著者
江原 宏幸 押切 正浩 山梨 智史 森井 利幸 佐藤 薫 吉田 幸司
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.196-207, 2008-04-01
参考文献数
28

変換予測符号化に基づく32kbit/sのスケーラブル符号化方式を開発した。本方式では,広帯域(0.05〜7kHz)の入力信号の線形予測分析・符号化を行い,変形離散余弦変換を用いて予測残差信号の符号化を行う。高品質な電話帯域(0.3〜3.4kHz)の音声符号化方式に1,2kbit/sの帯域拡張と4kbit/s刻みの変換符号化を組み合わせた。電話帯域の音声符号化は6.8kbit/sの符号励振線形予測符号化で行い,G.729 Annex E(11.8kbit/s)相当の品質を達成した。更に,8kbit/sでG.722,2(8.85kbit/s)相当の広帯域品質を達成し,音楽信号に対してはG.729.1を上回ることを確認した。
著者
渡邊 和洋 中園 江 中村 大輔 西谷 友寛 西村 奈月 松島 弘明 谷尾 昌彦 江原 宏
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.373-384, 2016-10-05 (Released:2016-10-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1 9

コムギの多収栽培技術の開発を目的に,耐倒伏性品種「さとのそら」を供試し,慣行の基肥重点型の施肥体系に対して,基肥を減らし追肥で窒素を増施用する生育後期重点施肥の効果を2カ年にわたって検証した.その結果,生育後期重点施肥により,茎立期以降の乾物成長量の大きくなる時期にLAIが高まったこと,登熟期後半まで葉色,NARが高く維持されたことでCGRが高く経過し,成熟期の総乾物重が大きくなった.一方で,茎立期の茎数が少なくなったことに加えて,この時期に窒素を増肥したことで,茎間の同化産物および窒素の競合が緩和され,茎の生存率が高まり,穂数が増加するとともに,シンク容量の大きな穂が形成されて1穂粒数も増加したものと考えられた.さらに登熟期後半までNARが高く維持されたことで1000粒重も増加した.以上の乾物成長経過および収量構成要素の形成の結果,生育後期重点施肥により,収量を15~50%増加させることが可能であった.一方で,成熟期が遅れること,外観品質の低下や子実タンパクの過剰,土壌の酸性化の助長などの普及技術化に向けて改善すべき課題も明らかとなった.
著者
江原 宏 HARLEY Madeline M. BAKER William J. DRANSFIELD John 内藤 整 溝田 智俊
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.121-126, 2006

サゴヤシ (<I>Metyoxylon sagu</I> Rottb.) の種内形質変異を検討するため, インドネシアの西パプア (イリアンジャヤ) に生育する有刺folk varietyおよび西スマトラに生育する無刺folk varietyの乾燥標本から得た花粉の形態を調査比較した.両folk varietyとも1個体に両性花と雄花の両方を着生し, いずれのfolk varietyでも両性花と雄花のサイズに大きな違いはなく, 雄花では雌蕊は退化していた.両性花と雄花の両方とも花粉を生じ, SEM観察したところ, 花粉粒は短赤道軸上に2つの発芽孔を有する長楕円形であった.花粉形状に変異がみられたが, それは花粉壁 (エキシン) の収縮や膨張の程度の違いによるものと考えられた.また, 両folk varietyの両性花, 雄花とも花粉粒のテクタムは滑らかで疎らに穴が散在していた.このように, 花粉の外壁形質, 花粉の形状などいずれも両folk variety間に差はみられないことが明らかとなった.
著者
森田 脩 岩渕 慶 後藤 正和 江原 宏
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.429-436, 1995-01-31
被引用文献数
1

表面播種されたマメ科牧草の発芽種子が主根を土壌中に進入させ,定着に成功する過程を明らかにする目的で,播種箱に充填した水田黄色土壌(含水率20%)の表面に7草種を播き,25℃,相対湿度約100%の定温器内で発芽過程を5日間調査して,マメ科牧草の発芽行動に及ぼす根毛の固着の影響並びに固着と主根の形態的形質との関係について検討した。1.土壌表面におけるマメ科牧草種子の発芽過程をみると,最初に主根が発芽孔付近から出現し,地表面を這いながら伸長を続け,順次発生する根毛が表面に固着した後,先端が土壌中に進入を始めた。2.マメ科牧草の主根は,出現してから先端が土壌中に進入するまでの間に,根毛帯が表面に固着する程度(固着度)によって,次の3種類のいずれかの行動を示した。I:根毛帯の大部分が土壌表面に固着して,主根が表面に密着している芽生え(以後,全固着型と略記)。II:根毛帯は部分的に固着して主根の一部が表面から浮き上がっている芽生え(部分固着型と略記)。III.根毛帯は全く固着せず,主根全体が浮き上がっている芽生え(無固着型と略記)。3.3種類の発芽行動のうち,シロクローバ,バーズフットトレフォイルは全固着型が,アルサイクローバ,アカクローバ,クリムソンクローバ,アルファルファは部分固着型が,そして,コモンベッチは無固着型の割合がそれぞれ多く,草種によって特徴が見られた。4.全固着型の割合は,主根の根毛長/根径比と有意な正の相関関係があり(r=0.873,p<0.05),根径に比べ根毛が相対的に長い草種が高かった。各草種とも,全固着型は部分固着型に比べて,根毛の固着面積が有意に大きかった。5.以上から,表面播種されたマメ科牧草の主根根毛の固着は,定着の前提となる土壌中への主根の進入を助ける働きのあることが示唆された。
著者
江原 宏 三島 隆 内山 智裕 内藤 整 豊田 由貴夫
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

パプアニューギニア北部の東セピック州では,サゴヤシ民俗変種を,「大きい」(背が高い;樹高が大きい),「樹中の実(髄)が多い」といった樹体サイズなどを表す語,葉柄が白い,あるいは緑色といった特性,あるいは葉柄の基部の葉鞘に当たる部分の蝋状物質の蓄積程度の差を基準として仕分けているものと考えられた。同国ニューアイルランド島ケビエン地域においても,「木のように背が高い」との意味を示す語を名称とする民俗変種が分布するなど,樹体サイズの特徴が民俗分類で重要なことが明らかになった。また,胸高直径が特に大きな,多収性と考えられる民俗変種も認められた。ニューギニア島インドネシア領の西パプア州では,乾物率や澱粉収率の低い個体は,地下水位の高い地区に生育していたことから,生育環境が澱粉生産性に及ぼす影響の大きさが窺われた。一方,葉痕間隔が長いことは,生長速度が大きいことを意味するが,その値がニューアイルランド島の調査で幹胸高直径と負の関係にあることが窺われ,生長の早いタイプ,あるいは地域では,幹が細いということと考えられ,極めて興味深い結果を得ることができた。また,葉痕間隔とデンプン含量にも負の関係が認められ,生長の早いタイプでは低収傾向があることが窺われた。