めていく必要がある.また,年齢や性等による影響を除いたより詳細な判別的妥当性の検討も要する.