著者
日高 茂暢 室橋 春光 片桐 正敏 富永 大悟
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

特別支援教育は個別の特別な教育ニーズに応えるよう発展してきた一方、家庭での育てづらさや学校での不適応があっても、知能検査によるIQが高い子どもや人(知的Gifted)は、公的な支援が受けにくい状況がある。知的Giftedの心理特性の1つとして、過度激動と呼ばれる自己内外の情報・刺激に対する感受性の高さがあげられる。本研究では、日本における知的Giftedの心理特性をアセスメントし、支援するために、日本版過度激動尺度の開発を行うことを目的とする。また過度激動と関連が予想される神経発達症傾向、および 自尊心等の関連について、調査を行い、知的ギフテッドの特性に関する知見を提供する
著者
日高 茂暢
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.114, pp.101-121, 2011-12-27

【要旨】発達障害の一つである自閉症スペクトラム障害 (Autism-Spectrum Disorders: ASD) は,社会性の質的な障害を特徴の1 つとして有する。ASD における非定型的な表情認知が社会性の障害の背景として指摘されてきた。一方,実験場面において比較的良好な表情認知成績を示すASD の知見がある。そのため,ASD の非定型的な表情認知を検討するために,実験場面と日常場面における表情処理の差を考えることが重要である。日常場面で他者の情動状態を推測するとき,最適な解は表情処理だけでは得られない。場面に適切な表情の意味処理を行うために,場面情報から表情の情動的意味処理を促進する文脈的情報が抽出される必要がある。本稿では,ASD における表情認知の問題を,視覚的物体認知における大細胞系視知覚の知見をもとに,表情処理を促進させる文脈の問題として検討する。定型発達とASD における場面情報と表情認知の研究を比較し,ASD における文脈にもとづいた表情認知の問題を示した。
著者
水野 君平 日高 茂暢
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.1-11, 2019-03-30 (Released:2019-12-14)
参考文献数
41
被引用文献数
7 7

本研究の目的は自己報告によって測定した友だちグループ間の学級内の地位と学校適応感の関連に関して,学級レベルの変数による調整効果を検討することであった。具体的に本研究が扱った学級レベルの変数は,自然な自己開示ができる学級風土と学級内の生徒間の不和を表す学級風土,さらにグループ間の地位におけるヒエラルキーの強さであった。公立中学校3校46学級の生徒1,417名を対象に質問紙調査をおこなった。分析の結果,学級風土はグループ間の地位と学校適応感の関連を調整しなかったが,ヒエラルキーの強さはグループ間の地位と学校適応感の「課題・目標の存在」との関連を調整した。単純傾斜検定の結果,ヒエラルキーが強い学級の場合,高地位グループの生徒ほど「課題・目標の存在」による充実感が高い傾向にあることがわかった。本研究の結果から,グループ間の地位と学校適応感との関連の学級間差やグループ間の地位におけるヒエラルキーの役割を考察した。
著者
室橋 春光 河西 哲子 正高 信男 豊巻 敦人 豊巻 敦人 間宮 正幸 松田 康子 柳生 一自 安達 潤 斉藤 真善 松本 敏治 寺尾 敦 奥村 安寿子 足立 明夏 岩田 みちる 土田 幸男 日高 茂暢 蓮沼 杏花 橋本 悟 佐藤 史人 坂井 恵 吉川 和幸
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

発達障害は生物学的基盤を背景とし、社会的環境の影響を強く受けて、非平均的な活動特性を生じ、成長途上並びに成人後においても様々な認知的・行動的問題を生ずる発達の一連のありかたである。本研究では発達障害特性に関する認知神経科学的諸検査及び、社会的環境・生活の質(QOL)に関する調査を実施した。脆弱性と回復性に関連する共通的背景メカニズムとして視覚系背側経路処理機能を基盤とした実行機能やワーキングメモリー機能を想定し、事象関連電位や眼球運動等の指標を分析して、個に応じた読みや書きなどの支援方法に関する検討を行った。また、QOLと障害特性調査結果の親子間の相違に基いた援助方法等を総合的に検討した。
著者
日高 茂暢 眞鍋 優志 小泉 雅彦 室橋 春光
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.35-48, 2019-03-25

野外での療育活動の実践研究は、特定のスキル獲得が中心であり、子ども・青年の関係性に焦点をあてた検討は少ない。本研究の目的は、神経発達症のある子どもと青年の異年齢期交流が発達にもたらす影響を明らかにすることである。本研究では、親の会が企画する登山キャンプに参与観察し、キャンプ内で生じる参加者の異年齢期交流を調査した。登山キャンプでは、子どもと青年の間にナナメの関係性が生じやすいことが分かった。その結果、子どもにとっては近未来像として取り入れるロールモデルになること、青年にとっては支援者の行動を模倣し子どもに実践する養育性形成の場になることが考えられた。また登山キャンプは居場所として、集団精神療法のような心理的安定を促す要素があることが考えられた。神経発達症のある子どもや青年にとって、同年齢集団と比べ、異年齢集団の方が能力の差異を肯定的に承認されやすいと考えられた。
著者
富永 大悟 日高 茂暢 室橋 春光
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.35-39, 2017-03-15

発達障害のある青年は、自尊感情の低下が自己喪失感へと結びつき、学校や会社などのコミュニティから居場所を失ってしまう。本研究は、社会参加が難しくひきこもりがちな青年に対し、社会につながるための支援を検討することを目的とした。本研究では、青年とその保護者がもつ問題意識について実 態調査を行った。実態調査の中から、ひきこもりがちな青年とその保護者を対象とした訪問支援とICTを活用したSNS 型居場所支援を平行して実施した。その結果、就労や将来に関する不安や引きこもり状態では達成されにくい対人交流欲求が認められた。またSNS 型居場所支援は、在宅であっても支援につながり得ることへの高い期待をもたらした。本研究により、訪問支援とは異なるコミュニケーションの場として、支援者とのつながりを感じられる補助的な拠点として、SNS による居場所支援の可能性が示唆された。