著者
菊池 拓 森 毅彦 清水 隆之 森田 伸也 香野 日高 中川 健 三ツ橋 雄之 村田 満 岡本 真一郎
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.345-349, 2014 (Released:2014-03-29)
参考文献数
15

症例は64歳,男性。急性骨髄性白血病に対する非血縁者間同種骨髄移植後に進行した慢性腎不全に対して生体腎移植が施行された。術後合併症のため中心静脈栄養が行われた。腎移植3ヶ月後より,進行性の正球性貧血(ヘモグロビン7.9 g/dl)を認めた。網赤血球0.2%であったが,白血球数,血小板数は正常であった。血清鉄,ビタミンB12, 葉酸は正常値であった。骨髄検査では環状鉄芽球の増生および一部の赤芽球系細胞の細胞質に空胞化を認めた。巨核球数およびその形態は正常であった。骨髄所見はWHO分類で環状鉄芽球を伴う不応性貧血と合致したが,骨髄系細胞にも細胞質の空胞化を認め,銅欠乏も疑われた。血清銅(33 μg/dl), セルロプラスミン(11 mg/dl)共に低値であり,経口摂取で1 mg/日の銅補充を開始したところ,急速に網赤血球は上昇し,1ヶ月後にはヘモグロビン値は正常化した。骨髄中に環状鉄芽球の増生を伴う進行性の貧血の原因として,銅欠乏性貧血を鑑別疾患の1つとして挙げるべきである。
著者
森田 伸子
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育學研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.498-510, 2003-12-30

The history of modern education has been the history of nationalization of people by teaching them the national language and its letters. The level of national literacy has been regarded as the criterion of the level of the modernization. It must be noticed that this process of invention of literate people was also the process that made deaf people abandon their natural language=sign language and accept the national language=language of voice. Deaf people were forced to learn the language of voice, as well as its letters. In other words, the hypothesis of the general development from orality to literacy, which has been supported by some anthropologists, has no meanings for the deaf people. There used to be, however, various ideas of languages, including the gestures as well as the speech, especially in the 17th and 18th centuries Europe. It is remarkable that both of them were regarded as "natural language" and thought to have their own writings, alphabet letters for the former and some kind of characters for the latter. In this paper, we will examine these two types of writings, and the different meanings or possibilities of literacy.
著者
小林 裕生 森田 伸 田仲 勝一 内田 茂博 伊藤 康弘 藤岡 修司 刈谷 友洋 板東 正記 田中 聡 金井 秀作 有馬 信男 山本 哲司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Fb0802, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 温熱療法は臨床において,加温による生理反応を利用し疼痛軽減,循環改善,軟部組織の伸張性向上などを目的に施行されている.温熱療法は一般に筋力トレーニングや動作練習といった運動療法前に施行される場合が多く,温熱負荷が筋力へ及ぼす影響を理解しておく必要がある.しかし,温熱負荷による筋力への影響についての報告は,種々の報告があり統一した結論には至っていない.本研究の目的は,一般的な温熱療法である HotPack(以下,HP)を使用した際の,深部温の変化に伴う等速性膝伸展筋力への影響を検討することである.【方法】 対象は,骨関節疾患を有さず運動習慣のない健常人9名(男性6名・女性3名,平均年齢29.2±5.2歳,BMI 22.4±3.3)とした.測定条件は,角速度60deg/sec・180deg/secの2種類の等速性膝伸展筋力(以下ISOK60・ISOK180)をHP施行しない場合と施行する場合で測定する4条件(以下 ISOK60・HP-ISOK60・ISOK180・HP-ISOK180)とした. HPは乾熱を使用し,端坐位にて利き脚の大腿前面に20分施行した.温度測定には深部温度計コアテンプ(CT‐210,TERUMO )を使用.皮下10mmの深部温の測定が可能であるプローブを大腿直筋中央直上に固定.安静時と HP 施行直後にプローブを装着し,測定器から温度が安定したという表示が出た時点の数値を深部温として記録した.等速性膝伸展筋力は, CYBEX Norm を使用.測定範囲は膝関節伸展0°・屈曲90°に設定,各速度で伸展・屈曲を3回実施した.なお,測定は筋疲労の影響を考慮し各条件は別日に実施した. 深部温の変化は,HP施行前とHP施行直後の深部温の平均値を算出し,等速性膝伸展筋力はピークトルク値を体重で正規化し平均値を算出した.いずれも統計学的検定は,各速度で HP を施行する場合と施行しない場合を対応のあるt検定で比較した.なお有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 全ての被験者に本研究の趣旨と内容,起こりうるリスクを説明し,書面にて同意を得た者のみ実験を行った.【結果】 深部温の変化は, HP 施行前34.44±0.52℃, HP 施行後37.57±0.24℃であり有意に温度上昇を認めた(p<0.001).等速性膝伸展筋力に関しては,ISOK60で1.9±0.7Nm/Kg,HP-ISOK60で2.0±0.5 Nm/Kg, ISOK180で1.2±0.4 Nm/Kg, HP-ISOK180で1.4±0.5 Nm/Kg という結果を示し, ISOK180と HP-ISOK180で有意差を認めた(p=0.01).【考察】 一般に HP は表在を加温する温熱療法であるが, HP 施行により深部温度は有意に上昇していた.加温による筋への影響について,生理学的には組織温が上昇することで末梢循環では代謝亢進や血流増大,ATP利用の活性化,神経・筋系では末梢神経伝達速度の上昇,筋線維伝導速度上昇に伴う筋張力の増加が期待できるという報告がある.今回の研究では,等速性膝伸展筋力の変化に関して, ISOK60とHP-ISOK60は有意差がみられなかったが, ISOK180と HP-ISOK180で有意差がみられた.したがって,深部温の上昇に伴う組織の生理学的変化はより速い速度での筋収縮に影響することが示唆された.この生理学的背景としては,組織温の上昇に伴う ATP の利用の活性化が第一に考えられる.筋肉は強く,瞬発力を要する筋張力を発揮する場合,運動単位としては速筋線維の活動が初期に起こるとされている. ATP 産生が酸化的に起こる遅筋線維と比較しても速筋線維は ATP 産生が解糖系であるためエネルギー遊離速度が速いといわれていることから,温度上昇により速筋線維の活動が賦活され筋力増加につながったのではないかと考えられる.さらに,神経伝達速度の上昇に伴い筋収縮反応性が向上したことも影響した要因の1つだと予想される. 今後は温度上昇部位の詳細な評価や温熱の深達度に影響を及ぼす皮下脂肪厚測定,誘発筋電図による神経伝達速度の評価を行い,今回の結果を詳細に検討していく必要がある.【理学療法学研究としての意義】 等速性膝伸展筋力は,筋収縮の特異性として速い角速度ほど動作能力に結びつきやすいといわれている.今回の研究において,深部温の上昇に伴いより速い角速度での等速性筋力が増加したことは,温熱療法が筋力へ影響することを示唆する結果となった.このことは,運動療法前に温熱療法を行うことの意義が拡大すると考えられる.
著者
森田 伸子
出版者
教育思想史学会
雑誌
近代教育フォーラム (ISSN:09196560)
巻号頁・発行日
no.10, pp.59-77, 2001-09-14

長い間オーラルの世界に生きていた圧倒的多数の民衆を、文学の世界に導きいれ、その正当な市民として位置付けること。これが近代教育が自らに課してきた課題であり、少なくとも先進諸国においては、この課題は19世紀末から20世紀初めの国民国家の体勢が整うと歩を同じくしてほぼ達成されたとされる。そのとき文字とは何を意味したのか、文字を読むこと,あるいは文字を書くことに何が求められたのか。さらに、こうしたことと、近代教育思想に通低する書物への断罪はどうかかわるのか。ヨーロッパの教育思想における文字の審級を、19世紀末のフランス公教育における作文教育をめぐる議論をとおして考察する。
著者
坂本 一郎 依田 哲也 塚原 宏泰 森田 伸 小幡 宏一 榎本 昭二
出版者
社団法人 日本口腔外科学会
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.224-232, 1995-03-20
参考文献数
21
被引用文献数
2

The efficacy of combined treatment with amfenac sodium (150 mg/day for 14 days) and ethyl loflazepate (2 mg/day for 14 days) was clinically evaluated in 44 patients with temporomandibular disorders in comparison with 77 patients with temporomandibular disorders who were given amfenac sodium (150 mg/day for 14 days) alone.<BR>The 121 temporomandibular disorder patients were classified into four types (I-IV) according to the criteria proposed by the Japanese Society for the Temporomandibular Joint.<BR>The usefulness of combined treatment with amfenac sodium and ethyl loflazepate was excellent in 14 cases (31.8%), good in 14 cases (31.8%), and fair in 12 cases (27.3%).<BR>The usefulness of amfenac sodium alone was excellent in 6 cases (7.8%), good in 34 cases (44.1%), and fair in 31 cases (40.3%).
著者
梅澤 克之 川野 隆 森田 伸義 礒川 弘実 萱島 信
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.17, pp.1-6, 2012-05-03

国内の携帯電話契約数は 1 億 1200 万件を超え,重要なインフラとなった.また,ポイントや電子マネー,会員 ID 情報などの秘匿性の高い情報 (以降, ID 情報と呼ぶ)を扱うサービス提供機関も増えてきた.このようなサービス提供機関が携帯電話端末の耐タンパデバイスへの ID 情報の読み書きを行おうとする場合,現状ではサービス提供機関ごとに携帯アプリを開発・運用する必要がある.また,利用者は各サービス提供機関が提供する携帯アプリを個別にダウンロード・インストールする必要がある.さらに今後は携帯電話端末の OS のオープン化が進むことが想定されるため,携帯アプリのセキュリティを確保する仕組みも必要となる.本研究では,上記のような現状の課題を解決するためのモバイルアクセス基盤システムを提案する.具体的には,サービス提供機関が耐タンパデバイスにアクセスする際に共通的に利用できるモバイルアクセスサーバおよび携帯電話端末上の共通アプリからなるモバイルアクセス基盤システムを提案する.The number of the domestic cellphone contracts was beyond 112 million. The cellphone became the important infrastructure. In addition, the service provider who treated secure information such as a point and electronic money, the subscriber ID information (we call it ID information) increased. Such a service provider reads and writes ID information to the tampa-resistant device of the cellphone. When service provider reads and writes the ID information to tampa-resistant device, it is necessary to develop application for cell-phones every service provider under the present conditions. In addition, it is necessary for the user to download and install application for the cell-phones which each service provider offers individually. The security mechanism of the application of the cellphone is necessary. In this study, We propose a mobile access infrastructure system to solve such a problem.
著者
森田 伸子
出版者
教育思想史学会
雑誌
近代教育フォーラム (ISSN:09196560)
巻号頁・発行日
no.16, pp.111-119, 2007-09-16

18世紀イギリスの教訓派作家とは、歴史的にどのように位置づけられるのだろうか。それは、児童文学史、社会運動史、そして教育史が交差するところに位置づけられる特異な存在である。このフォーラムはこうした対象を扱うことの困難とともにその可能性をも指し示している。子ども観の変化、中産階級の勃興と階級意識の発達、女性の自己変革とその社会的位置の変化、そして、社会経済的コードからは一定程度の独立と自律性を有する「教育的なるもの」の萌芽とその展開、これらの多様で多層にわたる動きが重なり合うところに、あの、独特な「児童文学」とは呼びがたい、しかし紛れもなく子どものための文学であるところの教訓的物語が成立するのである。そしてそれは、ほかならぬ18世紀という時代に成立し、19世紀が進むにつれて速やかに消えていくべく運命づけられた存在であった。