著者
樋口 直人
出版者
日本感情心理学会
雑誌
エモーション・スタディーズ (ISSN:21897425)
巻号頁・発行日
vol.4, no.Si, pp.17-25, 2019-02-28 (Released:2019-03-11)
参考文献数
61

This article summarizes findings of sociological approaches to nativism and xenophobia, focusing on the relation between sociodemographic variables and anti-immigrant sentiments or support for the radical right. Our review of English literature shows the following: (1) the effect of demographic variables such as gender and age seems relatively strong, (2) relation between economic deprivation and support for the radical right are rather weak, and (3) radical right movements attract a variety of social class but those from lower socioeconomic strata tend to be overrepresented. Then we applied these three points to Japan and found the explanatory power of socioeconomic status was even weaker than western countries.
著者
大曲 由起子 鍛治 致 稲葉 奈々子 樋口 直人 髙谷 幸
出版者
大阪経済法科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、国勢調査オーダーメイド集計を用いて、1980~2010年までの在日外国人の社会経済的地位の動態を分析した。その結果、在日コリアンに関して1950~60年代生まれコーホートに置いて職業ニッチの変化が生じていること、民族経済が脱産業化したという説は過大評価である可能性が高いことを明らかにした。同時に、ニューカマーについては進学格差が縮まりつつあるが、これはリーマンショックによる帰国の影響が強いことも示唆された。また、中国籍に関しては学歴の高い新中間層と技能実習生に分化しており、出生コーホートごとに日本への包摂様式がかなり異なる。
著者
久保田 滋 伊藤 美登里 樋口 直人 矢部 拓也 松谷 満 成 元哲
出版者
大妻女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

研究期間全体を通じて、申請書に記載した知事選や総選挙に関するサーベイ調査に加えて聞き取り調査も実施し、以下のようなデータが得られた。(1)投票行動に関するデータ。徳島、高知(2004年)、東京(2005年)、長野・滋賀(2006年)、東京(2007年)。(2)政治に関わる行為者に対する聞き取り。徳島(150件)、滋賀(40件)、高知・長野(各10件)。こうしたデータの解析のうち、徳島調査については成果を刊行し、他の都県については予備的な分析を発表し本格的な解析に着手するところである。そうした段階で当初の仮説の当否とその後の発展は、以下のとおりである。(1)政治的亀裂構造の再編に伴い、テクノクラシー-底辺民主主義-ポピュリズムという3つの供給様式が生じるという仮説は、調査地以外の宮崎・大阪といった事例をみても妥当かつ有効であることが検証された。(2)新たな政治的亀裂として院内-院外があるという見通しを得られたため、それを徳島の事例で検証したところ有効であることが確認できた。すなわち、院内=保革問わずすべての既成勢力は、既得権益に関わる争点が生じたときに対応できず、院外=既成勢力とは関係の薄い一般有権者の代弁者(住民運動や知事個人など)が現れたときに対抗しえない。(3)(2)の結果として、議会=政党を迂回した政治的意思決定がなされる「中抜きの構造」がもたらされる。(1)で述べた3つの新たな供給様式は中抜きの構造に親和的であるが、テクノクラシーが地方自治の脱政治化を目的とするのに対し、底辺民主主義とポピュリズムは再政治家をもたらす。このうち底辺民主主義は強い正統性を持つが、決定単位を分散化することで決定コストの上昇をもたらす点で、より効率の良いテクノクラシーに敗北することが、徳島調査の結論となる。
著者
樋口 直人 町村 敬志 久保田 滋 矢部 拓也 松谷 満
出版者
徳島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

90年代以降の政治を一瞥すると、一見矛盾してみえる諸現象が噴出している(NPOとボランティア、住民投票、改革派知事ブームと無党派知事の当選、ポピュリズムの跋扈、新たなナショナリズムの出現)。これらは第二の近代化を背景とし、55年体制の崩壊をきっかけとして生じた政治変動であり、以下の仮説により整合的に説明できるものと考えられる。客観的条件に基づく安定的な政治的態度は、もはや一部の住民にしか該当しない。代わって、社会的ミリューとその都度の政治状況の共鳴により決定される、不安定な政治的態度が優位になる。そうしたミリューは、個人化の影響を受けて高度に断片化している。上記の諸現象は、断片化したミリューの共鳴により連合が成立した結果と考えられる。本研究の目的は、この仮説の検証により個人の社会的ミリューと政治の関係を解明することになる。今年度行ったのは、東京都でのサーベイ調査である。6区2市の有権者8500人を対象として,「ライフスタイルと政治に関する調査」を実施し、2887票を回収した。この調査は、ドイツにおける社会的ミリュー研究を参考に、日本におけるライフスタイル・ミリューと政治的態度や投票行動の関連に関する分析を行うことを目的としている。具体的には、石原慎太郎・東京都知事など政治家や政党に対する感情温度、2005年衆院選における投票行動に関して設問を用意した。衆院選における投票行動については、郵政民営化の争点効果が独立して認められ、属性の影響が争点効果に吸収されることが確認されている。暫定的な分析の結果については、茨城大学地域総合研究所年報に掲載するとともに、同研究所の研究例会でも報告した。さらに、このデータを用いてエスニック・レストランの利用者像を析出し、多文化主義をめぐる基礎資料として在日外国人に関する論文で使用した。