著者
小泉 雅彦
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.124, pp.145-151, 2016-03-25

筆者は北大土曜教室や教育現場において高い知的能力を持ちながらディスレクシアを抱える子どもたちの支援を行いつつ,ギフテッドを持つ保護者の相談にも当たってきた。いまだに日本ではギフテッドに関しての統一した定義がない中で,WISC-Ⅳをツールとして知的側面からのギフテッド(以下知的ギフテッド)同定を試みた。さらに,WISC-Ⅳの示す認知のアンバランスと知的ギフテッドが抱える「生きづらさ」との関連について明らかにした。早期に知的ギフテッドの子どもたちの認知特性に応じた特別支援教育の必要性が求められる。
著者
日高 茂暢 眞鍋 優志 小泉 雅彦 室橋 春光
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.35-48, 2019-03-25

野外での療育活動の実践研究は、特定のスキル獲得が中心であり、子ども・青年の関係性に焦点をあてた検討は少ない。本研究の目的は、神経発達症のある子どもと青年の異年齢期交流が発達にもたらす影響を明らかにすることである。本研究では、親の会が企画する登山キャンプに参与観察し、キャンプ内で生じる参加者の異年齢期交流を調査した。登山キャンプでは、子どもと青年の間にナナメの関係性が生じやすいことが分かった。その結果、子どもにとっては近未来像として取り入れるロールモデルになること、青年にとっては支援者の行動を模倣し子どもに実践する養育性形成の場になることが考えられた。また登山キャンプは居場所として、集団精神療法のような心理的安定を促す要素があることが考えられた。神経発達症のある子どもや青年にとって、同年齢集団と比べ、異年齢集団の方が能力の差異を肯定的に承認されやすいと考えられた。
著者
小泉 雅彦 西山 謹司 山崎 秀哉 長谷川 義尚
出版者
一般社団法人 日本放射線腫瘍学会
雑誌
日本放射線腫瘍学会誌 (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.157-163, 2004

頭頸部腫瘍にstereotactic radiotberapy (SRT), conformal radiotherapy (CRT) を用いた症例に対し, 唾液腺シンチを使って定量的評価をし, 唾液腺障害の軽減の効果について検討した. 対象は大阪府立成人病センターにて1999年9月-2002年9月にSRT, CRTを行った上咽頭癌7例, 中咽頭 (扁桃) 癌3例である. 年齢は17-71歳 (中間値48歳), 男性7人, 女性3人で, 左右全耳下腺へ約40Gyの通常外照射後, 30-36Gyのブースト照射を健側耳下腺を可及的に照射野から除外したSRTまたはCRTで行った. 放射線治療後8ヶ月以降に耳下腺シンチグラフィーを行い, 摂取率, 分泌率を測定した. 放射線治療前の頭頸部腫瘍患者18例をコントロールとして測定して, 平均摂取率, 分泌率は, それぞれ0.40%, 40%であった. 対象8例の耳下腺50%体積線量 (D50) は健側44.3±3.8 (39.2-49.1, 中央値44.6) Gy, 患側58.8±8.6 (47.3-70.5, 中央値60.8) Gyとなった. 放射線治療後の平均摂取率は健側0.44%, 患側0.47%と, 両側とも変化しなかった. 平均分泌率は健側11.0%, 患測39%であり, 両側とも低下したが, 患側が健側より有意に低くなった (p=0,023). D50と摂取率には相関はなかったが, 分泌率は負の相関を示した.D50が40Gyを超えても55Gy未満に留まった14耳下腺では分泌率は平均10%程度あり, 55Gy以上の6耳下腺で平均2%と著しい低下を示したのに対し分泌率をより保持していた. 頭頸部腫瘍に対しブースト照射としてSRT・CRTを用い耳下腺への照射線室を低減させ, 健側の唾液線分泌障害を若干軽減できた.
著者
藤縄 英佑 泉 雅彦 鳴海 拓志 宝珠山 治 谷川 智洋 廣瀬 通孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.114, pp.53-58, 2014-06-24

社会で普及している行動誘導システムは提示された言語や記号を人が解釈することを必要とし,そもそも気付かれない,意志の押し付けになるという問題をはらんでいる.本研究では,音が人の快・不快情動に大きく影響を与えることに着目し,快感情を生起する音場を提示することで,人を無意識的に誘導するシステムの構築を目指す.まず空間中の特定範囲のみに音場を提示するシステムを構築し,その局所提示性能を評価した.次にこのシステムを用い,音により空間を快い空間と不快な空間とに分け,人の滞在位置を無意識的に誘導できるかどうか検証した.
著者
小泉 雅彦
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
no.111, pp.23-40, 2010

本論では,日本の教育現場において,学習障害に対する教育的対応が遅れたことについて検討を加え,北海道における学習障害の処遇を振り返りながら土曜教室の誕生した生成過程を検証した。そして,「北大土曜教室」における「軽度発達障害*1」のある子どもたちに対する教育的支援と学生たちの学びと育ちを踏まえ,その教育的意義を明らかにした。さらに,日本社会においてノーマライゼーションとバリアフリーを推進していく上で,特別支援教育の重要性について触れた。「北大土曜教室」における,"学び(専門)"と"育ち(人材)"を支えるシステムは,特別支援教育を推進していくうえで先進的な役割を果たしていることが示唆された。