著者
室伏 祐介 岡上 裕介 中平 真矢 前田 貴之 永野 靖典 池内 昌彦 川上 照彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.597-600, 2016 (Released:2016-08-31)
参考文献数
15

〔目的〕等張性外転運動における筋活動より,中殿筋に対し小殿筋を優位に鍛える方法を検討することとした.〔対象と方法〕対象は,健常成人14名とした.小殿筋と中殿筋にワイヤ電極を留置し,最大筋力20%,40%,60%の負荷量での等張性外転運動による,積分値,平均周波数を算出した.〔結果〕全ての段階の負荷量において小殿筋の方が中殿筋よりも筋活動が高かった.さらに,筋活動量の割合(小殿筋/中殿筋)は最大筋力20%の負荷量において高かった.また,平均周波数は負荷量ごとに違いは認められなかった.〔考察〕等張性外転運動で中殿筋に対し小殿筋を優位に鍛えるためには低負荷が良い.
著者
樋口 隆志 井上 茂樹 川上 照彦 河村 顕治 横山 茂樹
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.383-389, 2016 (Released:2016-10-20)
参考文献数
29

【目的】2 種類の異なる小胸筋ストレッチ方法の効果の違いを明らかにすることである。【方法】対象は高校野球部員34 名とした。測定項目は小胸筋長,安静時の肩甲骨位置,上肢挙上時の肩甲骨回旋角度とした。ストレッチ方法はdoorway stretch(以下,DW-stretch 法)とretraction30° stretch(以下,R30-stretch 法)とした。【結果】二元配置分散分析の結果,小胸筋長の指標であるRib4-CP および肩甲骨位置の指標であるAD-R において交互作用が認められた。また,2 つのストレッチ法でRib4-CP およびAD-R の変化量に有意差が認められた。【結論】小胸筋を伸張させるとされるDW-stretch 法とR30-stretch 法のうち,DWstretch 法は安静時の小胸筋長や肩甲骨の位置をより変化させる可能性が示唆された。
著者
内堀 昭宜 川上 照彦 石田 充 武末 和彦 牧 晋一郎 奥村 隆
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.F0888, 2006

【目的】スポーツ現場においては、運動後に筋疲労を残さないために、ストレッチングやクーリングダウンが行われている。しかし短時間に筋疲労を回復させるにはその効果に限界がある。そこで我々は、筋疲労を早期に回復させる手段として、交代浴や温浴の末梢循環促進効果に着目し、これらの筋疲労回復に及ぼす影響について、血中乳酸値と筋出力の視点から検討したので報告する。<BR><BR>【対象と方法】健常男性10例(21.7±1.3歳)を被験者とし、サイベックスによる2回の運動負荷によって筋疲労試験を行った。運動負荷は屈伸回数を50回とし、比較的早い角速度である180deg/s、膝関節屈伸運動の等速度運動に設定した。また、運動負荷の間隔は58分とし、初回運動後2度目の運動まで何もせずに安静にした群と、19分間交代浴をした群、温浴をした群の3群につき血中乳酸の変化を調べた。血中乳酸は指尖部より採血し、ラクテート・プロを用い10回測定した。また、交代浴と温浴は、温浴を38~42度、冷浴を10~15度に設定し、両下腿部に部分浴を行なった。<BR><BR>【結果】血中乳酸値の経時的変化を反復測定分散分析した結果、交代浴群において安静群・温浴群より有意に血中乳酸値が減少していた。しかし、安静群・温浴群では、有意差は認められず、温浴の効果を確認することはできなかった。また、筋疲労試験については、膝関節伸展筋群で、温浴群が安静群より有意に筋力が低下しており、温浴後に筋力を発揮できない結果となった。<BR><BR>【考察】我々は、交代浴・温浴ともに、その血管拡張作用による血流量の増加により、乳酸の処理を促進し、血中乳酸値を減少させると考えた。しかし、交代浴では有意に血中乳酸が低下したにもかかわらず、温浴群ではその効果が確認できなかった。これは、交代浴の冷浴における血管収縮が、その後の温浴の血管拡張効果を増大させ、温浴のみよりも有意に血流量を増加させ、血中乳酸値の低下に差を生じさせたものと思われた。一方、筋力の低下に関しては、筋力と持久力は温熱を加えることにより30分間は低下するという報告があり、2度目の運動負荷試験時には、血中乳酸値は低下したものの筋力としては発揮できなかったものと思われた。以上我々の行なった疲労回復処置は、時間の短いインターバルでは筋力の回復の点から不向きであると思われるが、疲労した筋力の回復には、冷浴の時間配分が多い交代浴が効果的であるという報告もあり、今後の検討課題と思われた。<BR><BR>【まとめ】交代浴、温浴の筋疲労回復効果を血中乳酸及びサイベックスを用いた筋疲労試験により検討した。交代浴群において有意に血中乳酸は低下したが、筋力の回復効果は認められず、逆に、温浴群において、筋出力の低下が認められた。交代浴は、温・冷浴の時間配分を検討すれば、時間の短いインターバルにおける筋疲労回復処置の有効な手段になりうるものと思われた。
著者
大田尾 浩 八谷 瑞紀 村田 伸 溝上 昭宏 小野 武也 梅井 凡子 大塚 彰 川上 照彦
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.93-99, 2012 (Released:2013-04-02)
参考文献数
38
被引用文献数
3

[目的]脳卒中片麻痺患者の歩行の可否に影響を及ぼす要因とカットオフ値を検討した。[対象]対象に認知機能が低下した患者を含む脳卒中片麻痺患者35名(男性22名,女性13名)とした。[方法]候補となる要因を年齢,Brunnstrom stage,立位バランス,上肢筋力,腹筋力,下肢筋力,足底感覚,および認知機能とし,これらの要因と歩行能力を評価した。歩行能力に影響する要因をロジステック回帰により分析し,ROC 曲線から歩行自立を判別するカットオフ値を検討した。[結果]歩行の可否に影響を及ぼす要因は,麻痺側下肢筋力とHDS-R 得点が選択された。歩行自立を判別するそれぞれのカットオフ値は,麻痺側下肢筋力では体重比24%,HDS-R 得点では25点であった。[結語]脳卒中片麻痺患者の麻痺側下肢筋力とHDS-R 得点によって,歩行自立を判別できる可能性が示唆された。
著者
室伏 祐介 川上 照彦 伊藤 創
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.731-734, 2019 (Released:2019-12-21)
参考文献数
11

〔目的〕平地や不安定面での片脚立位にて小殿筋筋活動を比較し小殿筋が股関節の安定性に関与しているかを筋電図学的に検証することである.〔対象と方法〕健常成人13名(男性7名,女性6名)を対象に小殿筋と中殿筋にワイヤ電極を留置し,平地,AIREX®上,BOSE®上で片脚立位を行い小殿筋と中殿筋の評価をした.〔結果〕女性では平地に比べ最も支持面が不安定であるBOSE®上において小殿筋筋活動が増加した.また,BOSE®上では男性に比べ女性で活動量が多かった.〔結語〕女性は男性に比べ臼蓋による骨頭の被覆が少なく,重心線から骨頭中心までの距離も長く不安定である.よって,股関節の安定性を保つために小殿筋の筋活動量が男性よりも高かったと思われる.小殿筋は股関節の安定性に重要な働きをしていることが示唆された.
著者
室伏 祐介 川上 照彦 岡上 裕介 永野 靖典 池内 昌彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0390, 2017 (Released:2017-04-24)

【緒言】股関節安定化機構である股関節深層筋に着目した報告が散見され,深層筋である小殿筋は股関節に安定をもたらす働きがあるとされている。PETやMRIを用いた研究では,歩行や片脚立位時には中殿筋よりも小殿筋の活動が高いと報告されており,変形性股関節症でみられる股関節外転筋機能不全に対しては,深層筋の働きを考慮しなくてはならない。また,我々は小殿筋にワイヤ電極を留置し,小殿筋の筋活動を分析してきた。その結果,歩行立脚期において小殿筋は中殿筋と同等の筋活動量を示していることを報告し,筋電図学的にも小殿筋が股関節の安定に関与していることが示唆された。さらに,小殿筋の筋線維の走行は,中殿筋よりも求心位方向を向いており,解剖学的にも安定性に関与していると考えられる。今回,小殿筋が股関節の安定性に関与しているかさらに検討をすすめるために,不安定な状況下における小殿筋の筋活動を比較することである。【方法】対象は,健常成人13名(男性7名,女性6名)である。被検筋を小殿筋と中殿筋とし,電極の留置場所は,小殿筋が腸骨稜の中点と大転子を結んだ中点に,中殿筋が腸骨稜の中点より2.5cm遠位に留置した。ワイヤ電極は,ウレタンコーティングされた直径0.1 mmのステンレス線で,先端の0.5 mmだけコーティングを剥がし通電できるようにし,電極間距離は2 mmになるように貼り合わせ,双極誘導ができるようにしている。1本のワイヤ電極は22 Gのカテラン針に通した後,ガス滅菌処理をして使用した。なお,電極の留置は整形外科医が行っている。測定課題は,平地での片脚立位,バランスクッション上での片脚立位,半球上での片脚立位を各5秒間行った。解析は,片脚立位の開始と終了の1秒を除く3秒間の積分値を算出した。積分値の算出には,BIMUTASを使用し,20-1000 Hzのバンドパスフィルターを通した後に解析を行った。また,算出した積分値は,最大随意収縮時の値に対する相対値にて比較を行った。【結果】平地での片脚立位,バランスクッション上での片脚立位,半球上での片脚立位とより不安定な状況になると,有意差は認めなかったが筋活動量が増加した。また,性別ごとに比べると,女性では不安定な状況が増すと小殿筋の筋活動量が有意に高くなった(p<0.05)。さらに男女の差を比較すると,半球上での片脚立位においは,小殿筋の筋活動量が男性より女性の方が有意に高くなった(p<0.05)。【考察】片脚立位を保持するためには,支持面が不安定になると股関節を安定させる必要がある。よって,小殿筋の筋活動量が上がったものと考えられる。また,この傾向は女性においてより顕著にみられた。本邦の変形性股関節症例は多くが二次性であり,また,発育性股関節形成不全の多くは女性である。よって形態学的にも女性の方が股関節の安定は保たれにくく,その代償としてより小殿筋の筋活動が必要となったのではないかと考えられる。
著者
大田尾 浩 八谷 瑞紀 村田 伸 小野 武也 梅井 凡子 金井 秀作 長谷川 正哉 溝上 昭宏 川上 照彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.359-363, 2011 (Released:2011-07-21)
参考文献数
21
被引用文献数
1

〔目的〕脳卒中片麻痺患者の屋内車いす駆動の可否に影響を及ぼす要因を検討した.〔対象〕脳卒中片麻痺患者59名(男性35名,女性24名)とした.〔方法〕候補となる要因をBrunnstrom stage,立位バランス,座位バランス,握力,腹筋力,非麻痺側・麻痺側の下肢筋力,および認知機能とし,これらの要因と車いす駆動能力を評価した.車いす駆動能力に影響する要因をロジステック回帰により分析した.〔結果〕車いす駆動の可否に影響を及ぼす要因は,立位バランスと腹筋力が選択された.〔結語〕脳卒中片麻痺患者が屋内での車いす駆動能力を獲得するには,立位バランスと腹筋力が重要であることが示された.
著者
松尾 知洋 川上 照彦 岡崎 美紀 小泉 周也 山西 絵理 室伏 祐介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.A0869, 2008

【目的】我々は第41回の本学会において,交代浴による疲労回復処置が,約1時間の経過観察で,運動負荷後の血中乳酸値を,安静群や温浴群に比べ有意に低下させるものの,同時に行われた筋疲労試験では,筋出力の改善がなく,逆に低下傾向が見られたことを報告した。そこで,今回,我々は,温め過ぎたことが筋出力の低下に繋がったと考え,冷浴で終わる交代浴や冷浴単独での疲労回復試験を施行し,血中乳酸値と筋出力の視点から疲労回復について検討を行ったので報告する。<BR>【方法】健常男性20例(平均20歳)を被験者とし,運動負荷試験後,10分間の疲労回復処置に続き,5分間の軽運動を行った後,疲労試験を施行した。運動負荷はサイベックスにて屈伸回数を50回とし,比較的早い角速度である180deg/sec,膝関節屈伸運動の等速度運動に設定した。また,試合におけるハーフタイムを想定して,運動負荷の間隔は15分とし,初回運動負荷後安静にした群と,交代浴を施行した群,冷浴を施行した群の3群を設定し血中乳酸と筋出力の変化を調べた。血中乳酸はラクテート・プロを用い測定した。また,交代浴と冷浴は,温浴を38~42度,冷浴を10~15度に設定し,両下腿部に部分浴を行った。<BR>【結果】血中乳酸値の経時的変化では,交代浴群,冷浴群は安静群と比較すると低値を示したが,統計学的に有意差を認めなかった。また,筋疲労試験では,総仕事量に関して,左膝関節屈曲筋群において,交代浴,冷浴により筋力の低下が認められた。<BR>【考察】我々は,第41回の本学会において,交代浴による疲労回復処置では,約1時間の経過観察で,運動負荷後の血中乳酸値を,安静群や温浴群に比べ有意に低下させるものの,筋出力の改善がなく,逆に低下傾向が見られ,試合間等の短時間における疲労回復処置には不向きであると報告した。この原因として,過剰な温熱を考え,温・冷・温・冷の冷浴で終わる交代浴や,冷浴単独の疲労回復効果について検討した。血中乳酸値においては,交代浴群,冷浴群は安静群と比較すると低値を示したが,有意差は認めなかった。乳酸塩が完全に回復するには30~40分必要とされており,15分という短いインターバルでの疲労試験においては,有意差が認められなかったものと考えられる。一方,筋出力についても,筋疲労試験において低下を示し,冷浴の効果以上に温浴の影響が大きく表れたのではないかと考えられる。また,冷浴単独については,運動神経伝導の遅延や,参画するMotor unitsの減少により筋出力が低下したものと考えられる。<BR>【まとめ】以上我々の行った疲労回復処置は,短時間のインターバルにおける疲労回復処置としては不向きであると思われるが,疲労した握力の回復には冷浴の時間配分が多い交代浴が効果的であるという報告もあり,今後の検討課題と考えられた。
著者
内堀 昭宜 川上 照彦 石田 充 武末 和彦 牧 晋一郎 奥村 隆
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.F0888, 2006 (Released:2006-04-29)

【目的】スポーツ現場においては、運動後に筋疲労を残さないために、ストレッチングやクーリングダウンが行われている。しかし短時間に筋疲労を回復させるにはその効果に限界がある。そこで我々は、筋疲労を早期に回復させる手段として、交代浴や温浴の末梢循環促進効果に着目し、これらの筋疲労回復に及ぼす影響について、血中乳酸値と筋出力の視点から検討したので報告する。【対象と方法】健常男性10例(21.7±1.3歳)を被験者とし、サイベックスによる2回の運動負荷によって筋疲労試験を行った。運動負荷は屈伸回数を50回とし、比較的早い角速度である180deg/s、膝関節屈伸運動の等速度運動に設定した。また、運動負荷の間隔は58分とし、初回運動後2度目の運動まで何もせずに安静にした群と、19分間交代浴をした群、温浴をした群の3群につき血中乳酸の変化を調べた。血中乳酸は指尖部より採血し、ラクテート・プロを用い10回測定した。また、交代浴と温浴は、温浴を38~42度、冷浴を10~15度に設定し、両下腿部に部分浴を行なった。【結果】血中乳酸値の経時的変化を反復測定分散分析した結果、交代浴群において安静群・温浴群より有意に血中乳酸値が減少していた。しかし、安静群・温浴群では、有意差は認められず、温浴の効果を確認することはできなかった。また、筋疲労試験については、膝関節伸展筋群で、温浴群が安静群より有意に筋力が低下しており、温浴後に筋力を発揮できない結果となった。【考察】我々は、交代浴・温浴ともに、その血管拡張作用による血流量の増加により、乳酸の処理を促進し、血中乳酸値を減少させると考えた。しかし、交代浴では有意に血中乳酸が低下したにもかかわらず、温浴群ではその効果が確認できなかった。これは、交代浴の冷浴における血管収縮が、その後の温浴の血管拡張効果を増大させ、温浴のみよりも有意に血流量を増加させ、血中乳酸値の低下に差を生じさせたものと思われた。一方、筋力の低下に関しては、筋力と持久力は温熱を加えることにより30分間は低下するという報告があり、2度目の運動負荷試験時には、血中乳酸値は低下したものの筋力としては発揮できなかったものと思われた。以上我々の行なった疲労回復処置は、時間の短いインターバルでは筋力の回復の点から不向きであると思われるが、疲労した筋力の回復には、冷浴の時間配分が多い交代浴が効果的であるという報告もあり、今後の検討課題と思われた。【まとめ】交代浴、温浴の筋疲労回復効果を血中乳酸及びサイベックスを用いた筋疲労試験により検討した。交代浴群において有意に血中乳酸は低下したが、筋力の回復効果は認められず、逆に、温浴群において、筋出力の低下が認められた。交代浴は、温・冷浴の時間配分を検討すれば、時間の短いインターバルにおける筋疲労回復処置の有効な手段になりうるものと思われた。
著者
森澤 豊 野口 政隆 川上 照彦 山本 博司 貞廣 哲郎
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.267-269, 1998-06-25 (Released:2012-11-20)
参考文献数
3
被引用文献数
1

We studied the mechanism of musculocutaneous neuropathy associated with the Boytchev procedure in cadavers.(Materials and methods)The subjects we re 21 adult cadavers (42 shoulders) for anatomical study. The distance from the anterior end of the coracoid process to the site of the entry of the musculocutaneous nerve trunk into the coracobrachialis muscle was determined as A, the distance to the insertion of the short head of the biceps among the nerve branches as B, and the distance to the coracobrachialis insertion site as C. Then, the coracoid process (served to measure the insertion of the short head of the biceps and that of the coracobrachialis) was returned to its original position beneath the full-thickness of the subscapularis muscle by the original Boytchev method, and the distance from the anterior end of the coracoid process to the lower margin of the subscapularis was determined as D.(Results)A was 47.5±13.2mm, B was 30.1±6.2mm, C was 33.9±7.5mm and D was 33.3±5.3mm. A was below D, i. e., the entry site of the musculocutaneous nerve trunk was above the lower margin of the subscapularis muscle, and entrapment of the musculocutaneous nerve trunk by the subscapularis muscle was present in nine shoulders (21.4%).(Discussion)In patients where the site of the entry of the musculocutaneous nerve trunk into the coracobrachialis muscle is at a higer position than the lower margin of the subscapularis, it appears necessary to take technical precautions such as passing the severed coracoid process through the lower one third of the belly of the subscapularis.
著者
大田尾 浩 村田 伸 八谷 瑞紀 弓岡 光徳 小野 武也 梅井 凡子 大塚 彰 溝上 昭宏 川上 照彦
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.123-129, 2012 (Released:2013-04-02)
参考文献数
41
被引用文献数
2 2

[目的]脳卒中片麻痺患者の座位での骨盤傾斜角度と基本動作能力との関連について検討した。[対象]脳卒中片麻痺患者28名(男性17名,女性11名)とした。[方法]測定項目は,端座位での自動運動による骨盤前傾角度,骨盤後傾角度,骨盤運動可動域,基本動作能力(立ち上がり,着座,立位保持,片脚立位,歩行),Brunnstrom stage および下肢筋力とし,基本動作の可否に関連する因子を分析した。[結果]片脚立位以外の基本動作能力と骨盤前傾角度に有意な関連を認めた。一方で,各測定項目と骨盤後傾角度および骨盤運動可動域とは有意な関係は認められなかった。[結語]脳卒中片麻痺患者の自動運動による骨盤前傾能力は,基本動作能力に関連している可能性が示された。
著者
内田 茂博 玉利 光太郎 横山 茂樹 川上 照彦 加藤 浩 山田 英司 有馬 信男 山本 哲司
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.442-448, 2011-10-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
26
被引用文献数
2

【目的】本研究では,術前の身体・精神的機能が人工膝関節置換術後2週の運動機能にどう影響しているかを明らかにすることを目的として縦断的に調査を行った。【方法】変形性膝関節症と診断され人工膝関節置換術が施行された38名(平均年齢75.0 ± 6.1歳)を対象とし,術前の身体・精神的機能および術後2週のTimed Up and Go test(TUG)を計測した。交絡因子の影響を取り除くため,得られたデータは重回帰モデルを用いて分析した。【結果】術後2週の運動機能であるTUGを予測する因子として,術前の安静時痛,自己効力感,交絡因子である非術側膝伸展可動域が抽出された。【結論】術前の自己効力感,安静時痛および非術側膝伸展可動域は,術後早期の運動機能指標であるTUGの予測因子であることが示唆された。
著者
松尾 知洋 川上 照彦 岡崎 美紀 小泉 周也 山西 絵理 室伏 祐介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0869, 2008 (Released:2008-05-13)

【目的】我々は第41回の本学会において,交代浴による疲労回復処置が,約1時間の経過観察で,運動負荷後の血中乳酸値を,安静群や温浴群に比べ有意に低下させるものの,同時に行われた筋疲労試験では,筋出力の改善がなく,逆に低下傾向が見られたことを報告した。そこで,今回,我々は,温め過ぎたことが筋出力の低下に繋がったと考え,冷浴で終わる交代浴や冷浴単独での疲労回復試験を施行し,血中乳酸値と筋出力の視点から疲労回復について検討を行ったので報告する。【方法】健常男性20例(平均20歳)を被験者とし,運動負荷試験後,10分間の疲労回復処置に続き,5分間の軽運動を行った後,疲労試験を施行した。運動負荷はサイベックスにて屈伸回数を50回とし,比較的早い角速度である180deg/sec,膝関節屈伸運動の等速度運動に設定した。また,試合におけるハーフタイムを想定して,運動負荷の間隔は15分とし,初回運動負荷後安静にした群と,交代浴を施行した群,冷浴を施行した群の3群を設定し血中乳酸と筋出力の変化を調べた。血中乳酸はラクテート・プロを用い測定した。また,交代浴と冷浴は,温浴を38~42度,冷浴を10~15度に設定し,両下腿部に部分浴を行った。【結果】血中乳酸値の経時的変化では,交代浴群,冷浴群は安静群と比較すると低値を示したが,統計学的に有意差を認めなかった。また,筋疲労試験では,総仕事量に関して,左膝関節屈曲筋群において,交代浴,冷浴により筋力の低下が認められた。【考察】我々は,第41回の本学会において,交代浴による疲労回復処置では,約1時間の経過観察で,運動負荷後の血中乳酸値を,安静群や温浴群に比べ有意に低下させるものの,筋出力の改善がなく,逆に低下傾向が見られ,試合間等の短時間における疲労回復処置には不向きであると報告した。この原因として,過剰な温熱を考え,温・冷・温・冷の冷浴で終わる交代浴や,冷浴単独の疲労回復効果について検討した。血中乳酸値においては,交代浴群,冷浴群は安静群と比較すると低値を示したが,有意差は認めなかった。乳酸塩が完全に回復するには30~40分必要とされており,15分という短いインターバルでの疲労試験においては,有意差が認められなかったものと考えられる。一方,筋出力についても,筋疲労試験において低下を示し,冷浴の効果以上に温浴の影響が大きく表れたのではないかと考えられる。また,冷浴単独については,運動神経伝導の遅延や,参画するMotor unitsの減少により筋出力が低下したものと考えられる。【まとめ】以上我々の行った疲労回復処置は,短時間のインターバルにおける疲労回復処置としては不向きであると思われるが,疲労した握力の回復には冷浴の時間配分が多い交代浴が効果的であるという報告もあり,今後の検討課題と考えられた。
著者
伊藤 創 葉 清規 松田 陽子 室伏 祐介 川上 照彦
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11772, (Released:2020-08-05)
参考文献数
21

【目的】本研究目的は,肩関節疾患保存例に対して理学療法を行い,初回時の夜間痛の有無における治療経過,また,関節注射による影響を調査し,理学療法の有用性を示すことである。【方法】対象は,肩関節疾患保存例72 例である。初回時の夜間痛の有無で2 群に分類し,また,夜間痛あり群のうち,初診時に関節注射実施の有無で2 群に分類し,治療開始1,3 ヵ月後までROM,動作時VAS,アテネ不眠尺度(以下,AIS)の治療経過の差について解析した。【結果】 夜間痛あり,なし群の経過に交互作用がみられ,夜間痛あり群でROM,動作時VAS,AIS の高い改善度が得られた。また,関節注射併用例で初回から1 ヵ月後で動作時VAS の高い改善度が得られた。【結論】肩関節疾患保存例に対する理学療法により,夜間痛の有無にかかわらずROM,VAS,AIS の改善が得られ,夜間痛を有する場合,関節注射を併用することで早期に疼痛の改善が得られる。
著者
森澤 豊 川上 照彦 山本 博司 貞広 哲郎
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.117-121, 1996-10-15 (Released:2012-11-20)
参考文献数
6

The pathogenesis of a rotator cuff lesion of the shoulder is still controversial.The authors investigated the mechanoreceptors in the rotator cuff, the subacromial bursa and the coracoacromial ligament in order to clarify the proprioception of the shoulderjoint.
著者
川田 倫子 牛田 享宏 池内 昌彦 川上 照彦 山中 紀夫 池本 竜則 谷 俊一 小松 誠
出版者
日本疼痛学会
雑誌
PAIN RESEARCH (ISSN:09158588)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.127-132, 2006-08-20 (Released:2013-10-24)
参考文献数
10
被引用文献数
3 6

Hip joint associated pain is known to distribute widely in affected thigh or lower leg and generally not restricted in hip joint area.However detail feature of hip joint associated referred pain is not sufficiently clarified. Therefore the aim of this study is to characterize the types of distribution of hip joint related pain and to give our opinion about underlying neurophysiological mechanisms of hip joint referred pain. Of 36 severe osteo-arthritis joints, 83% of the joints showed remote pain area and 18% of the joints showed pain restricted only in inguinal area. Fourteen percent of the joints had far remote pain in lower leg area. L5 root block study was conducted in 7 cases. In all cases remote referred pains were attenuated at least 2 or 3 days and long lasting pain improvement was achieved in one case. These results suggest that referred pain observed in severe hip osteoarthritis cases may initially triggered by hip joint itself but prolonged referred muscle pain may become a possible generator for triggering and maintaining of mal-pain circuit.
著者
伊藤 創 葉 清規 能登 徹 川上 照彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】肩関節周囲炎とは,加齢的退行性変性を基盤として発生する疼痛性肩関節制動症と定義されており,病態・病因は未だはっきりと確立されていない。肩関節周囲炎の特徴的な症状として,夜間痛が挙げられる。夜間痛とは,夜間に起こる肩の疼痛の事をあらわし,患者の睡眠を妨げることで生活の質を著しく低下させると言われている。夜間痛の臨床的特徴に関して,山本らは65歳未満の女性に多く,肩関節回旋制限例に多いと報告しており,石垣らは,肩関節屈曲制限例に多いと報告しているなど,統一された見解がないのが現状である。本研究の目的は,初回評価時に夜間痛を有する肩関節周囲炎患者に対し,治療経過において1か月後の夜間痛の改善に関連する因子を調査することである。【方法】対象は当院で2014年7月から2015年9月より理学療法介入(運動療法・物理療法等)を行い,調査可能であった片側性肩関節周囲炎患者67例(男性26名,女性41名,平均年齢61.7±12.9歳)とした。除外基準は,両側性肩関節周囲炎,腱板断裂,石灰沈着性腱板炎と診断された症例とした。評価項目は,カルテから基本情報として,性別,罹病期間,年齢,その他の評価項目として初回評価時の安静時痛,夜間痛(初回・1ヶ月後),運動時痛,肩関節屈曲・外転・下垂位外旋の関節可動域(以下,ROM)の9項目を調査した。夜間痛の有無については,岩下らの報告をもとに問診評価で行い,夜間就寝時に疼痛があり睡眠を妨げてしまう程度の痛みがある症例を夜間痛有とした。夜間痛に関連する因子について,初回評価時に夜間痛を有し,理学療法開始1か月後に夜間痛が残存したか否かを従属変数,基本情報及びその他の評価項目を独立変数として,ロジスティック回帰分析にて解析した。統計処理は,R-2.8.1(CRAN freeware)を使用し,有意水準は5%とした。【結果】初回評価時に夜間痛を有した症例は32例であり,その内1か月後評価において,夜間痛を有した症例は12例であった。理学療法開始1か月後の夜間痛の改善に影響があった因子は,肩関節下垂位外旋ROM(オッズ比:0.84,95%信頼区間:0.70-0.97)であった。【結論】初回評価時に夜間痛を有する肩関節周囲炎患者の,理学療法開始1ヶ月後の夜間痛の改善に対する危険因子は,肩関節下垂位外旋ROMが小さいことであった。