著者
圓田 浩二 マルタ コウジ Maruta Koji 沖縄大学法経学部法経学科教授
出版者
沖縄大学法経学部
雑誌
沖縄大学法経学部紀要 (ISSN:13463128)
巻号頁・発行日
no.27, pp.19-32, 2017-09

ポケモンGOは、2016年7月にリリースされたスマートフォンとタブレット端末用のゲームアプリである。本稿では、ポケモンGOの製作、グローバル・キャラクターとしてのポケモンの誕生とその受容、ポケモンGOが世界的にヒットした理由、そして、ポケモンGOが引き起こした数々の社会問題の分析を行う。学術的には、遊び論、身体論、ゲーム論などを用いて記述と分析を進める。そして、本稿は、ポケモンGOが社会に与えた影響の原因であるその特性を社会学的観点から考察するとともに、ポケモンGOというゲームアプリがもつ潜在的な可能性を、社会性の次元から分析する。本稿の仮説は、ポケモンGOが今までのゲームと異なる何か「新しい社会の変化や人間の思考や感覚の変化」をもたらしたのは何かという問題を提起し、解明することである。方法は、「遊び」や「身体」、「テレビゲーム」について書かれた文献を収集・探索するとともに、ポケモンGOのプレイヤー(「ポケモントレーナー」)についてのフィールドワーク(参与観察)を行い、またインターネットでの数多の発言を収集した。結論としては、ポケモンGOは、新しい社会の変化や人間の思考や感覚の変化をもたらし、現実をゲーム化する。そのことで生じる数々の問題は、社会との「折り合い」をつけることで解決されなければならない。Pokémon GO is a game application for smartphones and tablet released in July 2016.In this paper, I analyze about the various social problems caused by Pokémon GO, the birth and acceptance of Pokémon as a global character, the reason why Pokémon GO hit globally, and the production of Pokémon GO. Academically, I push forward a escriptionand analysis using play theory, body theory, game theory and others. And this paper iders the characteristics which is the cause of the influence Pokémon GO has given to ociety from a sociological point of view and alyzes the potential possibilities of the gameapplication Pokémon GO from the dimension of sociality. The hypothesis of this paper isto pose and elucidate the question of hether Pokémon GO has caused something differentfrom the conventional games, "new social changes in a new society and changes in humanthought or sensation". The method collected and explored literature written about "play","body", and "video game", and I performed the fieldwork (observation of articipation)about the player of Pokémon GO ("Pokémon trainer"), I gathered a great number ofremarks on the Internet. In conclusion, Pokémon GO brings about changes in new society and changes in human thoughts and senses, and makes reality a game. A number ofproblems arising from that will have to be solved by attaching "compromise" with society.
著者
圓田 浩二 マルタ コウジ Marta Koji 沖縄大学法経学部法経学科教授
出版者
沖縄大学法経学部
雑誌
沖縄大学法経学部紀要 (ISSN:13463128)
巻号頁・発行日
no.27, pp.33-45, 2017-09

本稿は、世界的に流行し、さまざまな社会問題を引き起こしたゲーム・アプリ「ポケモンGO」を題材に、ジョン・アーリの「移動の社会学」を参照しながら、このゲームにおける「歩く」ことに注目し、社会学的に分析し記述する。ポケモンGOは、ゲーム内で歩くことと現実世界の空間を歩くことが連動し、ゲームを進めるに当たって、現実世界で移動することが必要不可欠になる。現代社会における「歩く」という移動手段の特性とその意義、その戦略と戦術の展開、それによって生じる場所の消費、風景の創出について論じる。最後に、現代社会で「歩く」ことがヘルスケアの面から注目され推奨される中で、ポケモンGOは、「歩く」ことに新たな意味を付与した。前近代社会まで「歩く」ことがほぼ選択可能な唯一の、そして主要な手段であったが、さまざまなテクノロジーが発達した現代社会で「歩く」ことが復権され、その意義が改めて見直されることになった。This paper focuses on "walking" in Pokémon GO and analyzes it sociologically and describes it. This game is a game application that became popular worldwide and caused various social problems. In this paper, I refer to John Urry's "Sociology of Mobility".Pokémon GO works in conjunction with walking in the game and walking in the real world space, and in moving the game, it is essential to move in the real world. Discuss the significance of the racteristics of form of move "walking" in modern society, the development of that strategy and tactics, the consuming places resulting from it, and the creation of landscapes. Finally, in the modern society "walking" is gaining attention from the aspect of health care and recommended, Pokémon GO has given a new meaning of move to "walking". "Walking" to the pre-modern society was the only choice and the primary form to choose. By playing with Pokémon GO, "walking" was restored in modern societywhere various technologies were developed, and its significance was reexamined.
著者
玉木 千賀子 たまき ちかこ Tamaki Chikako 沖縄大学人文学部
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of Humanities and Social Sciences (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.19, pp.81-92, 2017-03-24

本研究の目的は,ヴァルネラビリティに対する意向確認のとらえ方を社会福祉制度の動向に沿って考察することである.生活保護法をはじめとする戦後の社会福祉に導入された申請・措置方式,社会福祉基礎構造改革以降,福祉サービスの提供方式として用いられている契約方式の下では,自らの社会生活課題に対する認識の乏しい人や申請・契約の能力が十分に備わっていない人が支援から取り残されるという課題が生じた.そのようなヴァルネラビリティに対する支援上の課題は,申請・措置方式の時から指摘されていたが,生活困窮者自立支援法の施行によって漸くヴァルネラビリティに対する支援システムが制度化され,意向確認とそれに基づく支援の取り組みがはじめられたところである.また,障害者福祉の領域では,障害者権利条約の批准,障害者差別解消法の施行等を契機に,障害の状態にある人の意思決定支援のあり方の検討が進められている.社会福祉はヴァルネラビリティに対する支援に本格的に取り組みはじめており,そのような状態にある人に対する意向確認のあり方の検討は,個人を尊厳するというソーシャルワークの価値の具現という意味においてとりわけ重要な検討課題である.
著者
玉木 千賀子 たまき ちかこ 沖縄大学人文学部
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of Humanities and Social Sciences (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.18, pp.91-98, 2016-03-07

本論は,個人を固有の存在として捉えるというソーシャルワークの価値(個人の尊厳)に依拠したケアマネジメントのありかたを検討するための予備的研究である。ソーシャルワークのアプローチにおいて人を中心としたアプローチとして位置づけられるPerlman の問題解決アプローチの構造と支援過程を整理し,個人の尊厳に関係するソーシャルワークの概念に関連づけて考察をした。その結果,その人の成長を一義的な目標に位置づける,問題解決力を涵養するための問題の部分化,リハーサル体験の反復,情緒的・知的・身体的側面からの対処能力向上等,支援を必要とする人の尊厳に結びつくと考えられる視点を見い出すことができた。一方で,自己決定の考え方,日本の文化的特徴の自己決定への影響,言語的コミュニケーションを用いることによる対象の限定,問題解決の認識が乏しい場合等の本アプローチの適用上の検討課題が示唆された。
著者
髙良 沙哉 Takara Sachika 沖縄大学人文学部福祉文化学科
出版者
沖縄大学地域研究所
雑誌
地域研究 (ISSN:18812082)
巻号頁・発行日
no.13, pp.133-152, 2014-03

本稿は、裁判所が認定した「慰安所」内外における旧日本軍人による性暴力の被害事実を明らかにして、「慰安婦」訴訟の意義を示し、国家や国民が理解すべき旧日本軍による加害責任を再確認する。そして元「慰安婦」に対する、日本政府の戦後補償責任を追及する際の課題を判決に基づいて明らかにする。「慰安婦」訴訟で裁判所は、いわゆる「河野談話」に基づいて、「慰安婦」の徴集、「慰安所」の設置・管理における日本軍の関与、責任を認めた。また、各訴訟で認定された被害事実を検討すると、公文書に基づく吉見義明分類における、「純粋の慰安所」にも、統制のある「慰安所」と統制の曖昧な「慰安所」があることがわかり、また「慰安所」外における性的虐待の実態も明らかになった。そして「慰安所」内における性暴力の許容と促進が、「慰安所」外での性的虐待を誘発した様子も明らかになった。判決では、除斥期間や国家無答責の法理等の障害に阻まれ、被害者たちに対する戦後補償責任は認められなかった。戦後補償を行うには、日本政府、日本国民が加害の歴史に向き合うことが不可欠である。また、戦後補償を行う現憲法上の根拠を明確にし、国家無答責の法理等の障害をどのように超えるかが課題である。There are two objectives to this paper.1. The first purpose is to show the fact that sexual violence of the inside and the outside of the"comfort clubs" system was caused by the Japanese army. This paper also makes clear the meaning which the "comfort women" trials give. The Japanese government and Japanese people have to understand the Japanese army's responsibility for the sexual violence in the times of world warⅡ.2. The second purpose is to clarify the unsolved problems concerning the responsibilities of the Japanese government for the Compensation to the acts of sexual violence in the time of the world warⅡ.In the "comfort women" trials, the Japanese courts ascertained the participation and the responsibility of the Japanese army for the levy of the"comfort women", the management of the"comfort clubs"system. And the courts showed the two types of the "comfort clubs" in the "Just comfort clubs". The courts showed the another type of the victims,"sexual abuse". The Judgments also clarified that the sexual violence inside the "comfort clubs" caused the sexual abuse outside the "comfort clubs".The judgments rejected the responsibilities of the Japanese government for the Compensation to the acts of sexual violence in the time of the world warⅡ on the grounds of the deadline for the statutory exclusion, and of the principle of the national excuse of the responsibility.For the responsibilities of the Japanese government for the Compensation to the acts of the sexual violence in the time of the world warⅡ, the Japanese government and Japanese people have to learn the history of the sexual violence by the Japanese army. It is unsolved problems to clarify the constitutional grounds for the responsibilities in the time of the world warⅡ, and to overcome the deadline for the statutory exclusion and the principle of the national excuse of the responsibility.
著者
見城 育夫 けんじょう いくお Kenjo Ikuo 沖縄大学人文学部福祉文化学科
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.22, pp.51-59, 2019-03

2018 年度介護保険制度改正に伴う自立支援・重度化防止に向けた取り組みについては,ここに至る過程において様々な議論が行われてきた。今改正のこれまでの議論の整理及び改正の論点と今後の課題について文献分析を基に考察することにしたい。
著者
渡久山 幸功 Tokuyama Yukinori 沖縄大学地域研究所特別研究員 沖縄大学非常勤講師
出版者
沖縄大学地域研究所
雑誌
地域研究 (ISSN:18812082)
巻号頁・発行日
no.11, pp.17-34, 2013-03

ヴァーン・スナイダーが書いた沖縄を舞台にした小説『八月十五夜の茶屋』(1951年)は、ベストセラーになり、その後、戯作家ジョン・パトリックによって舞台化され、3年を超える超ロングランを記録し、後に映画化され大ヒットした。小論では、数少ない先行研究に概観、原作と翻案の比較、その当時の作品と関連する様々な文献(新聞記事、書評、作者自身のインタビュー等)を調査しながら、本作品の解明を試みた。この作品は映画のヒットによって、沖縄の人々の記憶に残っているが、この映画版と原作の小説には大きく異なる点がある。特に、主要人物の芸者(沖縄のジュリ)や沖縄人通訳者の扱い方である。スナイダーの原作では、主人公のアメリカ将校に現地沖縄人からのプレゼントとして芸者を二人用意しているが、これは映画と異なり、アメリカ人将校と芸者との恋愛関係を描いておらず、芸者のイメージの脱セクシャリティ化を企図している。つまり、沖縄文化や沖縄人の等身大の描写を心がけ、ステレオタイプ的な描写を極力抑えられているところに特徴がある。また、軍事植民地沖縄に対するアメリカ軍政府への提言として、東洋人の住民の幸福は欧米的なものではないことを認識することが重要であり、彼らの異文化・習慣を尊重し、アメリカ文化や価値観を温情的に押し付けることがないように示唆している。しかし、それは、単にクリスマスのサンタクロースの様にプレゼントを与えるだけではなく、現地民の自立を促し、真の意味での民主化を提言しているため、在沖米軍(占領政府)にとっては、容認できない「危険な」テキストになっている、と指摘した。
著者
渡久山 和史 Tokuyama Kazufumi 沖縄大学地域研究所特別研究員 那覇市役所
出版者
沖縄大学地域研究所
雑誌
地域研究 (ISSN:18812082)
巻号頁・発行日
no.11, pp.35-42, 2013-03

本稿の問いは、沖縄県においてなぜ那覇市に生活保護受給者が多い/増加しているのか、である。この問いを軸に、そこから見えてくる現在の沖縄の姿(の一面)を描写する。戦後沖縄は、「復帰前の基地依存から復帰後の行政依存へ。そして、その帰結としての生活世界の空洞化と構造的貧困」という歴史を辿った。我々は今後、生活世界を堅持したオルタナティブな沖縄を構想するべきである。
著者
圓田 浩二 まるた こうじ Maruta Koji 沖縄大学法経学部教授
出版者
沖縄大学法経学部
雑誌
沖縄大学法経学部紀要 (ISSN:13463128)
巻号頁・発行日
no.30, pp.11-24, 2019-03

本稿は、ポケモンGOの社会学的研究の一つであり、ポケモンGOのインタビュー調査に基づいて、得られた知見を紹介している。まずインタビュー調査の概要を紹介した上で、ライングループでの役割についての4つの類型を紹介し、分析している。そして、筆者が過去に行ったフィールドワークやインタビュー調の結果から、トレーナーのモンスター化という現象を取り上げ、論じている。モンスター化には、ゾンビ化、クリチャー化、オートマトン化、ニンジャ化の4つのタイプがあることを紹介し、ポケモンGO内だけの現象ではなく、現代社会にも当てはまる現象であることを提起している。This paper is one of the sociological studies of Pokémon GO. Based on an interview survey of Pokémon GO, we introduce the findings obtained. First of all, I introduce the outline of the interview survey. We are introducing and analyzing four types of role in the line group. And, from the results of the fieldwork and interview tone that I wrote in the past, I take up and discuss the phenomenon of human monsterization. In introducing that there are four types of zombie formation, creation, automatonization, and ninja formation, it is raising that it is not a phenomenon only in Pokémon GO but a phenomenon also applicable to modern society.
著者
鈴木 陽子 すずき ようこ Suzuki Youko 沖縄大学大学院現代沖縄研究科 沖縄大学地域研究所特別研究員 沖縄大学地域研究所特別研究員 沖縄愛楽園交流会館研究員
出版者
沖縄大学地域研究所
雑誌
地域研究 = Regional studies (ISSN:18812082)
巻号頁・発行日
no.17, pp.1-19, 2016-03

沖縄に設立されたハンセン病療養所、国頭愛楽園で、開園時に収容された患者が起こした事件を、入所者2集団と献身的な職員のそれぞれの主体性が絡み合ったものとしてとらえ、事件をめぐる、それぞれの集団の主体的な行動と集団間の関係を入所者の証言、園機関誌などから分析する。本稿は、沖縄に設立されたハンセン病療養所、国頭愛楽園(以下、愛楽園)開園時に収容された患者が起こした事件を、園内の3集団それぞれの主体性が絡み合ったものとしてとらえ、事件をめぐる、それぞれの集団の主体的な行動と集団間の関係を入所者の証言、園機関誌などから分析する。1938年に設立された愛楽園は患者自身が安心して暮らせる居場所を求めて設立した療養所を前身とし、献身的に職員は働いた。それにもかかわらず、1940年、開園時に収容された患者たちは、一心会事件とよばれる組織的なストライキを起こした。 結果、一心会を中心とする闘争では、療養所を求めた患者集団、献身的であろうとした職員集団、収容された患者集団がそれぞれに主体的に行動していたことが明らかになった。療養所の設立を求めて動いた患者集団は職員とともにより良い療養所を目指したが、それは入所者を抑圧し、管理することにもなった。これに対し、開園時に収容された患者集団は抵抗をしたが、隔離政策下、排除が過酷になる集落へ追放された。各集団の主体性の背後には、差別と抑圧の重層的な構造があることがあぶりだされ、その中で、3集団それぞれの、肯定的に生きることを求めた行動が絡み合ったことが考察された。
著者
吉井 美知子 よしい みちこ Yoshii Michiko 沖縄大学人文学部
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of Humanities and Social Sciences (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.18, pp.11-24, 2016-03-07

ベトナムでは初の原発建設計画が進められている。南部のニントゥアン第一原発をロシアが、第二原発を日本が受注し、着工は2022 年以降とっている。原発に関する世論調査等は一切行われていない。外国人による現地取材や調査も非常に難しい。そこで本研究では立地地元ではなく、国内外の離れた場所で暮らす地元出身者への聴き取り調査を実施した。これにより現地出身者の意見を明らかにする。調査の結果、学歴が中卒以下の人々の多くは、フクシマ事故や故郷に建つ原発の計画を知らず、意見も持たないことがわかった。また高卒以上の人々は放射能への不安、人材不足の懸念からの反対が多く、日本には原発ではなく再生可能エネルギーへの支援をという声が集まった。立地地元に情報が行き渡らず、高学歴者の間で計画への反対意見が多いなか誰ひとり意見発信ができない。言論の自由のない国を狙って原発を輸出する日本の、道義的責任が問われている。Vietnam prepares to build its first nuclear power plants (NPP) in Ninh Thuan Province, Russia andJapan as the suppliers.This study conducted interviews with the locals of Ninh Thuan and nearby areas who temporarily stayand work in major Vietnamese cities or overseas to acquire their opinions on the NPP.Results showed that those with low-level education lack knowledge of and opinions about nuclearproject. Those with higher-level education oppose the project and have concerns about nuclear disaster, butlack the ability to express their opinions.Japan's targeting of countries without freedom of expression for NPP project places its moralresponsibility in question.
著者
桜井 国俊 Sakurai Kunitoshi 沖縄大学人文学部
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of Humanities and Social Sciences (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.16, pp.29-39, 2014-03-05

沖縄では嘉手納以南の米軍基地が返還されることとなっているが、返還基地の円滑な環境回復をいかに実現するかは極めて重要な地域課題である。日米地位協定第4条第1項は汚染者の米国政府に対し環境回復の責任を免除しているとされる。しかし韓米地位協定は同様の条項を含むにも関わらず韓米両国政府は米国に環境回復の責任が一定程度あると解釈している。この日米・韓米地位協定の解釈における差異を検討しつつ、今後予定される返還米軍基地においていかに円滑に環境回復を実現するかについて、韓国での先行事例を踏まえた提言を行う。Although the schedule is not fixed yet, US military bases south of Kadena are planned to be returned to Okinawa, and their smooth environmental restoration is a very important local issue. Article IV, paragraph 1, of US-Japan SOFA (Status of Forces Agreement)is said to exempt the polluter, namely the US Government, from the responsibility of environmental restoration. Although US-ROK SOFA has the same article, both the US and the Republic of Korea (ROK) Governments understand that the US Government has the responsibility of environmental restoration to some extent. This paper examines thisdifference between Japan and Korea in the interpretation of SOFA and tries to make some recommendations for smooth environmental restoration of US military bases in Okinawa based on the preceding experiences in Korea.
著者
仲宗根 京子 Nakasone Kyoko 沖縄大学地域研究所 沖縄大学法経学部 中央大学大学院法学研究科
出版者
沖縄大学地域研究所
雑誌
地域研究 (ISSN:18812082)
巻号頁・発行日
no.12, pp.89-95, 2013-09

沖縄海洋博は県民の期待を背負っていたが、出端を挫くように開業間もなく「モトブシーサイドプラザ」が破綻した。債権回収の為に運営に乗り出した建設業者らと、前渡金を払っていた旅行業者との法廷バトルで展開された法律議論(中でも債務引受広告の意義)をめぐる判例規範の形成は、38年経った現在にも通用する先駆的なものであった。本稿では、その古そうに見えて実は色あせていない判例に再びスポットを当てたい。
著者
島村 聡 金城 隆一 鈴木 友一郎 稲垣 暁 しまむら さとる きんじょう たかかず すずき ゆういちろう いながき さとる Shimamura Satoru Kinjyo Takakazu Suzuki Yuichiro Inagaki Satoru 沖縄大学人文学部 沖縄大学地域研究所特別研究員 沖縄大学地域研究所特別研究員 沖縄大学地域研究所特別研究員
出版者
沖縄大学地域研究所
雑誌
地域研究 = Regional studies (ISSN:18812082)
巻号頁・発行日
no.24, pp.51-62, 2019-10

沖縄本島中南部にある5か所の子どもの居場所等の職員、および、当該居場所を管轄する自治体の担当課の職員に居場所運営についてのインタビューを実施したところ、居場所は自身持つ指向から活動型と支援型に分かれ、行政のスタンスから地域型と機関型に分かれることが判明した。行政におかれた子どもに貧困対策支援員は、位置づけの曖昧さから、これらの居場所のネットワーク拡大には寄与できていない。
著者
チャンドララール ディリープ 後藤 亜樹 Dileep Chandralal Goto Aki 沖縄大学人文学部 沖縄大学地域研究所
出版者
沖縄大学地域研究所
雑誌
地域研究 = Regional studies (ISSN:18812082)
巻号頁・発行日
no.17, pp.73-87, 2016-03

沖縄スリランカ友好協会により企画・実施された「スリランカ命の水プロジェクト」が2年間の月日を経て完了した。これまで、なぜ、バルンガラ村に水道設備が設置されなかったのか、村の人々の経済事情、生活はどのような状態であるかを明らかにするためインタビュー調査を実施し、記録した。
著者
川﨑 和治 かわさき かずはる Kawasaki Kazuharu 沖縄大学地域研究所所員
出版者
沖縄大学地域研究所
雑誌
地域研究 = Regional study (ISSN:18812082)
巻号頁・発行日
no.15, pp.99-110, 2015-03

沖縄本島において生じた自動二輪車と原動機付き自転車の衝突事故により、重傷を負った原動機付き自転車の運転手が、加害者に請求した損害賠償訴訟に関する判例研究である。那覇地裁が認定した事実を福岡高裁那覇支部は、より詳細に検討し、合理的な推認方法により加害者の100%過失を認め、被害者に過失相殺を課すことを否定した。後遺障害逸失利益の計算において、医学部2年生にもかかわらず、医師の平均賃金を基礎収入として計算、また、自賠責保険金が支払われるまでの期間に対する遅延損害金を認めている。本稿が「交通事故 うまんちゅで築く 美ら島2014」を年間ソローガンとして掲げる沖縄県の交通事故減少に参考になればと願っている。