著者
吉田 幸司
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.85-97,126, 2005-03-21 (Released:2011-05-30)
参考文献数
24
被引用文献数
6 3

2002年日韓ワールドカップ開催のために、候補地自治体は各地で新しいスタジアムを建設した。埼玉県によって建設された県営埼玉スタジアム2002も、その一つである。埼玉県はスタジアム建設当初から地元のJリーグチーム、浦和レッズのホームスタジアム誘致をめざしてきた。しかし、スタジアム完成から3年以上が経過しても、浦和レッズのホームスタジアムは、さいたま市営の浦和駒場スタジアムのまま、移転はなされずにきた。このホームスタジアム移転をめぐって、県とクラブはそれぞれの思惑で埼玉スタジアムの移転・使用の正当性の根拠として「公共性」を主張してきた。本稿ではまず、スポーツ社会学領域における公共性論を、暫定的に「スポーツの持つ公共性」を論じる立場と、「スポーツの創造する公共性」の可能性を探る立場という、二つの潮流として整理し、その上で、浦和レッズ・サポーターへの参与観察を元にした、事例研究を考察した。埼玉スタジアムを核とした「スポーツによるまちづくり」という公共事業が公共性=公益性を担保する、というロジックを「大義」とした埼玉県の思惑にレッズ・サポーターは一方的に屈服してしまうことなく、また表立って抵抗するわけでもなかった。だがそれでもホームスタジアム移転をクラブは留保してきた。その理由を「聖地」駒場で築き上げてきたレッズ・サポーターの「浦和スタイル」に見出す。本論文は、このホームスタジアムの移転に際して、これまで県やクラブの主張する公共性の「大義」に、レッズ・サポーターはかかわることがなかったことを踏まえ、それでもこの移転問題に「かかわらざるをえない」レッズ・サポーターを、その浦和スタイルから捉えかえす試みである。
著者
江原 宏幸 押切 正浩 山梨 智史 森井 利幸 佐藤 薫 吉田 幸司
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.196-207, 2008-04-01
参考文献数
28

変換予測符号化に基づく32kbit/sのスケーラブル符号化方式を開発した。本方式では,広帯域(0.05〜7kHz)の入力信号の線形予測分析・符号化を行い,変形離散余弦変換を用いて予測残差信号の符号化を行う。高品質な電話帯域(0.3〜3.4kHz)の音声符号化方式に1,2kbit/sの帯域拡張と4kbit/s刻みの変換符号化を組み合わせた。電話帯域の音声符号化は6.8kbit/sの符号励振線形予測符号化で行い,G.729 Annex E(11.8kbit/s)相当の品質を達成した。更に,8kbit/sでG.722,2(8.85kbit/s)相当の広帯域品質を達成し,音楽信号に対してはG.729.1を上回ることを確認した。
著者
吉田 幸司 岡室 博之
出版者
経営史学会
雑誌
経営史学 (ISSN:03869113)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.3-26, 2016 (Released:2018-03-30)

Using longitudinal micro data for Mitsubishi Shipbuilding employees from 1918 to 1946, this paper quantitatively analyzes the promotion and selection process for white-collar workers during the prewar period. Previous studies on the postwar period have mostly examined this career pattern quantitatively, while historical studies focusing on the prewar period are mostly qualitative. Moreover, even the few quantitative studies on the prewar period do not employ such methods as career trees and event history analysis, which are generally used in the studies focusing on the postwar period. Therefore, the main purpose of this paper is to investigate the career pattern of white-collar employees in prewar Japan in a quantitative way comparable with studies focusing on postwar Japan.We target two cohorts of white-collar workers—those who joined Mitsubishi Shipbuilding in 1918 and 1921—and track their careers (section and position) until 1946 by matching three internal data sources, including lists of personnel. We first draw up the career trees of new white-collar employees in both cohorts to illustrate the characteristics of their career patterns. Next, we employ event history analysis to test the differences in the career patterns between sub-groups, such as clerks and engineers. Finally, we estimate a logit model to determine the factors of their “survival” until 1939. We find that (1) the speed of promotion differs considerably across white-collar workers in the same cohort, (2) “return match” is observed not only in promotion to section manager positions but also in promotion to division manager positions, (3) despite a high ratio of resignation, most remaining white-collar workers are promoted to division managers, and (4) engineers are more likely than clerks to stay with the company for more than 20 years. Findings (1) to (3) are common to the career patterns of white-collar workers in the prewar core banks of Zaibatsu groups but contrast with those of large postwar firms.
著者
田中 耕太郎 高嶋 修太郎 田口 芳治 道具 伸浩 温井 孝昌 小西 宏史 吉田 幸司 林 智宏 山本 真守
出版者
日本脳循環代謝学会
雑誌
脳循環代謝(日本脳循環代謝学会機関誌) (ISSN:09159401)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.57-62, 2015 (Released:2015-08-07)
参考文献数
12
被引用文献数
1

要旨 我々の施設の非弁膜症性心房細動による心原性脳塞栓症(NVAF-CE)入院患者について入院時の抗血栓薬を検討すると,NOAC 登場前は,ワルファリン(W)32%,抗血小板薬(P)23%,抗血栓薬なしが45%であった.NOAC 登場後はW が35%,NOAC が18%,P が9%,抗血栓薬なしが38%であり,NOAC 登場前に比しP 処方患者が明らかに減少,抗血栓薬なしも軽度減少していた.以前ならW の代わりにP を処方していた症例に,NOAC が処方されている症例が増加していると考えられた.NOAC 服用中のNVAF-CE 発症患者の入院時NIHSS は平均1.4 であり,W 服用中の8.8,抗凝固薬非服用中の10.9 に比し,有意に(p<0.05)低値であった.入院時D-dimer 値についても,NOAC 服用群で有意に(p<0.05)低値であった.NVAF-CE の退院時の抗凝固薬は,NOAC 登場前はW 76%,処方なしが24%,登場後はW 44%,NOAC 43%,なしが13%で,抗凝固薬処方なしが減少していた.NOAC 使用が普及しつつあるが,長期の安全性と有用性については今後も検証が必要である.
著者
吉田 幸司
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25

本年度は、前年度までの、F.H.ブラドリー、W.ジェイムズ、A.N.ホワイトヘッドの形而上学研究、およびそれらと現代英米哲学の主潮との比較研究を継続しつつ、価値経験や宗教的経験のような個別的経験と科学知を統合的に論じた形而上学としてホワイトヘッド哲学を評価し直す研究を遂行した。1.現代英米哲学の主潮、特にクワインの自然主義と、ホワイトヘッド哲学の方法を比較研究した。その結果、両者とも科学と形而上学の境界は曖昧だと考える一方、ホワイトヘッドは「よりよい理解」を通じて「よりよい生」へ冒険する働きを「思弁」に見出す点で自然主義と一線を画すことが明らかになった。2.むしろ、ホワイトヘッドにとって哲学が例証を見出す事実は、科学が扱う経験的事実だけでなく、情感的経験や宗教的経験の事実でもあった。本研究は、ホワイトヘッドが、科学史や哲学史を解体しロマン主義的自然観を取り入れる中で独自の術語群を作り出し、世界に関する「よりよい理解」を獲得するとともに、科学・哲学・芸術を有機的に結びつけたことを明らかにした。3.彼の形而上学における神の記述も、本研究では、神学ではなく、S.アレグザンダーらの創発的進化論や哲学的人間学の脈絡のうちで展開した。これにより、生の意義や神的経験に関する形而上学的記述を我々の具体的経験に即して論じ直すことに成功した。4.さらに、ジェイムズの『宗教的経験の諸相』やブラドリーの方法論、現代スピリチュアリティ思想や脳科学研究を参照しながら、宗教的経験の意味に対する科学・哲学・宗教のアプローチの違いを研究した。その際にプラグマティズムを発展的に応用し、意味の世界を支えているがそれに先立つ基準の転換として宗教的経験の宗教性を捉える新たな提案を行った。5.また、科学者やアーティストとの学際的な研究活動・報告も積極的に行い、哲学を実践において活かす様々な提言をすることができた。
著者
吉田幸司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EE, 電子通信エネルギー技術 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.327, pp.1-8, 1999-09-22

スイッチング電源において,ピーク電流を一定に保つピーク電流制限モード過電流保護回路を行うとき,入力のインピーダンスが大きいと,入力電圧の減少(増加)→デューティ比の増加(減少)→入力電流の増加(減少)→入力電圧の減少(増加)なる正帰還が働き,異常発振する現象が見られる.ここでは,LCπ型フィルタを入力に有するフルプリッジコンバータを例に取り,過電流保護状態での正帰還ループを解析し,実験結果と照合することにより特性を明らかにした.また,ランプ補償により異常発振を抑える方法の提案を行い,良好な特性が得られた.ランプ補償を用いると異常発振対策のために入力フィルタを大型化する必要は無くなる。
著者
森村 勉 関 雅樹 石川 栄 坂上 啓 三輪 昌弘 村松 浩成 西村 和彦 吉田 幸司 足立 昌仁 南 善徳
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. C編 = Transactions of the Japan Society of Mechanical Engineers. C (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.76, no.764, pp.825-834, 2010-04-25
参考文献数
12
被引用文献数
1

We conducted full scale experiment to study the derailment mechanism of high speed railway vehicle by earthquake ground motion. The experiment was arranged to mimic the vehicle/track conditions of Tokaido Shinkansen by using the bolsterless bogie and the track materials both presently in use for Tokaido Shinkansen. Large excitations enough to derail the test vehicle were given, so that derailment motions were fully captured. Through the tests, (1) Total 34 cases of derailment were observed by the sine wave excitations in the frequency ranges of 1.1Hz to 1.5Hz. The test vehicle was derailed as the result of rocking motion. (2) Wheel lifts of around flange height without derailment were observed by the sine wave excitations in the frequency ranges of 0.5Hz to 1.0Hz. (3) By comparing the vehicle motions of two cases of different ballast conditions, we learned that dynamic features of the ballast track brings no significant difference on the vehicle dynamics of those cases. (4) Finding reasonable match between the experimental results and analytical results obtained from the simulation developed by the authors, we further investigated the possibility of derailment by the sine wave excitations in the frequency ranges of 0.5Hz to 1.0Hz and found that vehicle was to be derailed by giving larger excitation amplitudes than those given in the experiment.