著者
水田 孝信 和泉 潔 八木 勲 吉村 忍
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.133, no.9, pp.1694-1700, 2013-09-01 (Released:2013-09-01)
参考文献数
15

We built an artificial market model and compared effects of price variation limits, short sell regulations and up-tick rules. In the case without the regulations, the price fell to below a fundamental value when economic bubble bursts occurred. On the other hand, in the case with the regulations, this over-shooting did not occur and the market was more effective. However, the short sell regulation and the up-tick rule caused the trading prices to be higher than the fundamental value. To summarize these points, the price variation limits have the potential to make the market more effective. We also surveyed an adequate limitation price range and an adequate limitation time span for the price variation limit and found a parameters' condition of the price variation limit to prevent the over-shoots.
著者
遠藤 修斗 水田 孝信 八木 勲
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.FIN-031, pp.16-21, 2023-10-10 (Released:2023-10-12)

金融市場の最良気配値付近における注文の偏りはオーダーブックインバランス(OBI)と呼ばれており,この OBI とリターンには正の相関があると考えられている.本研究ではOBIを考慮した執行アルゴリズムをモデル化し,本モデルが市場からどのような影響を受けるのかを人工市場を用いて調査した.
著者
水田 孝信 八木 勲
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.FIN-031, pp.09-15, 2023-10-10 (Released:2023-10-12)

証券取引所は市場価格の急変動をおさえるため,現在の価格から大きく離れた価格の注文を出せないようにする値幅制限や,価格が急変動した際にある一定時間注文を受け付けないサーキットブレイカーを導入する場合がある.一方で,どちらがより価格の急変動をおさえるかは多くの議論がある.そこで本研究では人工市場を用いて値幅制限とサーキットブレイカーの効果の比較を行った.その結果,値幅制限とサーキットブレイカーは制限幅や時間スケールといったパラメータを同じにすれば,同じ程度に急変動をおさえる効果があることが分かった.しかし,投資家が注文をキャンセルする時間スケールより値幅制限が短いパラメータを持つ場合,制限価格に付近に注文がたまってしまい,その注文が急変を緩和する方向への価格変動を妨げてしまい,サーキットブレイカーよりも価格急変動をおさえる効果は劣ってしまうことも分かった.今回の結果だけを見れば,値幅制限よりもサーキットブレイカーの方が優れているように見える.しかし今回の結果は,誤発注による下落であり,かつ,いずれの規制も個別銘柄に導入された場合のみを分析しているなど,非常に限定的な状況下のことしか示していないことに注意が必要である.
著者
水田 孝信
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2016, no.FIN-017, pp.01, 2016-10-08 (Released:2022-12-17)

経済のマクロモデルは,ミクロプロセスの積み上げによって構築する,いわいる "ミクロ的基礎付け"(micro-foundation)がなされるべきとの主張が多くなされ,ミクロ的基礎付けがなされた経済のマクロモデルが多く生まれた.一方,リスク資産の価格変動というマクロ量をモデル化したものは多く存在するが,これらのモデルをミクロ的基礎付けしようという試みは多くない.そこで本研究では人工市場研究からの知見を用いて,ARCH モデルのミクロ的基礎付け,すなわち,各係数がどのミクロプロセスから生じているのかを明らかにすることを試みた.その結果,投資家の予想価格のばらつきと需給の歪みが大きくなるとボラティリティは大きくなり,流動性を奪う投資家の存在割合が大きくなったり投資家のリスク回避度が小さくなるとボラティリティクラスタリングは大きくなることが分かった.
著者
水田 孝信 小林 悟 加藤徳史
雑誌
情報処理学会研究報告数理モデル化と問題解決(MPS)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.41(2008-MPS-069), pp.35-38, 2008-05-09

株価予測モデルにおける過剰適合について調べた。定量的分析を行うために、中間層が 1 層のニューラルネットワークを用いて中間層の数と汎化誤差の関係を調べた。その結果、中間層が多すぎると汎化誤差が上昇し、過剰適合が発生することが分かった。この現象は、株価予測モデルが “複雑すぎる” ために予測能力が低下することが起こりうることを示している。また、学習させるファクターが異なる 2 つのモデルの予測リターンを比べた結果、適切な学習を行ったときに最も予測が似てしまうことが分かった。
著者
水田 孝信
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回全国大会(2021)
巻号頁・発行日
pp.3I2GS5e04, 2021 (Released:2021-06-14)

主に商品先物を取引するファンドであるCTA(Commodity Trading Advisor) は,かつては多くのファンドが高いリターンを得ていたが,2010年ごろからリターンを得るのが難しくなっている.その原因はいくつか指摘されているが,CTAを餌食にして利益を得る短期的な逆張り戦略が増えたという指摘がある.しかし,これらの指摘は根拠が薄い.そこで本研究では,CTAと短期逆張りを行う投資家を実装した人工市場モデルを構築し,短期逆張り戦略の出現がCTAのリターン減少につながったのかどうかを分析した.その結果,CTA・短期順張りともに,お互いがいたほうが戦略を実行するチャンスが多くなり利益を獲得していることが分かった.このため,短期的な逆張り戦略がCTAを餌食にして利益を得ているというのは誤りである可能性を指摘できただけでなく,むしろ共存共栄である可能性を示した.
著者
丸山 隼矢 水田 孝信 八木 勲
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J103-D, no.11, pp.755-763, 2020-11-01

レバレッジドETFとは,日々のリターンが原資産や原指数(例えば,日経平均やTOPIXなど)の価格の変動率に一定の倍数を乗じた値動きをするETFのことを指す.レバレッジドETFは,レバレッジ率を維持する(保有する原資産の純資産総額を,レバレッジドETFの純資産総額の決められた倍数に維持する)よう,原資産の価格が上昇すれば原資産を買い,反対に下落した際は原資産を売るというリバランス取引を日々行わなければならない.そのため,これらの売買が原因で原資産の価格を不安定にさせているのではないかと言われている.これまでに,人工市場を用いた研究によってレバレッジドETFが板寄せ方式の原資産市場の価格形成に影響を与えることが知られているが,ザラ場方式の市場は未調査のままである.そこで本研究では,ザラ場方式の原資産市場においてレバレッジドETFが価格形成に与える影響を調査した.その結果,レバレッジドETFのリバランス取引の最低注文数が小さいほど市場の価格形成に与える影響が大きいことを確認した.
著者
八木 勲 水田 孝信
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.1M4J1303, 2019 (Released:2019-06-01)

近年投資信託(以下,投信)のリスクが把握しにくくなっている.投信の組み入れ対象となる金融商品の仕組みが複雑になるとともにリスクの大きさも把握しにくくなってきたからである.よって投資家にすべてのリスク管理を求めるのは困難なため,投信運用会社側でリスクコントロールさせることを目的とした分散投資規制が設けられた.分散投資規制が市場に与える影響について議論した研究は既に存在しているが,主に市場価格形成について議論している.そこで本研究では,分散投資規制が投資家の運用成績にどのような影響を与えるか調査した.その結果,市場価格が急上昇している市場において,規制対象の投資家はそうでない投資家に比べて運用成績が悪化することが判明した.
著者
水田 孝信
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.2O1J1302, 2019 (Released:2019-06-01)

ETF(Exchange Traded Funds, 上場投資信託)は手軽な分散投資を提供する商品として,近年,投資家に普及してきている.しかし,一部のETFは注文量が少なく取引したいときに適切な価格で取引しづらい状況になっていた.そのため取引所によっては,裁定取引の手数料を引き下げるなどの売買を増やそうとする制度を導入する場合がある.しかし,裁定取引にかかるコスト(必要な利益も含む総合的なコスト)によってETFや株式の流動性がどのように変化するのか,そのメカニズムはどのようなものなのかといったことは分かっていない.そこで本研究では,2つの株式とそれら合計と同じ価値のある1つのETFという3つの証券があり,これらの証券間の裁定取引を行うエージェントを実装した人工市場モデルを構築した.そして,株式とETFの裁定取引にかかるコストによって流動性がどのように変化するかを調べた.その結果,ボラティリティよりコストが小さければ裁定の機会が訪れやすく,裁定エージェントの売買が増え,ETFと株式の価格の乖離が小さくなることが分かった.
著者
八木 勲 水田 孝信 和泉 潔
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.2388-2398, 2012-11-15
被引用文献数
1

企業不祥事や自然災害の影響でファンダメンタルズが急激に悪化し,その企業の株価が暴落することがある.その直後,株価が反発することも経験的に知られている(リバーサル現象).これまでの実証研究では,リバーサル現象の発生要因はオーバリアクション仮説が有力視されているものの,定量的な評価は行われておらず,はっきりとした結論は出ていない.本研究では,価格決定方式の1つである板寄せ方式を採用した人工市場を用いて,理論株価急落を原因とする株式市場の暴落に対して,オーバリアクション仮説を考慮せずにリバーサル現象が発生することを確認した.そして,リバーサル現象発生時の取引価格決定メカニズムを分析し,エージェントの予想株価のばらつきと注文の需給関係の偏りによってリバーサル現象が引き起こされることを突きとめた.一方,ザラ場方式を採用した人工市場を用いると,リバーサル現象が必ずしも起こるとは限らないことが判明した.その結果,板寄せ方式を採用した市場の方が,ザラ場方式を採用した市場よりもリバーサル現象が発生する可能性が高いと考えられる.Fundamentals deterioration of firms due to their scandals or disasters causes the decline in their stock prices. We know empirically that stock prices rebound after they fall largely. In this paper, this trend is called the reversal phenomenon. There are some preceding researches on the issue, however, little has been explained about the market mechanism such as a market pricing mechanism in the reversal of large stock price declines. We reproduced the reversal phenomenon in the artificial market with the degree of variation of expected prices and Itayose system which is one of the stock pricing mechanisms and a kind of double auction, not with the overreaction hypothesis. On the other hand, the reversal phenomenon does not always occur in the artificial market with Zaraba system which is a kind of continuous double auction.
著者
草田 裕紀 水田 孝信 早川 聡 和泉 潔
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.675-682, 2015
被引用文献数
5

We analyzed the impact of position-based market maker, which tries to maintain its neutral position, to the competition among stock exchanges by an artificial market simulation approach. In the previous study, we built an artificial market model and investigated for the impact of non-position-based market maker's spread to the markets' shares of trading volumes. However it had the serious problem that the non-position-based market maker is too simple to manage its own position properly and so we could not judge weather the result of previous study is correct or not. Thus in this study, we made a position-based market maker and explored the competition, in terms of taking markets' shares of trading volumes, between two artificial financial markets that have exactly the same specifications except existing a market maker, the non-position-based market maker or the position-based market maker. As a result, we found that the position-based market maker can acquire the share of trading volumes from the competitor even though its spread is bigger than bid-offer-spread of the competitor. Moreover, we revealed that position-based market maker can get a profit even in the situation that its spread or tick sizes of the stock exchanges are small. In addition to that, position-based market maker made a profit in almost all experiments which we conducted in this research by changing its spread and tick sizes of markets. At last, we confirmed that position-based market maker can manage its position properly compared to non-position-based market maker. In conclusion, the position-based market maker can not only supply liquidity to stock exchanges and contribute to acquire the share from the competitor as well as the non-position-based market maker does, but also manage its own position properly and make a profit.
著者
水田 孝信
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

今年度の本研究の進展状況としてはまず、今まで行ってきた重イオンの加熱・加速メカニズムの理論をさらに洗練化し、このメカニズムが起きるための波動に課せられる必要条件を定量的に導き出した。この初期結果はAdvances in Space Researchに掲載予定であり、詳細な結果はPhysics of Plasmaに投稿準備中である。相対論的効果を入れて、議論することを始めた。これは、例えば、パルサー風中での粒子加速など、応用範囲が広い。相対論的粒子は、円偏波の電磁波と共鳴することができ、今まで議論してきた重イオンの加速と同じようなことが起こると予想される。初めから共鳴している相対論的粒子は、単独の電磁波と共鳴することにより、強く加速することが示されたが、初め、少しでも、共鳴からずれていると強い加速は起きないことが分かった。このため、非相対論の場合と同じように、二つの電磁波がある場合のみ、共鳴速度付近の速度をもつ粒子すべてが、加速することが可能になる。その加速効率を詳細に調べた結果、非相対論のときほど加速効率が良くないことが分かった。しかしながら、重イオンの場合と違い、特殊な状況設定を必要としないため、適応範囲は広いと考えられる。というのも、必要とされる電磁波に波長などの制限はなく、どのような電磁波でも円偏波であれば、二つ孤立的に存在すればこれは、起きるからである。この、結果は、2004年3月の天文学会で発表し、Physics of Plasmaに投稿準備中である。
著者
野崎 淳 水田 孝信 八木 勲
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.29, 2015

法改正などに伴い2014年12月から実施される規制として,分散投資規制とリスク量規制がある.しかし,これらの規制が市場にどのような影響・効果をもたらすのかについての研究はまだ本格的には行われていない.そこで,本研究ではまず,分散投資規制が市場や投資家の行動に与える影響について人工市場を用いて検証する.