著者
横畑 泰志
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第52回日本生態学会大会 大阪大会
巻号頁・発行日
pp.43, 2005 (Released:2005-03-17)

哺乳類、鳥類の寄生虫には人間や家畜、家禽に有害なものが見られるため、それらの宿主の日本国内への持ち込みには法的規制(感染症法、家畜伝染病予防法など)や検疫による対応が行われており、結果的に寄生虫の自然界への逸出もある程度防がれていると考えられる。しかし、有史以来のヒトや家畜などの移動によって、寄生虫を含む多くの寄生生物が自然分布の範囲外に分布を広げてきたであろう。野生動物の寄生虫でも、シカ類の第4胃に寄生する数種の毛様線虫が養鹿業に伴い大陸間で互いに、あるいは日本から大陸へと宿主ごと持ち込まれ、野外に定着している例が比較的よく知られている。演者は 24 種 2 亜種の日本の外来哺乳類について文献情報を収集し、飼育下での情報も含めて宿主 8 種から 28 種の外来寄生蠕虫類の報告を得た(横畑、2002)。また、日本産陸生脊椎動物に見られる外来寄生虫として、「外来種ハンドブック」(改訂版、2003)の巻末リストに吸虫類 1 種、条虫類 5種(2 種は国内移動)、線虫類 19 種(1 種は国内移動)、昆虫類 1 種を挙げたが、その多くは住家性ネズミ類に寄生しており、国内の野ネズミには見られないものである。その後、鳥類などで該当する事例が散見されており、今後も調査の進展に伴い種数が増加してゆくであろう。また、野生動物とヒトや家畜などに同種の寄生虫が見られる場合は、家畜などに寄生する外来のものが野外に逸出することによって野生動物に見られる土着のものとの交雑が進んでいるであろうが、検証はほとんど行われていない。 国内では、エキノコックスのように人間に重篤な患害を及ぼすもの以外では十分な研究は行われていない。日本の陸生脊椎動物は、しばしば島嶼隔離や人為的な生息地の縮小・分断化によって個体群が小規模化しており、そうした状況下では寄生虫群集も単純化しているものが多い。したがって外来寄生虫の侵入も容易であると考えられる。
著者
遠藤 秀紀 横畑 泰志 本川 雅治 川田 伸一郎 篠原 明男 甲能 直樹 佐々木 基樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

旧食虫類における多系統的な形質を機能形態学的に検討した。筋骨格系、消化器系、泌尿生殖器系、感覚器系、皮膚・表皮系などを旧食虫類の諸目間で形態学的に比較検討を行った。その結果、それぞれの器官において、形態学的類似や差異を確認することができ、真無盲腸目、皮翼目、登攀目、アフリカトガリネズミ目などの旧食虫類諸群間の多系統的進化史理論を確立することができた。
著者
横畑 泰志 杉村 誠 鈴木 義孝 中村 孝雄 阿閉 泰郎
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.185-191, 1985-12-15

放香腺として知られるニホンカモシカ眼窩下洞腺の脂腺について,組織学的倹素と脂質分析を行った。脂腺にはI型とII型が区別される。I型脂腺は外皮の脂腺と同様の形態であるが,II型脂腺はヘパトイド様の大型脂腺で雄0歳と雌にのみ出現し,その腺胎内の嚢胞形成は大卵胞や黄体をもった雌及び雌0歳子において著明であった。硅酸カラムクロマトグラフィーによる脂質分画の重量比では,脂腺域では汗腺域より炭化水素及びステロールエステル分画が多かった。特に後者は他動物で既知の性誘引物質が多いとされるステロイド化合物に相当する分画で,ガスクロマトグラム上でもこの分画から脂腺域に特有のピーク群が検出された。このピーク群は性成熟・妊娠などの性的状態に関連して変化することが示された。以上の所見はII型脂腺が一種の性誘引物質を分泌することを示唆するものと考えられる。
著者
横畑 泰志 金子 正美 横田 昌嗣 星野 仏方
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

航空写真(1978年)および高解像度人工衛星イコノス(2000年)、Quickbird(2004、2006年)およびALOS(2007年)の衛星画像を分析した。1978、2000、2006年の画像を用いて3次元立体化画像の観察と裸地面積の推定を行い、裸地の増加や崖崩れの発生などの状況を具体的に把握した。ALOS画像による植生指数値(NDVI)の分布の分析により、裸地化に至っていない森林にもヤギの影響が及んでいることが示され、場所ごとの違いが把握された。これらの結果とヤギによる変化のなかった時期に作成されていた植生図(新納・新城、1980)との比較照合によって、ヤギの影響を特に強く受けている植生区分が特定された。以上の研究成果は第55、56回日本生態学会、第31回日本土壌動物学会、第14回日本野生生物保護学会で発表され、論文などで公表されたほか、今後さらに学術論文として順次公表してゆく予定である。本研究の成果は、新聞、テレビなどのマスメディアでも繰り返し取り上げられ、関心を呼んだ。本研究の成果発表にともない、2008年3月に石垣市議会が政府に野生化ヤギの対策を要請している。